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軽度発達障害児対応の基本

・本人が悪いのではない、そしてお母さんのせいではない

 軽度発達障害児は、もともとバランスよく育てにくいのであって、誰のせいでもありません。家族は罪悪感を持たずに、学校、専門機関、ご近所など、様々な立場からの手助けをお願いしましょう 。


・ハードル設定の意識…得意・不得意の区別

 軽度発達障害を持つ子どもは、得意・不得意のバランスがよくないので、あれ(得意)ができるのだから、これ(不得意)くらいできて当然と、得意・不得意を同じレベルでハードル(目標)設定するとクリアが難しく、子どもも周囲もストレスを感じ、二次障害のもととなります。得意・不得意を区別して考え、得意分野には高めの、不得意分野には低めのハードル設定をしてあげましょう。


・何度も繰り返すだけでは効果がない

 何度言い聞かせても、やらせてもうまくいかないのは子どもが悪いのではなく、その子に合わない「伝え方」や「やり方」が原因の場合がほとんどです。繰り返してもうまくいかない場合には、子どもを責めるのではなく、「伝え方」「やり方」は適切であったか考え直してみる必要があります。また、「伝え方」「やり方」は適切であっても、どうしても子ども自身が欲求や感情をコントロールできない場合がありますので、その場合は、クリアしてほしいハードルの高さを考え直してみる必要があるかも知れません。


・気分転換

 軽度発達障害を持つ子に日常的に対応する場合、家族に慢性的にストレスが掛かることがあります。ストレスを抱えたまま子どもに対応するのは、お互いにとって良い結果は得られません。家族で連携を取り、特にお母さんは、時折子どもと距離を置いたり、趣味や旅行などで気分転換をはかりましょう。子どもの発達特性を理解した上で、家族が余裕をもって子どもに接する環境自体が、軽度発達障害を持つ子どもにとって、とても大切なことなのです。

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医療機関・療育機関で発達特性の説明を受けるときは、必ず心理検査の結果を見せていただき、以下のポイントについて説明を受けましょう。


・二次障害(環境による心の問題)か生得的障害(生まれもった障害)か

 生得的な障害であっても、「わがまま」「反抗的」「非常識」「やる気がない」など本人の性格の問題・親の躾の問題と受け取られる場合があります。また、生得的な障害が引き金となって二次障害を起こすことも少なくなく、二次障害にもともとの生得的な障害が見逃される場合もあります。二次障害と、生得的な障害とでは対応が異なりますので、専門的な視点での、二次障害か生得的な障害かの判断はとても重要です。


・知的側面

 とかくADHDや自閉傾向の側面のみに注目しがちですが、知的発達に遅れがあるか否かが子どもに対応する上でとても重要なポイントです。子どもにとって、簡単すぎず、難しすぎないハードルの設定が、二次障害を起こさず、持てる力を発揮させるための大切な援助となります。


・それぞれの傾向と重複の程度

 ADHD<注意欠陥/多動性障害>・高機能広汎性発達障害<高機能自閉症、アスペルガー症候群>・LD<学習障害>があるかないかを確認しましょう。軽度発達障害を持つ子どもは、上記の傾向が複数重複する可能性がとても高いといえますので、どの障害をどの程度もっており、日常生活に最も支障を来す障害は何なのか具体的に説明を受けましょう。


・心理検査の結果や発達特性が日常にどう影響するのか

 心理検査を受けた場合、検査自体の説明にとどまらず、検査の結果と発達特性が“その子”の日常生活のどの部分にどの様に影響しているのか、そして、どう対応すればいいのかを具体的に確認しましょう。“その子”のために、 周囲がすぐに取りかかれる具体策の提示がない場合、または、周囲が問題意識を持っているのに、『問題ない』『様子を見ましょう』と言われた場合は、別の機関でのセカンドオピニオンも必要かもしれません。



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LDの本と専門機関

基本図書(親・教師向き)

