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側坐核の脳深部刺激療法(DBS)

Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry.Oct.
側坐核の脳深部刺激療法(DBS:Deep Brain Stimulation)は重篤な不安障害と二次的な抑うつ状態の見られたアルコール依存症の寛解をもたらしたという報告。

DBSは、脳の深部に留置した電極からの電気刺激により、その部位の活動を抑えて、従来の外科治療で行われていた脳深部の破壊術と同様な効果を得るという治療法。

手術について

実際には図のように刺激電極を脳内の特定の場所(パーキンソン病では視床下核に、振戦では視床に、ジストニアでは淡蒼球に)に留置し、前胸部皮下に刺激発生装置を埋め込み、それらを皮下の連結ワイヤーでつないで脳内の刺激を行う。

この方法は電極をさしこむのだが、電子レンジの原理で、電磁波を利用する方法もできるだろうと思う。

昔、職員に話した。

将来は、空間内の一点をピンポイントで加熱できる電子レンジの精密版が各家庭に用意される。美容院の加熱器のような形をしているだろう。最近ちょっと調子悪いなと思ったとき、脳の中のどこの位置かを指定して、指定の時間加熱する。するとすっきりして、その日一日過ごせる。薬もいらなくなるかも。

まさかね、という反応だった。
でも、そうなってきたでしょう?

その時大切なのは、三次元空間の中の位置を正確に指定する方法である。
現在のコンピュータモニターは、平面用に作られているので、
三次元としての脳の内部の位置を指定して、
側坐核の部分をマウスでクリックする、なんていうのが実は難しい。

パーキンソン病で刺激を行う視床下核は、直径5mm程度というから、
電子レンジの精度ではまったくだめ。

放射線科では治療に際して、そのような空間指定をすでに日常的にテキパキやっているけれど、
慣れないと簡単ではない。
放射線科でも5mmはまだ無理。

位置決めは、ホログラムのようなものでバーチャルな立体を見せて、
実際に手で動かして位置を指定するような、そのようなものになるだろう。

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虫歯方式と骨折方式 自然治癒力

治療を二つに分けます。

(1)虫歯方式
虫歯になったところを削ってとってしまいます。
肺炎なら、細菌を殺します。
癌なら、手術で取り除きます。

(2)骨折方式
骨折したところをギブスで保護して、あとは自然治癒を待ちます。
風邪ひきのとき、抗生剤を使いません。免疫力を補助します。

心療内科・メンタルでの治療は、
当院としては、(2)の方式で、自然治癒力を引き出す方式です。
自然治癒力を妨げているものがあったら、それを取り除く。
自然治癒力が弱いようなら、それを補助する。
漢方薬とかビタミン剤とかはそんな感じだと納得していただけると思います。

また、睡眠導入剤も、薬で無理に眠らせるというものではありません。
多くは睡眠のきっかけを作るだけです。

抗うつ剤は、いろいろな働きがあるのですが、
結局、ゆっくり休んでいただいて、自然治癒力を引き出す、
そのような働きを主眼としてもいるのです。
セロトニンが増えればすべて解決するのなら、
話はもっと簡単なはずなのです。

虫歯のように原因を取り除けるなら、一番根本的で即効的な治療ですが、
精神的な事柄に関して、そのようなことができるはずもありません。

骨折したときに、「がんばって骨を早くくっつけよう」と思ったとして、
どうすればいいですか?
結局、骨がずれたりしないようにして、時間を待つしかありません。
そして、それで充分にいい治療なのです。

待つ時間はつらいものです。
ついつい、余計なことをしてしまいます。
そこを、ちょっとだけがまんして、待ってください。
骨折したとき、骨がくっつくのを待っているのだ、そうイメージして、待ってください。

そのうち治療が進歩すれば、
骨をくっつける瞬間接着剤ができるかもしれません。
うつになった脳神経細胞を瞬間的に治してしまう方法がみつかるかもしれません。

でも、それまでは、少なくとも、治療の妨げになることはしないで、
ゆっくり待つことです。
体の中で、一所懸命、治療が進んでいるのですから。
自然治癒力を引き出す、邪魔しない。そんな方針です。



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出生時に低体重→ストレスに弱い成人?

Stress response in older adults linked to birth weight
J Clin Endocrinol Metab 2007.
以下、「」内は引用部分。

「成人後期に心理社会的ストレスを受けている時のコルチゾール濃度と出生時体重との間にはU字型の逆相関が見られる。」

という研究である。

「胎児期の状況が心血管疾患や抑うつ状態などの成人に多く見られるいくつかの障害に対する感受性に大きな影響を及ぼすことが徐々に明らかになってきた」とNational Public Health Institute(フィンランド ヘルシンキ)のDr. Eero Kajantieらは言うのであるが、本当か?

背景にあるのは、
「高コルチゾール症と低コルチゾール症が双方とも胎児期にプログラムされるのではないか」という仮説。
それが、調査の結果では、
「成人後期に心理社会的ストレスを受けている時のコルチゾール濃度と出生時体重との間にはU字型の逆相関が見られる。」というのだから、的中である。
つまり、出生時体重が普通くらいなら、成人したとき一番ストレスに強くなり、低体重でも高体重でも、ストレスに弱くなるということ。

出生時体重と、心理社会的ストレス因子(TSST:試験者用社会的ストレス検査)と唾液中のコルチゾール濃度、血漿コルチゾール、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の濃度が測定された。
体重と血漿ACTHとの間には一次関係が認められたのに対して、出生時体重と唾液中および血漿中のコルチゾールの間には二次関係が認められた。

視床下部下垂体副腎系(HPAA)はストレスに対する抵抗システムのひとつであると考えられている。胎児期に視床下部下垂体副腎系(HPAA)の形成に不全があると、成人後のコルチゾール値が低くなり、つまりストレスに弱く、結果として、外傷後ストレス、線維筋痛、慢性疲労症候群などの障害になりやすいと考えているようである。
成人後期としていて、つまり、中年になってからと論じているようで、なぜなのかはっきりしないが、若い頃は、性ホルモンが充分にあることが、視床下部下垂体副腎系(HPAA)の不全を補っているのかもしない。

さて、こうしてみてくると、まあ、ありそうな話ではある。ただ、おそらく、低体重は、胎児期における全体的な発育不全を予想させる指標であり、低体重であれば、身体の各システムに不全はあるかもしれないとの可能性を想定していいだろう。その中のひとつが、視床下部下垂体副腎系(HPAA)不全であり、低体重と視床下部下垂体副腎系(HPAA)不全の特異的な因果関係を示すものではないだろう。

一部は、何か別の原因があり、低体重と視床下部下垂体副腎系(HPAA)不全が両方結果であるということになるだろう。
また一部は、視床下部下垂体副腎系(HPAA)不全が原因となって、低体重が結果となった場合もあるだろう。

出生児高体重の場合も、中年期になって、視床下部下垂体副腎系(HPAA)不全がありそうだという結果も、興味深い。これもいくつも解釈できると思う。
先天性に形成不全があるか、母胎の側に、視床下部下垂体副腎系(HPAA)不全や血糖システムの不全があるか、あるいは胎児期に何か一時的なストレス要因があったか、など。

視床下部下垂体副腎系(HPAA)不全が胎児期に決定され、その後訂正されない可能性があるというのは、困ったことだが、このシステムを補助することなど、治療的な関与はできるかもしれない。

昔は、うつ病の診断に、視床下部下垂体副腎系(HPAA)の検査をする場合があると、ハリソン内科学に記載があったものだ。



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仕事のストレス(Job strain)と急性冠動脈心疾患再発イベントのリスク

まず記事の紹介。
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仕事のストレス(Job strain)と急性冠動脈心疾患再発イベントのリスク

画像

仕事のストレス(job strain)が、心筋梗塞の2次予防にも重要であることを示す前向き研究のエビデンスが発表された。 これまでにも、仕事のストレスは、冠動脈心疾患の初回発症のリスクを増加させることはすでに報告されているが、すでに一度心筋梗塞を発症した患者の再発のリスクを増加させるかどうかについてのエビデンスはなかった。

本研究は、急性心筋梗塞を初回発症後、仕事に復帰した972名(年齢35歳~59歳)において、その予後を1996年2月10日より2005年6月22日まで追跡した前向き研究である。 追跡研究開始前(平均的には仕事へ復帰後6週目)、および開始後2年目と6年目に聞き取り調査を実施し、仕事のストレスは、精神的職務要求度と自由裁量度により、次の4区分、すなわち、high strain(高要求度、低自由裁量度)、active (高要求度、高自由裁量度)、passive (低要求度、低自由裁量度)、およびlow strain(低要求度、高自由裁量度)、に分け評価した。 複合評価エンドポイント(致死的冠動脈心疾患(CHD)、非致死的心筋梗塞、および不安定狭心症)は206例に発生し、以下の結果が得られた。

1)仕事のストレスは、追跡調査開始から2.2年目以降の後期調査期間のCHD再発と関連している (ハザード比:2.20; 95%信頼区間:1.32-3.66)。
2)慢性的な仕事のストレスに曝されている患者と曝されていない患者のイベント発生率は100 人・年あたりそれぞれ6.18と2.18であった。 
3)通常の心血管リスク因子を含む26の関連因子で補正しても、慢性的な仕事のストレスはCHD再発の独立予測因子として残った(ハザード比:2.00; 95%信頼区間:1.08~3.72)。

本研究で使用されたKarasekのJob Strain Modelは、古くから仕事のストレスの評価指標として使用されている。本モデルでは、仕事のストレス度を、要求度と裁量権の2つの機軸で評価している。これまでの研究では、要求度が高く、裁量権が少ないHigh strain群で、冠動脈疾患の初回発症が増加していることが示されている。今回の研究の新規性は、一度、心筋梗塞を発症した患者の再発にも、仕事のストレスが影響を与えることを明確に示した点である。

また、仕事への復帰2.2年以降の再発に仕事のストレスが、心血管イベント再発のリスクとなっている。本研究対象者では、2次予防薬として、抗血小板療法を90%以上、β遮断薬を70%以上、スタチンを50%以上に投与されている。このような状況においても、さらに、仕事のストレスが2倍程度も再発リスクを増加させていることは、注目に値する。

今後、心筋梗塞後の2次予防には、抗血小板療法、β遮断薬、スタチン、左室機能低下例にはレニンアンジオテンシン系抑制薬を投与し、仕事のストレスにも気をつけるように指導するべきであろう。
(自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣)
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Job strain and risk of acute recurrent coronary heart disease events.

Unité de Recherché en Santé des Populations, Université Laval, Québec, Canada.

CONTEXT: There is evidence that job strain increases the risk of a first coronary heart disease (CHD) event. However, little is known about its association with the risk of recurrent CHD events after a first myocardial infarction (MI). OBJECTIVE: To determine whether job strain increases the risk of recurrent CHD events. DESIGN, SETTING, AND PATIENTS: Prospective cohort study of 972 men and women aged 35 to 59 years who returned to work after a first MI and were then followed up between February 10, 1996, and June 22, 2005. Patients were interviewed at baseline (on average, 6 weeks after their return to work), then after 2 and 6 years subsequently. Job strain, a combination of high psychological demands and low decision latitude, was evaluated in 4 quadrants: high strain (high demands and low latitude), active (high demands and high latitude), passive (low demands and low latitude), and low strain. A chronic job strain variable was constructed based on the first 2 interviews, and patients were divided into those exposed to high strain at both interviews and those unexposed to high strain at 1 or both interviews. The survival analyses were presented separately for 2 periods: before 2.2 years and at 2.2 years and beyond. MAIN OUTCOME MEASURE: The outcome was a composite of fatal CHD, nonfatal MI, and unstable angina. RESULTS: The outcome was documented in 206 patients. In the unadjusted analysis, chronic job strain was associated with recurrent CHD in the second period after 2.2 years of follow-up (hazard ratio [HR], 2.20; 95% CI, 1.32-3.66; respective event rates for patients exposed and unexposed to chronic job strain, 6.18 and 2.81 per 100 person-years). Chronic job strain remained an independent predictor of recurrent CHD in a multivariate model adjusted for 26 potentially confounding factors (HR, 2.00; 95% CI, 1.08-3.72). CONCLUSION: Chronic job strain after a first MI was associated with an increased risk of recurrent CHD.

