精神療法と詩 患者さん主体の共同作業
患者さんの心の形や仕組み(病理構造)を
自分の目に見える形に変換し、
自分で問題を取り扱えるようにすることにある。
その場合、やはり言葉が重要である。
多くの患者さんは、現在の自分の状態を言葉に表わせない。
もどかしく思いつつ、自分の心に忠実になればなるほど、言葉にできない。
言葉に表わすことができれば、そこから、
問題を解釈し、咀嚼し、操作できるようになる。
現在の自分の状態をぴったり言いあててくれる言葉はないものか、
それが患者さんの願いのひとつである。
治療者は、患者さん一人一人に、クリエイティブに対応し、
その現状を言葉で表現しようとする。
多くは比喩を使う。
たとえば、こんな感じですか。
たとえば、こんなことに似ていませんか。
もやもやした感情を
ぴったり言葉にできれば、
それは結晶のような固い物となり、
それを削ることも、割ることもできるようになる。
患者と治療者は、共同して、言語化に努力する。
それは、詩を書くことと同じプロセスである。
ぴったり言葉に変換できれば、
そこから、我慢もできるし、別な解釈もできるし、
忘れることもできるようになる。
共同で一篇の詩を書くこと
それが精神療法である。
しかし治療者が語りすぎてはいけない。
患者は引きずられる。
こころと言葉のずれを隠してしまい、
言葉に従ってしまう。
それでは治療的ではない。
共同作業であるが、患者さんが主体である。
治療者がスケッチがうまかったとして、
患者がスケッチのこつをつかまなかったら、
いつまでも依存して、一人では生きていけないことになってしまう。
すべての苦難は自己成長の契機である
たいてい、重い立場になれば、さらに重い苦難が襲う
そして、立場が重くなるほど、誰にも言えなくなる
酒を飲んでみたり、
愚痴を言ったり、
暴力的になったりしていられるうちは、
まだいい
なにもできずただじっと耐えるしかない人たちが
たくさんいる
特に新橋のあたりには多くいる
すべての苦難は自己成長の契機である
その苦労を経験したあとでは、
人生が違って見える
春がしみじみとありがたいものになる
古典が深く心にしみる
苦労も悪くない
そう思えるときが必ず来る
苦労を分かってくれる人が必ずいる
大きな組織であれば誰かが理解してくれている
少なくとも、神様は見ている
苦難は神様からの問いかけである
わたしたちは行為によって神様に応える
そのようにして自己成長を成し遂げた人から話を聞くのは喜びである
ありがたいことだと感謝している
統合失調症とその類似疾患の初期薬物治療の薬物選択
統合失調症については、
いろいろな治療法があるのだが、
やはり薬物療法が治療の柱となる。
特に初期には、薬剤の効果も期待できるし、
その後の再発の防止も期待できるので、
初期の治療が特に大切である。
正直言って、昔の薬は、副作用がきつかった。
代表的な薬としては、
ハロペリドール=セレネース、リントン、ハロステン
クロルプロマジン=コントミン、ウィンタミン
などがあり、効き目は確かであり、今もよく使う。
この薬でなければならないというタイプの人もいて、
有用な薬である。
データの蓄積があるので、その点もかなり有利である。
しかし人によっては、副作用が少しきつい。
副作用止めもいろいろある。
いろいろな世代を経て、
10年位前に、
リスペリドン=リスパダール
が登場して、効果はかなりよくなり、副作用はかなり軽くなった。
しかし初期治療に関して言えば、やはり副作用は軽くなく、
根気よく説明をする必要がある。
昔からの薬で、
スルピリド=ドグマチール、ベタマック、アビリット
があり、これは大変に有用である。
しかし副作用の点で、
女性で月経不順、乳汁漏出などがあり、
男性で、まれであるが、女性化乳房が見られる。
これはドーパミン系に作用しているということで、
副作用というよりは、当然現れる作用と解釈すべきだが、
それでも、女性の場合は気にする人が多い。
男性の場合の副作用は、とくに問題ないことも多いので、
初期治療に適している。
