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早朝高血圧や仮面高血圧

近年の高血圧治療では、家庭血圧計や24時間自動血圧計の普及で、従来の外来随時血圧では見逃されていた早朝高血圧や仮面高血圧の存在が意識されるようになりました。
しかもそうした病態が、より高頻度に脳・心血管病につながることが、数多くのスタディで明らかにされています。
したがって今日の高血圧治療では、24時間にわたって良好で安定した降圧効果を有する薬剤が求められています。

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確かにそうで、やはり家庭血圧計で時間と血圧を記録してみたほうがいいだろう。

朝方は交感神経活性が亢進し、血圧の上昇が起こるのだから、交感神経系の作用を抑制すればいいことは分かるが、どの薬がいいのかは、各人の諸条件による。たいがいどの薬でもいいはずというタイプの人もいるので神経質になる必要はないだろう。


うつ病と体内リズム

人とマウス、行動そっくり 種を超えた基本法則存在か 
 
記事:共同通信社 提供:共同通信社【2008年4月30日】

 マウスと人間の行動は動きの速さを別にすれば、休息の取り方などのパターンが全く同じであることを大阪バイオサイエンス研究所(大阪府吹田市)や東京大などの研究チームが突き止め、30日付の米科学誌プロスワンに論文を発表した。

 チームは、体内のリズムを生む遺伝子の機能を失ったマウスと、うつ病の人の休息パターンが同じことも発見。生物の行動の背後に種を超えた基本法則が存在する可能性を示すとともに、うつ病の原因究明にもつながる成果として注目される。

 発表したのは、同研究所の内匠透(たくみ・とおる)研究室長(神経科学)や山本義春(やまもと・よしはる)東大教授(生体情報論)ら。マウスはかごに入れ、重みに反応するセンサーを敷いて動きを記録。人には腕時計型の加速度センサーを着けて普通に生活してもらい、体の動きを記録した。

 活動時間や休息時間について、長いものや短いものがどんな頻度で現れるかを分析すると、パターンは全く同じで、人の動きを100倍の速さで早回しすればマウスと同じになることが分かった。

 山本さんは「人とマウスの脳には同じ回路があって、行動を支配する同じ法則を作り出しているのではないか」と語る。

 一方、体内のリズムをつくる「時計遺伝子」のうち「Per2」の機能を失ったマウスと、うつ病の人では、長い休息時間の頻度が高いというパターンが同じだった。

 Per2に変異のある人で睡眠障害が起こることは知られているが、うつ病との関係は不明だ。内匠さんは「時計遺伝子の機能が失われることで、うつ病になる可能性はある」と話している。

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このタイプのうつ病もあると昔から指摘されている。


Common Mental Disorder

用例として以下がある。

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Poverty and common mental disorders in developing countries.
Patel V, Kleinman A.
London School of Hygiene and Tropical Medicine, India.

A review of English-language journals published since 1990 and three global mental health reports identified 11 community studies on the association between poverty and common mental disorders in six low- and middle-income countries. Most studies showed an association between indicators of poverty and the risk of mental disorders, the most consistent association being with low levels of education. A review of articles exploring the mechanism of the relationship suggested weak evidence to support a specific association with income levels. Factors such as the experience of insecurity and hopelessness, rapid social change and the risks of violence and physical ill-health may explain the greater vulnerability of the poor to common mental disorders. The direct and indirect costs of mental ill-health worsen the economic condition, setting up a vicious cycle of poverty and mental disorder. Common mental disorders need to be placed alongside other diseases associated with poverty by policy-makers and donors. Programmes such as investment in education and provision of microcredit may have unanticipated benefits in reducing the risk of mental disorders. Secondary prevention must focus on strengthening the ability of primary care services to provide effective treatment.

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次の用例では説明を加えている。

Short-term psychodynamic psychotherapies for common mental disorders

Short-term psychodynamic psychotherapies have been subjected to randomised controlled trials for a range of common mental disorders, including anxiety disorders, depression, stress-related physical conditions, certain behaviour disorders and interpersonal or personality problems mixed with symptom disorders. Previous meta-analyses have yielded conflicting results. This review included all RCTs of STPP for common mental disorders, and found modest treatment benefits that were generally maintained in medium and long term follow-up. However, variability in study design means that our conclusions are tentative, and need confirmation with further research.

common mental disorders について
including anxiety disorders, depression, stress-related physical conditions, certain behaviour disorders and interpersonal or personality problems mixed with symptom disorders
と説明がある

interpersonal は哲学用語とてして間主観性だがここでは
interpersonal problems で、要するに対人関係の問題という意味だろう

symptom disorders は
symptom disorders and personality disorders というように対比して用いられる。

この書き方だと
不安性障害、うつ病、ストレス関連疾患、他人からみても明らかに問題のある行為障害・対人関係問題・性格問題
を指しているようで、要するに妄想関係は含んでいないらしい。

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しかしCommon Mental Disorderの語を用いるとき、
統合失調症や認知症の最初期を含み、広く気分障害、不安性障害、性格障害、発達障害までを含むようで、
要するに、軽度ではあるが、何に発展するか分からないような精神の不調を指すようである。発展せずに頓座して終わるものも多いはずで、そのあたりを含めて観察している言葉である。


MCI(Mild Cognitive Impairment)

MCI(Mild Cognitive Impairment)
軽度認知機能障害
多くは認知症の全段階を指して用いる。

probable AD(Alzheimer disease)といってもほとんど同じと考えられる。

統合失調症のDUI(duration of untreated illness)

統合失調症の前駆期の始まりから、治療開始までの期間を
未治療疾病期間 DUI(duration of untreated illness)とよぶ。

ARMS(at risk mental state)の患者さんについて、
前駆状態において早期介入すればDUIを短縮することができる。
うまくいけば発症を予防できると期待されている。

DUPはduration of untreated psychosis 未治療精神病期間で、
発症してから治療開始までの期間のこと。


統合失調症の臨界期 critical period

統合失調症の多くの症例で、
社会的機能の悪化などは、
発症初期に生じ、
発症後2~5年の間に安定化する。
(plateau effect という。)

再発は最初の2年間に高率に起こる。
75%近くが5年以内に再発している。
患者本人や家族への心理社会的影響は発症早期に始まる。
つまり、進学をあきらめたり、会社を辞めたりする。
自殺リスクは発症後2~3年以内が高い。

以上から、発症初期の数年間が予後を決定する重要な時期であり、
臨界期(critical period)と呼ばれている。
約5年と考えられている。

この期間は入念に治療に専念することが大切である。


過敏性腸症候群(IBS:Irritable bowel syndrome)の診断と治療

過敏性腸症候群(IBS:Irritable bowel syndrome)
は心身症の代表的なもので、
便秘型と下痢型と、その交代型があり、
検査をしても器質性異常がみつからないものを言う。

【診断】
IBSのRome Ⅱ 診断基準がある
腹痛あるいは腹部不快感が12ヶ月中の連続とは限らない12週間以上を占める。
かつ、下記の2項目以上の特徴を示す
1.排便により軽快
2.排便頻度の変化で始まる
3.便性状の変化で始まる

【治療】
専用の薬剤としてコロネル=ポリフルがあり、
消化管運動調整薬、
腹痛には抗コリン薬、下痢には乳酸菌製剤、あるいは下痢止め、
便秘型には少量の下剤、
ストレスや心理的方面に配慮する場合には
抗不安薬や抗うつ剤を用いる。
その場合には精神療法加える。
ガスの悩みを訴える人にはその方で対応する。

【和漢薬】
腹痛時屯服に芍薬甘草湯
持続便秘型に桂枝加芍薬大黄湯
便秘・下痢交代型に桂枝加芍薬湯
持続下痢型に半夏瀉心湯、真武湯
便秘または交代型に大建中湯
などが経験がある。
効果はマイルドで、フルドースを使わなくてもよい印象もある。
他に、心理的な要因が強い場合には、柴胡剤などを使用、
女性で月経周期と関係する場合には女性用の漢方を用いる。
いろいろと工夫の余地がある。

東京都立中部総合精神保健福祉センター 総合就労支援プログラム トライワークプロジェクト

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/download/files/torai.pdf
ここに情報
東京都立中部総合精神保健福祉センターが運営しています

トライワークプロジェクト
職業レディネスサポートプログラム
復職プログラム
チャレンジプログラム
うつ病リターンワークコース
ワークトレーニングコース

通院しながら働きたいが
仕事に自信がない
仕事が長続きしない
おもにうつ病、統合失調症、神経症の方。


三つのあ

三つのあ

あわてず
あせらず
あきらめず


発達障害と学生相談

上司としては役に立つ知識です。

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精神療法 33-5 : 45-51 2007

『発達障害と学生相談』     香川大学

はじめに

 平成17年4月に 「発達障害者支援法」 が施行された。
 この中には大学での支援についても触れられており、「大学および高等専門学校は、発達障害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮をするものとする」というように示されている。
 平成19年度からは、特別支援教育も始まり、発達障害のある子供に対する教育環境の整備も整いつつある。
 数年後には大学においても、小学校や中学校、高等学校で特別な支援を受けた児童、生徒が受験し入学してくるようになる。
 そこで、本稿では、大学の学生相談の場において発達障害のある学生に対してどのように支援していけばよいのかということについて、その課題も考えながら検討していきたいと思う。

 発達障害という言葉についてであるが、その定義が少し曖昧である。
 本稿では、発達障害を、全般的な知的発達に遅れのない 「学習障害」 「注意血管多動性障害」 「高機能自閉症」 「アスペルガー障害」 として話をすすめていくことにする。

 

Ⅰ. 現状は

 (省略)

 障害のある学生に対する支援については、これまで身体障害のある学生を対象として支援が主に検討されてきた。
 2006年の報告書から発達障害という項目が新たに設けられたことは、特筆すべきことである。

 

Ⅱ. 学生相談の場では

 学生相談の場は、大学においては学生相談室や健康管理センターが主に窓口になっていることが多い。
 このような相談の場を訪れるきっかけは、日頃接することが多い教職員からの紹介によるものと、本人からの訴えによる自主的な相談が考えられる。
 大学が儲けている学生相談の場である学生相談室や保健管理センターが、発達障害のある学生やそれが疑われる学生に対しても相談の場として機能しているということである。

 その一方で、新たな相談の場も増えてくるのではないかと考えられる。
 それは、大学における特別支援教育を専門としている研究者への相談である。
 筆者の研究室に、発達障害が疑われる学生が相談に来る場合、それは筆者が関係している特別支援教育に関する講義がきっかけになっている場合が多い。
 特別支援教育に関する講義を通して学生自身が、自分が困っていることについての原因が発達障害に起因するのではないかと感じ、筆者の研究室に直接訪ねてきたり、電子メールを使って相談をしてきたりするケースが多い。

 

Ⅲ. どのような対応が求められるのか

 では、そのような学生に対し、どのような対応が求められるのであろうか。
 筆者が相談に乗った何人かの学生はいずれも診断は受けていなかったが、その相談内容は、大学生活の中で 「対人関係」や 「コミュニケーションの問題」、「生活の管理」、「レポート等の提出」 といったようなことであり、いずれの相談者も発達障害が疑われる学生であった。
 つまり、実際には、発達障害という診断を受けている大学生よりも、発達障害の疑いのある学生の相談の方が多かったということである。
 西村 (2006) は、「印象として大学に入学する学生で発達障害という診断を持ってくる学生は少なく、ほとんどが未診断のまま入学してきており、実際の学生生活がうまくいかず困り感をもち来談するケースが多いように思われる」と報告しており、筆者もまったく同じ印象をもっている。

 このような場合、その学生は発達障害という診断を受けていないいないのであるから、障害の受容などは経ていないということになる。
 相談を受ける際には、このことを十分に意識していかなければならない。
 発達障害に関する知見を持ち合わせると同時に、その特性を理解した上での援助的な関わりをしていかなればならないということである。

 まず、大学生活を送る中でどのような点に困っているのかを明らかにすることが大切である。
 そして、困っていることに対してそれを解決できるような提案をしていくことが求められるのである。


Ⅳ. 自己効力感と自己有能感を高める

 自己効力感と自己有能感はセルフ・エスティーム (self-esteem) という言葉で表現されることが多い。
 セルフ・エスティーム (esteem : 尊敬、尊重と訳す) という言葉は、発達障害のある学生の相談を考える際のひとつのキーワードになる。
 セルフ・エスティームについて森田 (1999) は欲求の 五階層理論を引用して次のように説明している。

 要求の五階層理論では、
① 「生理的なニーズ」 (最低限の食物、睡眠、性、酸素、在宅など)
② 「安心・安全へのニーズ」 (恐怖や苦痛がないこと)
③ 「帰属感と愛情のニーズ」 (自分を受容してくれる家庭や仲間やグループ、愛し愛される関係のあること)
④ 「承認のニーズ」 (認められること)
⑤ 「自己実現のニーズ」 (社会的存在として自己の個性、能力、可能性を最大限に生かすこと)

 のニーズがあるとしている。
 そして、セルフ・エスティームをこの五段階の階層理論に位置づけ、④の「承認のニーズ」 に含まれるものであると述べている。
 この 「承認のニーズ」 の基盤は、①、②、③ であり、これら 3つは、いずれも、私たちが生きていく上でその動機付けに大きく影響を与えるものである。
 そして、これら 3つのニーズの上に、セルフ・エスティームを含む 「承認のニーズ」 が成立する。
 そのニーズが満たされて初めて、⑤「自己実現のニーズ」 が生まれるとしているのである。

 このようなことから森田は、「セルフ・エスティームを高めるためになによりも大切なことは安心感である」 と結論づけている。

 このように、セルフ・エスティームを考えるならば、それを高めるために、安心感をもつことができるように相談にのっていく必要があるということになる。
 「あなたはあなたで大丈夫だよ」 という安心感をもつことができるようにしていくことが大切なのである。
 では、どのようにして安心感をもつことができるようにしていけばよいのであろうか。


Ⅴ. 自分の得意な面と苦手な面を明らかにする

 発達障害の疑われる学生の相談にのるときに、筆者が特に意識していることは、その学生が得意としていることを明らかにし、ポジティブに考えらながら話を進めようにすることである。
 相談に来た段階では、セルフ・エスティームが下がっている場合が多いと思われるので、自分にはよいところがあるということに気がついてもらえるように進めていく。
 学生によっては、何に対してもネガティブに考える習慣がついてしまっているかもしれない。
 しかし、ちょっと視点を変えることでポジティブなとらえ方に転換できる場合もあるということを伝えるようにする。
 たとえば、「10分しか集中できない」 と考えるのではなく、「今日は 10分も集中できた」 と考えるようにすることを提案するのである。

 また、同時に、今困っていることは何であるのかも明らかにしていかなくてはならない。
 どようになことが苦手であり、その結果どのようなことに困っているのかということについて、その学生とともに考えてみる。
 自分の苦手なことが何であるのかを知ることで、学生自身がそれに応じた手立てを考えることを可能にするためである。
 対応する方法が見つかったら安心感も増すと考えられるからである。