PMID: 17925517 [PubMed - indexed for MEDLINE]



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仕事のストレスを job strain と表現している。
仕事のストレスは、精神的職務要求度と自由裁量度により、次の4区分、すなわち、
high strain(高要求度、低自由裁量度)、
active (高要求度、高自由裁量度)、
passive (低要求度、低自由裁量度)、
low strain(低要求度、高自由裁量度)、
以上の4群に分け評価した。
これがKarasekのJob Strain Modelで、精神科関係ではあまり使わない。
むしろ、身体疾患とストレスの関連を論じるときに用いられるようである。
high strain(高要求度、低自由裁量度)が一番よくないという、常識的な結論である。

うつ病からの復帰に際しては、
高自由裁量度では負担なので、むしろ、低自由裁量度、が望ましい。
そして、低要求度が望ましく、分類の中では、passive から開始するのがよい。

誤解を避けるために、
4群の下に、rehabilitation(軽作業、保護的低自由裁量度)を加えたらよいだろう。

high strain(高要求度、低自由裁量度)
active (高要求度、高自由裁量度)
passive (低要求度、低自由裁量度)
low strain(低要求度、高自由裁量度)
rehabilitation(軽作業、保護的低自由裁量度)

と分類して、仕事を準備しておいて、
下から順次、ステップアップしていけばよいと思う。



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企業のメンタルケアをいかにサポートするか EAPと医療 新橋心療内科型

企業のメンタルケアについて感心が高まっている。
うつ病対策を推進し、自殺を予防し、
企業にとって大切な熟練職員を大切に雇用しようという趣旨で、
法律が変わったことも関係している。

企業の総務・人事部門では
メンタルケアの仕組みを作りたいものの、
やはり専門的な仕事なので、外部業者の支援が必要となる。

その受け皿であるEAP会社は、医療機関と連携を強めて、
効果の高いEAP活動を展開しつつある。新橋心療内科はこのタイプ。……(1)
それに連動して、精神科医療の世界でも、
新しい局面が開けつつあると感じる。

また、精神科医療の側からも、EAP的なアプローチを始めている。
こちらは、EAP会社と医療機関がくっつくというものではなく、
医療機関が拡大する形で、EAP+医療 をセットで提供しようとしている。……(2)

つまり、(1)は企業の人事が拡大して、外部EAP会社となり、それが医院と結合するタイプ。
(2)は医院のデイケア部門などが拡大する形でEAP機能を持つようになり、企業の人事と結合するタイプ。

今のところ、こうした活動をしている医院は、外来とデイケアを運営しているところが多く、うつ専門病棟の運営まで一貫しているところはない。紹介しあう形ならばすでに形は出来上がっている。
会社員が利用するには都心部のEAP会社と医院が必要で、一方、入院病棟は、どちらかといえば、郊外に立地しているという事情がある。うつ病専門病棟はあるが、まだ採算ラインには届いていない。
また、医療機関から見ると、EAP活動は、保険診療以外の活動になるので、別組織にしつつ、活動は一体化しなければならない。その点で工夫が必要である。

二つの流れはいずれ収斂すると思うが、
当面は、特色生かしつつ、それぞれで活動すると思う。

新橋心療内科は、となりが第一ホテルなので、ホテルに宿泊しながらの、
うつの療養コースを考えている。
精神病院に入院するよりはいいし、
ホテルみたいな病院ですといって、田舎の病院に高いお金を払うくらいなら、
本当の都心のホテルに泊まって、ゆっくり療養してもらえばよいだろう。

ニューオータニとか帝国ホテルにはすでに他科の類似システムがあるのだが、
第一ホテルはまだこれからのようで、話を進めようと思っている。

地方の人も、旅行に行ってきますといって、しばらく銀座で休養できる。

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うつ病はどれだけ健康レベルを低下させるか

このような研究が、国家予算をどれだけうつ病研究に回せるか、根拠になるので、重要。
では、内容は?
以下、日経メディカル記事とLancet記事を比較して、以下に論評。

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うつ病はどれだけ健康レベルを低下させるか

WHOの大規模調査結果より

2007. 9. 27

 うつ病は他の身体疾患に比べても健康レベルの低下に大きな影響をもたらしていることが、世界保健機関WHO)の大規模調査で明らかになった。疾病負担を減らすためにも、うつ病対策が公衆衛生上取り組むべき課題の中で優先順位が高いことを示す結果だ。WHOのSaba Moussavi氏らの報告で、詳細はLancet誌2007年9月8日号に掲載された。

 うつ病の有病率は2~15%と報告されている。WHOの推計では、うつ病は2000年には総DALYs (障害調整余命年数)の4.4%を占め、疾病負担の第4位になっていた。非致死的な疾病負担においては、うつ病が占める割合はさらに大きく、総YLDs(障害共存年数)の約12%だった。さらに2020年までに、うつ病は疾病負担の第2位になると予想されている。
 
 著者らは、うつ病が単独で、また併存疾患となっている場合の健康全体に対する影響を明らかにするため、WHO世界保健調査(WHS)のデータを分析した。WHSは18歳以上の成人を対象に、健康状態、健康関連アウトカム、それらの決定要因について面接調査したものだ。対象は世界のすべての地域を網羅する60カ国の24万5404人。

 分析の結果、うつ病と、身体的な慢性疾患(狭心症関節炎喘息糖尿病)の有病率は、単独では糖尿病が最も低く2.0%、うつ病が3.2%。喘息3.3%、関節炎4.1%、狭心症が4.5%だった。慢性身体疾患とうつ病が併存する患者を調べたところ、喘息患者におけるうつ病併存率が最も高く18.1%だった。そのほか糖尿病患者の9.3%、関節炎患者の10.7%、狭心症患者の15.0%がうつ病だった。

 なお、対象者の7.1%は2つ以上の慢性身体疾患を抱えており、うち23%がうつ病もあった。このように、身体疾患がある患者のうつ病有病率は、身体疾患がない患者(うつ病単独は3.2%)より有意に高かった(P<0.0001)。

 質問に対する回答に基づいて0~100ポイントで示した健康スコアの平均は、疾患を持たない人々が90.6ポイントであるのに対し、喘息のみ80.3、狭心症のみ79.6、関節炎のみ79.3、糖尿病のみ78.9、うつ病のみ72.9となった。うつ病と関節炎が併存する患者では67.1、うつ病と狭心症では65.8、うつ病と喘息で65.4、うつ病と糖尿病は58.5。慢性身体疾患が2つ以上の場合には71.8、それらにうつ病が加わると56.1で、うつ病併存は健康状態を有意に低下させていた(P<0.0001)。この結果は、年齢、性別、社会人口学的特性、その他で調整しても維持された。

 回帰モデルを用いて、全体的な健康と個々の独立変数(病気、社会人口学的特性、経済状態、結婚状態など)の関係を調べた。健康状態が低いことと関係していたのは、女性、高齢、低学歴、低所得、失業など。病気の影響は、人口統計学特性に比べ大きく、特にうつ病は、単独でも併存でも健康状態の低下と強く関係していた(P<0.0001)。

 相関係数(このモデルでは相関係数が低いほど健康状態は低い)は、うつ病のみが-13.89、狭心症のみが-6.68、関節炎のみ-5.92、喘息のみ-6.54、糖尿病のみ-3.53。うつ病と狭心症が併存では-20.47、うつ病と関節炎で-16.77、うつ病と喘息-19.44、うつ病と糖尿病-23.43。身体疾患は複数あるがうつ病がない場合には-11.97で、そこにうつ病が併存すると-24.38となった。このように、うつ病の健康低下への影響は慢性身体疾患が及ぼす影響を上回った。

 プライマリケア医も、慢性疾患患者のうつ病有病率は高いこと、併存により健康状態が大きく低下することを念頭に置く必要がある。

 原題は「Depression worsens health more than angina, arthritis, asthma, and diabetes」、概要はこちらで閲覧できる。

大西 淳子=医学ジャーナリスト




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The Lancet
 2007; 370:851-858
DOI:10.1016/S0140-6736(07)61415-9

Articles

Depression, chronic diseases, and decrements in health: results from the World Health Surveys

Saba Moussavi MPH a,   Dr Somnath Chatterji MD email address a Corresponding Author Information,   Emese Verdes PhD a,   Ajay Tandon PhD b,   Vikram Patel PhD c   and   Bedirhan Ustun MD a

Full list of collaborators at end of the paper

Summary

Background

Depression is an important public-health problem, and one of the leading causes of disease burden worldwide. Depression is often comorbid with other chronic diseases and can worsen their associated health outcomes. Few studies have explored the effect of depression, alone or as a comorbidity, on overall health status.

Methods

The WHO World Health Survey (WHS) studied adults aged 18 years and older to obtain data for health, health-related outcomes, and their determinants. Prevalence of depression in respondents based on ICD-10 criteria was estimated. Prevalence values for four chronic physical diseases—angina, arthritis, asthma, and diabetes—were also estimated using algorithms derived via a Diagnostic Item Probability Study. Mean health scores were constructed using factor analysis and compared across different disease states and demographic variables. The relation of these disease states to mean health scores was determined through regression modelling.

Findings

Observations were available for 245 404 participants from 60 countries in all regions of the world. Overall, 1-year prevalence for ICD-10 depressive episode alone was 3·2% (95% CI 3·0–3·5); for angina 4·5% (4·3–4·8); for arthritis 4·1% (3·8–4·3); for asthma 3·3% (2·9–3·6); and for diabetes 2·0% (1·8–2·2). An average of between 9·3% and 23·0% of participants with one or more chronic physical disease had comorbid depression. This result was significantly higher than the likelihood of having depression in the absence of a chronic physical disease (p<0·0001). After adjustment for socioeconomic factors and health conditions, depression had the largest effect on worsening mean health scores compared with the other chronic conditions. Consistently across countries and different demographic characteristics, respondents with depression comorbid with one or more chronic diseases had the worst health scores of all the disease states.

Interpretation

Depression produces the greatest decrement in health compared with the chronic diseases angina, arthritis, asthma, and diabetes. The comorbid state of depression incrementally worsens health compared with depression alone, with any of the chronic diseases alone, and with any combination of chronic diseases without depression. These results indicate the urgency of addressing depression as a public-health priority to reduce disease burden and disability, and to improve the overall health of populations.

Affiliations

a. Department of Measurement and Health Information Systems, World Health Organization, Geneva, Switzerland
b. Economics and Research Department, Asian Development Bank, Manila, Philippines
c. London School of Hygiene and Tropical Medicine, London, UK

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2020年までに、うつ病は疾病負担の第2位になると予想されている、という点は、最近あちらこちらで強調されていて、予算を振り分ける動機にもなっているようだ。

疾病負担というのは、Burden of Disease のこと。世界疾病負担(Global Burden of Disease:GBD)研究はWHOの得意芸である。
主に、疾病がどれだけ経済に影響しているかという観点で見たもの。病気になってどれだけ損をするか、予防すればどれだけ得をするということだ。

うつ病が経済に与える影響は実は大きい。
働き盛り、社会の中枢を支える人材、熟練労働者、組織のリーダー、几帳面、責任感強い、人望がある、組織・集団を大切にする、こんな人たちがうつ病になりやすいのだから、当然、社会の損失は大きいわけだ。

経済的損失だけではいけないだろうということで、最近では、QOLの観点からも数字が提出されている。各人の生活の質を合計したものが、社会の質のようなものになるだろうというのだ。

その観点からも、うつ病は大きな問題になる。うつ病であるということにより、QOLが低下するからだ。

統計で計算しやすいのは、寿命とか、そんなものだったけれど、疾病負担とか、生活の質とか、そうした観点が大切になってくる。

論文の中では、
decrements in health
associated health outcomes
overall health status
health, health-related outcomes
Mean health scores
the overall health of populations
などという言葉が並び、

訳出文の中では、
健康レベルの低下
健康状態、健康関連アウトカム
質問に対する回答に基づいて0~100ポイントで示した健康スコア
などが並んでいる。

Mean health scores were constructed using factor analysis 
とのことで、この内容が健康レベルということらしい。でも、内容についてはよく分からない。

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このあたりは重要で、最近、抗うつ剤の効果を比較検討する研究は、
(1)どんな患者群に対して、つまり、診断をどのように細分化するか、が問題。
(2)改善度を測定するとして、何を測定するのか、が問題。
ということになっている。

改善度については、
普通はHAM-Dなどを用いるが、もっと他の試みもあり、
主観的評価と客観的評価のどちらが重要なのか、どう組み合わせるのか、
治療脱落度を調べなければ、意味がないのではないかとか、
うつの症状を比較するだけではなく、QOL評価の方がいいだろうとか、
評価尺度の問題がいろいろと議論されている。
そのような流れでいうと、健康レベルとは何のことなのかということになるだろう。
健康スコアの定義によって、うつ病の重要度も変わってしまう。


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母親の喫煙は子供のADHD発症に影響する?

以下、前半は日経メディカルからの引用です。

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母親の喫煙は子供のADHD発症に影響する
安原こどもクリニック(大阪府寝屋川市)院長 

 注意欠陥/多動性障害(ADHD)の子供を持つ母親は、喫煙率が高い傾向にあることが明らかになった。母親の喫煙と児のADHDの関連性について、海外では報告はあったが、わが国では初めて。調査を行った安原こどもクリニック(大阪府寝屋川市)院長の安原昭博氏に調査の結果と経緯について聞いた。

安原こどもクリニックの安原昭博氏
 私は2006年1月に、ADHD、自閉症、広汎性発達障害をはじめとする小児神経科の専門的なクリニックを開業し、診察に当たっています。勤務医時代も含めると、これまでに600人以上のADHDの子供たちを診察してきました。

 ADHDの原因については、これまでに遺伝、妊娠中の飲酒、喫煙、鉛の摂取などが指摘されています。中でも喫煙については、私自身、ADHDの児の母親や父親に喫煙者が多いという印象を持っていましたので、以前から注目していました。

 そんなとき、縁あって子供の禁煙外来(卒煙外来)についての勉強会に参加し、当時、静岡県立こども病院にいらした加治正行先生(現在は静岡市保健福祉子ども局保健衛生部参与)とお話をする機会がありました。そのとき先生に「海外には、妊娠中の喫煙と子供のADHD発症に関する論文があるのに、日本には一つもない。一度調査をしてみてほしい」と要請され、調査を行うことになったのです。

妊娠判明後の禁煙では間に合わない
 昨年12月に少数で予備調査を行ったのですが、その時の喫煙率は66%と非常に高い結果になりました。その後、改めて今年1~3月に当院に来院したADHDの児を持つ母親167人(平均年齢39.1歳)を対象に調査したところ、喫煙率は46.7%でした。中でも、出産時の年齢が20~24歳の母親だけで見ると、喫煙率は87.5%とさらに高率でした。2002年に実施された第1回21世紀出生児縦断調査(厚生労働省)によると、一般の母親の喫煙率は17.4%で、喫煙率が高いとされる若年齢の母親でも34.7%と報告されていますから、ADHD児を持つ母親の喫煙率の高さは際立っています。