また、女性の場合も、スルピリドでなければならない人もいて、
その場合には、副作用を抑えながら、または納得してもらいながら、工夫して使う。
考えてみれば、月経のことなんか言っていられないくらい、
統合失調症の破壊力はすさまじいものなのだ。
新しい薬としては、
ジプレキサ、セロクエルがある。
これは大変有効な薬で、かなり進歩したと思う。
副作用はかなり少ない。
しかし糖代謝に影響があり、糖尿病の発生または悪化の可能性がある。
体重増加や食欲増加に関係があるか、慎重に
検討しなくてはならない。
糖尿病の専門医の中には、
「向精神薬は必要なのならしっかり使ってもらいたい、その上で、
血糖値の保持に関しては任せてほしい」
という頼もしい意見もあるが、
どこの先生もそのように協力できる専門医がいるとは限らない。
ルーランは効き目も穏やかだが、副作用もマイルドで、使いやすい。
二次代謝産物として、クロザピンと類似の効果の物質となることも知られていて、
有用である。
エビリファイは、ドーパミンを安定化させる薬で、
画期的といえる。初期統合失調症に対して、どのような効果が出るのか、
臨床経験を蓄積しつつあるところである。
今のところ、かなり有望と考えられる。
4月発売の新薬であるロナセンは、
解説によれば、錐体外路症状の発現率は低く、
体重増加や高プロラクチン血症等の副作用も少ない、
統合失調症の陽性症状(幻覚、妄想など)にも、
陰性症状(情動の平板化、意欲低下など)にも効くということだ。
ドーパミン-2 受容体およびセロトニン-2 受容体に対して強い遮断作用と高い選択性があり、
セロトニン-2 受容体よりドーパミン-2 受容体に対する遮断作用が強い。
最近は新規薬剤の認可について、
かなりはっきりと先行薬に対して優位性がないと認可されないので、
たぶん、かなり有用ではないかと期待する。
まとめて言えば、
古い薬は、効き目は確実だが、副作用が困る。
新しい薬は、ドーパミンだけでなく、セロトニンに効くので、使いやすいが、
特有の副作用もあり、注意が必要である。
スルピリドは特異な薬で、有用だが、注意が必要。
さらに新しい薬、エビリファイとロナセンについては、大変注目。
そのほかに、
ベンゾジアゼピン系抗不安薬で経過を少しだけ見守る方法もある。
GABA系に作用する薬なのだが、
統合失調症の結果としての不安をよく抑えてくれるし、
睡眠リズムを取り戻すのにも役立つ。
いったん落ち着いてから、少量のエビリファイを始めてもよいと思う。
また、漢方薬を使うこともできる。
柴胡加竜骨牡蛎湯、
柴胡桂枝乾姜湯、
などが代表である。
女性の場合には、
当帰芍薬散、
桂枝茯苓丸、
加味逍遥散、
加味帰脾湯、
で始めるのも方法である。
証に応じて用いる。
開始してしばらくしてから、
ドーパミン系とセロトニン系のコントロールを始めてもよい。
茯苓丸
加味逍遥散
加味帰脾湯桂枝茯苓丸桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸
加味逍遥散
加味帰脾湯
SSRIの短期作用と長期作用
長期的には、セロトニンが増加し続けていれば、セロトニンレセプターが減少する。
セロトニンレセプターが減少することが、体質の変化をもたらす。
ストレスに強くなり、切り替えが速くなる。
そういった点で、
まず短期的にはセロトニンを増大させて、
うつ気分や不安を解消すればいい。
そして
長期的には、セロトニンレセプターを減少させて、過敏さを解消し、
体質改善をする。
ダウンレギュレーションと言う。
このようにすれば、うつは再発しにくくなる。
結果として、
最初の三ヶ月は、症状を改善させるため、
次の一年は、体質を改善するため、
SSRIやSNRIを服用するのがいいと考えられている。
うつ休業者続出企業はここでわかる
再度雑誌記事を紹介。
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こんな会社が危ない!うつ休業者続出企業はここでわかる