Ⅵ. 具体的な提案を

 学生自身が苦手なことが原因で生じるさまざまな生活上の困難を改善、克服することができるようにするためには、それらを解決する具体的な方法を知る必要がある。
 学生の話を聴いて、しばらく様子を見るというような受身的な解決策ではなく、相談に来た学生が自らアクションを起こすことができるような具体手な提案をしていくことが大切なのである。

 筆者のところに相談に来る学生たちの多くは、「○○ががうまくいかないのです」 などと具体的な課題を訴えてくることが多い。
 彼らは困っている○○を改善、克服するために、自ら行動することができるような具体的な方法を身に付けたいと思っているのである。
 それゆえ、具体的な方法を提案していく必要があるということである。

 その際、大切なことは、苦手なことそのものを改善するように働きかけるのではなく、苦手であることが原因で、その結果として対応に困っていることについて、それを改善することができるように考えていくことである。
 発達障害を直すという発想ではなく、発達障害とうまく付き合っていくという発想である。
 つまり、発達障害が原因で顕在化している社会生活上の困難さを改善することができるような提案が必要なのである。

 

Ⅶ. どのような方法で

 本人が困っていることや、得意なこと、苦手なことを明らかにしていく際に有効な方法の1つは、紙に書いて整理し、1つ1つ視覚的に確認しながら話を進めていくことである。

(省略)

 多くの発達障害のある人たちが、聴覚的な情報処理に比して、視覚的な情報の処理の方が得意であると述べている。
 当事者がそのように言っているのであるから、それらを参考にした支援の方法を考えることは重要なことである。
 今、ここで対象としているのは大学生なので、今の日本のシステムの中で、大学まで進学してきている学生であれば、文字の読み書きについては一定以上の力は身に付けているであろうことは想像に難くない。
 つまり、文字などの情報は支援を行う際に有効に使うことができるということなのである。

 

Ⅷ. 具体的な対応の例

 ここまで、セルフ・エスティームを下げることがないようにすることの大切さと、その学生が自分の得意な面と苦手な面を理解し、それに応じた対応をすることができるように、具体的なアイデアを提案することの必要性を述べてきた。
 ここでは、筆者が対応してきた具体的な例を紹介する。
 ここで紹介する具体的な対応例は一部であるが、対応を考える際の参考にはなるのではないかと思う。

1. 優先順位をつける

 相談に来る学生の中には、今何をすべきなのかの優先順位をつけることができず困っている学生が少なからずいる。
 レポートなどの課題が出たときに、どのレポートから手をつけてよいのか分からなくなり、困っているような学生である。
 いくつかまとまって出されたレポートのどれから手を着けてよいのかが分からず、そのうちに締め切りが迫ってきて焦ってしまっているという場合である。
 なかには、提出期限までに出すことができなかったという話も聞く。
 このような学生に対しては、自分で優先順位をつけることができるように具体的な方法を提案し支援していく必要がある。

 まず、どのレポートからするのかといったことについて共に考えて優先順位をつけていく。
 ここで大切なのは、優先順位をつけたときに、優先順位が高い理由をはっきりと伝えることである。
 締め切りが近いものから優先順位を高くつけるというように理由をはっきりさせるのである。
 そして、優先順位の結果は視覚的な情報にして意識できるところに書き留めておくようにする。
 消えてなくなってしまわない情報にしておくのである。
 筆者の場合は、付箋紙に書き込んで、それをスケジュール帳などにはっておくことを勧めるようにしている。
 そして、終わったらその付箋紙を取り除いていくようにし、残っている課題が何であるのかを確認しやすくするのである。
 スケジュール帳等に直接書いて、自分がしなければならない課題を確認するようにする方法でもかまわない。
 携帯電話や PDA などの機能にあるタスクリストなどを使うこともできるであろう。
 これらはとても当たり前のことのようだが、これらの方法の有効性に気がつかずに悩んでいる学生がいるのである。

 同じ日に締め切りがあるレポートの場合は、筆者は、得意な方からするように勧めることにしている。
 「どちらからでもかまわない」 と助言するよりも、「あなたの得意なこっちから」 と決めた方がよいようである。

2. レポートなどの課題を整理する

 レポートや卒業論文を書くようなときに、どのように書いてよいのか分からない学生もいる。
 自分の考えをまとめることができないということであろう。
 中邑 (2006) は、そのような学生に対しては、パソコンで考えをまとめることができるようなソフトを使うことが効果的ではないかと述べている。
 たとえば FREE MIND というソフトがある。
 このソフトは自分の考えなどを画面上に整理して表示することができるので、視覚的にわかりやすく自分の考えをまとめることができるという点で、レポートなどを書く際に役立つのではないかと考えられる。
 これらのソフトの力を借りて、自分の考えを図にして考えを整理するのである。
 発達障害のある学生の中にはパソコンなどの IT機器については、高い興味と関心を持っている者は少なくない。
 これらのソフトを苦にせず使用することができる学生も多いのではないだろうか。
 実際に筆者も学生の考えを整理するときにこれらのソフトを使って視覚的に分かりやすくして見せるようにしている。

3. 日課を守る習慣を

 相談に来た学生の中に、朝起きることができないために1時間目の授業に間に合わないことが多く、このままでは出席日数が不足し単位を得ることができないので、どのようにしたらよいのかという問題を抱えているものがいた。
 この学生は、特別支援教育に関する授業を受けるなかで、今までの経験を照らし合わせて、自分には発達障害があるのではないかと感じ始め、苦手なことに気づき、解決策を求めて来談したのである。

 この学生の場合には、筆者の研究室に朝挨拶に来るようにという課題を与え、挨拶に来ることができたときには、一緒にコーヒーを飲む時ガンを作るようにした。
 自分ひとりでは意欲がわかない場合でも、そこに人が介在すれば、可能になることがあるということではないかと思う。
 その後学生は、朝起きることができるようになり、「自信がついたので1人でやってみます」 というメールを送ってきた。
 ゼミの担当教官にも確認したが、最近は表情もよく、遅刻もないということであった。

 

Ⅸ. 今後の課題

(省略)


おわりに

 発達障害のある学生を学生相談の場でどのように支援していけばよいかということについて、具体的な支援の方法も提案しながら考えてきた。
 しかし、まだましだ大学における支援は始まったばかりである。
 小学校、中学校では特別支援教育に力を入れるようになってきている。
 いずれ、高等学校、代価くと必要な支援を受けた学生たちが入学してくることになる。
 そのときに、学生を理解したうえで対応ができるようにしておかなければならないのである。
 大学で学んだ学生たちが、日本の社会を築くための力を身につけることができるように育て、送り出していかなければならない。
 そこには、発達障害のある学生も含まれているということを忘れてはならないのである。
 
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いかがだろうか。
上司は
叱っているよりも、このような方向で、部下を伸ばして欲しいものだ。
最近の人たちはコンピュータや携帯の扱いは確実にうまいのでそのあたりから具体策をはじめよう。


外来クリニックにおける発達障害の治療

少し難しいがお勉強。

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精神療法 33-6 : 724-729 2007

『外来クリニックにおける発達障害の治療』        よこはま発達クリニック

Ⅰ 発達障害とは

 筆者が所属するクリニックは発達障害のある人を対象にした民間の児童精神科クリニックであり、クライアントのほとんどが自閉症スペクトラム (Autistic Spectrum Disorders : 以下 ASD と略す) (Wing , 1997) と診断されている。
 本稿では前思春期以降の高機能 ASD の人たちの柄意における支援について述べる。
 一般にアスペルガー症候群や高機能自閉症、高機能広汎性発達障害といわれる人たちである。

 ここで診断概念について簡単に確認しておきたい。
 発達障害に関しては、国際的診断基準 (ICD-10 と DSM-Ⅳ-TR) は欠点が多く臨床には使いづらい。
 筆者は臨床において広汎性発達障害概念ではなく、Wing の ASD 概念を採用している。
 Wing の提唱する ASD は社会的交流、社会的コミュニケーション (言語性と非言語性) 、社会的イマジネーションのいわゆる 「ウイングの 3つ組」 (Wing & Gould , 1979) によって定義される症候群であり、通常固定した反復的な行動パターンを伴う。

 広汎性発達障害と ASD 、そして DSM/ICD のアスペルガー障害と Wing の提唱したアスペルガー症候群 (Wing , 1981) がしばしば同義語のように使われるが、それは間違った理解である。
 臨床的には重要な問題を内包しており興味のある方は文献 (田中・内山、2007 : 吉田 , 2006) を参照されたい。


Ⅱ 発達障害と治療

 治療や療法という言葉は発達障害になじまない。
 発達障害とは脳が多数派とは異なったあり方で機能していることである。
 脳機能のあり方の偏りは認知や行動のあり方が多数派とは異なるということで明らかになる。

 筆者がアスペルガー症候群の支援を考えるときに基本にしているのは以下の Gillberg C (2002) の言葉である。


「アスペルガー症候群の人とその家族の生活の質を改善するために、もっとも重要な唯一の介入は、周囲の人々の態度を変えようとすることである。
 それは介入の対象が特定のの問題であっても、アスペルガー症候群の本質であっても、アスペルガー症候群のある人自身であっても同じである。
 周囲の態度を変えるためには適切な診断が必要である。」


 Gillberg はアスペルガー症候群を対象に述べているが、この原則はもちろん ASD 全般にあてはまる。
 ASD の人を支援する際には ASD の特性を尊重することが大切である。
 ASD の人はこの世界では少数派であって、多数派向きに構成された社会では不利益をこうむることが多い。
 ASD の特性から受ける不利益を最小限にすることと、その人が持っている特性が最大限に活かせることを目指した支援が望まれる。


Ⅲ 支援を開始するために : 診断・評価の重要性

 ASD の支援を開始するためには、ASD の診断を下さなければならない。
 このことは当然のことだが、非常に重要なことだ。
 ASD の特性は、その人の生活場面の多くを支配する。
 精神療法の基本である 「言語」 によるコミュニケーションにもアスペルガー症候群の特性は大きな影響を与える。
 社会性やイマジネーションの障害もあいまって、知能テストや投影法テストの回答にも影響を与える。
 精神療法の世界においても ASD は少数派であって、ASD の特性を考慮しないで彼らの言動を解釈したり、投影法テストの結果について伝統的な力動的解釈を行うと誤解をすることが多いと思う。

 アスペルガー症候群に限らないが、精神障害や発達障害の診断を下すためには、一定以上のトレーニングを受けた専門家が十分な時間をかけて行うことが望ましい。

 対象が子供であるか成人であるかによって方法は若干異なるが、基本は同じである。
 当院では診断は医師と心理職の 2人以上のチームで1日かけて行う。
 午前中医師は半日かけて保護者 (時には配偶者や兄弟) から発達過程を丹念に聞き出し、心理職はクライアントに知能テストを実施し、さらに休憩時間などの非構造化された場面にゲームや雑談をしながらクライアントの特性を把握する。

 発達歴を聴取する過程で社会性やコミュニケーション、イマジネーションなどの ASD 特性について把握することは当然であるが、感覚刺激への反応、着脱や片付けなどの身辺自律スキル、読書や書字、作文の能力、教科の成績などの過去・現在の情報を確認する。
 思春期以降の場合には抑うつ気分の有無や不安症状などの狭義の精神科的症状の存在も想定する必要がある。
 たとえ、クライアントが成人であっても、親から発達期の情報を聴取することが大切である。

 このように時間をかけて詳細に発達歴・現病歴を聴取することでクライアントの病理的な所見のみならず日常生活における困難や長所や興味のあり方などを含めた全体像をああくするように努める。
 その過程で親はクライアントの行動を改めて確認することになるし、クライアントも自分を理解するために親が努力していることも実感する。
 本人と親が同席の上で聴取するときは親が知らない学校や会社での出来事が面接場面で明らかになることも少なくない。
 このような情報を聞き出す過程で親のクライアントに対する見方が多元的になり、状態への理解が深まることが多い。

 午後には診断・評価の結果について親に伝える。
 単に診断名や心理テストの結果や認知プロファイルを告げるだけでは不十分である。
 心理テストの結果については回答内容を質的に吟味 (黒田・他 , 2007) した上で、すべての情報を総合的に検討しクライアントの認知特性、長所、苦手な部分、学習スタイルなどについてできるだけ具体的に伝えていく。
 クライアントが成人の場合、本人にどこまで初診時伝えるかの判断は難しい。
 クライアントがある程度の予備知識があり診断を知ることを希望しており、診断の内容も本人の想定と同じ場合には初診時に説明することもあるが、自己診断と医学的診断が異なる場合などは、定期的に外来に通ってもらい時間をかけて説明する。

 さらに後日、診断、診断根拠、評価の内容、支援プランの結果を詳細なレポートにまとめて家族のもとに送付する。
 クライアントが成人の場合には本人に対しても情報を提供するつもりで書くことが多い。
 もちろんクライアントの状況によっては、伝える内容について慎重に検討し、家族向けとクライアント向けに 2種類のレポートを準備することもある。
 親やクライアントが欲しているのは単なる診断名ではなく、今後どのようにわが子を育てていくべきか、あるいは自分自身がどのように生きていくべきかというプランや日々の生活の困難に対処する具体的な方略だろう。
 レポートにはできるだけ親・クライアントが必要としている情報を具体的に記載するように留意している。


Ⅳ 認知特性を理解することから支援が始まる

 ASD は発達障害であり、特有の認知障害がある。
 ASD と診断することは、まず認知障害から理解するということである。
 ASD の特性はその人の行動の多くを支配する。
 そのため、その人の行動のあり方を理解するときに、まずは ASD の認知特性から考えるということが診断することの意味である。
 むろん、認知特性だけですべての説明がつくわけでないが、「まずは」 認知特性から考えて支援を考えることが重要である。

 ASD を診断することが臨床的な有益さにつながるためには ASD の認知特性を知っておく必要がある。
 発達障害は治らないから診断だけして、何も支援しないなどと誤解されることが多い。
 もちろん発達障害と診断することは支援のためであって、医師や心理職ができることも多い。
 ただ発達障害と診断することのメリットを一般の精神科医や心理士はあまり認識していないように思う。


Ⅴ ASDの認知特性

 発達障害と診断することのメリットを読者にわかっていただくためには最小限の認知心理学的な知識をまとめておく。
 ASD では認知発達のあり方に特徴がある。
 主な点は視覚による理解が聴覚による理解より得意であること、計画して実行する力の弱さ (実行機能障害) (太田 , 2007) 、状況を考慮して判断する能力の弱さ (弱い中枢性統合) (黒田 , 2007) 、心を読む能力の弱さ (心の理論障害) (飯塚 , 2007) 、注意の障害、感覚の過敏さなどである。

 視覚理解が聴覚理解より得意なのは、カナータイプの自閉症ではよく知られているが高機能自閉症やアスペルガー症候群でも音声言語よりメモやメールなどによる視覚的な手段のほうがコミュニケーションが取りやすいことが多い。