 一方、妊娠時点で見ると、ADHDの児を持つ母親167人のうち58人(34.7%)が喫煙をしていましたが、そのうち約半数に当たる26人は、妊娠が分かった時点(平均妊娠2.5カ月)で禁煙していたことも分かりました。また、父親についての喫煙率も調べましたが、ADHDの児を持つ父親では70.1%、厚労省の調査で一般の父親は63.2%で、大きな差はありませんでした。

 今回は、自施設での少数の調査ですし、厳密にADHDの発症リスクを算出したわけではありませんが、少なくとも、ADHD児の母親の喫煙率が高いことは明らかになったと考えています。ぜひ日本でも全国的な調査を行って、母親の喫煙(特に妊娠中の喫煙)とADHD児出生の関連性を調べ、母親が喫煙することのリスクを把握するべきだと思います。

 また今回の調査では、妊娠後の禁煙は平均2.5カ月後に行われていましたが、大脳は妊娠3カ月くらいまでに形成されますから、妊娠初期の喫煙とADHDの発症に因果関係があるとすれば、このタイミングでの禁煙では間に合いません。「妊娠したらタバコをやめる」ではなく、「妊娠適齢期の女性はタバコは吸わない」が、あるべき姿ということになります。

 これは私の印象ですが、最近ADHDの子供が増えているように思います。その原因の一端は、若年女性の喫煙率の上昇にある、というのが私の考えです。そして、日本では少年少女が簡単にタバコを買えてしまったり、いまだに国がタバコの宣伝を許しているといったことが、大きな問題だと考えています。

 今回のような調査は、既にADHD児を持つ母親にとっては酷かもしれません。もちろん、そうした母親を責めることが目的ではありませんが、ADHDを発症した子供の治療法はいまだ確立されていないのが現状です。だからこそ、調査を行って喫煙とADHD児発生の関係を明らかにし、そうしたデータに基づいて、若年女性に強く禁煙を勧めなくてはならないと私は思うのです。

*****引用終わり
たしかに、私の印象でも、ADHDの子供は増えているように思います。
母親の喫煙と関係があるかといわれれば、統計的な実証はできないものの、何となく、そのような傾向があるのかもしれないとは思います。
ですから、上の文章は、そういった漠然とした印象を肯定してくれているわけです。

しかし、科学的論証としては、
「母親の喫煙は子供のADHD発症に影響する」ではなく、
「母親の喫煙と子供のADHD発症は、相関がある」という命題になると思います。

「母親の喫煙は子供のADHD発症に影響する」という命題を主張するならば、具体的なメカニズムの解明が必要です。
たとえばの話ですが、
「母親がテレビを一日3時間以上見ることが、本当の原因で、
母親が喫煙することもその結果であり、
子供のADHD発症もその結果である」というメカニズムを想定しても、
母親の喫煙と子供のADHD発症についてデータをとれば、同じ結果が出るのです。

それができない段階では、メカニズムを抜きにして、
「母親の喫煙と子供のADHD発症は、相関がある」という命題を検証する作業になります。
だとすれば、喫煙は別の原因の結果かもしれないのです。

極端に言えば、
「母親の喫煙は子供のADHD発症に影響する」という命題を逆転させて、
「子供のADHD発症は母親の喫煙に影響する」という命題を立ててもいいはずです。
メカニズムとしては、
ADHDである子供は、胎内で特別な物質を分泌し、
その結果、母親はタバコを吸いたくなる、と考えてもいいわけです。

実際は、それは極端すぎるというもので、
タバコの成分のなかで、たとえばニコチンは、身体の細血管を収縮させるので、子宮へ血液を送る血管も、また、胎児の血管も、収縮させて、……という因果関係は当然推定されるわけで、まあ、胎児にいろいろな影響が出そうだということは漠然と推定できるところではあります。

しかし、実際の科学的思考としては留保が必要だということになります。



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タフな人のセルフアサーション

タフな人の一面は、自分を主張できることである。

アメリカ流のセルフ・アサーションはたとえばこんな感じ。
出典不明。

堂々と自己主張するための15の実践法
1. お伺いを立てる代わりに、言い渡せ
2. 相手の目をまっすぐに見て話せ
3. 背すじをシャキッと伸ばし、どっしりとした声で
4. 「あのー」「えー」はもう口にするな
5. 「私は便利屋ではない」と自分に言い聞かせよ
6. タバコの煙がいやならいやとはっきり言って
7. ドキドキ、イライラするならむしろ怒れ
8. 「あなたの上司と話がしたい」と言ってみよ
9. 人生の勝ち負けをときには"ゲーム"のような感覚で見よ
10. 「できると思います」を「できます」に言い換えよ
11. 「生身の自分」をさらけ出すのをためらうな
12. 不当な請求は断固ことわれ
13. 納品の遅いセールスマンは相手にするな
14. 欠陥商品、不快なサービスには一円も払うな
15. むやみに"他人"を自分の上にまつり上げることはやめよ

他人との比較に泣き寝入りしない実践テクニック
1. 「他人と私は何の関係もない」と告げる
2. 「あなたは私が他人のようになるべきだと思っているのか」と問いただす
3. 「無視」という返事をする
4. こちらも"比較のお返し"をする
5. 自分は相手の手口をお見通しであるとアピールする
6. いつまでもズルズルつづけず話を打ち切る
7. 「この人と会って何の得があるか」と自問する
8. とりあえず、その場は相手の顔を立ててやる
9. 「太陽と北風」の心理を活用する
10. 微笑みを忘れず、驚いて注意を促す
11. 自分がソンをしないよう、"演技"する
12. 自分も"他人との比較"グセがついていないかをチェックする
13. 何か「お手本」にすがって生きるのはやめる
14. 肩の力を抜いて、気をラクにする

自分を犠牲にしない「スタンス」の取りかた
1. "どうでもいいこと"は大目に見る
2. 不快なことにいちいち過剰反応しない
3. 「違い」に目くじらを立てるのではなく、"共通項"を大切にする
4. 不毛な論争ほどエネルギーを浪費する
5. "上手なウソ"が人間の幅を広げる

"精神的殺人"を許さない戦術
1. いつもみんなに理解される必要はない
2. "雑音"にはラジオのスイッチを切る要領で
3. 相手に「相手の行動」を説明させてみる

*****
いかがでしょうか?

私の感覚では、やはり、ちょっと違う。

仕事が本当にできて、静かに黙々と、本業に励み、回りに評価される。
それが本道だ。
それ以外は考えなくても、自動的にうまく行くように思う。

こんな感じのリストをたまに見直して、自己チェックしてみるのは、とてもいいと思う。
でも、日頃研究すべきは、やはり、仕事の中身そのものだ。



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メンタルタフネス

メンタルがタフであるとはどういう事で、
どうすればタフになれるのか、
そんな本を読んだり、
タフそうな人に聞いたり、
タフでなさそうな人に聞いたり、
タフそうな人の近くで仕事している人、
タフそうな人のパートナーなど、
いろいろ聞いている。

簡単な結論は今のところ、ない。

しかし
「タフな人は、実力があって、自信がある人だ」
という、
当たり前のことが浮かび上がってくる。
びっくりするくらい当たり前のことで、
こんなことを書いている自分にびっくりしている。

実力のない人はタフにはなれない。
から元気というものだ。
タフになる工夫を考えるよりは、
仕事の実力、人間関係の実力をつけた方がいい。

自信があって、かつ、謙虚という人が一番、いい。
本当に自信があれば、
から威張りする必要もなくなる。

実力があれば、成功体験がついてくる。
それは人間にゆとりを与える。

実力があれば、他人からの肯定メッセージを受け取る。
そのことが自己肯定感につながる。

何といっても、仕事の実力をつけること。
ポイントは、そういうことのようだ。

当たり前のことができなくて苦しいから、
いろんな変なことが言われているだけだ。
真実はありきたりだ。

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召使いに英雄なし

うちにも秘書がいて、
いくつかの会社で秘書の経験もあり、顔が広い。

メンタルがタフであることの中心点はどのあたりか、興味があるので、
秘書さんの知り合いを招いて、
社長さん会長さんやその周辺の人たちの性格や行動について、
教えてもらったりする。

秘書仲間でそれとなく分かってしまう話はあるらしく、
あの話は実はこういう事だろうと解説してもらったりもする。
無論、秘密厳守だけれど、結構面白い。

どこも似たようなものだと思うと同時に、
召使いに英雄なしとはよくいったものだと思う。
秘書さんが召使いという事ではない、
英雄でも、至近距離で見ていれば、いろいろと問題があるということだ。
秘書さんが何を見ているか、気をつけることです、社長さん。

それによれば、結局、どの人もあまりタフではないらしい。
みんなと同じようにくよくよしているようだ。

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頻尿の薬

最近は頻尿の薬に進歩があり、アステラスやファイザー、小野、杏林から新薬が発売されている。
同時に啓蒙もさかんである。

年をとれば夜間尿も当たり前になる。
その場合に、皆さんなら、泌尿器科に行くだろうか、心療内科に行くだろうか。

泌尿器科に行けば、多分、過活動性膀胱ですと言われて、
デシリトールトかベシケアその他、またはバップフォー、
あるいは、前立腺肥大のことを考えて、αブロッカー、
たとえばハルナール、アビショット、フリバスがでるだろう。
年をとれば肥大しているわけですから。

一方、心療内科・精神科に行けば、まず、
睡眠導入剤を使ってみてくださいといわれるかもしれない。

これは、眠れないからトイレに行くのだと診断されていることになる。

泌尿器科なら、トイレに行きたくなるから眠れないのだと診断されている。

どっちがいいのだろう、正解なのだろう。

両方試してみればいいですけれどね。

長期的副作用などについては、
睡眠系の薬のほうが、歴史は古いので、確認されている有利さがある。

泌尿器関係の薬は、精神的な方面に効く薬ではないという安心感があるだろう。精神関係の薬に関しての心理的抵抗感は根強いものがある。なくなって欲しいが。

どちらを使うか、微妙なところです。

精神に効く薬は危ないという思いこみを治す精神系薬剤もあるのですが、原理的に、使用は難しいわけです。

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整形外科と心療内科

JA長野厚生連安芸総合病院整形外科の谷川浩隆先生によれば、

*****
患者の反応が、精神科と整形外科の場合で違う。たとえば、

腰痛の原因が心理的なものであると推察された症例について、心理学的な問診を行った場合。

精神科の診察室の時は、問診がきっかけで痛みの心理的原因が明らかになり治療がスムーズになった。

整形外科の診察室の時は、「整形外科の医師になぜ家族のことを聞かれるのか」と拒否的な反応が返ってきた

整形外科を受診する患者には、

(1)心理的原因への気づきができない(ことさら気づきを拒絶している)
(2)心理的原因についての訴えには自ら触れない
(3)心理的な原因を探るための問診に対して、拒否的である(時には医師に対する不信感を露にする)
(4)身体的治療への期待感が非常に強い
(5)私的生活への言及は痛みに対するもののみ
(6)医師に対する人間的なかかわりへの期待度は低い(痛みだけを治してくれればいいという姿勢)

などの特徴がある。

*****
なるほどそうですね。心理的なことが原因で腰痛が起こっているとなると、自分は精神的に弱い人間だと認めることになり、それは受け入れられないということのようです。

心療内科を受診するということ自体、そのレベルはすでにクリアしたということなので、むしろ、その先の話ができて、治療も進むわけです。

本当は心理的原因があるのに、「腰が痛いだけなんだから、薬とか理学療法でなんとかしてください」と言う患者さんの場合、難しいものがあります。だって原因療法を拒絶しているわけですから。



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睡眠薬服用時の睡眠時異常行動

睡眠導入剤を使っている人が、
driving, making phone calls, and preparing and eating food (while asleep).
をすることがあるという話について。
最近分かってきたことではなく、もうずっと昔から観察され、言われていること。
朝、テーブルの上に、夜中に何か食べたあとの皿を見つけて、驚いたりする。

お医者さんは驚かないし、対策もいろいろあるので、相談してください。

*****
FDA Requests Label Change for All Sleep Disorder Drug Products

The U.S. Food and Drug Administration (FDA) has requested that all manufacturers of sedative-hypnotic drug products, a class of drugs used to induce and/or maintain sleep, strengthen their product labeling to include stronger language concerning potential risks. These risks include severe allergic reactions and complex sleep-related behaviors, which may include sleep-driving. Sleep driving is defined as driving while not fully awake after ingestion of a sedative-hypnotic product, with no memory of the event.

"There are a number of prescription sleep aids available that are well-tolerated and effective for many people," said Steven Galson, M.D., MPH, director of FDA’s Center for Drug Evaluation and Research. "However, after reviewing the available post-marketing adverse event information for these products, FDA concluded that labeling changes are necessary to inform health care providers and consumers about risks."

In December 2006, FDA sent letters to manufacturers of products approved for the treatment of sleep disorders requesting that the whole class of drugs revise product labeling to include warnings about the following potential adverse events:

  • Anaphylaxis (severe allergic reaction) and angioedema (severe facial swelling), which can occur as early as the first time the product is taken.
  • Complex sleep-related behaviors which may include sleep-driving, making phone calls, and preparing and eating food (while asleep).

FDA has been working with the product manufacturers over the past three months to update labeling, notify health care providers and inform consumers of these risks.

Along with the labeling revisions, FDA has requested that each product manufacturer send letters to health care providers to notify them about the new warnings. Manufacturers will begin sending these letters to providers starting this week.