この春、転職したシステムエンジニアAさん。出勤初日、自分の部署がある一角に案内されて驚いた。なんと全員、ダークスーツにネクタイ姿。だが、髪は乱れているし、あごにはうっすら無精ひげが・・・。あきらかに寝不足が見て取れる顔と、びしっと締めたネクタイはなんだか妙な組み合わせに思えた。
「うちの社員はエンジニアも含めて、みんな身だしなみがいいんですよ」
課長の誇らしげな言葉に、Aさんの頭の中は疑問符でいっぱいになった。
『ネクタイをして、スーツを着たままここで徹夜するのか? お客さんに会うわけでもないのに? いったいなんのために!?』
うつ休業者が多いあぶない会社のサインとは
SEがネクタイをしている会社は、うつ休業者が多い──と書けば、語弊があるかもしれない。だが、企業のメンタルヘルスに詳しいライフバランスマネジメント 渡部卓代表取締役社長は、「社員の服装には、会社側の姿勢が反映されていることがある」と指摘する。
べつにネクタイをすること自体が悪いわけではないが、そうした些細なところに、トップの考え方がいやおうなくにじみ出るのである。
冒頭のように、顧客と接するわけでもない社員が、きっちりとした服装を強いられているような会社は要注意だ。「会社とは、社員とはかくあるべし」という精神論が浸透しており、トップの“ガンバリズム”に従業員が振り回されている可能性がある。うつを発症し、休業する社員が多いのはこうしたタイプの会社だ。
服装だけではない。社員や社長の様子、オフィスになんとなく漂うネガティブな空気──。こうしたところにも、働き方やメンタルヘルスに対する会社の姿勢はあらわれる。逆に言えば、「ネガティブムードが社内に濃厚に漂いだすと、うつの発症リスクが高まる」ということになるのかもしれない。たとえば、こんな会社は明日にでもうつ休業者が現れる可能性が高い!
社員同士が朝や帰りなどに挨拶をしない。
→社員同士のコミュニケーションが円滑ではない。人間関係のトラブルが起きていたり、仕事に支障が出ていたりする可能性も。
全体的にデスク周りが非常に乱雑。
→デスクを片付ける暇もないほど、仕事に追われている社員が多い。しかも散らかっているため、必要なものがなくなったり、情報漏えいが起こったりと、トラブル続出。
トイレの洗面台が汚れている。
→過重労働や人間関係の悪化などでストレスがたまり、心がすさんでいる人が多い。
社員飲み会などがやけに盛り上がる。
→過重労働でストレスがたまっている。宴会中、セクハラ行為に走る人が現れたりする。
私語や雑談が少なく、しんと静まり返っている。
→怖い上司がいるために、みんなが萎縮している。あるいは、仕事が極端に忙しい。
その逆に上司不在中は私語が非常に多い。しかもたいていは上司や会社、顧客への陰口。
→働き方や人間関係の不満がたまりにたまっている状態。
特定の人物が現れると、ぴたりと私語がやむ。
→この人物の権力はかなり大きく、しかもパワハラなどのトラブルを日常的に行っている可能性がある。
社員間における社長の噂が芳しくない。「連日ゴルフで不在」「経費に細かい」「数字ばかり引き合いに出す」などなど。
→トップの理念を社員が共有できない状態。会社と信頼関係を結ぶことができない。
コネ入社や学歴偏重が多い。
→仕事の能力がばらついている可能性がある。いわゆる「できる社員」に業務が集中しがち。
若手の中間管理職が圧倒的に多い。
→プレイングマネージャーが多く、新人のメンタルヘルスケアがおざなりになっている可能性がある。
女性が同僚男性のためのお茶汲みなどをさせられている。
→女性蔑視の社風が強い。こうした会社では、有能な女性が男性社員のパワハラを受けやすい。
プライベートの生活相談までサポートしてくれる会社も
情報システム会社。創業37年という老舗企業だが、社員のほとんどがSEだ。一般的にSEやプログラマーは、納期のストレスやテクノストレス(コンピュータへの過剰適応による心身の不調)にさらされやすく、うつが多いといわれる職業だ。それだけに同社では、社員のメンタルヘルスケアについてはとくにきめ細かな配慮をしている。たとえば、社員の服装はまったく自由。一人一人がリラックスして働ける職場作りを心がけているそうだ。