ぼくのことわかって -LD(学習障害)児への手引き-
佐々木正美・中川克子・上野一彦 (1990)
朝日新聞厚生文化事業団

わかるLDシリーズ 第1巻「LDとは何か」-基本的な理解のために-
日本LD学会編 責任編集;上野一彦・中根 晃 (1996)
日本文化科学社

わかるLDシリーズ 第2巻「LDの見分け方」 -診断とアセスメント-
日本LD学会編 責任編集;森永良子・中根 晃 (1997)
日本文化科学社

わかるLDシリーズ 第3巻「LDと学校教育」
日本LD学会編 責任編集;林 邦雄・牟田悦子 (1998)
日本文化科学社

わかるLDシリーズ 第4巻「LDと医療」
日本LD学会編 責任編集;中根 晃・加藤醇子 (2000)
日本文化科学社

わかるLDシリーズ 第5巻「LDと家庭教育」
日本LD学会編 責任編集;牟田悦子・森永良子 (1999)
日本文化科学社

わかるLDシリーズ 第6巻「LDの思春期・青年期」
日本LD学会編 責任編集;上野一彦・森永良子 (2001)
日本文化科学社

LD(学習障害)とADHD(注意欠陥多動性障害)
上野 一彦 (2003)
講談社

学習障害児の相談室 -つまずきやすい子どもの教育-
上野一彦 (1987)
有斐閣

おちこぼれのカルテ -スクールサイコロジストの目-
中川克子 (1984)
有斐閣

子育て質問箱 -LD児の療育-
中川克子 (1998)
日本文化科学社

こんなサポートがあれば!―LD、ADHD、アスペルガー症候群、高機能自閉症の人たち自身の声
梅永 雄二 (編集) (2004)
エンパワメント研究所

怠けてなんかない! ディスレクシア~読む書く記憶するのが困難なLDの子どもたち
品川 裕香 (2003)
岩崎書店

基本図書 (親・子ども本人向き)


きみならどうする -LDのためのソーシャルスキル-
上野一彦 (1991)
日本文化科学社

[シリーズ障害を知る本・第8巻] LD(学習障害)の子どもたち
上野一彦編 (1998)
大月書店

専門書 (専門家・教師・学生向き)
LD・ADHDの理解と支援 -学校での心理臨床活動と軽度発達障害-
牟田 悦子 (2005)
有斐閣


学習能力の障害 -心理神経学的診断と治療教育-
D.J. ジョンソン・H.R. マイクルバスト/森永良子・上村菊朗 共訳 (1975)
日本文化科学社

LD-学習障害 治療教育的アプローチ 改訂2版 (小児のメディカル・ケア・シリーズ 6)
上村菊朗・森永良子 (1992)
医歯薬出版

子どもの発達と感覚統合
エアーズ/佐藤 剛 訳 (1980)
共同医書出版

講座サイコセラピー11 ソーシャル・スキル・トレーニング(略称SST)
渡辺弥生 (1996)
日本文化科学社

ADHD(注意欠陥多動性障害)の子どもたち
マーク・セリコウィッツ著/中根 晃・山田佐登留 訳(2000)
金剛出版

教室で行う特別支援教育 育てるカウンセリングによる教室課題対応全書
月森 久江, 岸田 優代, 朝日 滋也, 國分 康孝, 國分 久子 (編集) (2003)
図書文化社

専門書(教師・親向き)