 「実行機能」 (遂行機能や監理機能ともいう) とは何らかの行動を計画し、開始し、自分の行動を監視し、必要な行動を実行し不要な行動は抑制して目的を持った一連の行動を実行する能力である。
 実行機能が障害されるために物事の段取り、計画が苦手、順序づけで混乱することがある。
 例えば予想外の事態が生じたときに状況に応じて計画を変更できなかったり、部屋の整理整頓ができなかったりする。
 ASD に特異的な機能障害ではなく AD/HD や認知症でも認められるが、ASD の人の対人場面以外での日常生活の困難に強く関係する。

 「中枢性統合能力」 とは全体の状況を考慮して、物事を理解する能力である。
 中枢性統合能力が弱いと全体を包括的にとらえるよりも、部分に注目しやすい。
 いわゆる木を見て森を見ない状態になりやすい。
 情報の多い絵や写真を見るときに、全体のストーリーとは関係のない枝葉な (と多数派からは見られる) 部分に注目してしまい、全体の意味を多数派とは違った解釈をする。
 このような事態は認知検査の場面だけでなく対人交流を含む日常生活で常に生じている。
 日常生活は互いに複雑に関連しあった多くの情報が津波のように押し寄せる場であって、アスペルガー症候群の人は全体の意味がとれずに困惑したり、独自の (つまり少数派の) 解釈をし、多数派の世界では浮いてしまいがちだ。

 「心の理論」 とは他者に感情があること、自分とは異なった考えを持つことを理解する本能的な能力である。
 Mentalizing (心理化) の障害ともいう。
 心の理論障害は、相手の表情から気持ちを読み取ることの困難さや、対人交流の場面で相手の意図が読めず、ちぐはぐな対応をしたり、相手の悪意に無頓着で騙されやすいなどの行動で表現される。
 対人関係における困難、社会性障害と関連が深い。

 ASD はしばしば AD/HD を合併し (Yoshida & Uchiyama , 2004) 、多動や不注意を示すことが多い。
 注意の切り替えが苦手だったり、一度注意した対象から注意を離し辛かったり、重要で必要な対象に焦点を当てること (選択的注意) の苦手も認められる。

 感覚情報処理の障害も臨床的には重要であり、聴覚、視覚、嗅覚、温度、痛み、触感、味覚などを適切に感じることが難しい。
 つまり感覚刺激に過敏だったり鈍感だったりする。


Ⅵ 本人より周囲が変わることのほうが大事

 ASD の認知特性について認知の偏りがあるのだから、認知の障害された部分を伸ばそう、正常化しようと考える専門家も親もいるだろう。
 苦手さを克服しよと絶望的なまでの努力をするクライアントもいる。
 発達障害の認知特性の表現は発達によって変化する。
 例えば、幼児期に顕著な言葉の遅れがあった子供が、後年流暢に話すようになることは珍しくない。
 しかし ASD の人の認知特性の本質は一定であって、ASD の人の ASD 特性をなくす、あるいは軽減するということを治療目標にしてはいけない。
 ASD の認知特性を把握することが大切なのは、認知の偏りから生じる不利益を最小限にするために周囲あるいは本人がどのような工夫が必要かを考えるヒントのためであって、苦手な部分を正常に近づけるためではない。
 認知特性に合わせて周囲の人の接し方やクライアントの生活場面の物理的環境を改変する、つまり広い意味の環境を操作することが大切である。
 そのためには ASD 特性とクライアントそれぞれの評価に基づいて、クライアントの現実生活における諸問題に具体的な提案をするのが重要な支援であろう。
 認知特性の本質は基本的に継続するのであって、本人の認知特性を変えるように働きかけるのは、クライアントに向かって 「個性を変えろ」 とか、「あなたの存在そのものが誤謬(ゴビュウ)だ」と言っているようなもので厳に慎むべきである。

 では、このような認知特性を持った人をどう援助するべきだろうか。
 親や教師、雇用主や同僚などが、本人の発達障害の特性を理解して、むやみな声かけやお説教を減らし、仕事の予定をメモに書いて渡すなどの視覚を用いてコミュニケーションをとるようにする。
 静かな環境の設定に心がけるなどの、少しの配慮をするだけでも、受診者の負担が減ることもある。
 実行機能を補うためには 1日あるいは1週間の予定を立てるときに、予定表に一緒に書き込みながらプランをたてる手伝いをすることも有効である。
 具体的な方法については吉田 (2005) が参考になる。


Ⅶ 個別カウンセリング

 個別カウンセリングの基本はクライアントに対して自己の特性の理解を促し、対人場面や日常生活における困難を最小限にし、肯定的な体験を持てるようにするための具体的な体験を持てるようにするための具体的な方法を提案し、クライアントとともによりよい方法を探っていくことである。

 思春期以降の ASD の人は抑うつ的になったり、自己否定的になったり、職場や学校での対人関係や、恋人や配偶者との関係で葛藤を生じることも少なくない。
 そのような場合に精神療法的な個別カウンセリングが必要になる。
 ASD の人を対象に個別カウンセリングを行う際には ASD の認知特性を考慮する必要がある。
 ASD の十分な知識のない治療者が内省や洞察を促すような精神力動的なカウンセリングを行うと、時に破壊的な結果をもたらす。

 Marcus (2005) は伝統的なカウンセリングとの相違点を次の 5点にまとめている。
① カウンセラーは、単刀直入に障害 (ASD) を取り上げて、それについて来談者と話をすること
② カウンセラーは、自分自身について語る (自己開示する) ことも多く、そのため伝統的なカウンセリングで強調されているような治療者と被治療者としての立場を明確にした関係が曖昧になることがありうる、つまり多少は個人的な友人関係の側面が生じることがある
③ 指示的なアプローチであること
④ 視覚的ツールを用いる方法であること
⑤ 来談者との生活場面をともにする第三者 (たとえば、親や雇用主) との連携を図る必要性が高いこと。

 ASD の認知特性やコミュニケーション障害に注意を払い、通常のカウンセリングでは要求されないようないくつかの工夫をする必要がある。
 例えば文章や図などの視覚素材を用いて口頭だけでなく視覚でも情報を伝える、最後あるいは途中で情報をノートにまとめクライアントに渡す、話の要点がすぐには理解できないクライアントには、理解できるように十分な時間の余裕を与える、話題が変わるときには切り替わることを明白に伝える。
 学校や職場などの対人関係が話題になるときは、できるだけ第三者からも情報を得るようにして、状況の正確な再現を心がける。
 その上でできるだけ具体的で公平な解決策を考えるなどである。

 また彼らの関心の対象や彼らの信念を尊重することも心がける。
 成人であっても幼児向けのアニメに強い関心があったり、血液型占いや “スピリチュアル” な話題を信じている場合がある。
 うっかり苦笑したり、疑問を呈したりすると、以後のカウンセリングに支障をきたすことが多い。
 彼らの興味・関心の対象はたとえ内容がいささか奇矯であっても大切な通路であって、治療者が関心を持ち傾聴することでラポールを維持することを心がけたい。


Ⅷ 自己効力感

 多数派向けに構成された我々の社会では ASD の人はどうしても失敗や否定的な体験を積みがちである。
 ASD 概念が教育や医療の現場で浸透してきたことはひとつの進歩ではあるが、ASD の弱点がクローズアップされて、弱点の克服のみに焦点があてられるとしたら、かえって彼らを追い込んでしまうことになり本末転倒である。

 子供の苦手なことを探し出して克服させようとすることが教育や療育だと思っている専門家が多いのは困ったことだと思う。
 「相手の目を見て話す」 「大きな音がしても耳塞ぎをしない」 「偏食を矯正する」 などが支援目標になりがちである。
 そこで ASD の子供が示す表面的な 「問題行動」 がターゲットになり、行動の基底にある認知特性 (簡単には変化しない) の存在が忘却されがちである。
 また、子供になんらかの努力を強いる際に子供の動機や興味、子供の能力にみあっているかどうかが忘れられる傾向があるのも注意したい。

 ASD の子供や成人を支援する場合には、彼らが自己効力感や自己肯定感を持って生きていけるように支援したい。
 自己効力感 (Self Efficacy) は Bandura (1997) の提唱した概念で、これから生じる状況に対処するために必要な行為を、適切にプランをして実行できる能力が自己にあると思えることである。
 自己効力感の弱い人は、課題を実際より難しく感じやすく、抑うつ感や不安感情を持ちやすい。
 自己効力感を持つことができるためには達成体験が必要である。
 一方、失敗体験は自己効力感を下げる。
 自己効力感の低い人は成功しても自信を持ちにくい。

 多数派向けに作られたこの世界は ASD の人にとって苦手なことが多く、ASD の人は肯定的な体験が少なくなりがちであり、自己効力感を持ちづらい。
 また ASD の人は失敗に対して敏感でネガティプな体験が印象に残りやすい。

 したがって ASD の人の成功体験を増やすこと、失敗体験をできるだけ減らすことに留意した支援を幼児期から行うことが大切である。
 自己効力感は task-specific な概念であり、与えられた task を遂行可能と感じることで得られる。
 したがって、ASD の子供や成人にとっての task を可能な限り個々の ASD の人にとって遂行可能であるように工夫する。
 task とは学業課題やソーシャルスキルに限らない。
 他者とのちょっとした会話や明日の行動の計画も task になる。
 ASD の人にとっては対人関係や日常生活全体が困難な task に満ちているのであり、挫折する可能性は無数に存在する。
 しかし彼らは一見して障害があるように見えないために、周囲が彼らの感じている負担を理解しがたい。
 できる限り失敗体験を避けるような環境を操作する工夫をすべきである。
 クライアントの能力や興味、動機を考慮した適切な task を設定すること、そしてその task をどのように達成するかの特別な工夫 (吉田 2005) を行うことが必要だ。
 そのような工夫を行い自己効力感を養っていくことで自己肯定感や自尊心につながっていくことを期待したい。

*****
お勉強で言えば、公文式。
できることだけを反復して、「よくできたねー」と誉めているうちに少しずつ成長する。
次はこれ次はこれと言っていると、「まだだめ」のメッセージになり、
否定的な構えの人間になってしまう。

誉めて育てて時間を待つ。
少数派で結構。
わたしはその主義だ。


広汎性発達障害 ( PDD : pervasive developmental disorder )とAD/HD

コンパクトにまとめるとこんな風

*****
発達障害 developmental disorder

[定義]

 発達期 (胎生期および生後早期) に様々な原因が作用して、中枢神経系に障害が生じる結果おこる、認知・言語・社会性および運動などの機能獲得の遅れ、あるいは偏り、歪みのこと。
 多くの症例で遺伝的要因が病因として重要な役割を演じている一方、環境要因が障害を受けた機能の発達に影響を及ぼすことがしばしばある。

[分類]

 精神遅滞 === 知的な遅れ
 学習障害 === 認知面の偏り
 運動性能力障害 === 運動面の偏り
 コミュニケーション障害 === コミュニケーション面の偏り
 注意欠陥および破壊的行動障害 === 行動面の偏り
 広汎性発達障害 === 様々な面の偏り、歪み

● 広汎性発達障害 ( PDD : pervasive developmental disorder )

 広汎性発達障害 = 自閉症と同質の社会性の障害を中心とする発達障害の総称 = 自閉症スペクトラム

IQ ≧ 70 の場合

 高機能広汎性発達障害 : 高機能自閉症、アスペルガー症候群、高機能の非定型自閉症

 高機能自閉症 : 幼児期の言葉の遅れが激しい群
 アルペルガー症候群 : 始語の遅れがなく言葉が早くから発達した群

※ 脳の特性から起きる発達の偏り・歪み (発達障害)
   基本的にはしつけの失敗や愛情不足で起きるものではない。

※ 援助者の印象 :
・ つるっとしたのっぺらぼうのような顔、機械的な顔
・ 無表情、表情の動きがぎこちない、視線の合わせ方が不自然、声の単調さ
・ 全身の動き全体に滑らかさがない
・ 会話がかみ合った感じがなく、会話を続けることに疲れを覚える
   話題の中心点が常にずれた状況で会話が続く。形式的で細かなことにこだわる。
   自明なことが共有できにくい。揚げ足取りをされているように感じる。
・ 集団で動くのが苦手。
・ 「自己中心的で融通が極端に利かない。あまりに自分勝手」という印象をもつ。

※ 以下の①~③の三つの特徴 (「三つ組」)がセットで認められるときに診断される。

① 社会性の障害 : 人との関わり方の質的障害

 自分は今、人からどう見えているか、相手をどんな気持ちにしているか、自分の行為がその場の雰囲気にフィットしているかを感じ取る能力が不十分。

・ 関わり方が一方的、場違い (周りの雰囲気、流れが読めない)
・ 同い年の子供と対等な友達関係がもてない (年上や年下とは比較的良好)
・ 年齢相応の常識が身についていない
   (「普通」 「自然なこと」 という感覚が共有できない : 自明性の喪失)
・ 相手と気持ちを共有することが困難
・ 視線や表情で気持ちを伝え合うこと (非言語的コミュニケーション) が苦手

② コミュニケーションの質的障害

 言葉の遅れでは説明のつかないやりとりの深まらなさ、ちぐはぐさ、奇妙さが見られる。

・ 自分で話すほどには相手の言ったことは分からない。
・ オウム返しや独り言、場面に合わない発現がみられる。
   (字義通りの返答、同音異義語が苦手、文脈が読めない)
・ 前に聞いた言葉をパターン的に言うこと (遅延のオウム返し) も多い
・ 困ったときに自分から適切に手助けを求めることが苦手
・ 混乱したときの理解力の低下が著しい

③ 想像性の障害

 目の前にないことに思いを巡らせることが苦手で、物事に臨機応変に対応する力の発達に不全がある。このためにいつも通りを望み、興味や関心が偏る。

・ 考えや気持ちをリセットするのが苦手。
・ 思いがけない出来事に出会うと混乱しやすく、応用がきかない。
・ 新しいことや見通しのもてないことに強い不安を示す。
・ パターン的な行動だと身につきやすく、記憶 (丸暗記) が得意。
・ 極端な道徳性、正義感にこだわる。 (歩きタバコをしている人をいきなり殴るなど)

⇒ 変化への抵抗 (恐怖) 、周囲や環境が一定であることの安心感

 私たちは自分の位置、居場所を確保することで安心感をもつ。
 環境が変化するときには、その変化の規則性を見つけようとする。
 それができないとき ( = 社会性の障害) には 「それ以外の規則性」 に関心をよせて安心を得る。

④ その他の症状

・ 不注意、落ち着きのなさ、衝動性 ⇒ AD/HD との共通性

  PDD の場合 :
   攻撃に至るまでに潜伏期間があり、事前に警告とも受け取れる徴候が見られることが少なくない。
   ⇒ 自己完結的なプログラムに沿って潜在的に進行していること、
     反社会性行動の実行前に社会規範との照合が行われていないこと、
     問題解決のための手段の選択が極端かつ過激
  AD/HD の場合 :
   攻撃の動機が明確ではなく、対象も場当たり的で、自暴自棄の結果として本人に不利益をもたらしていることが多い。

・ 協調運動の異常、不器用
・ 音、光、手触り、痛み、寒さなど (感覚刺激) への反応の異常 (過激と鈍感)
・ 偏食
・ 睡眠の問題 (強固な不眠を訴える人がいる)
・ てんかんの合併

● AD/HD (注意欠陥 / 多動性障害) Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder

[基本症状]

a) 注意力障害 : 適切なコントロール配分ができない
   気が散りやすい、忘れやすい、切り替えがヘタなど。
 (「注意欠陥」 : 注意の払い方、注意の配分が違うという意味で、「注意散漫」とは異なる !!)

b) 多動性
 多動 (席に座っておれない) 、多弁など

c) 衝動性
 待てない、他の人の遊びに強引に介入するなど

 ① 学習が損なわれる
 ② 自己評価が低くなり、自尊心が育ちにくい
 ③ 社会的な問題が生じる
 ④ 家族に混乱をもたらす
 ⑤ 成人まで一部障害を残すことあり

※ 成長とともに自然に行動調節は可能となることが多い (獲得が普通よりも遅れるだけ)
   多動性 ・・・・・ 8~10歳で下がってくる
   注意力障害、衝動性 ・・・・・ 10~12歳で下がってくる

[基本症状のコントロール]

a) 注意の転導性 : 刺激の統制
     ⇒ 不要刺激の除去、刺激の単純・明快化
  注意集中困難 : 時間の統制
     ⇒ 課題量、内容の限定
b) 多動性
     ⇒ 活動エネルギーの発散、「合法的」に動かす
c) 衝動性
     ⇒ 子供の希望聴取 (「何をしたかったの?」) 、具体的な行動指示 (「そういうときにはこうすればよかったのよ」と教える)

*****
個人的には最後の部分、基本症状のコントロールは、
最近の若いサラリーマンの仕事術としてぴったりであると感じている

上司は新人をADHDまたはPDDと仮定して仕事を指導すれば間違いないと思う
繰り返してまとめると、「不要指示の除去、指示の単純・明快化、課題量・内容の限定、活動エネルギーの発散、希望聴取、具体的行動指示」。
なんとなく頷けませんか?