さらにユニークなのは「ブラザー・シスター制度」。これは、いわゆるOJT(職場内訓練)を目的としたメンター制度ではなく、なんとプライベートな生活をサポートするための制度だという。
「地方出身の新人は、近くに友達もいないため、ひたすら独身寮と会社の往復生活に陥りがち。気分転換でもできず、ストレスをためこみやすい。そのうち、心のバランスを崩してしまう人もいます。マンツーマンで相談に乗ったり、食事や映画に連れ出したりする同年輩の先輩がいれば、孤独もまぎれるのでは」
ちなみに社内にはカウンセリングルームもあり、会社を通さず自由に専門カウンセラーに相談ができる。メール相談も可能だ。
もちろん制度や設備さえ整っていれば、うつ休業者が出ないというわけではない。だが、少なくとも会社がうつに理解を示しており、社員間のコミュニケーションがよければ、事態の深刻化は食い止められる。早期発見が可能になったり、復職がよりスムーズになったりするからだ。
トップ層を交えたランチォンミーティングや社員旅行の復活、服装自由化、居心地のよい休憩コーナーの設置――これらの取り組みは、一見、メンタルヘルスと直接、関係がなさそうだ。だが、やってみれば、社内の雰囲気はぐっと向上するかもしれない。
社員がトップの意識を変えることは難しいが、制度やイベントの提案ならできる。あなたの会社でも、ぜひ始めてみてはどうだろうか。
*****
あくまでも、このような一面もあるというだけである。
うつ病は心身の疲労が関係するけれども、それだけではない。
200時間残業すれば、うつ病になるわけでもない。
骨なら、200キロの負荷をかければ折れるといえるだろうけれど。
昇進状況でうつになる人もいるし、昇進を認められなくてうつになる人もいるし、
同じ状況が心理的には逆に出たりして、
簡単ではない。
あくまでも、個別の事例研究が大切だと思う。
全体に、高度経済成長期には職場不適応は少なく、
成長が鈍り、民営化、成果主義、合併、などが要因となり、
大量のうつ病者を生み出している印象がある。
会社の個性とともに、社会全体の空気が大切なのだろうと思われる。
これは個別企業の特殊事情を抽出するのではなく、
社会全体を覆う、傾向を認識するということになるだろう。
その中で、うつ病が増加しているのだから。
*****
うつ病者続出というのも問題だが、
それを解決している立派な会社と、
続出までも行かない、もっと、低レベルの会社もあるのではないかと思う。
またうつ病を解決している立派な会社の中で、なおもうつ病になってしまったら、
一体どうすればいいのだろう。
最近のうつ病についての、最近の共通理解
あるサラリーマン向け雑誌での、「うつ病」の取り上げられ方を紹介。
皆さんはこのようなものを読んでいると思うので、
共通認識の土台としたいと思う。
多分、サラリーマンの皆さんはこんな知識を持っているはず、と思うことにして、
誤解は訂正し、さらに要点を理解してもらうことにすればいい。
内容としては、ちょうど素朴心理学と、精神医学の中間のようなもので、
まず入門としては、こんな感じでいいのだとおもう。
企業で行なわれている、メンタルヘルスの講習会も、こんな感じだと思う。
正確にいえば、専門的で抽象的になるし、
分かり易く言えば、不正確になるし、誤解を招くものともなる。
簡単ではない。
*****
「うつになりにくいはずの人」のうつが急増している
「責任感が強い」「人と争うことを嫌う」「頑張り屋」。これらはうつになりやすい人の特徴といわれる。だが、ほんとうにそうなのだろうか?最近は「えっ、あの人が?」と言いたくなるような性格の持ち主も、うつで休職するケースが少なくないようだ。
じつはうつにもいくつかのタイプがあり、上司や同僚はこれを見極めたうえで付き合わないと、かえって事態を深刻化させかねない。なかなか復職がうまくいかず、結局退職してしまったり、あるいは何度も再発を繰り返すうちに、業務に支障が出て周囲までうつを発症したりする。
では、具体的にどんなタイプがあるのだろうか?