学習障害児が出た時どうする? (楽しいクラスづくりフレッシュ文庫11)
伊藤雅亮 (1991)
明治図書

学習障害児の教育
上野一彦・牟田悦子 (1992)
日本文化科学社

LD児の指導法入門
鈴木健次・佐々木徳子 (1992)
川島書店

学習障害児の教科指導 算数・国語を伸ばすために
平山諭・津田誠一・田口貴春 (1993)
福村出版

LD ことばの表現力をのばす
C.W.ヘインズ/牟田悦子訳 (1995)
日本文化科学社

学級担任のためのLD指導Q&A
上野一彦 編 (1996)
教育出版

LD・ADHDへのソーシャルスキルトレーニング
小貫 悟・三和 彩・名越斉子 著 (2004)
日本文化科学社

LD教育選書・第1集「LDとは」症状・原因・診断理解のために
上野一彦他 編集 (1996)
学習研究社

LD教育選書・第2集「LDの教育と医学」学習課題と教育方法
上野一彦他 編集 (1997)
学習研究社

LD教育選書・第3集「LDの領域別指導事例」集団参加から教科指導まで
上野一彦他 編集 (1997)
学習研究社

図説 LD児の言語・コミュニケーション障害の理解と指導
竹田契一・里見恵子・西岡有香 著 井上芳子 絵(1997)
日本文化科学社

インリアル・アプローチ -子どもとの豊かなコミュニケーションを築く-
竹田契一・里見恵子 編著(1994)
日本文化科学社

特殊学級・養護学校用 「長所活用型指導で子どもが変わる」〈Part2〉
-認知処理様式を生かす国語・算数・作業学習の指導方略-
日本版K-ABC著者監修 藤田和弘・青山真二・熊谷恵子編著 (2000) 図書文化社

多動症候群への理解と対応 「落ち着きのない子どもたち」
石崎朝世 監修 (1997)
すずき出版

【VTR版】多動症候群への理解と対応 「落ち着きのない子どもたち」(全2巻)
石崎朝世 監修 (1997)
ジェムコ出版(株)

「多動な子どもたちQ&A」 -ADHD(注意欠陥・多動性障害)を正しく理解するために-
石崎朝世 編著 (1999)
(社)発達協会ブックメイト

「へんてこな贈り物」 -誤解されやすいあなたに-注意欠陥・多動性障害とのつきあい方-
エドワード・M・ハロウェル,ジョン・J・レイティー著/司馬理英子訳 (1998)
インターメディカル

「児童の臨床心理」 -放送大学印刷教材-
上野一彦 編著 (1998)
(財)放送大学教育振興会

「通級による指導の手引」 -解説とQ&A-
文部省特殊教育課内特殊教育研究会編著 (1993)
第一法規出版

親または「親の会」が書いた本

飛び立つ -LD(学習障害)児の学校を拓いて-
見晴台学園 (1996)
かもがわ出版ナ

ぼく学校きらいだもん -LD児を育てた母の記録-〔新装版〕
筒井やよひ (1990)
同時代社

STEP BY STEP 1.社会性編 2.算数編 3.ことば編
親の会「にんじん村」編集
「にんじん村」への 連絡先 各編一冊 \ 500.-

「ぼくたちだって輝いて生きたい」 理解されにくいLD-親の手記
全国学習障害(LD)児・者親の会連絡会 編 (1994)
青木書店

LD(学習障害)児・者を持つ親のハンドブック「きみといっしょに」
全国学習障害(LD)児・者親の会連絡会 編 (1996)
朝日新聞厚生文化事業団

 

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◆ さらに詳しい書籍リストは以下のサイト。
全国LD親の会作成 http://www.normanet.ne.jp/~zenkokld/books.html

LD STATION 作成 http://www.amy.hi-ho.ne.jp/yamaokash/ldbook00.htm

日本LD学会の出版物 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jald/doc/doc-j/j10.html

Learning Disabilities Association of America (LDA) 作成 [洋書]
http://www.ldanatl.org/store/