In addition, FDA has requested that manufacturers of sedative-hypnotic products develop Patient Medication Guides for the products to inform consumers about risks and advise them of potential precautions that can be taken. Patient Medication Guides are handouts given to patients, families and caregivers when a medicine is dispensed. The guides will contain FDA-approved information such as proper use and the recommendation to avoid ingesting alcohol and/or other central nervous system depressants. When these Medication Guides are available, patients being treated with sleep medications should read the information before taking the product and talk to their doctors if they have questions or concerns. Patients should not discontinue the use of these medications without first consulting their health care provider.

Although all sedative-hypnotic products have these risks, there may be differences among products in how often they occur. For this reason, FDA has recommended that the drug manufacturers conduct clinical studies to investigate the frequency with which sleep-driving and other complex behaviors occur in association with individual drug products.

The medications that are the focus of the revised labeling include the following 13 products:

Ambien/Ambien CR (Sanofi Aventis)
Butisol Sodium (Medpointe Pharm HLC)
Carbrital (Parke-Davis)
Dalmane (Valeant Pharm)
Doral (Questcor Pharms)
Halcion (Pharmacia & Upjohn)
Lunesta (Sepracor)
Placidyl (Abbott)
Prosom (Abbott)
Restoril (Tyco Healthcare)
Rozerem (Takeda)
Seconal (Lilly)
Sonata (King Pharmaceuticals)

For more information on the sedative hypnotic products and sleep disorders, visit http://www.fda.gov/cder/drug/infopage/sedative_hypnotics/default.htm;
www.fda.gov/womens/getthefacts/sleep.html and www.nhlbi.nih.gov/health/dci/Diseases/inso/inso_whatis.html.



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パキシルの妊娠初期服用

妊娠関係でもう一つ紹介。やはり日経メディカル。2005. 10. 1の記事。元の記事である米GSK社の医療従事者向けリリース と比較してみていただきたい。

*****
パロキセチンの妊娠初期服用は、他の抗うつ薬に比べ先天性奇形リスクが約2倍に

 パロキセチン(商品名:パキシルなど)を妊娠初期に服用すると、他の抗うつ薬を服用した場合に比べ、先天性奇形の発生リスクが約2倍に増える可能性があるようだ。これは、発売元の米GlaxoSmithKline(GSK)社が行った調査で明らかになったもの。同社はこのほど、この結果に基づき、米国で販売するパキシルとパキシルCRについて、妊娠に関する注意書きを変更した。ただし、現時点でパロキセチンと先天性奇形の因果関係を明らかにできる、ヒトを対象にした信頼性の高い試験はなく、妊婦への投与は、潜在的リスクと効用のバランスを考慮した上で行うという、これまで通りの基準になっている。

 米GSK社は、妊娠初期に抗うつ薬を服用していた3581人の妊婦を対象に、主な先天性奇形について、後ろ向き疫学調査を行った。その結果、妊娠初期にパロキセチンを服用した母親から生まれた子供が先天性奇形であるオッズ比は、同様の条件で他の抗うつ薬を服用した場合に対し、2.20(95%信頼区間:1.34~3.63)だった。また、心血管奇形の同オッズ比は、2.08(同:1.03~4.23)だった。なお、心血管奇形の見られた14人の乳児のうち10人が心室中隔欠損症だった。

 一方、同社によると、妊娠初期に選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を服用した母親から生まれた、4291人の乳児について調べた別の研究「Swedish Medical Birth Registry」の結果では、パロキセチンを母親が服用した708人の乳児に、主な先天性奇形のリスク増加は見られなかったと付け加えている。

 詳しくは、米GSK社の医療従事者向けリリース [http://www.fda.gov/medwatch/safety/2005/Paxil_dearhcp_letter.pdf]まで。(當麻 あづさ、医療ジャーナリスト)
*****
これに関する、元の記事は、次のようなもの。

*****
Vol.3(2005) No.19(1006)R5
【 米FDA 】
• [‘Paxil’](paroxetine),[‘Paxil CR’](paroxetine 徐放錠):催奇形性に関して処方情報の改訂を通知
Important Prescribing Information:[‘Paxil’],[‘Paxil CR’](paroxetine HCl)
通知日:2005/09
http://www.fda.gov/medwatch/safety/2005/Paxil_dearhcp_letter.pdf
(Web 掲載日:2005/09/27)
GlaxoSmithKline(GSK)社とFDAから,[‘Paxil’]および[‘Paxil CR’]徐放錠の処方情報,妊娠/処方上の注意の項目を改訂して,先天性奇形に関する記載を追加することが医療従事者に通知された。この改訂はGSK 自身による後ろ向き疫学研究においてparoxetine の先天性奇形のリスクが他の抗うつ剤に比較して高く算出された結果に基づくもので,妊婦へ投与する場合は潜在的なリスクとベネフィットを慎重に検討し,治療法の変更も含めて患者と話し合うよう助言している。
◆背景
GSK 社は妊娠第1 三半期に抗うつ剤を服用する女性から生まれた子供の重大な先天性奇形について,後ろ向きの疫学的研究を行った。最近の予備解析の結果から,データベースでは他の抗うつ剤と比較してparoxetine で,先天性奇形全体に対する調整オッズ比は2.20〔95%CI[1.34~3.63]〕,心血管系の先天性奇形単独の調整オッズ比(OR)は2.08〔95%CI[1.03~4.23]〕であった。先天性奇形全体の発生率は約4%,心血管系の先天性奇形単独の発生率は約2%であった。Paroxetine を投与された母親の乳児で報告された心血管系の先天性奇形のうち最も多かったのは心室中隔欠損症であった。
GSK 社の研究は,抗うつ剤を服用した女性から生まれた乳児の先天性奇形の抗うつ剤間の相対リスク評価を目的にデザインされたため,抗うつ剤に曝露されていない乳児との比較は行われていないことに注意すべきである。したがって,これらのデータは一般の母集団における先天性奇形の全般的な発生率と関連して検討すべきである。米国において,先天性奇形は約3%,心血管系の先天性奇形単独では約1%であると推定されている(Honein 1999)。
従来のparoxetine を含む選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)に第1 三半期に曝露された場合の妊娠の転帰に関する疫学研究では,SSRI に対して重大な先天性奇形のリスクの増加のエビデンスは示されていなかった。Swedish Medical Birth Registry による最新の論文は(Hallberg2005),上記のGSK 社の研究と異なり,抗うつ剤に曝露されていない乳児との比較を含んでいる。
妊娠初期にSSRI に曝露された母親から生まれた4,291 人の乳児のデータから,全体で2.9%の先天性奇形が示されている。著者らは,抗うつ剤に曝露されていない乳児に予測された3.5%の発生率と差がないと結論付けている。この登録データ内のparoxetine に曝露された708 人で,先天性奇形の発生率は3.4%であった。
さらに最近になって,Alwan らは1997~2001 年に生まれた乳児のNational Birth Defects Prevention Study から得たデータを報告している(2005)。調整した解析により,SSRI を服用した女性は服用しなかった女性と比較して,臍帯ヘルニアの子供が生まれやすいことが示されている(n=161)〔OR 3.0,95%CI[1.4~6.1]〕。最も影響が強いのはparoxetine であり,すべてのSSRI 曝露の36%を占めると報告されている〔OR 6.3,95%CI[2.0~19.6]〕。著者らはまた,SSRI への曝露と頭蓋骨癒合症との関連も指摘している(n=372)〔OR 1.8,95%CI[1.0~3.2]〕。
Wogelius らによる the 21st International Conference on Pharmacoepidemiology and Therapeutic Risk Management(2005年8月21~24日)での発表の要旨には,妊娠の30日前から第1三半期の終わりまでにSSRIを処方されなかった女性に比較して,この期間にSSRIを処方された女性において,調整ORが先天性奇形全体で1.4〔95%CI[1.1~1.9]〕,先天性心奇形で1.6〔95%CI[1.0~2.6]〕であることが報告されている。
公表された研究結果が異なることや最近報告された異常が多様であることから,paroxetine に関連する特定の先天性異常の因果関係を断定することは困難である。GSK 社はこれらの予備的な知見を十分に理解するためさらに疫学的な研究を継続中である。
◇関連情報
・医薬品安全性情報Vol.3 No.18
・Caution over antidepressant paroxetine during pregnancy〔Vol.3 No.18 に要約掲載〕
http://www.tga.health.gov.au/media/2005/050907-paroxetine.htm
◎パロキセチン(paroxetine,SSRI)国内:発売済 海外:発売済

*****
というわけである。
後ろ向き疫学研究とは何か、調整オッズ比は2.20〔95%CI[1.34~3.63]〕とは、何を意味するのか、興味のある人は勉強してください。

・妊娠初期にSSRI に曝露された母親から生まれた4,291 人の乳児のデータから,全体で2.9%の先天性奇形が示されている。
・抗うつ剤に曝露されていない乳児に予測された3.5%の発生率
・paroxetine に曝露された708 人で,先天性奇形の発生率は3.4%であった。

2.9、3.5、3.4という数字の間に有意な差はないとの報告。なるほど。……結論1。

でも一方で、抗うつ剤を使った人の中で比較すると、パキシルを使った人の場合に、先天性奇形の割合が高かったという報告。なるほど。……結論2。

すると、どう?
抗うつ剤を使っても先天性奇形の割合は高くなることはないが、他の抗うつ剤よりもパキシルが高い、これはどう解釈する?

こんな場合は、データの詳細をさらに確認しないといけない。
そして、多分だけれど、この場合、抗うつ剤を使った患者さんの病状にかなり差があるだろうと考えられる。
先日も書いたが、うつ病の診断がついたら、シタロプラムから始めようという雰囲気があれば、ゾロフトもパキシルも、シタロプラムでは反応が悪かった群ということになり、薬剤の影響もあるだろうが、それ以外の影響もありそうだ。

簡単に言うと、シタロプラムでは自殺してしまうかもしれない場合に、ゾロフトやパキシルを使っているので、結果として、ゾロフトやパキシル使用例で自殺や先天性奇形が増えるのは当然かもしれない。

たとえば、東大病院は難しい患者さんが紹介されて来るわけだから、当然死亡率は高くなるだろう。でもそれは東大病院が悪い病院ということではなくて、難しい症例にもチャレンジしているとも解釈できる。それと同じことだ。

各抗うつ剤を無作為に割り付けるというプロセスはないようで、あまり意味のある疫学調査とは言えないのだろう。

疫学調査というものは、本質的メカニズムを解明する前段階のようなもので、本当は、薬剤が生体内でどのように機能して、効果と有害作用が生じるのか、解明されるまで、事の本質については留保されるべきものだ。

しかし何といっても人命は大切だから、何か怪しいと疫学調査がでた時点で対策を考えるのが正しい。
従って、疫学調査に敏感であるべきだ。

しかし、調査の方法、内容について、もっと厳密に論評されるべきだと思う。
そしてそれをかみ砕いてレポートする場合に、うっかりすると、「ためしてガッテン」レベルになってしまう危険があることも承知しておこう。



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人工妊娠中絶

中絶前の相談、中絶後の相談も多いものですが、
次のような記事がありますので、紹介します。
日経メディカルより。

*****
全世界の年間中絶件数は4200万件

うち48%が危険な中絶

 人工妊娠中絶の発生率に関する情報は、望まぬ妊娠を減らすため、そして、危険な中絶を減らすための対策の構築において極めて重要だ。米国Guttmacher研究所のGilda Sedgh氏らは、世界の各地域の人工妊娠中絶の件数を調べて1995年と比較した結果をLancet誌2007年10月13日号に報告した。

 全世界が協力して2015年までに達成すべき8つの目標を掲げた「ミレニアム開発目標」の5番目が、「妊産婦の健康の改善」だ。妊産婦の死亡率を1990年の4分の1に減らすことを目指しているが、その達成に向けた監視においても、中絶率の把握は重要だ。しかし中絶は公になりにくい側面を持つため、データソースは限られており、正確な情報を入手することは難しい。著者らは、世界的な中絶率とその傾向をより正確に分析しようと試みた。

 2003年の世界的、地域的な中絶の発生率は、公式な国別報告システム、国民を代表する集団を対象とする調査、病院の医療記録、論文発表された研究などから抽出したデータを基に推計した。また危険な中絶は、術者の技術が未熟、または、環境が最低限の基準を満たしていない(中絶は非合法といったの要因も含まれる)場合とした。

 解析の結果、2003年には全世界で4200万件の中絶が行われたと推計され、95年の4600万件よりも少なかった。15~44歳の女性1000人当たりにすると、2003年には年間29件で、1995年の35件より少なかった。

 2003年の1000人当たりの中絶率を地域別で見ると、アフリカ29件、アジア29件、欧州28件、南米とカリブ海沿岸地域31件で、ほぼ同様だった。北米は21件、オセアニアは17件と少なかった。

 中絶率が最も低かったのは西欧で、1000人当たり12件。北欧は17件、南欧では18件。これらの地域は中絶が合法化されており、発生率は低いまま維持されていた。反対に最も高かったのは東欧の44件だった。ただし東欧は、95年の90件から急激に減少した。

 全世界の5分の1に相当する860万件の中絶が行われた中国では、20%超も減少した。

 2003年の時点で、全体の48%が危険な中絶だった。先進国では92%が安全な中絶であるのに、途上国では全体の55%が危険な中絶で、すべての危険な中絶の97%超が発展途上国で行われていた。危険な中絶が最も多かったのはアフリカ(98%が危険な中絶)で、2番目が南米とカリブ海沿岸諸国(94%)だった。アジアは34%だった。

