対他配慮的サラリーマン
*****
上司からほめられたと思ったら、今度は叱られます。気分屋なのでしょうか?上司への接し方がどうにも分かりません。どうしたらいいのでしょうか?
人事ジャーナリストが返信
分かります。その心理……。悩みますよね。なぜだろうと。ですが、会社員である以上、上司の気持ちを見抜いたうえで接する技術は、必ず身に付けておくべきです。
今回は、筆者が長年、職場で理不尽な対応を味わいながら、試行錯誤を経て編み出した「吉田スペシャル」を初公開します!
これを使えば、あなたは、上司の心をピンポイントでつかむことができるかもしれません。うまくいけば、あなたと上司は、職場における「強力な同盟関係」を結ぶことができます。では、見ていきましょう。
吉田スペシャルの大前提は、上司の心理を読むことです。業界や会社の規模を問わず、上司は管理職である以上、少なくとも次に挙げたような心理状態であることを知っておきましょう。
- 常に、自分を中心とした秩序(=ヒエラルキー)を職場で作りたい。
- 自らの上司(通常、2次考課者)に対しては、自分が部下をそつなくまとめて、一定の成果(業績)を出していることを知ってもらいたいと願っている。
- 部下をいかに効率的に使い、いかに高い成果(業績)を出していくかを考え、それを実行しなければいけないと思っている。
上記のポイントを踏まえたうえで、以下に挙げたエクセルデータを見てください。これこそ、「吉田スペシャル」です!筆者が会社員のころに作っていたものを、ほぼそのまま再現します。
データの最上段には、日付と職場で一緒に働く人の名前(ここでは、「直属上司」「2次考課者」「同じ部署の先輩」「後輩」)を書きます。仮に関係者が10人いるならば、すべての人を書きましょう。このデータは他人に見られるとまずいので、実際に書くときは、何らかの「暗号」を使うことをお勧めします。
次に、あなたが誰かに何かを指摘されたり、注意をされたりしたら、それを簡潔にまとめてこのデータの中に書き込みましょう。
例えば、4月25日に、上司から「(君は)取引先との交渉がうまい!」と言われたとしましょう。そうしたら、上の例のように上司に言われた言葉として、「交渉がうまい!」と書き込みます。ほかの人から何かを言われた時も、同じ要領で書き込みます。
このようなことをやっていると、「目の前の仕事はどうなるのか!」と疑問に思う人が出てくることでしょう。でも、心配ご無用! まずは、一度、お試しください。時間は5分で済みます。
次に、書き込んだ内容を、相手の心情別に色分けしましょう。
例えば、
- 怒り(注意、叱責、因縁など)は「赤色」
- 喜び(評価、ほめるなど)は「青色」
- よく分からない(叱っているのか、ほめているのか見えてこない)は「黄色」
というようにです。
このデータベースをある一定期間作ると、傾向が見えてきます。筆者の過去の職場は、以下に挙げた傾向があることを発見しました。
- 上司が強く自分に言ったこと(注意、叱責、ほめる、因縁など)は、数日、もしくは数週間以内に、職場の先輩がそれとほぼ同じようなことを口にする。少なくとも、上司に影響を受けたと思える言動をとる。
- 先輩が口にした数日、もしくは数週間以内に、後輩もそれに追随する(この傾向はわずかに見えてきます)。
つまり、筆者がいた職場は、部下への評価はそれがそのまま、職場の「世論」になりやすいということが分かりました。上司を敵にした場合、職場で孤立しやすい職場だったのです。
さらに、「赤」「青」「黄」の3色に注意しながら見ていくと、次のことが分かりました。
- 「青(喜)」が続くと、不思議と、突然、「赤(怒)」になることがある。
- 「赤(怒)」が続くと、不思議と、突然、「青(喜)」になることがある。
「青」は、上司が部下を誉める時の色ですが、これが長く続くと、職場の世論は「吉田はデキル!」という方向になっていきます。このとき、筆者は察知しました。上司は、この世論を警戒しているのだ、と。