なぜ若い人がこうなっているのか、分かっていない。
胎生期に母親がアルコールを摂取した。
胎生期に母親がたばこを吸った。
胎生期に母親がかぜをひいた。
ゲームやコンピュータ画面が悪影響を与えた。
その他いろいろな話はあるがジャーナリスティックなことだけで、解明されてはいない。


授乳中の薬剤コントロール

授乳中には、うっかり薬を飲むと
母乳を通じて子供が薬剤を飲んでしまうことになるので、
注意が必要である。

漢方薬は一つの選択である。保険もきくからたいしてお金もかからない。

スルピリドはいい選択だという意見もある。
おっぱいがたくさん出るし、
子供にも特に影響はないようだ。
効き目は弱いが
授乳中にはいい薬だと思うとのことだった。

薬を組み合わせる

たとえば、薬剤A,B,Cについて
次のようなプロフィールだとする。

      ドーパミン2ブロック 手指振戦 便秘 眠気 吐き気 肝機能障害 腎機能障害
A                 +                   +      -       +      -      +       -
B                 +                    -      ++    -       -      +       -
C                 +                    -       -      -       +      -       +

こういう場合、単剤でD2ブロックするよりも、
眠前にAを飲んで、BとCを便秘と吐き気が我慢できる範囲で使えば、
D2ブロックは極大化、副作用は極小化できるのではないかと
昔の医者は考えた。
A+B+Cを一単位ずつ飲めば、D2ブロックは+++となり、他のどの副作用も++の範囲に収まる。
ところが単剤でD2ブロックを+++まであげると、どれかの副作用が+++になってしまう。

また、Aがてんかんをひきおこす傾向があり、Bがてんかんを抑制する傾向にあるのなら、
併用すれば都合がいい。

しかしこのようなことは入院していれば都合がいいけれど、
外来では、服薬確認もできないのだから、
患者さんがひそかに薬を選んで飲んでいることは想定しなければならない。

さらに、A,B,Cの薬剤で複合して代謝に影響を与えたりして、
何かの作用が出たりすることはありうることで、
使い慣れた薬ばかりで、実証済みならいいけれど、
中に一剤でも新薬が入ると、何かの症状が起こったとして、
どのような事情なのか非常に分かりにくい。

というようなわけで、新薬開発して売りたい側は単剤処方を宣伝するし、
飲む人にとっても、処方する人にとっても、治るなら、新しい薬はいいことだ。
もともと古い薬を売る会社は宣伝するだけのお金がない。
お金をかけて宣伝すればいかにも効きそうな薬に思えるから、
飲んだ患者さんも宣伝どおりに治って満足だろう。

ブランド品のようなものだ。
荷物を運ぶだけなら紙袋でいい。
時間を知るだけなら、5000円の時計でも足りる。
宣伝費を払って、その宣伝を見て、満足しているようだ。

さんざん売って、特許が切れるくらいに、
実は昔の薬と有効性は変わらないくらい、副作用は少し少ないなどというデータが出始めたりする。
副作用が少ないだけでもずいぶん助かるからそれでいい。

単剤処方はいろいろな面で当然賛成だけれど、
単剤の副作用が出たときには100%直撃であることも怖い。
まあ、その薬が悪かったのだということは分かりそうなものだが、
そんなに簡単ではなくて、
症状そのものが止められなかったのかも知れず、
その点については研究が必要である。

漢方薬には新薬はないし、混ぜて飲むのが原則だ。
ジェネリックという概念もない。
どう見てもそれが一段上の知恵だろうと思う。

市販薬の風邪薬や胃腸薬は実に微妙に成分を複合して配分している。
おおむねの人に合うようにできている。
単剤がいいなら、ガスター10が一番売れるはずだが、
新三共胃腸薬もキャベジンも武田漢方胃腸薬も独特の効き味で、
固定客がいる。
それを単剤でないから悪いとは誰も言わないのも不思議な話だ。
わたしもそれくらい細かく処方をしたいが、薬剤が対応困難になる。
0.1グラム単位で個人ごとに処方を混ぜるのは難しい。
お金を出せば当然できるのだけれど、誰にもそんなお金はない。

一週間とか二週間というのも、あまりにも経済的観点から決まっているものだと思う。
細かく調整したほうがいいに決まっているが、
侍医を雇う余裕のあるひとしか、それは許されない。

チャングムの誓いでは、侍医グループが処方を日々更新していたと思うので、
それが一番正しいと思う。
王に対して、何かの錠剤を一粒夕食後、一か月分などと出せるはずがないと思う。
それぞれ違うのだから。

たとえて言えば、定食か。人は標準でもいいと思うものだ。
体調や好みに合わせて油と塩を加減しろといえるのは、裕福な人だけだ。
気のきく奥さんがいる人は幸せだ。

たとえて言えば新幹線だ。何かの錠剤を標準量飲めというのは、
近くの駅まで新幹線で行って、あとは歩けというのと同じだ。
余裕があるなら最初からタクシーで行って、家の前まで運んで欲しいと思うだろう。

一人一人に合った細かい処方をしていたら、ますます医療費が膨れ上がる。
しかし考えてみれば、医者も薬剤師も特に長生きではないので、
自分にぴったり処方を合わせても、とくに長生きをするものでもないようだ。
急な休みは少なくなるかもしれない。その程度なのだろう。
どうにかできると思う分だけ、無理をするから、結果としては、あまり長生きできないのだろう。
ある医科大学で麻酔科医3人が相次いで麻酔薬で中毒死した事件があった。
薬を自由に使える医師が「疲れ果てている」というのだから、
相当に疲れ果てているはずだ。

副作用が出ないように調整

fig01.gif

青い枠を「治療窓」などと呼んでいて、
その範囲内に薬剤量を調整すればいい。
therapeutic window(有効血中濃度域)という。


赤い線がなだらかなほうが
調節はしやすいわけだ。

*****
ヒト生体において抗精神病薬が脳内ドーパミン受容体を占拠する率 をPET(Positron Emission Tomography)等で調べると、約70%の占拠率で十分だとわかりました。 占拠率をそれ以上高めても効果は出ず、逆に錐体外路系の副作用が出てきてしまうのです。

抗精神病薬の効果をD2受容体占拠率で見ますと、抗精神病効果が得られる閾値(約70%)と錐体外路症状を惹起する閾値(約75~80%)は非常に接近していて、これが定型抗精神病薬の使い難さをもたらしていました。しかし、非定型抗精神病薬の薬理特性は見かけ上、両者の閾値の差を広げる効果をもたらすので、使いやすくなったのです。

非定型薬の中でも、それぞれの薬にある程度の特徴はあり、これを理解して処方することが必要です。非定型薬に関して使っていくうちに少しずつ感じた違いは、次の通りです。

リスペリドンとルーランはSDA系の薬で、同じカテゴリーなのですが、ルーランは管理の困難な強い副作用が出にくいようです。特に錐体外路症状ですね。また、必ずしも全員ではありませんが、不安・抑うつ的な色彩を持っている人に、効果的な場合がある。それがセロトニン1A受容体への部分アゴニスト作用に基づくのかどうかは今のところわかりません。鎮静作用はオランザピンやクエチアピンのほうが強いと思います。それがメリットである場合と、デメリットである場合があるのですが、そこは患者さんの特性に応じて使い分けていくということ、それが現時点での大まかな位置づけかと思います。

自閉性コミュニケーション 上司の工夫

人間の知能は高度なもので
「やあ」とか「おい」とか言われただけで、
その声の調子や周囲の状況から、
肯定なのか否定なのか、どの程度の強さなのか、敏感に感じ取るものだ。

財布が机の上にあったとして、
誰かが置いているのか、忘れたのか、
警察に届けたらいいのかどうか、そのままにしたらいいのか、
どこかに明日までしまって置いてあげたらいいのか、
瞬時に判断している。

自閉性傾向のある場合、そのあたりがうまく行かない。
ツー・カーができない。
分かり合えない。
しかし特殊な場面で特殊な共感をしたりもする。

会社で、一番気のつく奴には、「例の件、よろしく」とだけ言っておけば、いいものだ。
細かいデシジョンツリーまで共有できる。体験を共有し判断を共有している。

自閉傾向の強い人はにはそれではまったく不充分で、
こちらの思っていることの100分の1も伝わっていない。

そんなタイプの人には、噛み砕いて、誤解も混乱も迷いもないように伝えないといけない。
それがデキル上司というものだ。

自閉性傾向の強い人には「昼飯、適当なやつ買って来い」ではまったくだめで、
当人は途方にくれる。
「きれいに掃除しろ」ではだめで、何をどこに片付けたらいいのか、ひとつひとつ具体的に指示する。

具体的に、である。「この近くの●●の店分かるか?そうか、そこに行って、鮭弁当3つと焼肉弁当3つ、買って来い。なかったら、ご飯とおかずのついた弁当で500円以内の弁当を合計6つ。お金は3000円渡すから、これでまとめて買って来い。買ってきてからそれぞれで支払う。品物がなかったら、そのまま一回帰って来い。いまから行って、12時までに帰ってくればいい。」

まるで、コンピュータに命令する感じである。

そのかわり、一度覚えてしまえば、「この間と同じやつを6つ買って来い」ですむ。この人たちは決して他のことを考え付かないし、間違えない。
臨機応変ができなくて、応用が苦手なだけである。大局的な状況判断ができない。
要するにみんなで昼ごはんが食べられればそれでいいんだとの判断ができない。
途中で弁当大安売りをしていても、買わない。

だから、判断を代わりにして、細かく与える。それを忠実に守ることは得意だから、
上司次第なのである。
途中の店で安売りを逃したからといって、叱ってはいけない。指示通りだったと誉めてあげて欲しい。
鮭弁当が二つしかなくて焼肉弁当は三つ買ってきて、五人しか食べられなくても、そのときも、誉めてあげてほしい。6人分に決まっているだろうと怒らないことだ。上司を怖がるようになって、なつかない。散歩だと思って自分で好きなものを買いに行けばいい。

柔軟に考えられる人が柔軟に考えてあげよう。
6人分じゃないから叱ってしまったら、それこそ、自閉性傾向というものではないか?

最近では自閉性傾向のある人は増えていて、(原因が不明なのが残念だけれど)、
そんな人たちを生かす指示の仕方はあるのだから、工夫してみて欲しい。

気のきくやつはどんどん減って、いまや千人に一人だと思ったほうがいい。

自閉性傾向 アスペルガー 広汎性発達障害

広汎性発達障害というカテゴリーがあり、
高機能なもの、知能の遅れのないもの、言語発達に遅れがないものを高機能広汎性発達障害つまり高機能自閉症またはアスペルガー症候群と呼んでいる。
それ以外のものは自閉性傾向と呼んでいる。知能の遅れのあるものをカナー型自閉症と表現することもある。
「遅れ」というものは結局、環境によって評価されるものなので、絶対的なものではないと考えている。

小児自閉症、レット症候群などがある。レットさんは日本で講演会も開いた。

自閉性傾向について、ややマイルドな感じで特徴を列挙すると、次のようになる。

1.社会性の問題
まわりの空気がよめず、「常識が足りない」と言われてしまうことがある。
相手の考えや気持ちが理解できず、苦労することがある。
気をつかっていても、なぜか浮いてしまう。

2.言語・コミュニケーションの問題
まわりくどい言い方をしたり、分かりにくい話し方をしたり、一方的に話したりする。
自分の思いを言葉として表現することが苦手で、しばしば誤解される。
相手の言っていることが、特に難しいわけでもないのに、分からなくなってしまう。
言葉をそのままの意味として捉えてしまうため、とんでもない勘違いをしてしまう。
たとえ話やことわざが分からない。
身振り手振りがうまく使えない。
相手の身振り手振りを、察知することができない。

3.想像力の問題
興味の関心が「広く浅く」ではなく、「狭く深い」。
思い込みや、こだわりが強すぎて苦労する。
予想と違うことがあると、あせってしまう。
相手の反応や、物事の結果を予測するのが苦手。
自分の空想の世界に浸ってしまうことがある。

4.視覚での認識は、わりと得意
口で伝えられて、理解できないことでも、表や図にすると理解しやすい。

5.五感に偏りがある
匂いに極度に反応したり、逆に鈍感であったりする。
さわられることに、極度に反応してしまう。
音に過敏に反応する。

6.身体の使い方が苦手
歩き方が個性的だと言われる。
スポーツはわりと苦手。
手先が不器用。
ボディーランゲージが苦手 (コミュニケーションを言葉だけに頼ってしまう) 。

こんな傾向の人はいくらでもいるなあという感じである。
最近は自閉性傾向スペクトラムととらえている。
一時的にこのような傾向が強くなることもある。
環境によって強く現れることもある。

これらの特徴は、短所とも長所ともいえる。環境による。
例えば、音に過敏に反応するという人が、絶対音感を持っていることもある。それがまた長所ともいえないが。
また、常識的な発想にしばられないことは、長所にもなる。