「最近のうつには、おもに4つのタイプがあります。このうち2つは中高年に多く、残りの2つは若い世代に多い。それぞれ対応法がまったく違うので気をつけてください」
見分けるコツは、学生時代によくいたあんなタイプ、こんなタイプを思い浮かべてみること。「ああ、あいつはあのタイプだ」「彼女みたいな人、うちのクラスにもいたな」といった具合に、あてはめてほしい。
中高年に多いうつのタイプ
■タイプその1:「正直一徹クン」
道徳心に富み、律儀で真面目な「正直一徹クン」。あなたのクラスにもきっといたことだろう。授業には真面目に出席し、語学の予習復習も欠かさない。頼まれれば、友達のために代返もしてやるし、ノートのコピーも取らせる。それどころか「はい、コピー。先輩にもらった過去問と模範解答もつけておいたよ」などと、頼まれていないことまで喜んでやる。コンパの後、散らかったテーブルの上をひっそりと片付けたり、へべれけになった友人の介抱をしたりしていたのは、このタイプだ。
このタイプが社会人になって、うつを発症すると・・・
「メランコリー親和型うつ」
仕事熱心な中高年に多い。つい仕事を引き受けすぎ、頑張った揚げ句、うつを発症してしまう。もともと几帳面で堅実に仕事をする人々なので、戦力としてはかなり大きい。周囲との調和を大切にするので、管理職としての適性もしっかり備えている。失うにはあまりに惜しい人材だ。
→脳の疲労が引き金となっていることが多いので、しっかり休養し、服薬による治療を続ければ、比較的短期間で仕事に復帰できる可能性が高い。周囲はひとりで頑張りすぎないよう見守り、仕事量をコントロールしてあげるとよい。
■タイプその2:「御銚子良夫クン」
熱心に講義やゼミに出席したかと思えば、趣味に熱中しすぎて、ゼミを忘れてしまうこともしばしば。多趣味で話題も豊富だが、飽きっぽいのが欠点。それでも要領がいいのか、留年はしない。正直一徹クンに代返をさせていたからだ。そんな彼もサークルではリーダー的存在。もともと人間好きで、世話好き。みんなを引き連れて飲みに行ったり、遊びに行ったり。ときどき説教くさいこともあるが、後輩には慕われている。ただし、言いにくいことをずばりと言うので、先輩たちからは煙たがられる。しかし、本人はそんなことはどこ吹く風で、ナンパや遊びに忙しそうだ。
このタイプが社会人になって、うつを発症すると・・・
「双極性気分障害型タイプ」
ミドル世代のマスコミ人や起業家に多いのがこのタイプだ。アイデアマンで企画力はバツグン。プレゼンもうまい。部下の面倒見もよく、リーダーシップに長けている。ところが、夜も寝ないでエネルギッシュに働き続けたかと思うと、突然力尽きたかのように抑うつ状態に。そのたび、「オレが企画したあのプロジェクト、おまえに頼むわ。オレ、うつだから」などと周囲に振るので、部下も同僚もヒヤヒヤしている。
→このタイプは、調子が悪くなると病院に行き、しばらくするとまた復活する。ただし、じっくり養生しないので、再発しやすい。まずはちゃんと休んでもらい、仕事に復帰したらあまりスピードを飛ばさないよう、周囲が注意するとよい。抗うつ薬ではなく気分安定薬による治療が有効だ。
若手に多いうつのタイプ
■タイプその3:「弱木純子ちゃん」
クラスでは目立たず、静かに過ごすタイプ。虚弱体質で、すぐに疲れるので無理をしない。雨の日なども授業に出てこない。聞けば風邪をひきやすいからと、親が出してくれないのだそうだ。おまけに門限が厳しいとかで、コンパなどがあっても「今日は疲れたから帰ります」と、周囲の盛り上がりとは無関係にサッサと帰宅。サークルでは幽霊部員。あるとき先輩にぴしゃっと小言を言われ、ショックのあまり大学に出てこなくなってしまった。仲のいい子によると、「精神的に不安定になり、過食に走ってしまった」のだそうだ。
このタイプが社会人になって、うつを発症すると・・・
「弱力・逃避型(非定型うつ病)タイプ」
入社して3年くらいは優秀な新入社員で通るのがこのタイプ。だが、3年過ぎると急に調子を崩すようになる。もともと指示されたことには忠実だが、自分で考えて行動するのが苦手だからだ。周囲の顔色に敏感で、とくに上司の小言に弱い。叱られると体調不良が現れ、会社に来なくなってしまう。このほか倦怠感や、夕暮れとともに現れる不安症状も。理由なく涙が出ることもある・・・。