 危険な中絶が途上国に集中していることから、避妊技術の幅広い利用を可能にし、すべての中絶が安全に行われるようにする世界的な努力の継続が必要だ。

 原題は「Induced abortion: estimated rates and trends worldwide」、概要はこちらで閲覧できる。

大西 淳子=医学ジャーナリスト

*****
日本での状況はまた別であるが、いろいろと考えさせられる。
母体にとって危険な中絶を安全なものにしていこうという趣旨は当然賛成である。
具体的な数字がLancet誌に掲載されたことに意味があるだろう。

日本では、お金を出せば、安全である。
お金が用意できなければ、危険なこともしているらしい。

医療機関で処置するには男性の同意が必要で、どんな男性が同意しているのか、
問題な部分もある。
たとえば、既婚女性の場合は、法律上の夫の同意が必要とのことだった。

何しろ、結婚している限り、妊娠した場合には、夫の子供だと推定するという法律の国である。
夫の他に恋人がいて、妊娠したから離婚して、出産しても、
その子は自動的に夫の子供と推定される。
しかしそれは実態にそぐわないので、何日にするとか、議論があった。

無責任な男性の子供の場合、親切な別の男性がついて行って、同意書にサインする場合もあるらしい。

そんなこんなで、心理的にも、深い傷になる場合がある。
場合があるというより、多くは深く傷つくと言った方がいいだろう。

中絶前の悩みは深い。
中絶後の悩みも深い。

普段は気にしていないような、人間のこころの奥底の価値観があぶり出されるような、そんな場面である。

キリスト教保守派の主張する、中絶禁止も、一理あると思ってしまうのである。

当然、中絶禁止反対派の言う、「かえってよくないことが多いのだ」ということも実際そうであって、中絶禁止反対派にも一理ある。

難しい世の中である。



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QIDS-SR 自己評価するうつ尺度の例

使い方は STAR*D の記事の中にあります。

1.寝つき

A 寝付くまでに30分以上はかからない

B 最低30分はかかる。1週間の半分くらいはその状態である。

C 最低30分はかかる。1週間の半分以上はその状態である。

D 1時間はかかる。1週間の半分以上はその状態である。

2.寝ている最中

A 夜中に起きない

B 休んだ感じがしない。毎晩浅い眠りで時々目が覚める夜がある

C 一晩に1回は必ず目が覚める。でも簡単にまた眠り始める

D 一晩に1回以上目が覚める。再び寝付くのに20分以上かかる。

それが1週間に半分くらいの割合で起こる

3.目覚めが極端に早すぎる

A 通常、起きる時間の30分以内に目覚める

B 1週間の半分は起きる時間の30分以内に目覚める

C 起きる時間の1時間前に目覚め、又眠ってしまう。

D 起きる時間の1時間前に目覚め、再び眠ることは出来ない

4.寝過ぎ

A 昼寝しないで、一日7~8時間の睡眠

B 昼寝を含めて一日10時間以上は眠らない

C 昼寝を含めて一日12時間以上は眠らない

D 昼寝を含めて一日12時間以上眠る

5.悲しい感情

A 悲しい感情ではない

B 1週間の半分は悲しい感情ではない

C 1週間の半分以上は悲しい感情である

D ほとんどいつも悲しい感情である

6.食欲の減退

A いつもの食欲と変りがない

B いつもより少ない量を時々食べる

C 通常の食事量よりかなり減っていて、自分で努力して食べている

D 一日の中であまり食べない。多大な努力を払って食べるようにし、又は人から食べるように言われた時に食べる

7.食欲の増進

A いつもの食欲と変りがない

B いつもよりもっと頻繁に食べる必要があると思う

C 定期的に普段より多く食べたり、食べる回数も増えた

D 食べ過ぎな程食事量も食事回数もかなり増えている

8.体重の減少(過去2週間以内)

A 体重に変りがない

B 少し痩せた感じがする

C 2ポンドか、それ以上痩せた

D 5ポンドか、それ以上痩せた

9.体重の増加(過去2週間以内)

A 体重に変りがない

B 少し太った感じがする

C 2ポンドか、それ以上太った

D 5ポンドか、それ以上太った

10.集中力/決断力

A 集中力と決断力の自分の能力に変りはない

B 時々決断力の鈍りを感じ、注意散漫になっていることを感じる

C ほとんどの時に決断すること、集中することに困難を感じている

D 読む時に集中できない。又は小さなことも決められない。

11.自分自身への視点

A 他人の価値を認めると同様に自分の価値も見られる

B いつもより自分を責めることが多い

C 自分が他の人の問題の原因になっていると、かなり信じている

D 大きなことでも小さな事でもいつも逃避しようと考えている

12.死や自殺の考え

A 死や自殺のことは考えない

B 人生は空虚だ、生きる価値があるのだろうかと感じる

C 1週間のうち数回は、死や自殺を数分間考える

D 一日の内で数回、死や自殺を考え、その方法やプランの詳細も考えたり、自殺を実際に試みたことがある

13.一般的な興味

A 他の人々又は活動に対する興味はいつもと変わらない

B 自分が、他の人々又は活動に対する興味が薄れたことに気づいている

C 自分は以前からしていた1~2つの活動以外に興味がないと分かった

D 以前していた活動に事実上もはや何も興味もない

14.活力(エネルギー)のレベル

A いつもの活力のレベルと変りない

B いつもより疲れ易い

C 日常の活動(例:買い物、宿題、料理、仕事に行く)を始める、又は終わらせるのに大きな努力をしなければならない

D 活力が無くなって、日常の活動をやり遂げることがほんとうに出来ない。

15.物事、動作が遅くなった感じ

A 話す、動作のスピードはいつもと同じだと思う

B 思考が遅くなって、声がだるく平坦になった

C ほとんどの質問の応答に数分かかり、思考が遅くなったことは確実

D かなりの努力をしないと質問に答えることができないことがしばしば起きる

16.休んだ感じ

A 休んだ感じがしないという気分はない

B しばしばせかせかしたり、手をよじったり、座る腰の位置を変えたりする

C 衝動的な動きがあり、休んだ感じがしない

D 時々座り続けることが出来ないと感じ、歩き回る必要がある

© 2000, A. John Rush, M.D., Quick Inventory of Depressive Symptomatology (Self Report) (QIDS-SR)



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名刺を作った

 

名刺の原稿。
でもビジネスマンっぽくないから、多分、没だろう。

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総目次をつくってみた+改修

精神科・心療内科・文化社会雑記関係でSMaPGが書いた記事をまとめて、総目次とした。
抜けている記事も多いが、ないよりはいい。
索引もつけられていないし、各会社のブログの、タイトルの文字コード順になっているのだが、全体としてのシステムにはなっていない。まあ、第一歩というところ。
「こころの薬箱」SMaPG-総目次-2007-Oct

*****
その後、oct-28に改修
リンクの書式を整えた
全体を50音順に並べた

しかし、おかしいのだった
Panalionのなかで、外部表示してある記事だけで
1900を超えているのだけれど、
エクセルの表示では1090しかない。

各サイトからタイトルとアドレスを抽出するには
website explorer を使用。
この時点でこの記事数だったと思うので、
website explorer の操作の仕方に問題があった可能性が高い。
という現状です。

別のソフトで考えてみるか。

ついでに検索用の簡単なタグをつけたい。
でも、結局、全文検索がいいのでその方向で考える。

*****
Oct-29に再度website explorer で収集、今度は全体をカバーできたようだ。
単に充分に待たなかっただけのようだった。
しかし途中にタイトルのない項目がいくつもある。



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ストレス・マネージメント・レコーディング

ストレス・マネージメントをしようと決めたら、
金曜日の夜、この表を埋める。
コピーして、エクセルにペーストする。シート2、3くらいまで、ペーストしておく。
日付を入れて、
Yesなら、○を書く。(×でもいいけれど、私なら○を書く。すこしでも肯定的に。)
○を書いた項目に関しては、考えたことがあれば、メモをする。
とりあえず、それだけ。
次の金曜の夜が来たら、シート2を使って、また○とメモを記入する。
まだ、それだけ。
それを3ヶ月くらい続ける。
シートがたまったら、Yes-Noを串刺しにして、一覧表にする。
グラフにしてもいい。
傾向が分かったら、また、メモしておく。

「……すべきだ。しかし……できない。」とは書かない。
○だけ書いたら、あとは詳しくメモしなくていい。単語ひとつくらいでいい。
じわじわ分かってくるものなのである。

こんなふうにして、改善できれば、よし。
難しいと思ったら、お医者さんに、go。

この表を開く

      年    月    日 (金) Yes-No Memo
01. なかなか眠れない事がある。    
02. 脱力感を感じる事がある。    
03. 以前から、持病があり、気になる。    
04. 肩こりが、気になる。    
05. 勉強しなくてはならないが、勉強が好きになれない。    
06. 他の人より、遊んでない方だと思う。    
07. 神経をすり減らす事があり、疲れている。    
08. ちょっとした事でも、思い出せない事がある。    
09. 勉強したいことがあるが、持続できない。    
10. 休みの日、外出しようと思うが、ついめんどうになってしまう。    
11. やるべき事があるのに、よくなまけてしまう。    
12. 最近、情熱とは縁が無くなってしまった。    
13. 弱気になってしまい、思うように行動できない時がある。    
14. 不安感に陥る為、精神的に疲労する事がある。    
15. 自分は、人から好かれない方だと思う。    
16. 自分は、人を愛せない気がする。    
17. 憂うつな気分から脱けれない時がある。    
18. 最近、知的好奇心が減退したようだ。    
19. 自分は、普通より性格が暗いほうだ。    
20. 眠りが浅いので、疲れやすい。    
21. 何となく、元気が出ないことがある。    
22. 最近、疲労が溜まっている。    
23. 朝、起きれなくて困っている。    
24. やるべき事を始めても、なかなか集中できない。    
25. パソコンのしすぎで、疲れ気味だ。    
26. 肝心な時、心が動揺してしまうことがある。    
27. もっと、行動的になれたらいいなと思う。    
28. 自分は、スタイル(体型)が悪いので気になる。    
29. タバコは体に悪いので、禁煙したい(減煙したい)と思う。    
30. もっと体調良くなりたい。    
31. もっと気楽になれたらなあと思う。    
32. 人前で、緊張してこまる事がある。    
33. 今よりも自信がもてると、成功すると思う。    
34. 今の仕事は、あまり好きでない。    
35. 緊張、あせり、いらいら等を感じて困る。    
36. 肉体よりも、精神的に疲れる。    
37. 勉強したい事があるが、記憶力が劣る。    
38. もっと異性から、愛される人になりたい。    
39. 話をしても楽しくない人が多い。    
40. 人生はそんなに面白いものではないと思う。    


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うつ病患者復職準備度尺度

復職デイケアに取り組んでいる三重大学グループの「うつ病患者復職準備度尺度」Restoration Readiness Inventory in Depression(R2ID)] v.2.0を紹介します。まだ開発中です。

岡崎祐士、西田淳志、伊藤雅之:うつ病で病休・休職中の患者の「復職可能」診断をめ ぐって-うつ病患者復職準備度尺度試案-臨床精神医学 35(8):1059-1067, 2006

[評価領域・分野・事項]
評価領域はI、II・・・、分野は1,2・・・、事項は①、②・・・で示す)
IとIIはその領域の該当項目数で、IIIからVIIは評価段階(重症度)によって、復職準備度を表す。大きい項目数または高い評価段階ほどよいことになる。異なる評価領域、評価分野、評価項目が同じ重みであるとはいえないので、将来は総合判断する際の重み付けの検討・設定が必要になる。

I.現在の全般健康状態・・・・・該当項目に○
 1.雰囲気が明るい、存在感がある
 2.顔色・肌つやがよい、表情に張り
 3.語尾明瞭で、声に張り
 4.動きに切れ、体に充実感
 5.寝起きがよい
 6.おいしく食べる
 7.満腹するとすこし眠気、居眠り
 8.微熱・風邪気味は2週間以上ない
 9.お腹が安定(下痢・軟便は2週間以上ない)
 10.口や喉はカラカラにならない
 11.自然に外出、次の予定がある

Ⅱ.睡眠とリズム・・・・・・該当項目に○
 1.入眠に苦労しない、またはいつの間にか入眠する
 2.途中覚醒1回以下、目覚めてもまもなく眠れる
 3.悪夢、多夢、寝汗の眠りがない
 4.自然な起床時間で、寝起きがよい
 5.ぐっすり眠った感じがあり、日内変動(午前型/午後型)も
   目立たない

Ⅲ.疲れやすさ(ストレス反応性とストレス耐性)・・・・・凡そ該当する評価段階に○

 1.日常作業による過敏・疲労反応

 ①見る/読む作業
  0.新聞・雑誌は見たくもない
  1.新聞・雑誌は目次を見るだけ
  2.長い記事もよむ、少なくとも1つの記事を最後まで読む
  3.新聞・雑誌を全体にわたって目を通す
  4.新聞記事を通して読める、文庫本を数日で1冊読み上げる
  5.単行本を複数冊つづけて読み上げる

 ②キーボード・書く作業
  0.ペン・鉛筆、キーボードに触りたくない
  1.転記、キーボードで文書見ながら入力できる
  2.短い文章が作れる
  3.与えられたテーマの作文、返事や便りが書ける

 ③.テレビ
  0.音がうるさく感じテレビの前に行かない・スイッチを切る
  1.ついているテレビは何となく見る
  2.ニュース・バライエティーは見る
  3.ドラマや座談会を筋を追って見る
  4.好きな番組を見るようになった

 ④.趣味
  0.何もしたくない、面白いことは何もない
  1.趣味のことを考える
  2.趣味を少しやってみる
  3.趣味をやるために用をする(外出、買い物)
  4.趣味のため知人等に連絡したり会ったりする