吉田という部下が、自分よりもスポットライトを浴びることが許せなかったのでしょう。だからこそ、突然、皆の前で注意指導などをして、世論に水をさそうとするのです。少なくとも、筆者はそのように理解しました。
冒頭で、上司の心理は「常に、自分を中心とした秩序(=ヒエラルキー)を職場で作りたい」と説明しましたが、まさに、この心理が働いていたのです。上司の防衛本能とも言えるでしょう。
一方で、筆者が仕事で芳しくない成果しか出せずに叱られることが続くと、上司はその状態が長く続くことは好ましくないと判断し、唐突に筆者を誉めたりご機嫌をとったりします。
これが「赤」から「青」への突然変異です。
このように、上司が突然変異をするのは、冒頭で説明した上司の心理で言えば、「自分が部下をそつなくまとめて、一定の成果(業績)を出している」ことを願っているからでしょう。
上司は、自分を中心とした体制を職場で作りながらも、スランプに陥っている部下を何とかしようと考えていたのではないか、と筆者は分析します。
別の言い方をすると、上司は部下を「生かさず殺さず」操縦したいのではないか、と思います。
ここまで説明した内容は、8人の上司のもとで記録を取ったうえで書いているので、信ぴょう性は高いと自負しています。
さらに、注意深く見ていきましょう。
突然、「赤」になる時の、上司の話(=叱責や指導の内容)を見てみると、過去において、上司が突然、叱責や注意をした時とほぼ同じ内容だったりするのです。つまり、「赤」の内容は繰り返されるのです。
筆者の場合は、それが「交通費などの精算が遅れる」でした。実は、精算が遅れていない時でさえ、上司はその話を持ち出してきて、職場で口にしてきました。
あなたも、データを見ながら観察をすると、上司が、突然、「赤」になる時のパターンが次第に見えてくるはずです。
ここまで理解をすると、上司に対してのアプローチが分かってきます。
当たり前ですが、基本的には、上司からほめられるよう努力して「青」色がデータの中で増えるようにします。「青」色が少ないのは、問題外ですから。
そして、それが続くようであれば、今度は警戒をします!
「そろそろ上司は何か注意をしてくるはずだ」と察知して、過去に叱られたりした原因をデータから洗い出します。
それが、仮に「挨拶ができていない」としたら、先手を打つのです。上司に、意識して、「おはようございます!」「お疲れさまです!」と声をかけましょう。
「(君には)リーダーシップがない」というのがあれば、上司に聞こえるように、皆に「おい、そろそろ、あのプロジェクトの締め切りが近いだろう?頑張ろうぜ!」と声を出して言いましょう。先回りをして、「赤」にならないようにしていくのです。
ただし、注意点もあります!
上司は、あくまで自分中心の体制を作ろうとしているのですから、あなたが、あまりに完璧に対処すると、あなたがずっと「青」のままになってしまいます。
上司は、注意や叱責といった「赤」になるような言動をとることで、部下であるあなたとの立場(=職場での権力)の差を周囲に認めさせたいのです。
こうなった場合、あなたには、上司に愛される「かわいらしさ」が必要となってきます。
例えば、前述の「おい、そろそろ、あのプロジェクトの締め切りが近いだろう?頑張ろうぜ!」と、そつなくこなすのは返ってマイナスになる場合があります。
この場合、上司に以下のように話すとよいでしょう。
「〇〇課長、あのプロジェクトの締め切りが近いですよね!ご指示をいただければ、私から皆に言いますよ」。
あくまで、上司に、自分が中心であることを意識させるような状況を作り続けてください。 こうしていくと、データの中の「赤」は少なくなります。
その結果として、あなたは、上司から認められながら(=後ろ盾になってもらいながら)、職場での評価を高めていくことができます。
この時の、職場における世論は、相当強いものです。ほかの人からの指摘を見ても、その多くが「青」になっているはずです。上司も、周囲も抱き込むことに成功したと言えるでしょう。
いかがでしょうか?
「吉田スペシャル」は、始めは使い勝手が悪いと感じるかもしれませんが、何度も繰り返して使えば、きっと、あなたのお役に立てます。