→こうした人は、「メランコリー親和型うつ」のように、休養と薬物治療だけでは症状が改善しない。病院での治療以外に、体調管理のための節制や、合理的なものごとの考え方をトレーニングする「認知行動療法」を受けるとよいだろう。キャリアカウンセラーのもと、職場に適応するためのノウハウを身につけもらうのもよい。
■タイプその4:「河合姫子ちゃん」
美人でおしゃれ、どこに行っても目立つ。街を歩いていればモデルプロダクションからスカウトされるし、もちろんクラスでもモテモテ。だが、じつはわがままでプライドは高い。つねにちやほやされていないとガマンできず、気に入らないと他人をとことんけなす。親友や恋人にあれこれ無理難題を押し付けて振り回すが、受け入れられないと衝動的にリストカットをしたり、大量に酒を飲んだりする。
このタイプが社会人になって、うつを発症すると・・・
「パーソナリティ障害タイプ」
外資系やアパレル業界に意外と多い。MBA、カタカナ職業の資格を取っている人もしばしば見られる。ブランドに弱いので、有名な企業に入社したがるが、入ってみると会社のコマのひとつにすぎないことに気づき、不満を募らせる(そのくせ、仕事熱心ではない)。社内のルールや上下関係に従わず、注意を受けるといきなり感情を爆発させる。
→このタイプはそもそも会社を休むことにためらいを感じていないので、休めるだけ休もうとする。療養中に沖縄などに遊びに行ったりするケースも。対策としては、キャリアカウンセリングや心理療法が有効だろう。仕事の意味やキャリアパスなどについて話し合い、しっかりした職業意識を持ってもらうとよい。
人材不足が深刻化する時代、もはや社員は取替えのきく消耗品などではない。それだけに、うつ病社員の理解は、企業人にとって不可欠の課題といえるのだ。
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A係長はもやもやとした気分を抱えている。半年間うつで休職していた部下、Bくんが先月、職場に復帰したのだが、再び会社に来なくなってしまったのだ。
これはまったく予想外の展開だった。なぜなら事前の面談では、同席した主治医が「お元気になられましたよ」と太鼓判を押してくれたからだ。それでは、と以前のように仕事を任せたところ、いっこうに作業がはかどらない様子。おまけに大きなミスも続出した。そうこうするうちに、「すみませんが、調子が悪いのでまたしばらく休ませていただきます」というBくんからの電話が入ったのだ。
A係長の立場はますます苦しいものになった。部下のひとり、C子さんからは、「これ以上、Bくんの代わりはできません!私がうつになりそうです!」と責められ、課長からは「君がプレッシャーをかけたんじゃないの?」と白い目で見られ――。いまや「うつを呼ぶ男」と呼ばれるようになったA係長は、心の中で悲痛な叫びをあげていた。
「悪いのは俺じゃない!頼むから、戻るなら完全に治してから戻ってきてくれよ!」
誤解渦巻く復帰後の職場
なぜこんなことが起こってしまうのか?
「A係長のようなケースは、けっしてめずらしくありません。うつ休職者のうちの多くが、うまく復職することができず、何度も再発や休職を繰り返しているのです」
悲劇の原因は、職場のうつを取り巻くさまざまな誤解にある。さて、その誤解とは……?
■誤解その1:症状さえおさまれば仕事はできる?
「 復職可”という主治医の診断は、けっして鵜呑みにできません。多くの場合、ここで主治医が言っているのは、あくまで『症状が治まった』というだけのこと。『社会復帰し、以前のように職業能力を発揮できるようになった』ということではないのです」
■誤解その2:会社では8時間労働すればいい?
「主治医が『簡単な作業をするだけなら、8時間労働に耐えられる』などと、お墨付きを出すケースがよく見られますが、これも間違い。実際には、きっかり8時間勤務という正社員は少ない。8時間プラス2時間の残業、そして往復の通勤時間の約2時間。合計12時間の拘束時間に週5日耐えねばならない、というのが今の多くのビジネスマンの現実ではないでしょうか」
■誤解その3:復帰後は簡単な仕事だけを任せればよい?