極度に反応して不安になって騒いでいると気に、ADHDと思われることもある。

*****
面接で、「こんにちは」「こんにちは」まではいいのだが、
「年いくつ?」ときくと「年いくつ?」とオーム返しすることがある。
面接の最後に「バイバイ」と手を振ると、
なんと手のひらを自分に向けて振っている。
自分と他人の立場の変換ができない。
これはミラー・ニューロンの話でぴったり説明できる点だ。


ADHDの診断基準 (DSM-Ⅳ-TR) ADD その他

AD/HD: Attention Deficit / Hyperactivity Disorder 注意欠陥・多動性障害について

*****
ADHDの診断基準 (DSM-Ⅳ-TR)

A.(1) か (2) のどちらか:

(1) 以下の不注意症状のうち6つ (またはそれ以上) が少なくとも6ヶ月間持続したことがあり、その程度は不適応的で、発達の水準に相応しないもの:

<不注意>
(a) 学業、仕事、またはその他の活動において、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な過ちをおかす。
(b) 課題または遊びの活動で注意を持続することがしばしば困難である。
(c) 直接話しかけられたときにしばしば聞いていないように見える。
(d) しばしば指示に従えず、学業、用事、または職場での義務をやりとげることができない (反抗的な行動または指示を理解できないためではなく) 。
(e) 課題や活動を順序立てることがしばしば困難である。
(f) (学業や宿題のような) 精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける、嫌う、またいやいや行う。
(g) 課題や活動に必要なもの (例:おもちゃ、学校の宿題、鉛筆、本、または道具) をしばしばなくす。
(h) しばしば外からの刺激によって容易に注意をそられる。
(i) しばしば毎日の活動を忘れてしまう。

(2) 以下の多動性-衝動性の症状のうち6つ (またはそれ以上) が少なくとも6ヶ月持続したことがあり、その程度は不適応的で、発達水準に相応しない:

<多動性>
(a) しばしば手足をそわそわと動かし、またはいすの上でもじもじする。
(b) しばしば教室や、その他、座っていることを要求される状況で席を離れる。
(c) しばしば、不適切な状況で、余計に走り回ったり高い所へ上がったりする (青年または成人では落ち着かない感じの自覚のみに限られるかもしれない) 。
(d) しばしば静かに遊んでいたり余暇活動につくことができない。
(e) しばしば“じっとしていない”、またはまるで“エンジンで動かされるように”行動する。
(f) しばしばしゃべるすぎる。

<衝動性>
(g) しばしば質問が終わる前に出し抜けに答え始めてしまう。
(h) しばしば順番を待つことが困難である。
(i) しばしば他人を妨害し、邪魔する (例:会話やゲームに干渉する) 。

B.多動性-衝動性または不注意の症状のいくつかが7歳以前に存在し、障害を引き起こしている。

C.これらの症状による障害が2つ以上の状況 [例:学校 (または職場) と家庭] において存在する。

D.社会的、学業的、または職業的機能において、臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が存在しなければならない。

E.その症状は広汎性発達障害、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患 (例:気分障害、不安障害、解離性障害、または人格障害) ではうまく説明されない。

参考文献:DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の分類と診断の手引き (医学書院)

*****
さらに、多動性の要素のもともとないないものや、かつてはあったが現在はなくなったものを、「多動性が少ない不注意優勢型」としてまとめて、ADD(Attention Deficit  Disorder)と呼んでいる。

*****
子供ではICD-10による多動性障害(たどうせいしょうがい、Hyperkinetic Disorders F90)を用いることもある。

*****
原因は不明、生物学的マーカーは見つかっていない。

*****
全般に発達の遅れているタイプではないので、
適応的な部分を確認して、社会適応をはかる。
そのために、どんな能力があるのかないのかを把握し、
周囲がそれを理解し、環境を整えることが大切である。
適応が安定すれば注意欠陥も少なくなるという好循環が生まれる。
最初はきついものだが、徐々に安定する。
若い頃ならば成長要因もある。

高次脳機能障害と診断すべき例もあり、境界は明確ではない。

「偉人にADHD障害者が多い」ことは言われることであるが、
「ADHD障害者が優秀である」ともいえず、
個々に「何が得意で何が不得意なのか」を把握する。

昔の偉人にADHDめいた記述が多いのは、学校制度の違いなども関係していると思われる。

たとえば
ジョン・F・ケネディ(アメリカ合衆国第35代大統領)、ビル・クリントン(アメリカ合衆国第42代大統領)、ウィンストン・チャーチル(元イギリス首相)、坂本龍馬(幕末日本の政治家・実業家)、源義経(平安時代の武将)、織田信長(戦国大名)、リチャード・ブランソン (ヴァージン・グループCEO)、ヘンリー・フォード (フォード・モーター創業者)、ビル・ゲイツ (マイクロソフトCEO)、スティーブ・ジョブズ (アップル社共同設立者)、マルコム・フォーブス (フォーブス誌元発行人)、ウォルト・ディズニー、テッド・ターナー(CNN創業者)、フランク・ロイド・ライト、サルバドール・ダリ、パブロ・ピカソ、フィンセント・ファン・ゴッホ、マイケル・ジョーダン (プロバスケット選手)、マジック・ジョンソン (プロバスケット選手)、ノーラン・ライアン(元メジャーリーガー)、エミリー・ブロンテ、シャーロット・ブロンテ、エミリー・ディキンソン、エドガー・アラン・ポー、ロバート・フロスト、レフ・トルストイ、クリストファー・コロンブス、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、ショーン・コムズ (ラッパー兼プロデューサー)、ボノ (U2ボーカル)、アン・バンクロフト、ジム・キャリー、スティーブ・マックイーン、ジャック・ニコルソン、エルビス・プレスリー、シルベスター・スタローン、ロビン・ウィリアムス、ダスティン・ホフマン、ウーピー・ゴールドバーグ、パリス・ヒルトン(2007年7月1日ラリー・キング・ライブにて告白)、レオナルド・ダ・ヴィンチ、グレアム・ベル、トーマス・エジソン、ベンジャミン・フランクリン、ライト兄弟、アンセル・アダムス、アルベルト・アインシュタイン。

デビッド・ニールマン (ジェットブルー航空CEO)(2000年CNN放送にて自ら告白)かつては学業中退者であったデービッド・ニールマンは、航空券のペーパーレス化や米国10番目のジェットブルー航空の創業という偉業を、ADHDの特性なしでは成し得なかったと米メディアで語っており、自身がADHDを抑える薬物の飲用を頑なに拒んでいることを明かしたエピソードと並んで有名である。

まあ、ざっとこんなところで、
感想は、多分、診断が甘すぎるということ。エピソードで語るなら、男の子は一時的にそんな時期もあるだろうともいえること。

ADHDだったとして、ADHDだったから偉人になったのではなく、
ADHDであることを補って余りある才能があり、かつ、それを生かすことができた環境が大きい。

*****
古い時代には、実はつい最近までだが、感染症が多く、栄養状態も悪く、子供の脳は常に多くの感染症と栄養障害で発達が阻害された。結果として発達障害やてんかんその他が多く発生していた。はしかのワクチンだけで脳障害が出ることを例にとっても分かると思う。脳は発達の全体を考えるとかなりデリケートな器官であり、最終的に、高次脳機能障害と呼ぶべき例も多いが、その問題はどの範囲を社会が許容するか、自分で不自由と感じるかにも関わってくる。

たとえば近眼をどの程度「病気」と考えるか、などに似ている。

ビル・ゲイツも近眼だったということで、とくにそれ以上の何もないようにも思われる。

*****
かつては、検査結果に機能異常があればてんかんや知的発達障害、形態的異常があれば、その診断、それができない場合には、微細脳障害(Minimal Brain Dysfunction;MBD)と呼んでいた。検査で発見出来ない異常がありそうだという呼び方で、いろいろなものを含んでいた。

自閉性傾向とは一部重なる部分もある。しかし、学校の教室で落ち着かない子と、集団に加われない子はかなり違うので、診断も違うし、療育の方法も違う。
自閉傾向についても、仮説はミラー・ニューロン仮説や突出風景理論など、提出されるものの、流行しては消えてゆく。


「のどがあぶられる」とき漢方薬

中国の古典に「のどが炙られる」とき、女性は半夏厚朴湯と書かれている。
いまで言えば、のどのあたりの違和感とか、呼吸のしにくさとか、
不安性障害やパニック障害でよく見られる症状で、
女性の場合、半夏厚朴湯を実際によく用いるし、
効果がある。
男性の場合は、比較検討してみて、半夏厚朴湯よりも柴胡加竜骨牡蛎湯がよいという報告があり、
それももっともだと思う。実際そのように感じる。半夏厚朴湯も充分に効果的である。

さてその場合、男性女性、不安、パニック、そのようなことがキーワードなのではないと思う。
もっとその奥にある「体質」または「性質」について処方しているのであって、
たとえば、XYであっても、女性的な体質や感受性の人はいるものだし、
XXであっても、男性的な人はいるし、
人生の時期によっても、それぞれ異なるようで、
さらに性格傾向や生育歴やそのときの環境にもよる。
どちらかといえば、外来のみのクリニックでは半夏厚朴湯の使用頻度が高く、
病院外来では柴胡加竜骨牡蛎湯の使用頻度が高かったように思う。

また、いくつかある柴胡剤を選択し、少量のみ用いる方法、西洋薬と組み合わせる方法があり、
工夫の甲斐のある分野である。

新橋、霞ヶ関あたりのサラリーマンのうつにはどちらかといえば補剤が必要で、
体質、性格、状況にあわせて、
補中益気湯、十全大補湯などを少量のみ用いる。

ロート製薬は不眠、精神不安に対しての汎用処方として、
柴胡加竜骨牡蛎湯を大衆薬として売り出した。
理由のあることである。
ロート製薬は同時に防風通聖散を大衆薬として販売していて、
現代の状況に合致した処方選択である。

専門的には冷えやのぼせはあるか、消化機能はどうか、感情の状態はどうか、性格傾向はどうか、このあたりを総合して判断する。
舌診や腹部触診、脈診が有用である。

治療のターゲットをどこに定めるかで、処方も異なる。そのあたりはまことに微妙である。
流行のQOLやアドヒアランスと関係するところだ。


厚労省 食生活改善

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html
こんな図が解説されている
色合いがいいですね。


baransu.gif

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とりあえず
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/pdf/eiyou-syokuji9.pdf
ここが使いやすい。


厚労省 エクササイズガイド

6メッツを30分やったら、3エクササイズですが、
メッツやエクササイズという単位を理解しましょう。

運動施策の推進

〈運動づくりのための運動基準・指針〉



 〈運動指導者情報〉(健康ネットの該当ページへ)

  • 「新しい健康運動指導士」について(PDF)
  • 「健康づくりのための運動指導者普及定着方策検討委員会報告書」について(PDF)


 〈階段利用キャンペーン〉

〈健康増進施設認定制度〉

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ここはきれい
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/metabo02/yobou/undo/index.html

スタチン フィブラート フェノフィブラート

LDL-C低下が目的ならばスタンダード・スタチン(メバロチン)、スーパー・スタチン(リピトール)、ストロング・スタチン(リバロ)。バイコールは副作用のため自主回収。
TG低下またはHDL-C上昇が目的ならばフィブラート(ベザトール)を選択。
LDLコレステロールがそれほど高値でない2型糖尿病患者に対してはフェノフィブラート(リパンチル)により一次予防ができる。
フェノフィブラートは血清尿酸値低下作用があるので、「尿酸が高い+脂質異常」の場合によい。

メタボ検診 特定健康診査 特定健診 特定保健指導 厚労省許認可権

メタボ関係のサイトとしては、下記。

http://tokutei-kenshin.com/
http://metabolic-syndrome.net/
http://metabolic.jp/
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/metabo02/index.html

以下、俗称「メタボ検診」について。
*****
特定健康診査とは?
 
2006年の健康保険法の改正によって、2008年4月より40~74歳の保険加入者を対象として、全国の市町村で導入されると新しい健康診断のことです。
最近のテレビや雑誌などでは「特定健診」や「メタボ健診」という名称で呼ばれることが多くなっていますので、正式な名前には馴染みがない方も多いかと思います。

この特定健康診査は、糖尿病や高脂血症、高尿酸血症などの生活習慣病の発症や重症化を予防することを目的として、メタボリックシンドローム(※)に着目し、この該当者及び予備群を減少させるための特定保健指導を必要とする者を、的確に抽出するために行うものです。

※メタボリックシンドローム…内臓脂肪型肥満と糖質や脂質などの代謝異常、または高血圧が合併した状態のことです。心臓血管系の病気の引き金となるため、注目されるようになりました。

特定健康診査項目

問診(生活習慣、行動習慣)
診察(理学的所見)
身体計測(身長、体重、腹囲、肥満度、BMI)
血圧
血液検査(中性脂肪、HDL・LDLコレステロール、GOT、GPT、γGTP、血糖、HbA1c)
その検査内容は上記の通りで、従来の労働安全衛生法上の法定健診項目との比較では、まず腹囲が追加されています。この腹囲の基準として、男性が85cm以上、女性が90cm以上の場合、メタボリックシンドロームの基本要件を充たすこととなります。
そして、血液検査項目ではLDLコレステロール、HbA1c(グリコヘモグロビン)が必須項目として新たに追加され、総コレステロールが削除されています。また、胸部X線検査や喀痰細胞診が項目削除され、メタボリックシンドロームに特化している点も注目されます。

現行の健診では、医療機関ごとに検査法、検査機器、試薬などの違いにより基準値や健診判定値の違いがあり、異なる健診機関のデータを比較することが出来ませんでした。
しかし、この特定健康診査では、実施した健診機関を問わず保険者はデータを一元管理し、リスクの高いものから優先的に保健指導を行うことが求められており、検査測定値の標準化を行うことが出来るようになっています。

異常が見つかったら特定保健指導
 
メタボリックシンドロームの診断基準に沿って複数のリスクを持つ受診者に対しては、医師、保健師、管理栄養士などによる特定保健指導が行われます。病気の人を拾い上げるのではなく、これから病気になりそうな人を抽出して医療関係者が早期に介入することが主眼となっています。

特定保健指導の内容は、受診者の状態に応じて、対面や電話、電子メールによる動機づけ支援(原則1回の指導)、積極的支援(3ヶ月から6ヶ月の継続的な指導)となっています。
なお、保健指導対象者の選定方法は以下の通りです。

ステップ1:腹囲とBMIで内臓脂肪蓄積のリスクを判定
腹囲:男性は85cm以上、女性は90cm以上 → (1)
腹囲:男性は85cm未満、女性は90cm未満、かつBMIが25以上 → (2)

ステップ2
1.血糖…空腹時血糖値が100mg/dl以上またはHbAicが5.2%以上または薬物治療中
2.脂質…中性脂肪が150mg/dl以上またはHDLが40mg/dl未満または薬物治療中
3.血圧…収縮期の値が130mmHg以上または拡張期の値が85mmHg以上または薬物治療中
4.喫煙歴あり

ステップ3:ステップ1、2から対象者をグループ分け
(1)の場合:1~4のうち、2つ以上該当で「積極的支援」、1つは「動機づけ支援」を行う。
(2)の場合:1~4のうち、3つ以上該当で「積極的支援」、1~2つは「動機づけ支援」を行う。