 ⑤.家事
  0.横になっていることがほとんど
  1.自室の片づけ、掃除機
  2.家の掃除・食器の片づけを手伝う(主婦/夫を兼務の場合、
    食事の片づけ程度)
  3.浴室の掃除をする(主婦/夫を兼務の場合、
    出来合を買うなど簡単な食事ならできる)
  4.買い物のお使いをする(主婦/夫を兼務の場合、
    朝食の準備ができる)
  5.家族と買い物に一緒に出かける(主婦/夫兼務の場合、
    夕食の献立、買い物、料理が自然にできる)

 ⑥.運動
  0.食事やトイレ以外ほとんど横になっている
  1.昼間起きている時間が多い、入浴はおっくう
  2.入浴はほぼ毎日、外出もできる
  3.昼間の外出可能、屋内で軽い運動
  4.運動のための散歩、プール・ジムに行く、趣味の運動

2.一般対人ストレスによる過敏・疲労反応

 ①外出
  0.外出できない
  1.夕方・夜間・休日(近くのコンビニ等)可能
  2.昼間(勤務時間)外出可能
  3.次に人と会う予定がある

 ②近隣とのつきあい
  0.近隣と会うのを避ける
  1.隣人とのあいさつ可能
  2.近隣との立ち話程度可能
  3.近隣の会合参加可能

 ③子どもの相手
  0.子どもがうるさい
  1.一緒にいられる
  2. 屋内で短時間なら相手できる
  3. 比較的長時間相手できる・外で遊べる

 ④.職場外での対人関係
  0.電話にでることができない(ベルにびくっとする)
  1.電話では他人、会社以外の友人、親戚との会話可能
  2.職場外友人の来訪、自身の親戚来訪への応対可能
  3.姻戚の来訪への応対可能
  4.職場外友人と外で会う・会食可能
  5.姻戚宅への配偶者と一緒の訪問可能

3.職場関連ストレスによる過敏・疲労反応

 ①職場情報
  0.職場に関することは話もできない。すべてに過敏・疲労反応
  1.家族となら会社事項も話せる
  2.職場からの郵便・文書を処理できる
  3.休日・夜間なら職場近くへ行ける

 ②職場関連対人関係
  0.職場からの電話にもでることができない、
    でたら強い過敏・疲労反応
  1.職場からの電話にでるが、過敏・疲労反応が軽度生じる
  2.職場からの電話(同僚、上司、人事)対応可能
  3.職場関係者訪問対応可能
  4.職場への訪問可能(過敏・疲労反応は、緊張亢進、入眠悪化、
    途中覚醒、悪夢や多夢、起床悪化で判断)

Ⅳ.自殺危険性・・・・・・凡そ該当する評価段階に○

 0.自殺企図の既往がある。
   死について具体的に考えることがある
 1.自殺企図の既往はない。
   普段は考えないが頭の隅には死に関する考えが残存している
 2.自殺企図の既往はない。
   自殺を考えたことを思い出すこともあるが、
   家族や周囲への迷惑となるし、死が解決の手段とは思わない
 3.自殺企図の既往はない。
   死によって何も解決しない、今後その様な考えが生じたら
   すぐに相談するようにしたい

Ⅴ.復職可能診断のいきさつ・・・・凡そ該当する評価段階に○

 1.今回の「復職可能」診断のきっかけは、
  1.患者の希望によるもの
  2.家族の希望が働いたもの
  3.医師の判断による
  4.患者の希望と医師の判断の一致によるもの

 2.患者の希望による場合、医師は、
  0.医師はまだ早いと感じている
  1.復職への本人の焦り(喪失を取り返したい、収入確保など)がある
  2.職場の復職期待・意向による無理がある
  3.家族の希望・意志が働いた無理

 3.患者の復職希望の適切性
  0.早すぎる、病状再燃の可能性がある
  1.やや早すぎる、準備期間が必要
  2.復職訓練(職場または職場外)を試みてもよい
  3.軽減勤務なら可能
  4.今からでも復職は可能

 4.家族の復職をめぐるサポートの適切性
  0.無理な・患者の負担になる要求がある
  1.後押ししすぎ
  2.サポート不足
  3.適切なサポートがある

 5.復職を巡る職場の対応の適切性
  0.治療や回復に却って妨げになる対応がある
  1.積極的対応がない
  2.対応の柔軟化や改善が望まれる
  3.適切な対応がある(健康管理システム、相談体制)

Ⅵ.病気の理解と自己管理・・・・・・凡そ該当する評価段階に○

1.うつ病に関する理解

 ①症状や病気
  0.理解がない
  1.いろいろの困難を症状として理解
  2.薬物療法などの治療の必要性の説明を理解している
  3.自ら本などでも学んだ
  4.集団の演習(SST/デイケア)でも学んだ

 ②成因
  0.ストレスの関与への理解がない
  1.今回のエピソードの前のストレス、生活上の無理の自覚
  2.性格的な側面の関与の自覚
  3.再発注意のための具体的な対策を考えている

2.自己管理

 ①ストレスを避ける方法
  0.何も学んでいない
  1.言葉に出してはいえる
  2.本などで学んでいる
  3.デイケア場面などで観察されている

 ②服薬の必要性自覚と実際の服薬状況
  0.飲み忘れや中断あり
  1.主治医や家族に言われると服用する
  2.飲み忘れは月に数回以下、本などで学んだ
  3.必要性を自覚しほぼ忘れることなく服薬

 ③定期受診・相談ができる
  0.自らは受診しない
  1.家族に促されると受診する
  2.自ら受診するが、肝腎な相談はしない
    (家族が主治医に伝える)
  3.自ら定期受診、必要に応じて臨時にも受診し相談する

 ④相談しサポートを得られる
  0.医師以外に相談する人がいない
  1.家族には何でも話せる
  2.相談できる友人もいる
  3.職場にも相談できる同僚・上司、健康管理担当者がいる



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not マインド(の)マップ but マインド・カード

マインド(の)マップという、発想を促したり、構想をまとめたりする方法があるのだが、
皆さんはどんな印象をお持ちですか?

好きな人は使えばいいけれど、
私には向かない。
以下は個人的な感想。

だって、不自由じゃないですか。
せっかくフリーな発想を促しているのに、一回書いたら、場所が固定してしまう。
関係を線で引いているけれど、所詮は二次元だ。
結局、頭の中の連想を紙に書くことなので、
「飛躍」は生まれにくい。
全然フリーじゃないし、ブレイクスルーがない。

「紙の上に書かれたマップは、
あたかも脳の構造そのもののようだ」
なんて宣伝しているが、
本気で言っているとすれば、
この人たちの脳神経細胞ネットワークは
平面的で単純らしい。
脳科学者もびっくりだ。

マップは一種のノートなのだが、
土台、私はノートをとらない。
手元にあるノートは一冊だけで、
IDとパスワードをメモしてある。
だから、私のまわりの人はこれを見れば、すぐに
パスワードを破ることができる。

でも、パスワードを破っても、
下書きの項目に、
他人にはわけの分からないメモや文章や図があるだけで、
私としては見られても何の損害もない。

*****
私はマインド・カードだ。
昔でいう、KJ法である。
最近はカードというほど大きくなくて、7.5×7.5センチのポストイットを使う。
もっと細い付箋でも、手近にあるものを使う。
ただのメモ用紙も使う。
詳しい内容はコンピュータに入っているので、
見出しだけでいい。

付箋のいいところは、糊が着いているので、束ねやすいところ。
そしてすぐに離せるところ。

アイディアを細切れに書く。
単語や文章でもいいし、絵でもいい。切り抜きを貼ってもいい。
新聞・雑誌などの大きい切り抜きはたたんで、
ポストイットだからぺたんと貼り付けて、自分の関心に応じた見出しだけ付けておく。
論文の抜き刷りをコピーしてハサミで切って、
必要な部分や図表などもプールしておく。
この部分は、コンピュータで行うことが多い。
手書きの付箋をつくるときは、××の図、だけで分かる。
あるいはフリーハンドで簡略に書いておく。

ついでにいうと、フリーハンドで簡単に書くときに、
本当に必要な部分はどこなのかが、分かる。
省略することで、オリジナルなものになる。
これも収穫。

そんなのをひとつの箱に放り込んでおく。
適当なときに箱を整理して、おおざっぱな分類をする。

二つの領域に入れたいときは、もう一つメモを作って、もう一つの領域にも入れておく。
ここの重複は、厭わない方がいい。
変な箱に紛れ込ませることで、
発想の飛躍が生まれる。

それぞれのまとまりの中で、さらに分類していく。
数が足りなかったら、また考えて、メモが増えるのを待つ。
是非増やしたいと思う領域があったら、箱に見出しを付けて、用意しておく。

以上のことは、コンピュータで付箋を使いながら容易にできる。
コンピュータ上であれば、文章やスライドにまとめるときに、
付箋の内容をそのままコピーして使えるので手間が省ける。
そんな必要もあるので、私の机の上には、24インチのディスプレイが二台並んでいる。
ひとつはソニーのPC附属ディスプレイで、もう一つはナナオ。
普段はメインのナナオだけを使っている。

個人的には付箋を机の上に広げて、束ねたり、ばらしたりするのも好きで、併用している。
何となく、その方が、「熟成」する気がする。
付箋に書いてあるコマーシャルを見たりすると、どの時期のものか、見当がついたりして、
懐かしくなることもある。

もう一つ、飛躍を促すのは、
バラバラのカードの集合を、他人に分類させてみることだ。
興味のあるものを選び出し、分類してもらう。

この人の頭の中はこんなふうだったのか!
と、驚くとともに、
自分の脳の回路にはない、
一種の飛躍が感じられることがあり、面白い。



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携帯QRコード


とりあえず掲載してみます。これで使えるのかな?

 


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禁煙治療を始めよう!

シンポジウム「禁煙治療を始めよう!」に出席。
福地義之助佐々木温子阿部眞弓、諸先生方のお話を聞く。

政府は「健康日本21」を発表し、9本の柱を示している。がん、糖尿病、アルコール、メンタルヘルスなどと並んで、たばこがある。

「健康日本21」から引用すると、
(4)たばこ
 たばこは、がんや循環器病など多くの疾患と関連があるほか、妊娠に関連した異常の危険因子である。
 目標は、たばこの健康影響についての十分な知識の普及、未成年者の喫煙防止(防煙) 、受動喫煙の害を排除し、減少させるための環境づくり(分煙)、禁煙希望者に対する禁煙支援について設定する。

これが政府の目標である。
詳細は以下のとおり。

4.たばこ

4.1 喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及
 指標の目安
         [知っている人の割合]          現状*          2010年         
4.1a 肺がん 84.5% 100%
4.1b 喘息 59.9% 100%
4.1c 気管支炎 65.5% 100%
4.1d 心臓病 40.5% 100%
4.1e 脳卒中 35.1% 100%
4.1f 胃潰瘍 34.1% 100%
4.1g 妊娠に関連した異常 79.6% 100%
4.1h 歯周病 27.3% 100%
  *:平成10年度喫煙と健康問題に関する実態調査
 用語の説明
        
健康影響: 別紙「喫煙が及ぼす健康影響」を参照
4.2 未成年者の喫煙をなくす
 指標の目安
         [喫煙している人の割合]          現状*          2010年         
4.2a 男性(中学1年) 7.5% 0%
4.2b 男性(高校3年) 36.9% 0%
4.2c 女性(中学1年) 3.8% 0%
4.2d 女性(高校3年) 15.6% 0%
  *:平成8年度未成年者の喫煙行動に関する全国調査
4.3 公共の場及び職場における分煙の徹底及び効果の高い分煙に関する知識の普及
 指標の目安
         [分煙を実施している割合]          現状*          2010年         
4.3a 公共の場 100%
4.3b 職場 100%
         [知っている人の割合]          現状*          2010年         
4.3c 効果の高い分煙に関する知識の普及 100%
         *:平成12年度中に調査する
 用語の説明
        
分煙の徹底: 公共の場や職場における喫煙場所の設置等
効果の高い分煙: 受動喫煙の害を極力排除し得る分煙方法
4.4 禁煙支援プログラムの普及
 指標の目安
         [禁煙支援プログラムが提供されている市町村の割合]
                    現状*          2010年         
4.4a 全国 100%
         *:平成12年度中に調査する
 用語の説明
        
禁煙支援プログラム: 個人の禁煙を支援するための個別保健指導等
禁煙・節煙を希望する人       男性       女性       総数
禁煙希望 24.8% 34.9% 26.7%
節煙希望 38.3% 34.7% 37.5%
合  計 63.1% 69.6% 64.2%
(平成10年度喫煙と健康問題に関する実態調査)

*****

禁煙の希望があるニコチン依存症患者に対する一定期間の禁煙指導について、保険点数上の評価を行うために、平成18年度の診療報酬改定で、ニコチン依存症管理料が新設された。

たばこには約200 種類以上の有害物質が含まれている。代表的な有害物質としては、ニコチン、一酸化炭素、タールがある。なかでも有名なのがニコチンで、しばらくたばこを吸っているとニコチン依存症になる。

タバコ依存症スクリーナー(TDS)または
ファーガーストロームニコチン依存症テスト(FTND)などをもちいて評価する。
たばこを吸う人の約7割がニコチン依存症であるという。

まずこんな感じの書類を使いながら、診断・説明・治療を進める。
禁煙治療の概要説明資料
禁煙治療に関する問診票
喫煙状況に関する問診票
呼気一酸化炭素濃度検査
禁煙宣言書
禁煙日記

禁煙すると、最初は身体面の禁断症状が出る。2、3日がピークで、5日で楽になる。そのあとは精神的ケアの問題になる。精神的な依存または行動習慣の問題に対して、行動変容プログラムを用いる。self-efficacy 自己効力感を持ってもらうことが大切。

