米国で高まる海外医療ツアーの人気
米国で高まる海外医療ツアーの人気
米国では、医療費の高騰や無保険者人口の増大に伴い、高水準かつ低価格の医療を求めて、外国への「医療ツアー」に出かける人が急増しているという。2005年の統計によると、米国では人口の15%以上にあたる約4,500万人が保険に未加入。2006年に医療目的で海外旅行に出かけた人は少なく見積もっても15万人以上で、2007年には倍増すると予測されている。
専門の旅行代理店と提携する医療ツアー会社が米国全土に続々と誕生しており、一部の保険会社もこの取り組みに加わっている。例えばカリフォルニア州では、医療保険会社Health Netがラテンアメリカ系の被保険者を対象に、国境を越えてメキシコで医療を受けることのできるプログラムを実施している。また、別の保険会社では、外国からの患者を年間40万人受け入れているタイのバムルンラード国際病院(バンコク)で治療を受けることができる。
国境を越えた医療により節約できる医療費の額は大きい。例えば、米国内で心臓バイパス術を受けると13万ドル(約1,560万円)を要するところ、インドでは1万ドル(約120万円)、タイでは1万1,000ドル(約132万円)で済む。股関節置換術の費用は、米国では4万3,000ドル(約516万円)だが、タイあるいはシンガポールでは1万2,000ドル(約144万円)。子宮摘出術は、米国では2万ドル(約240万円)、インドでは3,000ドル(約36万円)。米国の医療施設などを評価・認定する機関JCAHO(米国医療施設評価合同委員会)の国際部門Joint Commission Internationalにより認定を受ける海外の病院も増えている。
もちろん、医療ツアーに全くリスクがないわけではない。「治療のついでにレジャーを」と考える人もいるが、順調な回復を促し合併症のリスクを抑えるためには、海辺で過ごすなどのレジャー行為は控えるべきだと専門家は指摘している。また、病院や医師を慎重に選ばないと治療水準の低い可能性があるほか、医療ツアーが疾患の感染拡大経路となる可能性も指摘されている。
代理店を通して病院を選ぶ場合でも、認定の有無を事前に確認し、手術の実施数や成功率についてもよく調べておくことが大切だという。専門家は、かかりつけの医師とよく話し合うことも勧めている。医療ツアーがここまで発展した現在では、医師にむげに否定されるようなことは少ないとのこと。
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