ステップ4
65歳以上75歳未満の前期高齢者は、積極的支援の対象となった場合でも動機づけ支援とする。
血圧降下剤などを服薬中の人は、医療保険者による特定保健指導の対象としない。
医療機関では、生活習慣病管理料、管理栄養士による外来栄養食事指導料、集団栄養食事指導料などを活用することが望ましい。

メタボリックドミノ:肥満から始まる生活習慣病の連鎖反応
 
腹囲が85cmを超えた瞬間に、健康体が一転して病気を発症することはありませんが、太り始めたそのときからメタボの歯車は着実に回り始めているのです。

メタボは互いに関連しており、どんな順番で発生するかも解明されています。これを捉えたのが「メタボリックドミノ」という考え方です。
肥満から高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、動脈硬化が連鎖的に起こり、最終的には心筋梗塞や脳梗塞のような脳・心血管系の病気で倒れるまでの流れが、ドミノ倒しに似ていることからこのように命名されました。

放っておいてドミノ倒しが進んでしまうと、コマが1つ倒れるたびにいろんなコマが同時に倒れて手が打ちにくくなります。診断基準以下だからと安心しないで、普段から肥満に気をつけるなど、常に意識しましょう。

*****
特保といえば飲料についてコマーシャルで効き慣れている。
黒ウーロン茶がサントリーで、
へルシア緑茶とエコナオイルシリーズは花王、
500商品以上が特定保健用食品の表示を許可されている。
これが厚労省の許認可権。
「有効性や安全性等に関する科学的根拠に関する審査」という部分が個人的には怪しいと思っていて、
効果があるほど使ったら不具合がでる可能性が高いのではないか、
たとえば、効果が出るくらい飲めば多分下痢をする、
下痢をしない範囲だと特に効果はない、
その実際のところを、どのように判断しているかということだ。
物質の性質としては、中性脂肪値を抑制するとしても、その効果がでる量まで使ったら下痢をするというのでは、
期待してはいけないということになる。


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アドヒランス向上

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新橋のサラリーマンさんには
とくにアドヒアランスが大切と思っている。

薬を飲み残すのは、
飲んでも飲まなくても体調が変わらない
つまり
薬の効果が実感できないから
であり
ここはきちんと理解してもらい、
今日飲んだ薬があとあと効いてくるのだと思って
飲んでいただきたい。

速効性のある成分もあるが、
ゆっくり効いてくる成分もあるので、
その区別について、理解していただきたいと思う。

横紋筋融解症

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それほど頻繁に出逢うわけではないが、
先日、経験した。
5年前に、入院、原因不明のままに治癒。
その後異変なく暮らしている。

たとえば糖尿病で腎機能が低下、
コレステロールコントロールのためにスタチン系薬剤を使用、
横紋筋融解症が起こり、CKが上昇、薬剤を一時中止、といった例もある。

笠原先生のお話

私の精神科開業医経験から

■はじめに
  笠原先生は、うつ病の治療について「笠原・木村分類」、「小精神療法」、「うつ病の心理症状の消えていく順序」と、様々な提唱をされてきました。また、大学教授を退官後、先生ご自身の構想を取り入れた診療所を開かれました。今回はその10年にわたる診療経験を中心にお話をうかがいました。

 

「精神科医院」のシステムがほしい

-先生は、「精神科病院」と並ぶ「精神科医院」のシステムが必要な時代がきたという発想から、1998年にご自身でも精神科医院を開業されました。その後10年が経ち、先生のクリニックの運営は順調でしょうか。

  私が精神科医院のシステムがほしいと思ったのは、1970年代にすでに内因性といわれた精神障害がおしなべて軽症化してくる傾向に気づいたからです。まずうつ病が、次いで統合失調症が軽症化した。そういう人たちは、大病院ではなく、身近でもっと簡単に診療が受けられるようになればいい。そこで、日本に明治以来ある内科開業医を真似た「精神科医院」のシステムを提唱しました。そう申した手前、私自身も教職を退いてから、開業医をやってみることにしました。
  私はクリニックの経営を信頼できるオーナーに任せ、自分は診療だけに専念できる体制を整えました。経営と診療の両方を一人でやるのは、私の力量では大変だと思ったからです。それで10年間やってみた結論としては、診察が好きで、そこへそんなに儲けなくてよい人なら、たとえ60歳からやっても大丈夫、と感じています。
  医院は、院内を明るい雰囲気にし、患者さんが来院しやすいように工夫を施してあります。診療は、保険診療を原則とし、すべて予約制で、女医1名を含めた4名の精神科医と2名の女性の心理カウンセラーで行っています。メンタルクリニックは一人でやるとオーバーワークになり満足な診療ができなくなるのではないでしょうか。
  患者さん一人にかける時間は、初診は重要なので30~40分、次の回からは平均5~15分としています。ただし、この中には家族面接の時間が入っていません。家族にも話をきくことはクリニックでは大変大切なのですが、保険医療では十分に行えないので、この点で何らかの支援の必要性を感じています。

診察室ではやはり「医師-患者の対人関係」が大切

-実際の診療における先生の考え方、方針をお聞かせください。

 治療は、うつ病でも統合失調症でも、第一に薬物療法、次に小精神療法、最後に家族面接と考えています。薬物療法は進歩し、今日、薬剤を使わないケースは少ないと思います。薬をうまく使うのも開業医の力量の一つです。副作用にも留意し、血液検査も 3~4ヵ月に一度は行います。
  ただ、薬物療法に注意が集中するあまり、「医師-患者の対人関係」に配慮するのを忘れては精神科医の名がすたれます。電子カルテも結構ですが、患者さんの顔も見ずに薬を処方するのは、精神科医としてはどうでしょうか。私は、新しい患者さんの場合には、患者さんが納得してから、薬を処方するようにしています。また、治療にどのくらいの期間がかかるかを患者さんにあらかじめ伝えることも大切です。治療が長引く患者さんも少なからずいます。しかし、早くなおすことより、なかなかよくならない人を引き受けて、「長く診る」のがクリニックの使命です。(図1参照)



-先生は、診察室に入ってくる患者さんを ドアのところまで行ってお迎えになるということですが。


  精神科医には私のようにしている人がたくさんいると思いますよ。診察室に患者さんが入ってくる時は、それは人と人との「出会いの大切な一瞬」です。ドアを開けて招じ入れるときに多くの情報を得られるはずです。そして私のほうから先に挨拶をします。「精神科という看板のあるところへ来にくかったであろうに、よくいらした」、診察が終わったら、「また来てください」という思いを込めて、再び挨拶で送り出します。このような、簡単で常識的な配慮だけでも、ともすれば患者を見下ろしがちになる医師の優越的スタンスが匡されるのではないでしょうか。

-先生はまた、室内に患者さんが入って来られる際の様子を非常によく観察なさるそうですね。

  初対面の印象を大切にするという古風な診断学は、外来治療で再評価されるべきではないでしょうか。なぜなら、限られた時間で一挙にとらえるのに適しているからです。返事の仕方、歩き方、感情の動き方が一挙にわかります。 現在、米英の医学の影響下にあって、神経学的な認知機能のチェックリストによる研究が進んでおり、それ自体はよいことですが、精神医学ですから、それだけでなく、診察室での感情的印象というものをもっと大切にすべきです。例えば、患者さんとの一対一の診察で、患者さんに健康的な優雅さが次第次第に(多分、薬物療法によって)出てくるのを直感的に診断する。私は昔習った言葉で”grazie”といっています。いちいち認知機能を計っていては診察室では間に合わない。 直感の練習をする。チェックリストや電子カルテだけに頼るのではなく、人間観察の技を磨く 。

-カルテには、患者さんから受けた印象などをそのまま記述して、サマリーをつけておくというお話ですが。

  そんなに詳しい記録でなくていいのです。次回の面接につながる、外的出来事の一つ二つを常識的範囲で記録しておく。例えば、この患者さんは「来週少々無理をして法事のため九州へ旅行する予定だ」 と記録しておくと、次回の診察に先立ってそれを読めば、どのような患者さんだったかすぐ思い出します。患者さんも、覚えていてくれたということで、医師への親しみを増します。こうしておけば、数百人の患者さんの中からでも個人を憶い出せます。

開業医レベルでは常識的小精神療法がよい

-小精神療法という言葉を先生が作られた際のお考えをお話しいただけますか。

  フロイトの時代、精神分析というのはそもそも週に3回も4回も面接に来られる、生活的に優雅な人たちのものでした。今日の日本ではそういう人はいません。しかも、保険診療では長い時間をかけて診察するというのは無理です。精神分析のような大精神療法は研究的に大病院で行うか、自費の心理カウンセラーで行います。クリニックでは、通常は小精神療法で十分です。少しの時間で、そのかわりに頻繁に、場合によっては週に2回来院していただいてもよいのです。
  ただ、小精神療法を行うには、精神科医として、病人についての心理的知識が必要です。例えば、うつ病なら朝は調子が悪くて、夕方になると楽になるとか、普通の人が楽しめることを楽しめないとか、あるいは、健康人には容易にとれる心理的休息が病人になるとなかなかむずかしい、などといったことを知っていなければいけません。
  小精神療法とは、こうした精神病理学の知識を基にした意識的治療です。精神分析などさまざまな専門知識をもっている方が良いけれども、そのまま直には使わず、常識の篩にかけて常識的言葉で語るのです。治療の核として「常識」を大事にします。

-よく「ダムの水」という比喩を言われますが、これはどういうことですか。

 脳科学の知見や薬物の脳内作用機序はある程度知っていなければいけませんが、その前に、診察室での印象をもとにして、その人の「社会力」とか「家庭力」を測ることが大切です。私は、「心理的疲労」という直感的概念を愛用しています。患者さんに図2参照)を見せて、「あなたは少し疲れていて、ダムの水でいうとちょっと水位が落ちています」、そういったイメージを共有するように努めています。


  

 図2 Bは、休息療法によって心的エネルギー水準(ダムの水位)が上がると、それまではどうしようもないことに思えていた心的葛藤(水底の岩)が水面下に隠れ、それほど厄介なものとは思えなくなることを示したものです。必ずしも岩をダイナマイトで破壊しないと治癒しないのではないのです。これは一例ですが、患者さんにいかに上手に心理的休息を取らせるか、これが小精神療法を成功させる前提になります。 
  それから、マイナスのみならず、プラスを計るチェックリストがあればいいですね。「喜びの回復」を計るために、例えば、「朝刊が読めるようになった」、「台所に立つことができた」、などという項目も入れたらどうでしょうか。また、チェックリストだけにとどまらず、症状の背景に、その人の生活や人柄・性格を少しでも知ろうとする努力も不可欠です。認知療法もいいのですが、もう少し患者さんの生活全体を含めた眼が診療室ではほしいですね。

うつ病の心理症状の経過予測の試み


-軽症うつ病が薬物療法下で改善する時には一定の傾向が見られる(図3参照)、という先生の説についてお話ください。

 私は長い間うつ病の患者さんを診ているうちに、患者さんの心理症状が段階的に消えていくと思うようになりました。図3はその一応の予測経過を階段状に表したもので、しっかりした統計的データではありませんが、私の直感で計って、「あなたはだいたいこの辺でしょう」、「この階段はなかなか通りにくいので2~3ヵ月は我慢しなさい」、というふうに患者さんに説明するために使っています。薬剤を使うときにはエビデンスが必要ですが、常識的な治療は直感的なものでも十分役に立つと私は思います。

なぜか時代の流れでうつ病も変化する


-最近、うつ病の軽症化に伴い、不安とうつが混じったような患者さんを診ることが増えたという精神科医の声がよく聞かれます。

  昔から「焦燥型うつ病」といって初老期におこる特に激しい不安を伴ううつ病が知られていて、今でも一定数あります。しかし、確かにこのごろはもっと若い年齢でも不安主導のうつ病があります。たとえば、上の図でいうと下から2つ目の「不安」の段階で止まってしまい、ここをなかなか越えられない患者さんです。 一方で、「不安」、「ゆううつ」の段階は越えたが、「手がつかない」、「根気がない」という「おっくう感」の時期が長く続くケースも、これまた多く見られます。このような患者さんに対しては3~4年を覚悟して診ます。そしてある時期から社会復帰活動を始めるための練習を少しずつするよう勧めます。
  どちらのタイプも「神経症化した」と言いたくなるのですが、経験によれば5年もすれば大体よくなっていくように思います。

時代の流れに伴い、精神疾患も変わってきていますか。

  非定型にも目を留める必要があります。これは女性に多い。貝谷先生が長く研究しておられます。私が今注目しているのは、Akiskalのいう“soft bipolarity”です。病気になる前に循環気質だった人がうつ病になると、bipolar depressionになる可能性が大きい。難治性軽症うつ病のなかに「かくれ双極性」が潜んでいることもよくあります。双極性の素質をもっている人には、対応した薬剤の処方を考える必要があります。Rapid cyclerなども多く、どういうわけかこのタイプは今後増えていきそうですね。
 

薬物療法の進歩と、今後の課題としての外来精神科医療


-先生が精神科医になられてから今日まで、精神疾患の治療で一番変わったと思われることは何ですか。

  予想した以上に患者さんが治るようになったことでしょうか。いくつか理由があるが、薬剤の進歩をあげないわけにはいきません。脳研究の進歩と連動して、社会脳(social brain)説なども出てきました。薬が奏効すると、診察室での患者さんの社会力が向上する。先にあげた“grazie”などもその一つです。
  それから、精神科医が増えたということも治癒率の向上に関係するでしょう。近年の調査では精神科の開業医も今は3千軒くらいだそうですが、私の試算では3万軒くらい確保できれば、国民のメンタルヘルスは維持でき、今話題の自殺を減らせるのではないでしょうか。患者さんの家族の相談にもわれわれの手が回るようになります。

 

将来の精神科医のために


-先生はこれまで、それぞれの勤務地で新しいテーマを見つけて研究されたとうかがっていますが。

  大したことではないのです。元来は統合失調症の心理学がライフワークなのですが、それだけでは狭すぎるので、大学生を診る保健センターにいた時には“Student Apathy”(1979年)をテーマにしました。教授職になってからは病棟患者の受持ちになれないので、外来でのうつ病の整理をしました。笠原・木村分類はその一つです。その5年後の1980年にDSM-III、1993年にICD-10が出て世界的に汎用されるようになり、その影にかくれてしまいましたが、やはり文化が違うわけですから、日本には日本の分類があってもよいのではないでしょうか。退官後の今は、日本の保険制度下でいかによい外来医療をやるか、いってみれば「開業医の精神医学」をやっています。 

-先生の今後のテーマは、引き続き、地域レベルでの医療でしょうか。

  現在、外来診療に見合う一定のマイルドな精神科患者層が日本にできた、と言えると思います。そして診察好きで職人気質の医者なら、保険診療でも開業がなんとか成り立ちます。人生90年の時代です。若い間には公の仕事をし、60歳から開業医になり、地域のメンタルヘルスの向上に尽くしてくださる。そういう先生が今後増えていくことを願っています。