「昔と違い、単純作業や事務補助の仕事は、外部にアウトソーシングされていたり、契約・派遣社員に任せたりしている会社がほとんど。復職直後の正社員に『最適』と主治医が考えているような仕事は、すでに正社員の仕事ではないのです」
■誤解その4:完全に治して戻って来いよ
「よくうつ休職者に『十分休んで、完治してから復帰してほしい』などと言いますが、これは誤った考え方。うつは必ず治る病気ですが、簡単に完治するものでもない。また、完治しなければ、まったく働けないという病気ではありません。多少の症状があっても、仕事はできる。うつを抱えながらも、症状をコントロールしながら仕事を継続している経営者は少なくない。つまり、うつは完治を目指すより“上手に乗りこなす”べき病気と考えたほうがいい」
足を骨折したマラソン選手は、ギブスが外れたからといって翌日から競技に出場できるだろうか?そんなことをすれば、大切な足は取り返しのつかないことになってしまう。うつも同じだ。「治りましたよ」「そうか!じゃあ頑張ってくれ!」では、病気が再び悪化するのも当然だろう。つまり、ギブスが取れた後の“心の筋トレ”なくして、職場復帰は絶対にうまくいかないのだ。
これが「心の筋トレ」計画だ!
それでは、うつの部下の“心の筋トレ”は、具体的にどのように進めたらよいのだろうか?
「『症状が軽快してきた』という主治医の診断が出て、“おっくう感”がとれたらリハビリ開始。その後の経過は次の通りです」
■「そろそろ復帰」期
通勤時間に合わせて電車通勤(車通勤)し、会社の近くの喫茶店や図書館で過ごしてもらう。毎日8~10時間は、外出先で過ごせるだけの基礎体力がないと、通勤だけでグッタリ疲れて仕事にならない羽目になるので要注意。さらにチャレンジさせるとよいのが、賑やかで刺激的な環境で、集中して本や新聞を読むこと。デパートや家電店のようなところがいい。職場は電話や話し声で騒々しいもの。周囲の音にイライラすることなく仕事に集中できることが大切だ。
■「間もなく復帰」期
全国の障害者職業センターで実施している「職業能力判定」や「復職デイケア」を受けさせ、自分の弱点を知ってもらう。回復の偏差値を知り、職業カウンセラーのアドバイスを受けることが成功の鍵となる。職場復帰は受験と同じなのだ。
■「復帰秒読み」期
本人から症状や兆候などを詳しく聞く。できれば通院スケジュールも把握しておくのが望ましい。フレックス通勤や時間軽減勤務についても相談しておくと、欠勤や遅刻を繰り返さずにすむ。やっておくとよいのがデスクの移動だ。出口の近くの席に移しておけば、軽減勤務中も目立たず退席できる。
また、復職直後は些細なミスも増え、難しい仕事もすぐにはできない。定時勤務も難しい。これらを事前に周りに説明し、理解と協力を得ておこう。
■「つかまり立ち(復帰直後)」期
初出勤日は心身ともに本人の負担が大きい。金曜日など休前日に設定しておこう。そして少しでも疲れた様子が見えたら、一時的にあまり頭を使わなくてすむ仕事に一時的に切り替える。この時期は赤ちゃんがつかまり立ちしている時期と同じ。全面的なフォローが必要だ。
■「よちよち(復帰後)」期
勤務中、こまめに仕事をチェックすることも忘れないでほしい。復帰後はしばらくミスが起こりがちだが、問題に発展すると何より本人がひどく落ち込んでしまう。また、散歩やコーヒーブレイクなど、本人にもストレス・コントロールのテクニックを身につけてもらおう。週に1度は面談し、病状やストレス度などをチェックしよう。この時期はまだよちよち歩きの時期。周りは注意して目を離さないようにしたい。
こうしたリハビリ勤務の期間は1か月くらいをめどにするとよいだろう。それ以上、長引くと同僚たちの負担も大きくなってしまう。申し訳なさから、結果的に本人のストレスがかえって増大しかねない。
ただ、最近は上司も自分の仕事を大量に抱えている。対応に追われ、自分も疲れきってしまっては元も子もない。復帰前のリハビリについては、社外のプロの力を積極的に活用するとよいだろう。
【今回のポイント】 上司はまずうつについての基礎知識を
「薬は副作用があるから怖い」「気合いが足りないから治らないんだ」など、うつに対する誤解や偏見を持ってはいないだろうか?心の風邪などといわれるが、うつは立派な脳の病気であり、症状が進んだ脳を画像診断してみると血流が悪くなっていたり、海馬が縮んでいたりするという。神経を再生させる抗うつ剤は命綱。気の持ちようでは治らない。上司はまずこのことを理解しよう。
*****
「気の持ちようでは治らない」「脳の病気」と語る一方で、
医学的治療については語らず、
「障害者職業センター」や
「回復の偏差値を知り、職業カウンセラーのアドバイス」などを紹介しているが、
これでは、根本の病気はよくならないのではないか?
