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身体一般科のお医者さんが軽症うつを敏感に察知するための方法

自分の不調を自覚し、心療内科を訪れる人は、そこからすでに治療が始まるのでいいのだが、
不調を身体科で相談している人の場合、対応がうまく行かないこともある。
しかし現実には多くの人がまずはかかりつけの身体科で相談していると思う。
その場合の案内が下記であり、これは患者さんのためにも役立つと思う。
もちろん、心理職やケースワーカーさんにも役立つと思うので、そんな人たちを念頭において、
コメントを加えつつ読む。

*****
綜合臨林2005.12/vo1.54/No.12
軽症うつ病の診断と治療
精神医療の新しい潮流---内科診療のために
坂元 薫

うつ病は,5,6人に1人は一生のうちに一度は罹患するというほどポピュラーな精神疾患である.最近,わが国で行われた,電話,web-siteによる大規模な疫学調査でも大うつ病の時点有病率は,2.65~9.3%にも及ぶことが明らかにされている.また総合病院の内科外来患者の約10%がうつ病であるという結果は,わが国だけでなく各国に共通しているともいう.これだけの有病率を示しながら,適切な治療を受ける機会に恵まれているものはほんの一握りであることがこれまで繰り返し指摘されてきた.上述の調査でも,うつ病と判定された人のうち,精神科や心療内科を受診しているものは,9.7%にすぎず,44.7%は内科などのプライマリケアを受診していることが報告されている.またうつ病の治療においてほとんど不可欠ともいえる抗うつ薬によって治療されているものは4.7%にすぎないことも明らかにされた.こうした事態がなぜ生じるのだろうか?

「総合病院の内科外来患者の約10%がうつ病。」
「うつ病と判定された人のうち,精神科や心療内科を受診しているものは,9.7%。」
内科外来患者の10%を占めるうつ病の患者さんのうち、約半分程度がうつ病と判定されていると次の項目で書かれているが、うつ病と判定されても、その1割しか、心療内科に行かない。

100人の内科患者さんがいて、10人はうつ病。そのうち5人がうつ病と診断される。その中で、0.5人が心療内科に行く。2人はプライマリケアを受診し、あとの残り、2.5人は、我慢しているということなのだろう。これでいいのかな?

「抗うつ薬によって治療されているものは4.7%。」ということは、うつ病で、抗うつ剤が必要な局面であっても、お医者さんがためらったり、患者さんが恐怖心や警戒心を抱いているためなのだろう。

おそらくは,当事者にとって「落ち込んだ状態」が医学的治療で治せる病気であることに思い至らない,あるいはそのように説明されてもどうしても納得できないことが最大の理由であろう.

これは否認のメカニズムで、異常とはいえない、現代日本ではむしろ、正常範囲の防衛機制ではないかと思う。
逆に、「わたし、うつだから、二ヶ月休みます」と自己診断して周囲に宣言する人の心理のほうが、いろいろな問題を含んでいるといえるだろう。

第二の理由は,せっかく医療機関を受診しても,誤診されたり見逃されたりするものが少なくないことであろう.事実,プライマリケア医を受診したうつ病患者の30~50%が見逃されているともいう.うつ病が見逃される理由の一つとして,身体症状しか訴えないうつ病患者の割合が高いことがあげられているが,そもそも医師がうつ病を重要な鑑別診断のひとつとして念頭に置いていないことが最大の問題ではないか.

患者さんの側に否認の機制があるときに、お医者さんの側から指摘することは、波長が合っていないということで、指摘するタイミングとか言い方とか、難しいものがある。

本稿では,外来治療可能なうつ病,あるいは内科を初めとするプライマリケアで診るうつ病と同義といってもよい軽症うつ病の診断と治療のコツについて述べたい.