-本日はお忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。

<参考文献>

笠原 嘉、木村 敏 : うつ状態の臨床的分類に関する研究 精神神経学雑誌 77、715-735、1975
笠原 嘉 : 精神科「医院」 精神科医のノート みすず書房、 1976、 174-188
笠原 嘉 : 青年期―精神病理学から―中公新書、1979
DSM-IVによる“Atypical depression”の基準: 1.Mood reactivity (mood brightens in response to actual or potential positive events);2.Significant weight gain or increase in appetite;
3.Hypersomnia;4.Leaden paralysis;5.Long-standing pattern of interpersonal rejection sensitivity
広瀬徹也 : 「逃避型抑うつ」再考、広瀬・内海編「うつ病論の現在」 星和書店、2005 61-62
Akiskal H S, Benazzi F: Atypical depression: a variant of bipolar II or a bridge between unipolar and bipolar II? ; J Affect Disord 84, 209-217, 2005
貝谷久宣 : 気まぐれ「うつ」病―誤解される非定型うつ病―ちくま新書、2007
笠原 嘉 : 精神科における予診・初診・初期治療 星和書店、2007

パキシルと気分安定薬

書類では、
パキシルと炭酸リチウム、
パキシルとカルバマゼピンは
それぞれ組み合わせ注意になっている。
バルプロ酸は記載がないようだ。
個人的にはバルプロ酸を使っている。

*****
BPが考えられる症例に
いきなりSSRIだけを出すのは考え物で、
気分安定薬で開始するか、
やむなくSSRIで開始するとしても、
BZPなども考慮しつつ慎重に進めたい。


Montgomery Äsberg Depression Rating Scale(MADRS)の日本語訳

Montgomery Äsberg Depression Rating Scale(MADRS)の日本語訳

Hamilton rating scale for depressionが最も広く用いられていが、
1979年に,症状の変化を鋭敏に反映させることを目的に
Montgomery Äsberg Depression Rating Scale(MADRS)が作成されて以来,
MADRSがうつ病の臨床研究で広く用いられている。

うつ病の病前性格・心因・状況因

病前性格についての再考

http://jams.med.or.jp/symposium/full/129015.pdf
から採録
概観すれば著者の言うようなことになる
メランコリーもすこし分が悪い

*****
うつ病の病前性格・心因・状況因
坂元薫

うつ病の病前性格研究は,わが国やドイツで行われてきた類型論的研究と英米圏で
行われてきた次元論的研究に大別できる.
他者配慮性,几帳面,過度の良心性,責任感の強さ,仕事熱心などの性格特徴から
なるメランコリー親和型性格を基盤として役割の変換や喪失を意味する状況変化のも
とにうつ病が生じることがわが国の臨床家の一般的な見解となっている.しかし近年
では,メランコリー型性格のうつ病特異性に疑義を呈するような計量精神医学的研究
も現れ,この点に関する実証的研究が必要とされている.
一方,弱力性優位のメランコリー型性格に熱中性,凝り性,徹底性という強力性の
標識が混入する度合いが高くなるほど,すなわち執着性格,さらにはマニー親和型性
格の様相を帯びるほど,双極性経過を呈しやくなるという笠原の先見的な示唆は
Zerssen により実証的に確認されることとなった.
こうした類型論的研究に対し,種々の人格特性を個別的に評価する次元論的研究で
は,うつ病患者の病前には有意に高い「神経質neuroticism」得点が見られるが,それ
はうつ病に特異的な所見ではなく,他の精神障害の病前にも広く見られるという所見
が得られている.
うつ病を始め気分障害の発症と病前性格の関連を2 方向から考えてみたい.第一
は,「病前性格はライフイベントの衝撃の拡大鏡/フィルターとなる」という観点であ
る.例えば,「神経質」得点の高い個人は,そうでない個人に比べ,同等のライフイベ
ントからより強い衝撃を受けることになり,それだけ精神疾患に罹患しやすくなるの
であろう.第二には,「気分障害関連遺伝子群が病前性格形成に関与しうる」可能性で
ある.例えば,マニー型性格は双極性障害の生物学的素因が直截に性格面に表現され
たものであり,マニー型性格は一種のsubclinical mood disorder なのかもしれない.
一方,病前性格は,気分障害の遺伝的素因に対する対処スタイルとして醸成されるも
のでもあろう.例えば,メランコリー型性格は,単極性うつ病の遺伝的素因を有する
者の発病に対する防衛努力の結果とみなせるかもしれない.

はじめに
人格を舞台として現象する疾患が精神障害
であり,病者の人格への理解を抜きにした精
神科臨床は考えられない.
種々の精神疾患の病前性格研究の中でも,
うつ病をはじめとする気分障害をめぐるもの
は最も豊かな成果があげられた領域である.
それだけに包含する内容も豊富であるが,本
稿では,まず気分障害と人格の関連に関する
仮説を概観し,いくつかの局面のうち気分障
害の病前性格をどの切り口で検討すべきかを
明らかにしておきたい.
そのうえでわが国やドイツで行われてきた
臨床的直感に基づく類型論的研究の成果を簡
単に整理し,そしてそれらが抱える問題点や
課題を明らかにしてみたい.次に英米圏で行
われてきた計量精神医学的実証性を重視する
次元論的研究の成果と臨床的意義を概観し,
最近の研究動向についても触れて行くことに
する.そのうえで類型論的研究と次元論的研
究の接点を探り,さらに気分障害発症に人格
がどのように関与するのかという本質的な問
題の解答の糸口も探って行きたい.
1.気分障害と人格との関連仮説
Akiskal ら1)は,気分障害と人格の関連につ
いて,以下のような5 つの可能性を示唆して
いる.
1)気分障害の素因としての人格
人格が気分障害発症の重要な成因の1 つと
なっているとする考えであり,病前性格はこ
の意味で用いられることが少なくない.
2)気分障害の病像・経過・予後に影響を
与える要因としての人格
人格障害の合併が,うつ病の治療予後を悪
化させることを指摘する報告は少なくない.
3)気分障害の「合併症」としての人格
気分障害の結果としてある特定の人格特性
が生じるという考え方である.気分障害の
state effect による人格の見かけ上の変化,す
なわち「病中人格」や気分障害を経たことに
よる人格変化すなわちpostmorbid personality
「病後人格」に相当するものである2).
4)気分障害の軽症型としての人格
従来人格とみなされていたものが,軽症の
気分障害である可能性が最近指摘されてい
る.例えば循環病質として人格障害とされて
きたものが,DSM-やICD-10 では気分循環
症として軽症の気分障害に分類されるように
なった.
5)気分障害と直交する次元としての人格
気分障害と人格はまったく無関係であると
いう可能性である.実際にはこの可能性の妥
当性は高くはないが,DSMⅢ以降におけるⅡ
軸設定の理念に見られる「精神障害と人格の
関係を一旦白紙に戻し,両者の内的連関を検
証していく」という姿勢を促進した考え方で
ある.
これらの各局面のうち病前性格研究の臨床
的意義を論じる際に,重要な視点を提供する
ものは,1)と2)である.
2.病前性格研究の意義
うつ病を初めとする気分障害に特異的な病
前性格が抽出できれば,それは気分障害の診
断だけでなく,気分障害の一次予防・早期発
見・再発予防にも貢献するであろう.さらに
病前性格が気分障害の臨床的病像に与える影
響を明らかにすることができれば,それは気
分障害の治療反応性・経過型やさらには長期
予後の予測に資することになろう.
3.類型論的病前性格研究の成果
類型論的病前性格研究は,メランコリー型
性格者がインクルーデンツ,レマネンツ的状
況のなかで内因性うつ病を発症させていくこ
とを繰り返し指摘してきた.そしてこうした
病前性格を有する者が安定する生活空間を模
索するという面からうつ病の発病予防も論じ
られてきた.
図1 に示したのは,気分障害の病前性格類
型の相互関係を著者なりに整理したものであ
る3).他者配慮性,秩序愛,役割同一性,権威
への同一性,精力性の程度などの各標識にお
いてメランコリー型性格とマニー型性格が対
極に位置する.執着性格は,精力性の標識の
配分比重に注目してメランコリー型性格とマ
ニー型性格の間に位置づけてみた.循環気質
は,遺伝規定的な概念であり,メランコリー
型性格,マニー型性格,執着性格の基盤をな
す気質に相当するものと考えた.
笠原4)は,病前性格が気分障害の経過に与
える影響という観点から,早くから重要な指
摘をしている.すなわち弱力性優位のメラン
コリー型性格に精力性の混在する度合いが高
くなるほど,病相にも双極性成分が混入しや
すくなること,つまり(軽)躁病相や非定型
精神病像を呈しやすくなることが指摘され
た.精力性標識の配分比重が臨床像(病像―
経過型)に影響することが示唆されたわけで
ある.またメランコリー型性格に依存性,愁
訴性,誇張性というヒステリー的色彩の混在
する度合いが高くなるにつれて,神経症的な
病像を呈し治療抵抗性となることも指摘され
た.こうした臨床的示唆は,病前性格―発病
状況―病像―経過―治療への反応をセットに
して見るうつ病の笠原―木村分類におけるI
型,II 型,III 型の分類として結実することに
なった.
病前性格と経過型の連関性に関する臨床的
直感に基づくこうした示唆の妥当性は,
Zerssen ら5)によって実証的に確認されるこ
とになった(図2).彼らは,気分障害患者42
例の経過型をブラインドにした上で,それら
の病前性格を病歴に基づいて後方視的に評価
した.そうしたところ,単極性うつ病群(D)
にメランコリー型性格が優位であること,そ
してBipolar II 群(BP II)にはメランコリー型
性格が優位の傾向があること,Bipolar I 群
(BP I)にはそれらと反対の傾向があり,さら
に単極性躁病群(M)では対他配慮性や秩序愛
は全く影をひそめ,自己中心性や支配性が目
立つマニー型性格が優位となることが示され
たのである.つまり,メランコリー型性格者
が単極性うつ病経過をとりやすく,マニー型
性格者が双極性経過を呈しやすいことが示唆
されたわけである.
4.メランコリー型性格は本当にうつ病
の病前性格か?
本来,臨床的直感に依拠する類型論的性格
把握は,操作・計量精神医学的研究にはなじ
みにくいものであるが,メランコリー型性格
の把握の客観化のためいくつかの人格検査が
開発されている.Zerssen らによって作成さ
れたF-list や笠原によるメランコリー型性格
のための質問紙などの自己評価式質問紙であ
る.こうした計量的人格検査を用いてメラン
コリー型性格が本当にうつ病の病前性格であ
るのかを検討した研究について概観すること
にする(表).
ここにあげた7 つの研究のうち,Zerssen
ら(1969,1970),Frey(1977),佐藤ら(1992)
の研究では,単極性うつ病患者のメランコ
リー型性格得点が対照群(神経症,統合失調
症,双極性障害,健常者)よりも有意に高い
ことが報告されている.ただしZerssen らの
研究では,うつ病の重症度をANCOVA によっ
て統制すると有意差が消失することが指摘さ
れている.
またBech ら(1980)やCzernik ら(1986)
の研究では,単極性うつ病患者と双極性うつ
病患者のメランコリー型性格得点に有意差は
見られなかった.
さらに驚くべきことには,最近のFurukawa
ら6)(1997)の研究では,内因性単極性うつ病
患者のメランコリー型性格得点は,健常対照
群よりもむしろ低かったと報告されているの
である.
このように計量的手法による研究では,メ
ランコリー型性格のうつ病特異性に関して完
全な一致が得られていないことがわかる.今
後もこの問題に関してさらに追試が必要とな
るが,その際考慮すべき問題点について次に
検討して行きたい.
5.類型論的研究の今後の課題
次に類型論的研究の今後の課題について検
討してみたい.まず第一に,メランコリー型
性格に関するこれまでの知見や議論を意味あ
るものとするためには,メランコリー型性格
がうつ病に特異的な病前性格であることを次
元論的研究と同様の前方視的研究デザインに
よって実証する必要があろう.しかし,長年
月を要する前方視的研究によりメランコリー
型性格のうつ病特異性が実証されるのをただ
待つだけではなく,メランコリー型性格がう
つ病の病像,経過型,治療反応性,予後にど
のような影響を与えるかという臨床的に重要
な課題をめぐる研究がその間に実施されねば
ならない.メランコリー型性格がうつ病に特
異的であるか否かは別にして,メランコリー
型性格類型に相当する人がうつ病者に少なく
ないことは事実だからである.
また病前性格と単極・双極性経過の連関性
を確認したZerssen ら5)の所見は,もし実証さ
れれば,病前性格における精力性の比重によ
りpotential bipolar を予測できることを示唆
するもので臨床的にも極めて有用なものとな
るため,今後は他の研究グループの追試によ
り彼らの所見の妥当性が実証されることを期
待したい.
6.次元論的研究の成果と臨床的意義
1)次元論的人格モデルの提唱
次元論的人格理論のうち代表的なものとし
ては,Costa & McCrae らによる5 因子モデル
やCloninger による3 因子モデル(後に7 因
子モデルとなった)とがある.
Costa & McCrae ら7)が提唱した5 因子モデ
ルに依拠して開発された自己記入式性格質問
紙NEO-PI-R では,「神経質Neuroticism」,「外
向性Extraversion」,「開放性Openness」,「調
和性Agreeableness」,「誠実性Conscientiousness
」といった5 つの独立した人格特性が評
価される.
一方,Cloninger8)は,人格形成に関与する遺
伝生物学的側面に注目し,遺伝的に相互に独
立で人間の行動の決定に重要な役割を有する
3 つの神経伝達物質系に対応した3 つの人格
次元を仮定した.そうした3 つの気質の次元
として,セロトニン神経伝達系に依存した「損
害回避Harm Avoidance(HA)」,ドパミン神経
伝達系に依存する「新奇性追求Novelty Seeking(
NS)」,ノルアドレナリン神経伝達系が関
与する「報酬依存Reward Dependence(RD)」
が抽出された8).この3 次元人格を評価する
ため,Cloninger によって自記式の3 次元人格
特性質問表TPQ(Tridimensional Personality
Questionnaire)が開発された9).
その後,神経伝達物質と人格特性や行動と
の関連がそれほど単純なものではないことが
指摘され,神経伝達物質と人格特性や行動と
の単純な関連を弱めた形での修正がCloninger
によって行われ,7 因子モデルによる人
格特徴を測定する自記式の気質・性格検査質
問紙TCI(Temperament and Character Inventory)
が開発された10).
2)次元論的人格モデルから見た気分障害
の病前性格
近年の英米圏における病前性格研究は,
state effect や病後人格変化によるバイアス
を排除するために,前方視的手法を用いたも
のが主流を占めるようになった.そしてそれ
らが一致して指摘するのは,「単極性うつ病患
者の病前には有意に高いNeuroticism が見
られるが,それはうつ病に特異的な所見では
なく他の精神障害でも広く見られる」という
所見である.したがって,次元論的アプロー
チによれば,うつ病に特異的な病前性格特徴
は存在しないということが現時点での結論と
いうことになろう.
現時点で次元論的研究がうつ病の臨床にお
いて有用な情報を提供しているのは,高い
Neuroticism 得点がうつ病の不良な予後予測
因子となるという報告以外には見当たらない
ようである.なお,報酬依存(RD)の低得点
あるいは損害回避(HA)の低得点が抗うつ薬
への良好な反応性を予測するという報告があ
るが,まだ予報的段階にあると見るべきであ
ろう.
7.気分障害の発症と病前性格の関連
ここでいよいよ,気分障害の発症に性格が
どのように関与するかという本質的な問題
に,神庭ら11)の論考を踏まえた上で,検討を加
えたい.
1)病前性格はライフイベントの衝撃の拡
大鏡/フィルターとなる
性格形成関連遺伝子群により規定され,ま
た養育環境,社会的環境要因による影響を受
けて形成される性格特徴はその個人特有の情
動認知スタイルや対処能力を形成することに
なる.そしてそれらは,通常環境を超える心
理社会的ストレッサー(過度に負荷的なライ
フイベント)が気分障害関連遺伝子群に与え
る衝撃を強化する拡大鏡となることもあれば
逆に緩和するフィルターとなることもある
(図3).
例えば,「神経質」得点あるいは「損害回避」
得点の高い個人は,そうではない個人に比べ,
客観的には同等の心理社会的ストレス度を有
するライフイベントからより強い衝撃を受け
ることになり,それだけ精神疾患に罹患しや
すくなるのかもしれない.その際,どの精神
疾患に罹患するかは,その個人が有する精神
疾患関連遺伝子群の種類によるのであろう.
例えば,気分障害関連遺伝子群を有している
場合には,気分障害の発症へと導かれること
になろう.この仮説は,上述した「うつ病患
者の病前には有意に高い神経質得点が見られ
るが,それはうつ病に特異的な所見ではなく
他の精神障害でも広く見られる」という次元
論に立脚する病前性格研究が一致して指摘す
る所見によっても支持される.
一方,社会適応性に富んだ性格特徴を発展
させ,高い対処能力を備え,さらに良好な社
会的サポートを受ける機会に恵まれているよ
うな個人では,たとえ彼らが気分障害関連遺
伝子群を潜在させ,そのうえに客観的に見て
も過度の心理社会的負荷に曝されたとして
も,気分障害の発症へと至ることはないとい
うことにもなろう.
以上の仮説に立脚すれば,「気分障害に特異
的な病前性格類型あるいは病前人格特性は存
在しない」という,臨床家にとっては予想外
の結果が得られたとしても,なんら驚きには
値しないことにもなろう.
2)気分障害関連遺伝子群が病前性格形成
に関与する
気分障害関連遺伝子群が病前性格形成に関
与する可能性も否定できない.
(1)病前性格はsubclinical mood disorder
である
例えば,マニー型性格は,軽躁的気分や種々
の精力性の標識を基調としており,双極性障
害の生物学的素因が直截に性格面に表現され
たものであり,換言すればマニー型性格は一
種のsubclinical mood disorder であるという
可能性があろう(図4).こうした個人に過度
の状況的・身体的負荷が加わった場合に,臨
床的に躁病と診断される病態を呈するように
なるのではないか.
躁病相だけでなくうつ病相も呈する双極性
障害においては,抑うつ性ならびに躁性の性
格特徴を同時あるいは交互に呈する体質的性
格特徴である循環気質に強く裏打ちされた執
着性格者が種々の負荷的状況下に双極性障害
を発症させる過程は,同様の仮説によって説
明可能かもしれない.つまり,循環気質(病
質)は,双極性障害の軽症型であるとする見
方である.
こうした見解を支持しているのが,DSM-Ⅳ
である.すなわち,軽躁,軽うつを長期にわ
たって頻繁に反復する気分循環性障害は,従
来は人格障害領域に分類されていたが,近年
になり,遺伝学的研究の成果ならびに気分安
定薬の有効性,さらに臨床的経過研究などの
知見により,双極性障害の軽症型であるとい
う見解が支配的となり,周知のように
DSM-Ⅲ以降,双極性障害に分類されるに至っ
たのである.
(2)病前性格は,気分障害関連遺伝子群を
有する者の発病への防衛努力の結果
である
一方,病前性格は気分障害の遺伝的素因に
対する対処活動スタイルとして醸成されるの
かもしれない.例えばメランコリー型性格は,
単極性うつ病の遺伝的素因を有する者のうつ
病展開性への防衛努力の結果,つまり気分障
害の遺伝的素因が間接的に性格面に表現され
たものとみなせるのかもしれない(図5).
つまりメランコリー型性格が包含するいく
つかの人格特性のうちでも,その全体像を最
も強く刻印することになる「他者との円満性
に一貫して腐心する」その姿は,通常環境に
あっても彼らが日々曝される種々の心理社会
的ストレッサーからの衝撃を最小限にくいと
め精神的安定を維持するための必死の防衛的
な対処行動に他ならないのではないか.そう
した防衛努力が無限に繰り返され,いささか
疲弊した彼らが,彼らにとっては閾値上の心
理社会的ストレッサーに襲われた場合,その
対処スタイルは破綻を迎えることになる.そ
の破綻が彼らに潜むうつ病関連遺伝子群を震
撼させ,うつ病発症へと至るのかもしれない.
〔文献〕
1)Akiskal HS, Hirschfeld RMA, Yervanian BI : The relationship
of personality to affective disorders. Arc Gen
Psychiatry 1983 ; 40 : 801―810
2)坂元薫:気分障害と人格.「気分障害の臨床」(神庭
重信,坂元薫,樋口輝彦)星和書店,東京.1999 ;
147―163,
3)坂元薫:気分障害における病前性格の生物学的意
義.精神科2002 ; 1 : 433―443.
4)笠原嘉:うつ病の病前性格について.笠原嘉編
「躁うつ病の精神病理1」弘文堂,東京,1976 ; 1―29,
5)von Zerssen D, Tauscher R, Possl J : The relationship
of premorbid personality to subtypes of an affective
illness. A replication study by means of an operationalized
procedure for the diagnosis of personality structures.
J Affect Disord 1994 ; 32 : 61―72.
6)Furukawa T, Nakanishi M, Hamanaka T : Typus melancholicus
is not the premorbid personality trait of
unipolar(endogenous)depression. Psychiatry Clin
Neurosci 1997 ; 51 : 197―202.
7)Costa PT, McCrae RR. NEO-PI-R : Professional manual.
Psychological Assessment Resources, Odessa, FL,
1992.
8)Cloninger CR : A systematic method for clinical description
and classification of personality variants : A
proposal. Arch Gen Psychiatry 1987 ; 44 : 573―589
9)Cloninger CR, Przybeck TR, Svrakic DM : The tridimensional
Personality Questionnaire : U.S. normative
data. Psychological Report 1991 ; 69 : 1047―1057.
10)Cloninger CR, Svranik DM, Przybeck TR : A psychobiological
model of temperament and character. Arch
Gen Psychiatry 1993 ; 50 : 975―990.
11)神庭重信,平野雅己,大野裕:病前性格は気分障害
の発症規定因子か.精神医学2000 ; 42 : 481―489.