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専門機関

機  関  名電 話 番 号
東京都総合教育相談室03-3493-8008
都立教育研究所・相談部03-3492-6188
都立多摩教育研究所・教育相談研究室0425-24-7221
都立多摩療育園0423-66-2311
都立梅ヶ丘病院・子どもの精神保健相談室・LD/ADHD専門外来03-3323-1621
東京小児療育病院0425-61-2521
こどもの城 小児保健クリニック03-3797-5667
国立大蔵病院 成育外来(小児科・精神科)03-3416-0181
国立小児病院精神科・神経科 小児医療研究センター03-3414-8121
国立精神・神経センター武蔵病院 小児神経科042-341-2711
東京女子医科大学附属病院 小児心理室03-3353-8111
日本大学・医学部附属板橋病院小児科 03-3972-8135
東京逓信病院 小児神経科03-5214-7111
東邦大学医学部附属大橋病院 小児科03-3468-1251
中川エデュケーショナルクリニック 連絡先変更 2000/110468-73-8227
旭出学園教育研究所03-3922-4422
こどもの発達療育研究所・長瀬療育相談室03-3221-9015
(社)発達協会王子クリニック03-3903-3311
明神下診療所・御茶ノ水発達センター03-5207-6177
のぞみ発達クリニック03-3627-9029
白百合女子大学 発達臨床センター03-3326-0925
明治学院大学心理臨床センター03-5421-5444
東京学芸大学・教師のための電話FAX電子メール相談電話相談は終了
東京学芸大学特殊教育研究施設・発達障害電話相談042-329-7686
東京学芸大学・インターネット発達障害チェックリスト 
東京成徳大学「心理・教育相談センター」03-3927-4117
リソースセンター ONE (ワン)03-3843-9455
練馬区総合教育センター・光が丘分室03-3904-4881
ユートリア(すみだ生涯学習センター) 教育相談03-5247-2001
司馬クリニック0422-55-8707
埼玉県立小児医療センター048-758-1811
埼玉県立総合教育センター048-874-1221
埼玉県立総合教育センター特殊教育室048-874-3400
埼玉医科大学附属病院・神経精神科・心療内科049-276-1111
伊豆逓信病院・小児リハビリテーション科05597-8-2320
横浜市総合リハビリテーションセンター045-473-0666
社団法人・神奈川学習障害研究協会 (神奈川LD協会)045-984-7910
LD発達相談センターかながわ045-988-3501
クリニック・かとう (院長・加藤醇子)044-522-0011
よこはま発達クリニック (院長・内山登紀夫)045-942-1077



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高機能自閉症 (HA)/アスペルガー症候群 とは

自閉症は症例が多彩であり、健常者から重度自閉症者までの間にははっきりとした壁はなく、その多様性・連続性を表した概念を自閉症スペクトラムや自閉症連続体などと呼ぶ。

知的障害を伴う場合が多いが、知的能力(一般的にIQで判断される)が低くない自閉症のことを高機能自閉症と呼ぶことがある。また、知的能力の優劣に関わらず、一部の分野で驚異的な能力を有する場合もあり、その驚異的な能力を有する者をサヴァン症候群と呼ぶ。 なお、「高機能自閉症」と「アスペルガー症候群」、「低機能自閉症」と「カナー症候群」は基本的には同じものであり、臨床的には区別されないことが多い。
(DSM-Ⅳ、ICD-10では言語障害がないものをアスペルガー症候群、言語障害があるものを自閉性障害、小児自閉症(カナー症候群)と分類する)



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高機能自閉症/アスペルガー症候群の定義と判断基準(試案)

1. 高機能自閉症の定義
高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
※ 本定義は、DSM-IVを参考にした。

2. 高機能自閉症の判断基準
以下の基準に該当する場合は、教育的、心理学的、医学的な観点からの詳細な調査が必要である。

1. 知的発達の遅れが認められないこと。

2. 以下の項目に多く該当する。

○ 人への反応やかかわりの乏しさ、社会的関係形成の困難さ
目と目で見つめ合う、身振りなどの多彩な非言語的な行動が困難である。
同年齢の仲間関係をつくることが困難である。
楽しい気持ちを他人と共有することや気持ちでの交流が困難である。

【高機能自閉症における具体例】
友達と仲良くしたいという気持ちはあるけれど、友達関係をうまく築けない 。
友達のそばにはいるが、一人で遊んでいる。
球技やゲームをする時、仲間と協力してプレーすることが考えられない。
いろいろな事を話すが、その時の状況や相手の感情、立場を理解しない。
共感を得ることが難しい。
周りの人が困惑するようなことも、配慮しないで言ってしまう。