笠原先生の言う、軽症うつ病のこと。内科を初めとするプライマリケアで診るうつ病が軽症うつ病であるとは到底思わないが、一応、その前提で、話は進む。

軽症うつ病ではない患者さんが、自分を軽症うつ病だと思って受診し、軽症うつ病の治療を受けたら、それはそれで、円満に行く側面もある。だから、意味がある。

Ⅰ.軽症うつ病の診断

1.軽症うつ病の診断基準

DSM-IV-TRの大うつ病性障害:軽症型

表1にDSM-IV-TRの大うつ病エピソードの診断基準を示した.大うつ病という診断名は,軽症うつ病と一見矛盾するようであるが,大うつ病エピソードの重症度分類(表2)のうち軽症型と定義されるものは,今日では軽症うつ病概念の中核となるものである.表3に示したのが,ICD-100の軽症うつ病エピソードの診断基準である.これがDSM-Ⅳによる大うつ病エピソード軽症型と異なるのは,診断に必要とされる症状数が5つから4つに減じている点と,抑うつ気分以外の各症状に対する「ほとんど一日中」あるいは「ほとんど毎日」などという限定句が見られないことである.すなわちICD-10の軽症うつ病エピソードは,DSM-Ⅳの大うつ病エピソード軽症型よりも軽症のものを広く含むことになる.
表1 大うつ病エピソード(DSM-IV-TR)(文献5より引用)
A.以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能の変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは,(1)抑うつ気分または(2)興味または喜びの喪失である. 注:明かに,一般身体疾患,または気分に一致しない妄想または幻覚による症状は含まない.
(1)その人自身の言明(例えば,悲しみまたは,空虚感を感じる)か,他者の観察(例えば,涙を流しているように見える)によって示される,ほとんど1日中,ほとんど毎日の抑うつ気分. 注:小児や青年ではいらいらした気分もありうる.
(2)ほとんど1日中,ほとんど毎日の,すべて,またはほとんどすべての活動における興味,喜びの著しい減退(その人の言明,または他者の観察によって示される).
(3)食事療法をしていないのに,著しい体重減少,あるいは体重増加(例えば,lカ月で体重5%以上の変化),またはほとんど毎日の,食欲の減退または増加. 注:小児の場合,期待される体重増加がみられないことも考慮せよ.
(4)ほとんど毎日の不眠または睡眠過多.
(5)ほとんど毎日の精神運動法の焦燥または制止(他者によって観察可能で,ただ単に落ち着きがないとか,のろくなったという主観的感覚ではないもの).
(6)ほとんど毎日の易疲労性,または気力の減退.
(7)ほとんど毎日の無価値観,または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある),(単に自分をとがめたり,病気になったことに対する罪の意識ではない).
(8)思考力や集中力の減退,または,決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の言明による,または,他者によって観察される).
(9)死についての反復思考(死の恐怖だけではない),特別な計画はないが反復的な自殺念慮・自殺企図,または自殺するためのはっきりとした計画.

B.症状は混合性エピソードの基準をみたさない.

C.症状は臨床的に著しい苦痛または社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている.

D.症状は,物質(例:乱用薬物,投薬)の直接的な生理学的作用,または一般身体疾患(例:甲状腺機能低下症)によるものではない.

E.症状は死別反応ではうまく説明されない.すなわち,愛する者を失った後,症状が2ヵ月をこえて続くか,または,著明な機能不全,無価値観への病的なとらわれ,自殺念慮,精神病性の症状,精神運動制止があることで特徴づけられる.
表2 現在の(または最も新しい)大うつ病エピソードの重症度の特定用語(DSM-IV-TR)(文献5より引用)
x1軽症診断を下すのに必要な症状の数に余分があることはほとんどなく,また,その症状のために起こる職業的機能,平常の社会的活動,または他者との人間関係の障害はわずかでしかない.
x2中等症症状または機能障害“軽症”と“x3重症”の間にある.
x3重症,精神病性の特徴を伴わないもの診断を下すために必要な症状の数より数個の余分があり,しかもその症状によって職業的機能,平常の社会的活動,または他者との人間関係が著しく障害されている.
x4重症,精神病性の特徴を伴うもの妄想または幻覚,可能であれば,その精神病性の特徴が気分に一致しているか,気分に一致していないかを特定せよ.
表3 軽症うつ病エピソード(ICI)-10)(文献6より引用)

A.うつ病エピソードの全般基準(G1~G3)を満たすこと。
G1.うつ病エピソードは,少なくとも2週間続くこと.
G2.対象者の人生のいかなる時点においても,軽繰病や噪病エピソードの診断基準を満たすほどに十分な噪病性症状がないこと.
G3.主要な除外基準:このエピソードは,精神作用物質の使用,あるいは器質性精神障害によるものでないこと.

B.次の3項目のうち少なくとも2項目があること.
(1)対象者にとって明かに異常で,著名な抑うつ気分が,周囲の状況にほとんど影響されることなく,少なくとも2週間のほとんど毎日かつ1日の大部分続く.
(2)通常なら楽しいはずの活動における興味や喜びの喪失.

C.次に示す付加的な症状を併せて,B項との合計が少なくとも4項目あること.
(1)自身喪失,自尊心の喪失.
(2)自責感や,過度で不適切な罪悪感といった不合理な感情,
(3)死や自殺についての繰り返し起こる考え,あるいは他の自殺的な行為.
(4)思考力や集中力の低下の訴え,あるいはその証拠,例:優柔不断や動揺性の思考.
(5)焦燥あるいは遅滞を伴う精神運動性の変化. (主観的なものであれ客観的なものであれ,いずれでもよい).

