慢性疲労症候群の犯人はエンテロウイルス?
慢性疲労症候群の犯人はエンテロウイルス
父親の息子を思う気持ちが、謎に包まれていた疾患の原因解明を前進させることになった。米カリフォルニア州トランスの開業医John Chia博士は、1997年に慢性疲労症候群(CFS)と診断された息子のAndrew Chia氏との共同研究でCFSとエンテロウイルス(※消化管で増殖するウイルスの総称で、60数種類存在)との関連を示し、その知見を医学誌「Journal of Clinical Pathology」オンライン版に9月13日発表した。
米国では、推定100万人以上がCFSに罹患しているとわれる。特に40~60歳の女性に多い疾患で、原因不明の疲労感、睡眠障害、記憶力および集中力の障害、疼痛など、さまざまな衰弱性症状がみられ、多発性硬化症(MS)と同程度の障害を来すこともある。1980年代後半に初めてCFSの存在が認められたが、当初はその信憑(しんぴょう)性が疑われたこともあった。エンテロウイルスのほかにも、いくつかのウイルスがCFSに関与しているといわれているが、ウイルスの関与を裏付ける根拠を見つけるのは困難であった。
Chia氏はまず、患者から約3,000の血液検体を採取してウイルス遺伝子を見つけようとした。5~6年の歳月をかけ、検体の35%にエンテロウイルスが存在することを突き止めたものの、これは1人の患者から複数の検体を採取した結果であり、1人につき1検体とすると5%未満という結果にとどまった。このためChia氏は血液ではなく、組織内にウイルスを探すことに方向転換した。
過去の研究では、自殺したCFS患者の脳、筋肉、心臓からエンテロウイルスが発見されたが、生存する患者の脳や心臓の生検は事実上不可能。そこでChia氏は、エンテロウイルスの増殖の場である胃に着目した。長期間の消化器症状(CFS患者にはよくみられる)を訴えるCFS患者165人を対象に、胃生検および内視鏡検査を実施した結果、CFS患者の検体のうち82%でエンテロウイルスが陽性であったのに対して、対照群では20%であった。最初の感染は数年前(最長20年前)である患者が多かった。
皆が血液にばかり着目する中、Chia氏が消化管に着目したことがウイルスの発見につながったとある専門家は指摘する。エンテロウイルスはCFSの原因の一部にすぎないが、CFSが感染性疾患であるとする考えは世界を納得させるものだとChia氏はいう。息子のAndrew Chia氏は今では回復しているが、Chia氏は「息子がいなければこの研究はなかった」と述べている。
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まだ ? です。