禁煙していると、
イライラ
吸いたい気持ち
集中できない
手持ちぶさた
などで困る。

そこで、代わりの行動を提案する。
水を飲む
ガムを噛む
歯磨きをする
軽い体操をする
引き出しの整理をする
など、自分なりに代わりの行動を用意しておけば、喫煙を防止できる。

携帯で日々の禁煙成功を報告して、支えてもらうプログラムもある。
禁煙日記をつけるのも有効。

不安が強い場合には、メンタルケアに移行する。

禁煙は、最初の一週間が鍵である。可能な目標を決めて、支えてもらいながら、実行する。

最近は若い女性の喫煙率の上昇が、国民の健康を考える上では問題である。胎児、子供に悪影響があると繰り返し説明されても、上昇し続けている。
女性は、美容の観点から、禁煙を考えた方がいいとのスライドがあり、びっくりしつつ納得。多分、特殊メイクなのだろうけれど。

*****
日本は喫煙に関して非常に寛容な国で、先進国の中で特異な立場。開発途上国に比較してもなお、喫煙に対して寛容であり、なぜなのか、よく分からないらしい。
明治の昔、恩賜のタバコなどというものもあり、何となく、「大人のもの、ありがたいもの、男らしいもの、特権的なもの」というイメージができたのではないかとの意見もある。
ヨーロッパの中では、ドイツが喫煙に関して寛容なことで有名だったが、現在は国として禁煙推進策をとっている。

*****
面白い統計があり、全体的な健康度別に、禁煙についての意向を尋ねる。
健康な人は、そもそも関心がないので、禁煙の意志も少ない
少しだけ健康に問題のある人は、禁煙したいと積極的に考えている
かなり健康に問題のある人は、禁煙の意志はないと答えている

健康に問題のある人は、食事、運動、アルコール、タバコ、ストレス、このあたりに関心を払うのが当然なのだけれど、タバコについては、意識的に考えないようにしているらしく、これは依存症の結果であると解釈されている。

*****
J-CASTニュースからの抜粋

養老孟司の超刺激発言
「たばこの害根拠なし」「禁煙運動はナチズム」
2007年09月18日18時40分

文藝春秋を巡って、日本禁煙学会は公開質問状を出した。養老孟司さんが、「たばこの害や副流煙の危険は証明されていない」「禁煙運動家はたばこを取り締まる権力欲に中毒している」などと月刊誌の対談で発言した。これに、日本禁煙学会が激怒。「たばこが害だという根拠が無い、という根拠を示せ」と2007年9月13日に公開質問状を出した。

掲載されたのは「文芸春秋」07年10月号。タイトルは「変な国・日本の禁煙原理主義」。養老さんと劇作家の山崎正和さんの対談記事で、なぜ禁煙活動が起こったのか、なぜ健康至上主義になっていったのか、などが論じられている。2人に共通するのは、禁煙や健康至上主義に見え隠れするのが「ファシズム」「ナチズム」であること。養老さんは、禁煙運動家は非常に権力的で、他人に生き方を押し付けて快感を覚えるタイプだ、と痛烈に批判している。

養老さんは、そもそもたばこに害があるなど証明されていないとし、「『肺がんの原因がたばこである』と医学的に証明されたらノーベル賞ものですよ」
また、「副流煙の危険性は問題外」と言い、「低温で不完全燃焼するたばこから発生するので有害、というのに科学的根拠は無い」
と論じている。さらに、たばこのパッケージに書かれている「喫煙はあなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます」などの文言を決めた一人が大学の後輩だったそうで、

「医者仲間で集まったときに『根拠は何だ』『因果関係は立証されているのか』と彼を問い詰めたらたじたじでしたよ(笑)」
と語っている。

この記事を見て日本禁煙学会は激怒。07年9月13日に養老さん、山崎さん2人に対し公開質問状を出した。そこには、肺がんの主な原因が喫煙でない根拠、受動喫煙には害がないという根拠を示してほしい。また2人はたばこ業界から金銭を得ているかどうか答えてほしい、などが書かれている。さらに、山崎さんが対談で、「70歳以上の人にアヘンを解禁したら幸せな老人が増えるかもしれない」とか、「中学時代に人目を気にしてたばこを吸っていた」などと発言していることから、中教審の会長としての責任を問題にしている。

公開質問状が出た以上、今後の両者のバトルが気になる。日本禁煙協会はJ-CASTニュースの取材に対し、養老さん達の発言は全くおかしなものであり、仮に海外であんな発言をすればとんでもないことになっているとし、「疫学を否定しているのに、たばこに害がない根拠を疫学に求めていたりするなど、理論が破綻している。こちらとしては公開討論会を開いてはっきりさせたい」と怒りが込み上げている様子だった。

*****
では、その日本禁煙学会が出した公開質問状の一部を紹介。

文芸春秋2007年10月号
「変な国・日本の禁煙原理主義」
対談者養老孟司氏・山崎正和氏に対する公開質問状
日本禁煙学会
理事長 作田 学
http://www.nosmoke55.jp/

1.
肺ガンの主な原因が喫煙ではないという根拠をお示し頂きたいと存じます。
2.
受動喫煙には害がないという根拠をお示し頂きたいと存じます。
3.
疫学に信用はおけないとおっしゃっておられますが、対談中に2件の疫学データをもとに、ご自分の主張を補強されておられる箇所があります。疫学には良い疫学とダメな疫学の二種類があるのでしょうか。そうなら、それはどこで見分けるのでしょうか。お教えください。
4.
タバコよりも大気汚染のほうが大問題だというご主張の根拠をお示しいただきたいと存じます。
5.
対談中に「『たばこ問題は誰が金を出しているか』と考えると良くわかる」というくだりは、われわれも全く同感いたします。けだし慧眼と存じます。「社会の裏側」でどれだけの金が動いているかを知ることは、事の本質を理解する上でとても参考になると考えます。つきましては、養老様と山崎様におかれましては、日本たばこ産業をはじめとしたタバコ業界から、講演料、顧問料、コンサルタント料などの金銭的報酬を受けておられますでしょうか。利害関係の開示は、欧米先進国の学術雑誌の投稿論文の不可欠の部分となっており、国際感覚豊かなお二人でありますれば、その重要性についてはあらためてお聞きするまでもないことですが。
6.
「70歳を過ぎたらアヘンを解禁したら、いまよりも幸せな老人が増えるかもしれない」というご発言は中央教育審議会会長のお言葉とも思えません。また、「中学時代に人目を気にして吸っていた」も同様です。私たちはこのような違法行為を文藝春秋という公開の誌上でお勧めになるような方を中教審の会長としておいて大丈夫なのでしょうか。
これについてもお答え下さい。
おいで頂けるのなら、公開討論会を催すのも結構かと存じます。日時をご指定頂ければ、たいへん幸いに存じます。
以上

余計な部分は削除したが、だいたい以上のような感じ。

*****
タバコはJTという独占企業がかかわっていること、税金と関係があることなどで議論も多い。

JTでは各地で「いきいきフォーラム」を開催している。2003年の記録は以下の通り。演者はみんなJTからお金をもらっているらしい。

2003年いきいきフォーラム

8月21日 京都 里中満智子さん「自分らしく生きる」/石田靖さん「お笑いの道を選んで」
8月30日 甲府 バーバラ寺岡さん「自分探しの処方甘ん」/ ジェームス三木さん「くたばれ集団的固定観念」
9月4日 富山 湯川れい子さん「幸福の物差し/羽生善治さん「私の指針|
9月10日 松江 天野祐古さん「ひとのせいにしよう」/小林カツ代さん「年を重ねて新しく」
9月17日 横浜 養老孟司さん「自己判断の大切さ」/野口健さん「富士山が変われば日本も変わる」
9月19日 青森 志茂田景樹さん「スローライフでいきいきと|/周富徳さん「自分らしく生きよう!|
9月25日 鹿児島いがらしゆみこさん「自分流のすすめ」/ パンツェック・ジローラモさん「Ll mia nuova vlta~私の中の新しい人生|
9月26日 水戸 浅田次郎さん「私の幸福」/安部譲二さん「いつも少数派だった僕」
10月1日 秋田 谷村志徳さん「変わりながら生きていく」/石川次郎さん「いつも“遊び"が仕事だった」
10月3日 神戸 バーバラ寺岡さん「自分探しの処方甘ん」/三田村邦彦さん「自分流の生き方」
10月7日 高知 長田渚左さん「誰でもとれる金メダル~スポーツの力を再確認する~」/ 舞の海秀平さん「決してあきらめない」
10月9日 郡山 嵐山光三郎さん「芭蕉の個人主義」/安藤和津さん「明日を素敵に生きるには|
10月15日 那覇 吉永みち子さん「自分を生きるということ」/井筒和幸さん「私のターニングポイント」
10月20日 佐賀 立松和平さん「日本人の旅」/秋元康さん「秋元流人生前」
10月22日 岐阜 湯川れい子さん「幸福の物差し」/小林カツ代さん「年を重ねて新しく|
10月28日 長野 養老孟司さん「自己判断の大切さ」/窪島誠一郎さん「“自分を表現する"ということ」

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JTは最近は冷凍食品や飲料を販売している。
有名なのは、缶コーヒーのルーツ。CMを見たことがある。
スーパーの冷凍食品コーナーで Green Giant シリーズを見たことがある。これはアメリカの製品を輸入して販売しているのかな?
いずれにしても、たばこ屋から転換してくれればいいと思う。



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ヒューマン・エラー 効率の壁 防衛省

ヒューマン・エラー問題

会社は生産工程を工夫して、極限まで効率を追求します。
たとえばトヨタ。

ぎりぎりまで工夫して、壁に突き当たります。
それが、ヒューマンエラーです。

担当する人間がいつも充分な注意力をもって、適切な判断をすることを前提に、
システムは設計されています。
しかし、睡眠不足、体調不良、抑うつ、などにより、注意や判断が不安定になったら、
そこが効率の壁になります。

ヒューマンエラーを少なくするためには、
メンタルケアが必要になります。

生産工程の問題だけではなくて、
ホワイトカラーの業務管理も最近は大変きつくなっています。
コンピュータ上での操作を、上司が常時、監視できるのですから、
ぎりぎりまでの効率を要求されます。
機械も環境も手順も揃ったところで、壁に突き当たります。
やはり、ヒューマンエラーが効率の壁になります。

防衛省ではインド洋での給油量の入力ミスがあったと、
ヒューマンエラーだと最初は言っていたわけですが、
実はそうではないとの報道になっています。



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STAR*D ( Sequenced Treatment Alternatives to RelieveDepression;うつ病軽減のための代替的連続治療法)

昔の日本のお医者さんの経験を大切にしよう、いった趣旨のことを書いたけれど、
本当に偉大ならば、実証的に証明できるはずだ。そして現在ではその手順もだいたい決まっている。

最近の話題はSTAR*D ( Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression;うつ病軽減のための代替的連続治療法)臨床試験である。

これは、DSMで操作的に診断決定した患者さんに対して、あらかじめ決定された治療プロトコールつまり治療手順に従った治療をして、結果を報告し、大規模な統計処理をするものだ。まさにEBMである。

治療効果については、時期ごとに、
the 17-item Hamilton Depression Rating Scale (HAM-D) と
the 16-item Quick Inventory of Depressive Symptomatology, Self-Report (QIDS-SR) を用いて評価する。

ところが、その治療プロトコールの最初にあるのがcitalopramであり、これはSSRIの一つで、製品名Celexa、日本では認可されていない。(アメリカでよく使われる抗うつ薬の表はこちら。)
Sequenced Treatment Alternatives とあるように、平たく言えば、citalopramでだめな人はどんな人で、
どんなタイプにはどんな代替療法がいいかという話になっていて、
そこでやっとゾロフトや認知療法が登場する。

つまり、
レベル1(citalopramの単独療法)、
レベル2(bupropion、sertralineまたはvenlafaxineの単独療法、あるいはcitalopramをbupropionまたはbuspironeで増強)、
レベル3(mirtazapineまたはnortriptyline、または、レベル2の薬物にリチウムまたはトリヨードチロニン(T3)を追加。)
レベル4では、事前の3レベルで寛解を達成しなかった患者に、モノアミン酸化酵素(monoamine oxidase:MAO)阻害薬tranylcypromine、または持続放出性venlafaxine+mirtazapineの併用。

などという具合に、治療が進む。

日本で認可されているのは、
sertraline = ジェイゾロフト
nortriptyline = ノリトレン
リチウム = リーマス
トリヨードチロニン(T3)

citalopramを第一選択薬にできない日本の私たちはどうすればいいのだろう。
いきなりAlternativesなのか?

(実際の治療には、パキシル、ジェイゾロフト、ルボックス、デプロメール、トレドミンを使い分ければ充分ですが、このような大規模な研究に参加できないではないかということを言いたいわけです。)

Evaluation of outcomes with citalopram for depression using measurement-based care in STAR*D: implications for clinical practice.