軽症うつ病 2002年の回顧

月刊 精神科治療学  
【バックナンバー目次】第17巻8号  2002年8月
■特集 「うつ」は変わったか―評価と分類― (I)
●うつ病の概念を考える:笠原-木村分類(1975)と今日のうつ病臨床
笠原 嘉
 1960年代から70年代にかけて増加し始めた精神科外来患者のなかにうつ状態,なかでも軽症のそれが相当数を占めるようになった。それには医師が第一世代の抗うつ薬をようやく自家薬籠中にしたことも一役買ったであろう。この傾向は2000年現在も続いている。
 軽症うつ状態の出現はこれまでの診断学の通念を揺さぶった。例えば内因性VS心因性の二分論は重症者に対するときほどの力をもたず,神経症性うつ病という診断名は一層多義的になり使用に耐えなくなった。この現実を踏まえて試みたのがこの分類である。
 新機軸として,当時わが国で盛んだった病前性格論を取り入れた多軸診断を試みたり,フランスのNeo-Jacksonismを借用して一層の亜型作成を試みたりした。
 五年後に発表されたDSM-(III)がグローバルに「誰でもどこでも」を目指したのと対称的で,経験のある医師による使用を念頭に置いた。また基準項目のいくつを満たすかを数えるそれでなく「理想型」を中心にする古風な診断学であった。筆者は,世界に通じる診断を目指してDSMやICDを多用する今日の風潮を進歩として喜ぶものだが,同時に,将来,文脈を異にする「もう一つの」診断学が併用される可能性にも期待している。
Key words: mild severity of depressive disorders, multiaxial diagnostic classification, premorbid personality, premorbid social function, age at onset

●うつ病の概念を考える:「神経症性うつ病」という概念の行方
松浪 克文
 臨床現場ではまず非内因性うつ病が否定されてから「神経症性うつ病」の診断が検討される。このことから,「内因性うつ病」の概念が「神経症性うつ病」概念に論理的に先行していることがわかる。症状,発症形式における「了解性」「反応性」があり,同様の反応が生活史上に多く見られるときに神経症の診断が可能となるが,その場合には外的葛藤よりも内的葛藤に重きがおかれ,人格の病理として理解される。人格としてのうつ病は現代の精神医学で優勢なDSM診断分類ではappenndix Bに採り上げられている抑うつパーソナリティ障害に相当する。DSM体系内では,メランコリー病像を伴わない大うつ病,気分変調症の一部に「神経症性うつ病」に相当すると思われる病態が潜んでいる。前者の場合には,不安性障害の諸病型やパーソナリティ傾向~障害とのcomorbidityの病像に相当するが,躁性の成分の混入も考えられる。後者の場合には慢性軽症のうつ病を二分したAkiskalの提唱するcharacter-spectrum disorderという概念に臨床像が近い。「神経症性うつ病」概念は,集積された精神現象についての事実を帰納的に純化しようとするDSM的思考法とともに,仮説概念によって個々の精神現象の性質を演繹的に特定するという,今日排除されつつある思考法を保持するためのモデルを提供していると思われる。
Key words: neurotic depression, dysthymic disorder, double depression, endogenous depression, character-spectrum disorder

●うつ病の概念を考える:大うつ病の概念
木村 真人  葉田 道雄  森  隆夫  遠藤 俊吉
 大うつ病の概念は,Kraepelin以降のうつ病概念の変遷における病因論的枠組みの議論とその限界を背景にして誕生した。多種多様なうつ病の類型化と診断が提案されるなかで,統一した診断基準が求められ,脱理論的アプローチを用いたDSM-(III)診断の成立は歴史の必然と考えられる。数多くの未解決な問題は残されているが,今後の実証的あるいは経験的研究の積み重ねにより,うつ病概念の新たな理論的枠組みが再生されることを期待したい。
Key words: DSM-(III), DSM-(IV), mood disorder, major depression, untheoretical

●うつ病の概念を考える:大うつ病(DSM-(IV))概念の「功」
佐野 信也  野村総一郎
 DSM-(IV)による大うつ病概念は,うつ病診断学の歴史的知見を十分吸収した妥当なものであり,DSM-(III)からDSM-(IV)に至るまでに大きな修正を要さなかったことから,完成度が高いと考えられるという私見を述べた。操作的基準による大うつ病カテゴリーの明確化は,誤診(過剰/過少診断)を減らすことによって治療的恩恵を広く行き渡らせ,他の病態との関連性を探求する契機を提供し,人類に共通の生物学的本態への接近の道具となっているだけでなく,教育場面での情報伝達においても有力な海図を提供している。しかし臨床使用にあたっては,この海図はいわば大縮尺の世界地図のようなものであって,特定の狭い海域の入り組んだ湾内の変化に通暁している地元の水先案内人のような完全性を備えているわけではないことに留意する必要がある。
Key words: major depression, psychiatric diagnosis, DSM-(IV)

●うつ病の概念を考える:大うつ病(DSM-(IV))概念の「罪」
中安 信夫
 「うつ」は内因,心因,外因とさまざまな成因によって生じ,それに従って病像と経過も多様な疾患群である。旧来の「うつ」診療はこれら成因による状態像の差異を分別して疾患診断に到達し,それによって個々に応じた肌理細やかな治療を展開してきたが,成因を棚上げし,結果的に成因的には特定度の低い,いわば‘ごった煮’の「状態像」とでも称すべき大うつ病エピソードの特定を旨とするDSMの気分障害の分類以降,「うつ」の診断ならびに治療には誤った単純化・平板化が生じ,破壊されたものとなった。この点を,(1)成因への考慮なき治療がありうるのか?,(2)抑うつ反応はどこへ行ったのか?,(3)身体疾患(脳器質性,症状性,薬剤性)に基づく抑うつ状態が見逃されないか?という3つの疑問形の形で問い,それらを大うつ病概念の「罪」と断じた。
Key words: major depressive episode, major depressive disorder, DSM, endogenous depression, depressive reaction

●うつ病の概念を考える:うつ病理解にいま精神分析が貢献できること
藤山 直樹
 うつ病が脳の機能異常であることが知られ,その臨床が操作的診断基準と薬物療法のアルゴリズムを中心に語られる現在,精神分析がうつ病理解と臨床的介入に貢献できるのはどのような点であるかを論じた。Freudの喪の仕事という概念が,抑うつ的心性を心的成長の重要な側面であるととらえていたこと,対象関係論が抑うつポジションという概念によって人間的なこころの本質的要素として抑うつ的心性を考えていたこと,うつ病は真の抑うつ心性に入らないための停滞の局面であり,「躁的防衛」や「病理的組織化」といった概念がそうした病的な喪の仕事の基礎を説明することを記述した。このような人間的仕事としての喪の仕事の不全という見方でうつ病をみることが,とくに難治の人格障害的ニュアンスをもつうつ病の臨床に有益であることを示唆した。
Key words: depression, depressive position, mourning work, psychoanalysis

●臨床実践の視点から:薬の選択と初期評価
田中 克俊  上島 国利
 うつ病治療における薬剤の選択と評価は,有効性と安全性の両面から総合的に判断されなければならない。副作用プロフィールや種々の相互作用など薬剤の安全性や忍容性については比較的十分なエビデンスやコンセンサスが得られているものの,薬剤による有効性の違いについては,これまで海外を中心に行われてきた多くの無作為割り付け比較試験(RCT)やメタアナリシスでも未だ断定的な結論には至っておらず,今後本邦においても優れたRCTの集積が待たれるところである。治療計画の再アセスメントを行うための初期評価の際にも,治療の有効性と安全性について幅広く情報を収集しバランス良く判断を行う必要がある。これらの判断の重要な参考資料として,今後EBMに基づくより優れた治療アルゴリズムの作成が期待されているが,目の前の患者については,多くのメタアナリシスよりもその患者に関する1事例研究がもっとも優れたエビデンスである点はこれまでと変わるものではなく,臨床実践においてもこの視点の重要性に変わりはない。
Key words: depression, antidepressant, algorithm, evidence-based medicine (EBM), evaluation

 


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