○ 言葉の発達の遅れ
話し言葉の遅れがあり、身振りなどにより補おうとしない。
他人と会話を開始し継続する能力に明らかな困難性がある。
常同的で反復的な言葉の使用または独特な言語がある。
その年齢に相応した、変化に富んだ自発的なごっこ遊びや社会性のある物まね遊びができない。

【高機能自閉症における具体例】
含みのある言葉の本当の意味が分からず、表面的に言葉通りに受けとめてしまうことがある。
会話の仕方が形式的であり、抑揚なく話したり、間合いが取れなかったりすることがある。

○ 興味や関心が狭く特定のものにこだわること
強いこだわりがあり、限定された興味だけに熱中する。
特定の習慣や手順にかたくなにこだわる。
反復的な変わった行動(例えば、手や指をぱたぱたさせるなど)をする。
物の一部に持続して熱中する。

【高機能自閉症における具体例】
みんなから、「○○博士」「○○教授」と思われている。(例:カレンダー博士)
他の子どもは興味がないようなことに興味があり、「自分だけの知識世界」を持っている。
空想の世界(ファンタジー)に遊ぶことがあり、現実との切り替えが難しい場合がある。
特定の分野の知識を蓄えているが、丸暗記であり、意味をきちんとは理解していない。
とても得意なことがある一方で、極端に苦手なものがある。
ある行動や考えに強くこだわることによって、簡単な日常の活動ができなくなることがある。
自分なりの独特な日課や手順があり、変更や変化を嫌がる。

○ その他の高機能自閉症における特徴
常識的な判断が難しいことがある。
動作やジェスチャーがぎこちない。

3. 社会生活や学校生活に不適応が認められること。
 
※ DSM-IV及び、スウェーデンで開発された高機能自閉症スペクトラムのスクリーニング質問紙ASSQを参考にした。
※ 定義、判断基準についての留意事項 
○ ADHDや高機能自閉症等は、医学の領域において研究、形成された概念である。教育的対応のための定義や判断基準は、現在ある医学的な操作的診断基準に準じて作成する必要がある。 
○ 判断基準は、都道府県教育委員会がその判断及び指導方法等について学校を支援するために設置することになろう専門家で構成された組織(以下、「専門家チーム」という)において活用することを想定した。  
○ 専門家チームでは、医療機関と連携して、必要に応じて医学的診断が受けられるようにしておく必要がある。 



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ADHD (注意欠陥多動性障害)

ADHDの定義と判断基準(試案)

(1) ADHDの定義
ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。 
※ アメリカ精神医学会によるDSM-IV(精神疾患の診断・統計マニュアル:第4版)を参考にした。

(2) ADHDの判断基準
以下の基準に該当する場合は、教育的、心理学的、医学的な観点からの詳細な調査が必要である。

1.以下の「不注意」「多動性」「衝動性」に関する設問に該当する項目が多く、少なくとも、その状態が6カ月以上続いている。

○ 不注意

学校での勉強で、細かいところまで注意を払わなかったり、不注意な間違いをしたりする。
課題や遊びの活動で注意を集中し続けることが難しい。
面と向かって話しかけられているのに、聞いていないようにみえる。
指示に従えず、また仕事を最後までやり遂げない。
学習などの課題や活動を順序立てて行うことが難しい。
気持ちを集中させて努力し続けなければならない課題を避ける。
学習などの課題や活動に必要な物をなくしてしまう。
気が散りやすい。
日々の活動で忘れっぽい。

○ 多動性

手足をそわそわ動かしたり、着席していてもじもじしたりする。
授業中や座っているべき時に席を離れてしまう。
きちんとしていなければならない時に、過度に走り回ったりよじ登ったりする。
遊びや余暇活動におとなしく参加することが難しい。
じっとしていない。または何かに駆り立てられるように活動する。
過度にしゃべる。

○ 衝動性

質問が終わらないうちに出し抜けに答えてしまう。
順番を待つのが難しい。
他の人がしていることをさえぎったり、じゃましたりする。
2.「不注意」「多動性」「衝動性」のうちのいくつかが7歳以前に存在し、社会生活や学校生活を営む上で支障がある。

