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パキシルの妊娠初期服用

妊娠関係でもう一つ紹介。やはり日経メディカル。2005. 10. 1の記事。元の記事である米GSK社の医療従事者向けリリース と比較してみていただきたい。

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パロキセチンの妊娠初期服用は、他の抗うつ薬に比べ先天性奇形リスクが約2倍に

 パロキセチン(商品名:パキシルなど)を妊娠初期に服用すると、他の抗うつ薬を服用した場合に比べ、先天性奇形の発生リスクが約2倍に増える可能性があるようだ。これは、発売元の米GlaxoSmithKline(GSK)社が行った調査で明らかになったもの。同社はこのほど、この結果に基づき、米国で販売するパキシルとパキシルCRについて、妊娠に関する注意書きを変更した。ただし、現時点でパロキセチンと先天性奇形の因果関係を明らかにできる、ヒトを対象にした信頼性の高い試験はなく、妊婦への投与は、潜在的リスクと効用のバランスを考慮した上で行うという、これまで通りの基準になっている。

 米GSK社は、妊娠初期に抗うつ薬を服用していた3581人の妊婦を対象に、主な先天性奇形について、後ろ向き疫学調査を行った。その結果、妊娠初期にパロキセチンを服用した母親から生まれた子供が先天性奇形であるオッズ比は、同様の条件で他の抗うつ薬を服用した場合に対し、2.20(95%信頼区間:1.34~3.63)だった。また、心血管奇形の同オッズ比は、2.08(同:1.03~4.23)だった。なお、心血管奇形の見られた14人の乳児のうち10人が心室中隔欠損症だった。

 一方、同社によると、妊娠初期に選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を服用した母親から生まれた、4291人の乳児について調べた別の研究「Swedish Medical Birth Registry」の結果では、パロキセチンを母親が服用した708人の乳児に、主な先天性奇形のリスク増加は見られなかったと付け加えている。

 詳しくは、米GSK社の医療従事者向けリリース [http://www.fda.gov/medwatch/safety/2005/Paxil_dearhcp_letter.pdf]まで。(當麻 あづさ、医療ジャーナリスト)
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これに関する、元の記事は、次のようなもの。

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Vol.3(2005) No.19(1006)R5
【 米FDA 】
• [‘Paxil’](paroxetine),[‘Paxil CR’](paroxetine 徐放錠):催奇形性に関して処方情報の改訂を通知
Important Prescribing Information:[‘Paxil’],[‘Paxil CR’](paroxetine HCl)
通知日:2005/09
http://www.fda.gov/medwatch/safety/2005/Paxil_dearhcp_letter.pdf
(Web 掲載日:2005/09/27)
GlaxoSmithKline(GSK)社とFDAから,[‘Paxil’]および[‘Paxil CR’]徐放錠の処方情報,妊娠/処方上の注意の項目を改訂して,先天性奇形に関する記載を追加することが医療従事者に通知された。この改訂はGSK 自身による後ろ向き疫学研究においてparoxetine の先天性奇形のリスクが他の抗うつ剤に比較して高く算出された結果に基づくもので,妊婦へ投与する場合は潜在的なリスクとベネフィットを慎重に検討し,治療法の変更も含めて患者と話し合うよう助言している。
◆背景
GSK 社は妊娠第1 三半期に抗うつ剤を服用する女性から生まれた子供の重大な先天性奇形について,後ろ向きの疫学的研究を行った。最近の予備解析の結果から,データベースでは他の抗うつ剤と比較してparoxetine で,先天性奇形全体に対する調整オッズ比は2.20〔95%CI[1.34~3.63]〕,心血管系の先天性奇形単独の調整オッズ比(OR)は2.08〔95%CI[1.03~4.23]〕であった。先天性奇形全体の発生率は約4%,心血管系の先天性奇形単独の発生率は約2%であった。Paroxetine を投与された母親の乳児で報告された心血管系の先天性奇形のうち最も多かったのは心室中隔欠損症であった。
GSK 社の研究は,抗うつ剤を服用した女性から生まれた乳児の先天性奇形の抗うつ剤間の相対リスク評価を目的にデザインされたため,抗うつ剤に曝露されていない乳児との比較は行われていないことに注意すべきである。したがって,これらのデータは一般の母集団における先天性奇形の全般的な発生率と関連して検討すべきである。米国において,先天性奇形は約3%,心血管系の先天性奇形単独では約1%であると推定されている(Honein 1999)。
従来のparoxetine を含む選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)に第1 三半期に曝露された場合の妊娠の転帰に関する疫学研究では,SSRI に対して重大な先天性奇形のリスクの増加のエビデンスは示されていなかった。Swedish Medical Birth Registry による最新の論文は(Hallberg2005),上記のGSK 社の研究と異なり,抗うつ剤に曝露されていない乳児との比較を含んでいる。
妊娠初期にSSRI に曝露された母親から生まれた4,291 人の乳児のデータから,全体で2.9%の先天性奇形が示されている。著者らは,抗うつ剤に曝露されていない乳児に予測された3.5%の発生率と差がないと結論付けている。この登録データ内のparoxetine に曝露された708 人で,先天性奇形の発生率は3.4%であった。
さらに最近になって,Alwan らは1997~2001 年に生まれた乳児のNational Birth Defects Prevention Study から得たデータを報告している(2005)。調整した解析により,SSRI を服用した女性は服用しなかった女性と比較して,臍帯ヘルニアの子供が生まれやすいことが示されている(n=161)〔OR 3.0,95%CI[1.4~6.1]〕。最も影響が強いのはparoxetine であり,すべてのSSRI 曝露の36%を占めると報告されている〔OR 6.3,95%CI[2.0~19.6]〕。著者らはまた,SSRI への曝露と頭蓋骨癒合症との関連も指摘している(n=372)〔OR 1.8,95%CI[1.0~3.2]〕。
Wogelius らによる the 21st International Conference on Pharmacoepidemiology and Therapeutic Risk Management(2005年8月21~24日)での発表の要旨には,妊娠の30日前から第1三半期の終わりまでにSSRIを処方されなかった女性に比較して,この期間にSSRIを処方された女性において,調整ORが先天性奇形全体で1.4〔95%CI[1.1~1.9]〕,先天性心奇形で1.6〔95%CI[1.0~2.6]〕であることが報告されている。
公表された研究結果が異なることや最近報告された異常が多様であることから,paroxetine に関連する特定の先天性異常の因果関係を断定することは困難である。GSK 社はこれらの予備的な知見を十分に理解するためさらに疫学的な研究を継続中である。
◇関連情報
・医薬品安全性情報Vol.3 No.18
・Caution over antidepressant paroxetine during pregnancy〔Vol.3 No.18 に要約掲載〕
http://www.tga.health.gov.au/media/2005/050907-paroxetine.htm
◎パロキセチン(paroxetine,SSRI)国内:発売済 海外:発売済

