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混合診療禁止の法的根拠

「混合診療について、保険が受け取れないと解釈できる法律上の根拠はない」
と裁判官が判決で述べたそうだ。

混合診療禁止が憲法違反だとか、そんな話ではないから、
特段話題にもならないだろうと思っていたが、
いろいろと話題になっているようだ。

結論としていえば、混合診療は禁止するとの法律を作ればいいだけだと思う。

*****
混合診療禁止が、国民の生存権か何かを侵害していて、
従って、混合診療は全面的に解禁されるべきで、
混合診療を導入し、民間医療保険が自費分をまかなう、
そのような方向が考えられているらしい。
ここでも、いわゆるグローバルに、アメリカみたいにという流れ。
予想では、民間医療保険は10兆円を越える規模の市場とのことで、
しかも、アメリカでノウハウは充分にあり、
いつでもスタンバイオーケーなわけだ。

財務省は混合診療が解禁され、民間保険市場が出来上がったなら、
「必要最低限の医療ライン」を徐々に切り下げ、
医療費削減するだろう。

なにしろ、アメリカからの対日年次要求らしいから。

予定では、平成22年に混合診療解禁のプログラムがあり、
財務省は混合診療導入を希望しているといわれ、
政府のお抱え審議会でも混合診療解禁の方向である。

規制改革会議メンバー

議長 草刈 隆郎 日本郵船株式会社代表取締役会長
議長代理 八田 達夫 政策研究大学院大学学長
委員 有富 慶二 ヤマトホールディングス株式会社取締役会長
安念 潤司 成蹊大学法科大学院教授
翁 百合 株式会社日本総合研究所理事
小田原 榮 東京都八王子市教育委員長
川上 康男 株式会社長府製作所取締役社長
木場 弘子 キャスター・千葉大学特命教授
白石 真澄 関西大学政策創造学部教授
中条 潮 慶応義塾大学商学部教授
福井 秀夫 政策研究大学院大学教授
本田 桂子 マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン プリンシパル
松井 道夫 松井証券株式会社代表取締役社長
松本 洋 アドベントインターナショナル日本代表兼マネジングパートナー
米田 雅子 慶應義塾大学理工学部教授 NPO法人建築技術支援協会常務理事

そんな時代になったら、またお医者さんの仕事が増える。
公的保険では保険対象の治療が何か、
その患者さんが加入している民間医療保険はどんな治療をどの期間許容しているか、
調査して、さらに、自費分はどれだけ発生すると計算の上で告げることになるだろう。

そうなると、アメリカの場合のように、加入している医療保険のレベルが、
実質的にその人が受けることができる医療レベルになってしまう。

自動車保険がどの範囲の修理を対象にしているか、みたいな発想。
大切な車ならいい保険をかけるし、
そうでないならそれなりに。

アメリカの短期(brief)精神療法は、保険会社の決まりに合わせて開発されたものだ。
薬剤も、保険会社の決めた範囲で。
メディケアが医療と命を支配しているのだ。
保険会社は基本的に健康で病気になりそうもない人を集めて、保証する。
公的保険は、民間保険会社に加入できないような、
医療費のかさむ人を引き受けるといった事態になるかもしれない。
すると結局、税金の持ち出しである。

以上は制度の問題。

医療にお金をかけたくない人は、
命以上に大事なものがあるのか、
あるいは、他人の命ならそれなりでいいのか。

しかしもう一つ、その手前の問題があって、
現在保険診療の対象になっていないが、本当は必要な治療がどれだけあるのかという問題。
活性化自己リンパ球移入療法とか書いてあったが、
裁判の申し立て方として、
活性化自己リンパ球移入療法を保険診療にして欲しいと申し立て、
その医学的な有効性を立証する方法があったはずで、
その方がずっと意味のある裁判だったかもしれない。

論点が混合診療の是非になっているのは納得できない点がある。

さて、他方、
世の中はいろいろで、銀座の酸素バーのそばを通りかかるが、利用者は一定数いるようだ。
点滴バーではビタミン点滴を自費で受けているのだろう。
獣医学の分野では保険がきかないので、かなりの高額を支払っている。
民間療法の健康被害、金銭被害はともにあとを絶たない。

自費分を認めるとして、その効果や副作用の検討や、そんなことはどうするのだろう。
自己責任というのだろうか。
コラーゲンだ、何だと、支払いをしている人たちをも、自己責任だというように?
命に関しては、そんなわけにはいかないだろう。
細かなところで問題はあるとしても、混合診療禁止は全体としては、良心的に機能してきたと思う。

一般国民にとっての利益は、混合診療解禁ではなく、
個別の特殊療法について、不可欠ならば保険に組み入れることだろう。

それが今回のような話の流れになるところが、どうも怪しい。

精神科・心療内科では、たとえば、ある種の注射やサプリメント、アメリカで使われている抗うつ剤を使う、保険適用のない漢方薬を使うなど、いろいろな分野がある。アメリカには東洋人も住んでいるし、薬も飲んでいるわけだし、また、アジア諸国で認可されている薬もあるのだから、アメリカの薬を自費で使っても、特に問題はないと感じている。
臨床心理士によるカウンセリングは保険適用がないので、自費の扱いになる。この場合は、クリニックとは別組織にして会計も別立てにしないといけない。これは臨床心理士の専門性を確立する上でも必要な要素だと思う。



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