3.著しい不適応が学校や家庭などの複数の場面で認められる。

4.知的障害(軽度を除く)、自閉症などが認められない。
 
※ アメリカにおけるチェックリストADHD-RS(学校用)、及びDSM-IV を参考にした。
※ 定義、判断基準についての留意事項 
○ ADHDや高機能自閉症等は、医学の領域において研究、形成された概念である。教育的対応のための定義や判断基準は、現在ある医学的な操作的診断基準に準じて作成する必要がある。 
○ 判断基準は、都道府県教育委員会がその判断及び指導方法等について学校を支援するために設置することになろう専門家で構成された組織(以下、「専門家チーム」という)において活用することを想定した。  
○ 専門家チームでは、医療機関と連携して、必要に応じて医学的診断が受けられるようにしておく必要がある。 

 



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学習障害 Learning Disabilities  LD

学習障害の定義 Learning Disabilities  LD
1999.7.2
学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算するまたは推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。

学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。 
 
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学習障害の定義の解説
1999.7.2
[1] 学習障害の特徴
ア 学習障害とは、知能検査等の結果から、基本的には知的障害のような全般的な知的発達の遅れは見られないが、学業成績、行動観察、詳細な心理検査等により、学習上の基礎的能力である聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力を習得し、使用することについて、1つないし複数の著しい困難があると見られる様々な状態を総称するものである。 
イ 中間報告の定義では、能力の範囲に「など」をつけ、解説において「など」による能力には、運動・動作の能力、社会的適応性に係る能力が考えられるが、具体的な内容とその限界について更に検討を進めるとしていた。
しかし、全米学習障害合同委員会の定義では対象となる能力は限定列挙であること、都道府県教育委員会等からも学習障害の範囲が不明確になるという意見があったこと、運動・動作の能力や社会的適応性に係る能力の欠如が学習障害に重複して現れることはあるが、その能力の欠如のみでは学習障害とは認定し難いことから、学習障害の対象となる習得と使用に著しい困難を示す能力の範囲は、「聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力」に限定することとした。 
ウ なお、推論する能力には、図形や数量の理解・処理といった算数や数学における基礎的な推論能力が含まれていることに留意する必要がある。 

[2] 学習障害の原因
ア 学習障害の直接の原因は、個人に内在するものであり、中枢神経系の何らかの機能障害によるものと推定される。つまり、様々な感覚器官を通して入ってくる情報を受け止め、整理し、関係づけ、表出する過程のいずれかに十分機能しないところがあるものと考えられる。しかし、中枢神経系のどの部分にどのような機能障害があるかについては、まだ医学的に十分には明らかにされていない状況にある。
学習障害は、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの他の障害、あるいは児童生徒の生育の過程や現在の環境における様々な困難といった外的・環境的な要因による学習上の困難とは異なる。また、ある教科に対する学習意欲の欠如や好き嫌いによるものでもない。 
イ 除外すべき障害の例示につけた「など」の障害には、言語障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱がある。
なお、言語障害については、器質的又は機能的な構音障害や吃音等の話し言葉のリズムの障害そのものは、学習障害の直接の原因となるものではないが、話す、聞く等言語機能の基礎的能力に発達の遅れがあるという状態については、学習障害でも同様に見られることがあることに留意する必要がある。 