前半でうつ病を4つに分類しているが、
後半の復職トレーニングはひとつしかないようだ。
これも4つに分類して、それぞれに書いてあげれば、親切である。
4つのタイプのうつと書いているが、
これを全部うつと呼ぶのだろうか。
それぞれの解説の後半に書いてある詳しい病名が我々の使う分類であるが、
なるほど、マスコミ記事としては、この範囲を全部、うつと一括するのかと思う。
*****
「こころの風邪」「誰でもかかる」と言われつつも、
現実は、上で紹介されているように、復職に苦しむ人も多いものである。
薬はやはり大切で、
数カ月で打ち切れば、再発の可能性が高い。
早く薬をやめて、完治したいとの気持ちは分かるが、
骨折したときに、きちんとくっついていないのに、
早くギブスをはずせばいいのだと思う人はいないだろう。
うつ病の薬については、誤解が多いと思う。
ファンタジーを誘発し易い何かの要因があるのか、
あるいは、誤解するような人たちがうつ病の再発に苦しみ、
薬剤についての誤解を固定化させてしまうのか。
いずれにしても、患者さん個人の体験は貴重なものであるが、
あくまでも個人的なものである。
数多くの症例について、統計処理をして、やっと現実が見えてくる。
服薬を年単位で考えてもらい、慎重に再発を防ぐほうが、結局、
再発を繰り返している人生よりも、苦しみは少ないと結論としては出ている。
再発を繰り返しているうちに、
人生に対しての自信を失ったり、
人間不信になったり、
家族関係が悪くなったり、
いろいろと付随するものがある。
それを防ぐためにも、再発しないように、慎重に考えた方がいいと思われる。
「 復職可”という主治医の診断は、けっして鵜呑みにできません。多くの場合、ここで主治医が言っているのは、あくまで『症状が治まった』というだけのこと。『社会復帰し、以前のように職業能力を発揮できるようになった』ということではないのです」
と書いてあるが、主治医はもちろん、そのことも考えている。
書いてあることの趣旨は、分かる。
慎重にしたほうがいいし、主治医にすべてが見えているわけではない。
しかしこのような言い方はどうだろうかと思う。
無論、主治医と産業医、そして現場の上司の意見は異なることも理解できる。
しかし、それぞれが、それぞれの立場を理解したいものだと思う。
自分の立場を相対化せず、他人を批判するのでは、大人ではない。
現場がきついことも分かるが、
きついことを前提にせざるを得ないことも分かるが、
しかしこの先は、言えない。
いろいろな事情があるものだ。
「本人から症状や兆候などを詳しく聞く。できれば通院スケジュールも把握しておくのが望ましい。フレックス通勤や時間軽減勤務についても相談しておくと、欠勤や遅刻を繰り返さずにすむ。やっておくとよいのがデスクの移動だ。出口の近くの席に移しておけば、軽減勤務中も目立たず退席できる。」
このような言い方に少なからず驚く。
症状は、本人のプライバシー中のプライバシーである。
上司だからといって、人事だからといって、産業カウンセラーだからといって、
うっかり聞いて、正しく対処できるはずのものでもない。
万能の人がいて、万事調整する、といった感覚なのだろうか。
聞いた結果がどうなるのか、どうなる可能性があるのか、
よくよく考えた方がいいのではないか。
出口近くに席を移せば、退席しやすいのだろうか?
場合によってはそうだろうが、
場合によってはそうではないとも思う。
「賑やかで刺激的な環境で、集中して本や新聞を読むこと。デパートや家電店のようなところがいい。」
初めて聞いたが、デパートや家電店で集中して本や新聞を読むなどという不自然なことはしなくてもいいと、個人的には、思う。
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結局のところ、
根本には、職場が悪い、本人が弱い、の対立があるのであって、
そのことを避けていて、本質的なことは何も論じられない。