Department of Psychiatry, University of Texas Southwestern Medical Center, Exchange Park Express, American General Tower, 6363 Forest Park Rd., Suite 1300, Dallas, TX 75390-9119, USA. madhukar.trivedi@utsouthwestern.edu

OBJECTIVE: Selective serotonin reuptake inhibitors (SSRIs) are widely used to treat depression, but the rates, timing, and baseline predictors of remission in "real world" patients are not established. The authors' primary objectives in this study were to evaluate the effectiveness of citalopram, an SSRI, using measurement-based care in actual practice, and to identify predictors of symptom remission in outpatients with major depressive disorder. METHOD: This clinical study included outpatients with major depressive disorder who were treated in 23 psychiatric and 18 primary care "real world" settings. The patients received flexible doses of citalopram prescribed by clinicians for up to 14 weeks. The clinicians were assisted by a clinical research coordinator in the application of measurement-based care, which included the routine measurement of symptoms and side effects at each treatment visit and the use of a treatment manual that described when and how to modify medication doses based on these measures. Remission was defined as an exit score of <or=7 on the 17-item Hamilton Depression Rating Scale (HAM-D) (primary outcome) or a score of <or=5 on the 16-item Quick Inventory of Depressive Symptomatology, Self-Report (QIDS-SR) (secondary outcome). Response was defined as a reduction of >or=50% in baseline QIDS-SR score. RESULTS: Nearly 80% of the 2,876 outpatients in the analyzed sample had chronic or recurrent major depression; most also had a number of comorbid general medical and psychiatric conditions. The mean exit citalopram dose was 41.8 mg/day. Remission rates were 28% (HAM-D) and 33% (QIDS-SR). The response rate was 47% (QIDS-SR). Patients in primary and psychiatric care settings did not differ in remission or response rates. A substantial portion of participants who achieved either response or remission at study exit did so at or after 8 weeks of treatment. Participants who were Caucasian, female, employed, or had higher levels of education or income had higher HAM-D remission rates; longer index episodes, more concurrent psychiatric disorders (especially anxiety disorders or drug abuse), more general medical disorders, and lower baseline function and quality of life were associated with lower HAM-D remission rates. CONCLUSIONS: The response and remission rates in this highly generalizable sample with substantial axis I and axis III comorbidity closely resemble those seen in 8-week efficacy trials. The systematic use of easily implemented measurement-based care procedures may have assisted in achieving these results.

PMID: 16390886 [PubMed - indexed for MEDLINE]



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うつ病概念の拡張 子供のうつ病

うつ病概念の拡張ということでこれまでいくつも紹介していますが、
今回は 子供のうつ病 について。
「従来型うつ病」は、勿論、人格の成熟した大人に見られるものでした。
しかし最近は、子供の抑うつも、うつ病として、拡張解釈しています。

下記の新聞記事の中で、
『うつ病の診断で広く使われている米国精神医学会の基準で「大うつ病性障害」(うつ病)と診断された』
と書かれている部分がありますね。
これが、うつ病の拡大解釈を招いている一因です。
『うつ病の診断で広く使われている米国精神医学会の基準で「大うつ病性障害」(うつ病)と診断された』
ものは、「従来型うつ病」を含みますが、それ以外も含んでしまいます。
診断として「ゆるい」、「精密でない」のです。
結果として、うつ病概念の拡張になっています。

記事の中で、

有病率は、中学1年(総数122人)に限ると10.7%に上った。研究チームの伝田健三・北大大学院准教授(精神医学)は「これほど高いとは驚きだ。これまで子供のうつは見過ごされてきたが、自殺との関係も深く、対策を真剣に考えていく必要がある」としている。

とあります。122人のなかで、13人が、DSM-4でいう「大うつ病」だったという結果らしいですが、中学一年生の10パーセントがうつ病らしいなどと、数字を一人歩きさせてはなりません。そんなことを言ったら、NHKのテレビ番組、「ためしてガッテン」レベルになってしまいます。

子供たちのメンタルヘルスにもっと関心を持つべきだというのは、賛成、しかし、注意深く、子供専用の精神医学を考えなくてはならないと、個人的には考えています。

精神病院で10年以上にわたりうつ病の治療と研究にあたってきたような医者の「うつ病」概念と、
DSMでいう「うつ病」の概念には明らかに差があります。

精神病院で30年くらい仕事をしている先生の予想や注意はよくあたります。その正確さを実体験している者にとっては、ドイツから始まり日本で成熟したうつ病診断学こそが本物だと思いたくなります。「あの患者さんは、3ヶ月ではすまない、半年はかかるだろう」「あの患者さんは、病棟で××さんと一回もめるだろう」「あの患者さんは、そのうち○○の症状が出て、△△の薬を使わざるを得ないだろうけれど、使えば使うで、これこれの問題が出るだろう」など、ちらっとアドバイスされて、実際その通りになるのですから、本物だと信じるにいたります。

DSMは、原因がはっきりわかって、その知見を基にして、明確に診断基準を提示しているというものでは、「まったく」ありません。
極端に言えば、病気の原因を探り、薬や精神療法の効果を統計的に処理するために規定された、操作的な疾患概念でしかありません。そして、アメリカ精神医学会の政治の産物でもあります。

しかしまた、長い間鍛えられてきたドイツ-日本の「うつ病」診断学も、最近の外来精神医学では、新しい展開を余儀なくされつつあるようです。

DSM流に操作的に概念規定していくのは、とりあえずよいと思うので、できるならば、もっと精密に、細分化して、診断したいものだと思います。「大うつ病」という「箱」が大きすぎるのです。

ともあれ、以下に紹介。

*****
小中学生の「うつ病」、1.5% 北大調査



  精神科医に「うつ病」と診断される小中学生の割合は1.5%であることが、北海道大学の伝田健三准教授(児童精神医学)らの調査でわかった。中学1年生では4.1%で、大人とほぼ同じだった。12日から徳島市である日本精神科診断学会で発表する。

  これまで小中学生本人へのアンケートをもとに1割前後が抑うつ状態との結果が出ているが、今回は医師の診断に基づく。北海道千歳市内の小学校8校の4~6年生616人と、中学校2校の1年生122人を対象に、学校の健康診断に合わせて4~6人の精神科医が診断に当たった。

  その結果、1.5%に当たる11人が、うつ病の診断で広く使われている米国精神医学会の基準で「大うつ病性障害」(うつ病)と診断された。高学年ほど増える傾向にあり、中学1年生では5人だった。軽症のうつ病や双極性障害(そううつ病)を含めると4.2%の31人(中1は13人)だった。不登校の児童・生徒も調べたが、うつ病は一人もいなかった。

  伝田准教授は「本人へのアンケートではうつ病の可能性も含むため数字が高めに出がちで、今回の結果が実態だろう。大人の有病率は約5%と考えられており、中学生は大人と変わらなかった」としている。

  また、最初の簡単な面接でうつ病や双極性障害を疑ったうちの約4分の1は、広汎性発達障害や注意欠陥・多動性障害(ADHD)とみられるという。伝田准教授は「ADHDなどの多動や衝動性といった特徴が、そう状態の症状と混同されている可能性がある」と指摘している。
ーーーーー
小学4年‐中学1年の一般児童・生徒738人に、医師が面接して診断した北海道大研究チームの調査で、うつ病とそううつ病の有病率が計4.2%に上ったことが8日、分かった。これまで質問紙を郵送する方式では例があるが、医師が面接する大規模な疫学調査は国内初という。有病率は、中学1年(総数122人)に限ると10.7%に上った。研究チームの伝田健三・北大大学院准教授(精神医学)は「これほど高いとは驚きだ。これまで子供のうつは見過ごされてきたが、自殺との関係も深く、対策を真剣に考えていく必要がある」としている。

 調査は今年4‐9月に北海道内の小学4年から中学1年までの児童、生徒計738人(男子382人、女子356人)を対象に実施。調査への協力が得られた小学校8校、中学校2校にそれぞれ4‐6人の精神科医が出向き問診、小児・思春期用の基準などに基づき診断した。それによると、軽症のものも含めうつ病と診断されたのは全体の3.1%、そううつ病が1.1%。

 学年別にみると、小学4年で1.6%、同5年2.1%、同6年4.2%と学年が上がるほど割合が高くなった。就寝・起床時間や1日のうちに外で遊ぶ時間、テレビ視聴時間、ゲームをする時間、朝食を取るかどうか、など生活スタイルについても尋ねたが、分析の結果、関連はみられなかった。

 これとは別に、高機能自閉症などの「高機能広汎性発達障害」や、注意欠陥多動性障害(ADHD)が疑われたケースが2.6%あったが、日常生活や発達歴に関する情報がないため明確な診断には至らなかった。うつ病やそううつ病と診断された児童、生徒の親らには、症状に応じて医療機関の受診を勧めるなどしたという。調査結果は12日から徳島市で開かれる日本精神科診断学会と、30日から盛岡市で開かれる日本児童青年精神医学会で発表する。

■うつ病・そううつ病

 うつ病には、症状が5つ以上あり2週間以上続く典型的な「大うつ病性障害」や、比較的軽症の「小うつ病性障害」、軽症だが1年以上症状が続く慢性の「気分変調性障害」がある。そううつ病は双極性障害とも呼ばれ、うつ病期とそう病期を繰り返す。
(新橋心療内科注……大人の場合は1年ではなくて、2年ですが、子供の場合は1年となっています。)

 成人のうつ病に関しては、厚生労働省研究班の2004‐06年度の報告書によると、約4100人の地域住民が対象となった面接調査で、約2%が過去1年に大うつ病性障害を経験していたとのデータがある。

■薬より安心感と休養を 児童精神科医の石川憲彦さんの話

 今回の調査データは、学校などの子供社会に不自然なストレスがかかっている現状への警鐘として位置付けられるが、一方で、診断された子供や親の不安をあおる懸念もある。子供のうつ病は症状の重さに非常に幅があり、うつ病と診断されたからといって、すぐに投薬が必要なわけではない点に注意が必要だ。いらいらなどの症状がある子供には、まず安心感と休養を与え、症状を生んでいる原因を周囲が協力して取り除いてやることが何より大切だ。


=2007/10/09付 西日本新聞朝刊= 

*****
また別の新聞にはこんな記事。

不登校対策の「メンタル・フレンド」が成果

2007年10月13日 10時30分

不登校や引きこもりなどの若者を支援している福島市のNPO法人ビーンズふくしまは、かつて不登校だったスタッフが外出できない若者の自宅を訪問する「メンタル・フレンド」に取り組み、成果が出始めている。

自らの経験を糧に、スタッフが年齢の近い若者と向き合い「心の鎖」を解きほぐす試み。

訪問事業へのニーズは高く、ビーンズふくしまは11月にも学生スタッフを募り事業を拡大する計画だ。

*****



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How to Be Positive

途中、納得できない部分もありますが、
私たちの思考や行動は、習慣的思考や潜在的に優勢な思考の結果であるというのです。
(the result of our habitual and predominant thoughts. )
潜在思考を negative から positive へ変えればいいという一例。



How to Be Positive

Thought is creative. All thought, good and bad, is creative and tends to become a material thing. That is why we must learn to be more positive. Our environment and all the experiences in our life are the result of our habitual and predominant thoughts.

Negative thoughts can tell us about something that needs our attention. Our job is to discover what needs to be done and take care of it. Many people fail to see a negative occurrence as a learning experience and continue to feel victimised and helpless, ultimately blaming others for what they drew to themselves, however unaware of that fact they may be.

Steps

  1. Practice positive thinking. Begin to exchange your negative thoughts for more positive ones, substitute riches for poverty, wisdom for ignorance, harmony for disharmony and freedom and independence for duty and obligation. Everything which exists is some manifestation of this one basic substance from which and by which all things have been created.
  2. Recognise that it is our mental process, our mental action and interaction that determine the infinite variety of situations and conditions that we have and will continue to experience through out our life.
  3. Focus your imagination and efforts on creating the 'state of mind' that will spontaneously create the desired results. It is much easier to affect change internally because we are dealing with an aspect of the universe that we have some control over. We can't always control our outer universe, but we can, with some effort, control our inner universe.
  4. Create your life from within. If you want more success, focus on all the ways that you are already successful. If you want more love, focus on all the people that already care about you and the abundance of love you have to give to others. If you want to create greater health, focus on all the ways that you are healthy, and so on and so forth.
  5. Reverse the evidence of your senses; trick your senses into believing things are better than they are, until they are. Think about what you want, create a picture of it in your mind, and make it very clear and precise. Hold it there and focus on it in a gentle, positive way until it becomes more and more of a reality to you. That is positive thinking.
  6. Learn to act as if the life you visualize were already here. The only thing between you and your desire to be successful and wealthy is one single fact: You are not successful or wealthy because of how you think. This little known fact keeps many from reaching their goals of success and wealth. You create your thoughts, your thoughts create your intentions, your intentions create your reality.


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ストレス耐性度チェック

 



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うつ病のアパシーとパーキンソン病のアパシー

アパシーはapathy
indifference  無関心 impassiveness 無感動 冷淡 のこと。
without feeling のことで、a は without 、pathos は feeling。

医学的診断としては、たとえば、次のようになる。



なにが興味深いのかといえば、
アパシーって、うつ病みたいだなあと思えば、そうではなくて、
アパシーとうつは重なるところがあるけれど、
「うつを伴わないアパシー」があり、それは、
パーキンソン病の精神症状の特徴であるとされていることである。





うつ病の概念をどこまで拡張するか、
診断の精度をどの程度にするか、検討を要する。



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うつでの復職のむつかしさ

うつ病で休職した後の復職の難しい原因は主に二点ある。

一点は、職場環境がどのようにストレスであるか、複雑であるということだ。
いろんな職場がある。

もう一点は、最近の「うつ病」がむかしの「うつ病」と異なっていることだ。
「従来型うつ病」については精神医学としてはかなりの経験もあり、
技術の蓄積もある。
しかし最近の、「新型うつ病」については、まだ知見の蓄積に乏しい。

現代型うつ病
未熟型うつ病
ディスチミア親和型
非定型うつ病
辺縁型うつ病
各種性格障害と近縁のうつ状態……たとえば、回避性人格障害、自己愛性人格障害、境界型人格障害などにともなううつ病

もうすこしジャーナリスティックな分野だと
プレうつ
擬態うつ
プチうつ

もうすこし評価の定まったものをあげると
逃避型抑うつ
退却神経症
軽症うつ病

など、いろいろとある。

これらを一括して、「うつ病」と呼んでいる現状なので、
うつからの復帰といっても、ひとまとめには言えないことになる。

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