[3] 他の障害や環境的要因との重複
ア 中間報告の定義では、他の障害や環境的な要因が学習障害の直接の原因ではないが、「ともに生じる可能性」があるとした。しかし、他の障害や環境的要因が重複する場合、それらによってより困難な状態が生じることはどの障害でも同様であり、学習障害以外の障害の定義では重複する障害との関係は示されていないこと等から、重複障害についての記述は定義ではふれないこととした。 
イ 知的障害と学習障害の関係については、教育上の措置を考えるに当たっては、[1]にも述べたように基本的には全般的な知的発達の遅れがないことの確認を要件としていることから、知能検査等の結果、あきらかに知的障害が見られれば、知的障害の養護学校や特殊学級で教育を行うことが適当である。
ただし、知的障害でありながら話す、書く等の学習の基礎的能力に大きな能力上のアンバランスがみられる等学習障害と同様の状態を示す場合がまれに見られるが、そのような場合は、知的障害児を対象とした教育の場の中で、必要に応じて学習障害としての配慮をすることが適当である。 
ウ 知能検査の結果が、知的障害との境界付近の値を示すとともに、聞く、話す、読む、書く等のいずれかの学習上の基礎的能力に特に著しい困難を示す場合の教育的な対応については、その知的発達の遅れの程度や社会的適応性を考慮し、学習障害として、通常の学級等において学習上の基礎的能力の困難を改善することを中心とした配慮を行うか、知的障害として特殊学級において学習上の困難への対応を工夫することが適当である。 
エ 視覚障害、聴覚障害等他の障害と学習障害が重複する場合についても、主たる障害に対応する盲・聾・養護学校や特殊学級における教育、通級による指導等の中で、必要に応じて学習障害としての配慮をすることが適当である。 

[4] 行動の自己調整・対人関係の問題
ア 学習障害児には、行動の自己調整や対人関係などに問題が見られる場合がかなりあることから、これらの問題が「学習障害に伴う形で現れることもある」旨を中間報告の定義に記述した。具体的には、例えば学校生活において、注意集中の困難や多動、対人関係などの社会的適応性の問題が現れることもある。このような問題は、一次的に学習障害と重複して現れている場合と、学習障害による学習上の困難の結果、そのような問題が二次的に生じている場合がある。
このような場合には、学習障害児に対する指導の中で、それらの問題の改善につき配慮する必要がある。 
イ しかしながら、このような問題のみが生じていたり、このことが主たる原因として学習の遅れが生じている場合は学習障害ではないことから、定義では触れないこととしたが、その困難の程度に応じて、情緒障害の特殊学級における教育や通級による指導などの対応を考慮するか、通常の学級において授業に集中しやすい環境の整備や対人関係等の改善に配慮する等の教育的対応を考慮する必要がある。 

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そして、特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議は、2002年10月21日付けで「今後の特別支援教育の在り方について(中間まとめ)」を公表しました。この「中間まとめ」は、2002年2月から3月にかけて全国5地域の公立小学校(1~6年)及び公立中学校(1~3年)の通常の学級に在籍する児童生徒41,579人、370校の4,328学級を対象にして実施された調査結果等をもとにして、検討されたものです。この「中間まとめ」から、関連部分を以下に抜粋します。
【 全文については http://www.mext.go.jp/b_menu/public/2002/021004a.htm を参照して下さい 】

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【 追 記 】
2003年3月28日付けで「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」が公表されました。大筋では「中間報告」の内容を踏襲したものとなっています。 全文及び議事録要旨は以下のサイトから閲覧できます。 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/index.htm

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LD、ADHD、高機能自閉症のある通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への教育的対応は緊急かつ重要な課題となってきている。こうした児童生徒が学級にいる場合、担任教員の理解や経験または学校内での協力体制が十分でないこと等から適切な対応ができない、また、時には、学級としてうまく機能しない状況に至る事例もある。
これらの児童生徒は多様な障害の状態像を示すことがあり、その状態に応じて情緒障害、言語障害等の通級指導教室や特殊学級において教育を受けている状況はあるが、総合的、体系的な対応はなされてこなかった。


LDについては、通級指導教室に関する調査研究協力者会議の報告(平成4年)で初めてその対応についての検討の必要性が取り上げられ、LDに関する調査研究協力者会議の報告(平成11年7月)により、その定義、判断基準、実態把握基準(試案)、指導の方法などが示された。また、平成12年度から、LDのある児童生徒に対する指導体制の充実事業が全国で展開されてきており、同会議の示した定義、判断基準、実態把握基準等の検証や学校における適切な指導体制の整備に向けて取り組んでいる。具体的には、小・中学校に校内委員会を設置し学校における実態把握を行うとともに、教育委員会に置かれる専門家チームの意見を踏まえてLDの判断や適切な教育的対応を決定するほか、専門家による巡回指導の有効性の検証を行ってきている。
しかしながら、ADHD、高機能自閉症等については、定義や判断基準が明確になっていないこと等から学校における適切な対応が行われてこなかった。