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というわけである。
後ろ向き疫学研究とは何か、調整オッズ比は2.20〔95%CI[1.34~3.63]〕とは、何を意味するのか、興味のある人は勉強してください。

・妊娠初期にSSRI に曝露された母親から生まれた4,291 人の乳児のデータから,全体で2.9%の先天性奇形が示されている。
・抗うつ剤に曝露されていない乳児に予測された3.5%の発生率
・paroxetine に曝露された708 人で,先天性奇形の発生率は3.4%であった。

2.9、3.5、3.4という数字の間に有意な差はないとの報告。なるほど。……結論1。

でも一方で、抗うつ剤を使った人の中で比較すると、パキシルを使った人の場合に、先天性奇形の割合が高かったという報告。なるほど。……結論2。

すると、どう?
抗うつ剤を使っても先天性奇形の割合は高くなることはないが、他の抗うつ剤よりもパキシルが高い、これはどう解釈する?

こんな場合は、データの詳細をさらに確認しないといけない。
そして、多分だけれど、この場合、抗うつ剤を使った患者さんの病状にかなり差があるだろうと考えられる。
先日も書いたが、うつ病の診断がついたら、シタロプラムから始めようという雰囲気があれば、ゾロフトもパキシルも、シタロプラムでは反応が悪かった群ということになり、薬剤の影響もあるだろうが、それ以外の影響もありそうだ。

簡単に言うと、シタロプラムでは自殺してしまうかもしれない場合に、ゾロフトやパキシルを使っているので、結果として、ゾロフトやパキシル使用例で自殺や先天性奇形が増えるのは当然かもしれない。

たとえば、東大病院は難しい患者さんが紹介されて来るわけだから、当然死亡率は高くなるだろう。でもそれは東大病院が悪い病院ということではなくて、難しい症例にもチャレンジしているとも解釈できる。それと同じことだ。

各抗うつ剤を無作為に割り付けるというプロセスはないようで、あまり意味のある疫学調査とは言えないのだろう。

疫学調査というものは、本質的メカニズムを解明する前段階のようなもので、本当は、薬剤が生体内でどのように機能して、効果と有害作用が生じるのか、解明されるまで、事の本質については留保されるべきものだ。

しかし何といっても人命は大切だから、何か怪しいと疫学調査がでた時点で対策を考えるのが正しい。
従って、疫学調査に敏感であるべきだ。

しかし、調査の方法、内容について、もっと厳密に論評されるべきだと思う。
そしてそれをかみ砕いてレポートする場合に、うっかりすると、「ためしてガッテン」レベルになってしまう危険があることも承知しておこう。



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