LD、ADHD等の児童生徒数は、現在の特殊教育の対象者の割合(義務教育段階で約1.4%)に比べて多く6%程度と考えられること、また、特定の学習面で著しい困難を示すLDと、行動面で困難を示すADHDや高機能自閉症とを併せもつ児童生徒がいること、LD、ADHD等については指導内容や指導上配慮すべき点について類似する点も少なくないことから個々の障害毎にではなく総合的に対処することが効率的な場合も考えられることから、これらの実態を踏まえて効果的かつ効率的に対応することが求められる。
本調査研究協力者会議では、ADHDや高機能自閉症について、別添資料にあるように定義と判断基準(試案)、学校における実態把握のための観点、指導方法等について作業部会を設置して検討してきた。今後は、同作業部会のとりまとめた内容が実際に学校教育の場で効果的に活用できるよう検証するとともに、学校における適切な指導体制を早急に構築する必要がある。国においては、上述のLDへの指導体制の充実事業を通じて整備を進めている支援体制を拡充し、ADHDや高機能自閉症をも含めた総合的な支援体制の確立に向けて取り組むことが必要である。

ADHDや高機能自閉症は、近年、その対応の重要性が認識されてきている新しい障害であることから、管理職を含む教職員や保護者等への幅広い理解の推進が必要である。

また、LDとともに、ADHDや高機能自閉症といった通常の学級に在籍する特別な教育的支援の必要な児童生徒に関わる教職員の養成や研修を、国立特殊教育総合研究所や都道府県等の教育センター等において積極的に行う必要がある。

ADHDや高機能自閉症等は、個々の児童生徒により多様な状態を示すことがあり、例えば、ADHDの児童生徒が同時に高機能自閉症と判断されたり、同時にLDと判断されることもある。このため、これらの児童生徒の教育的ニーズは多岐に渡ることもあることから、国立特殊教育総合研究所においては、当該児童生徒への具体的な指導方法の実践的な研究を引き続き進めるとともに、これまでの研究成果や実践事例を取りまとめ活用し易いものにするなど、学校や都道府県の教育センター等に対して的確に情報提供することが必要である。


LD、ADHD等について、さらに幼児期からの支援を進めるためには、幼稚園全体で支援しあえるような体制を整備したり、日頃から保護者への理解推進を進めていくような研修等の充実が必要である。また、幼稚園と比べて保育園の在籍幼児数が多い実情を踏まえれば、障害に対応した適切な教育的対応を考えていく上で保育園の役割を軽視することはできない。保育園においても幼稚園と同様の視点から取り組むことが期待され、また、小学校や盲・聾・養護学校の小学部において幼稚園や保育園と日頃からの情報交換を行うことが就学後に児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応した教育を行う上で重要と考えられる。

親の会やNPOの中にはLD、ADHD等の理解の促進等を目的に活発に活動を行っているものがある。こうした草の根的な活動は、教育の充実や効果的な展開を図る上で、重要な役割を果たしうるものと考えられることから、親の会等との連携も図りながら取組みを行うことも重要なことと考えられる。
また、中学校を卒業した後は、高等学校へ進学する生徒も多いことから、LDやADHD等へ対応した特別な支援体制を構築することや、研修などを通じて理解推進を進めることが期待される。また、都道府県等の教育委員会に設置された専門家チームが、必要に応じて高等学校への支援を行なうことについて検討する必要がある。さらに、養護学校高等部との連携も重要である。

高等教育段階においても、障害に応じた配慮が各学校においてなされつつあるが、大学で学ぶLD、ADHD等の学生についても、支援の在り方についての研究を進めるとともに、様々な機会を通して大学関係者の理解の促進が図られることが重要である。



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