これがいわゆる、診断基準であるが、これで確定診断ができるわけではない。当てはまるかどうかも、あいまいな感じがすると思う。しかしまあ、こんな感じでやってくださいとしか、言いようがないだろう。

2.軽症うつ病の診断のポイント
食欲不振,体重減少,全身倦怠感,頭痛,睡眠障害など種々の身体症状を主訴とするが,器質的異常が見当たらない場合に,安易に不定愁訴,自律神経失調症,更年期障害,心気症,神経症,ストレスのせいなどとせず,うつ病を疑い積極的に精神症状を問診することが最大のポイントである.精神症状に関しては,「憂うつ・沈んだ気分がほとんど毎日2週間以上続いている」こと,「ほとんどすべての活動で興味や・喜びの喪失が2週間以上続いている」ことが最も重要で,この2症状が確実に存在すればうつ病の診断はほぼ確実であるとする報告がある.さらにこれらに加えて「自分が無価値であると感じたり,罪悪感を感じる」ことがあれば,それは軽症うつ病ではなく,中等症以上のうつ病であることも示唆されている.さらに以下のような点があれば,症状が軽症であっても,うつ病を強く疑うべきである.
・症状の日内変動(例えば,倦怠感が朝方目立つが,夕刻には改善している.平日だけでなく,週末,休出こもこうした症状変動が見られることが重要である)
・中高年での発症・良好な社会適応
・几帳面・仕事熱心・責任感の強さ・他者配慮性といった性格特徴
・以前にも同様の不調の時期があったこと

『「憂うつ・沈んだ気分がほとんど毎日2週間以上続いている」こと,「ほとんどすべての活動で興味や・喜びの喪失が2週間以上続いている」ことが最も重要で,この2症状が確実に存在すればうつ病の診断はほぼ確実であるとする報告がある.』ので、企業の検診などでは、この二項目だけをチェックすることもある。DSM-IV-TRの最初の部分を切り取って変形したようなもの。

軽症うつ病はやはり新型・現代型とはいえないのだろう。会社人間のお父さんが、テレビも新聞も興味なくなったという感じ。新型はやはりもう少し、違う。

3.留意すべき軽症うつ病関連疾患,鑑別診断
1)気分変調症(気分変調性障害)
慢性の軽うつ状態を呈するもので,表4にDSM-IV-TRの気分変調症の診断基準を示した.一般的に軽症うつ病に含まれることも多いが,薬物療法に対する反応性が通常のうつ病よりは低く,より環境要因や性格面への精神療法的配慮が必要となるものであり,気分変調症の治療は,内科医やプライマリケア医の守備範囲外と考えたほうがよい.

表4 気分変調性障害(DSM-Ⅳ-TR)(文献5より引用)
1.抑うつ気分が少なくとも2年間持続
2抑うつの間,次のうち少なくとも2つが存在
(1)食欲減退または過食
(2)不眠または過眠
(3)気力の低下,または疲労
(4)自尊心の低下
(5)集中力低下または決断困難
(6)絶望感 3.2年の期間中,一度に2ヵ月を越える期間,上記1.2.の症状がなかったことがない

2)小うつ病(特定不能のうつ病性障害)
抑うつ性の特徴を持つ疾患で,大うつ病性障害,気分変調性障害の基準を満たさない気分障害の残遺カテゴリーが特定不能のうつ病性障害である.この障害のひとつが小うつ病性障害である.DSM-IV-TRの研究用基準案では,少なくとも2週間の抑うつ症状のエピソードがあるが,症状数が大うつ病性障害に要求されている5項目未満2項目以上のものであり,他の気分障害および適応障害の基準を満たさないものとされている.この中には,大うつ病軽症型よりもさらに軽症のうつ病や大うつ病発症初期のものや性格・環境要因の関与の大きな軽うつ状態が含まれる可能性がある.それらの鑑別はやはり内科医の守備範囲外であり,判断に迷う場合は,ためらわず専門医に紹介すべきである.とくに,診察の仕方に問題があり,実際は大うつ病性障害であるものが,誤ってこのカテゴリーのものとされないような注意が必要である.

3)抑うつ気分を伴う適応障害
DSM-IV-TRでは,明瞭な心理社会的ストレス因子に反応して生じるうつ状態のうち,大うつ病エピソードの診断基準を満たすほど重症ではないものは,抑うつ気分を伴う適応障害と診断される.しかし,実地臨床上は,うつ病との鑑別に苦慮する例も少なくない.臨床的には,心理社会的ストレス因子に対する抑うつ反応と判断される場合にも,そのうつ状態が大うつ病エピソードの診断基準を満たす場合には,DSM-IV-TRでは大うつ病性障害との診断を受けることになる.一方,うつ状態が,大うつ病エピソードの診断基準の同値下であっても,病前性格,症状構成,経過などから,心理社会的要因によって誘発された軽症うつ病(あるいは大うつ病エピソードの発病初期)と見なすことが妥当な症例もあることに留意しておきたい.こうした症軽症うつ病の例が,DSM-Ⅳ-TRの機械的な使用によって「抑うつ気分を伴う適応障害」とされてしまい,積極的な抗うつ薬による治療の適応とされないこともあるので注意を要する.

4)双極性障害(とくに双極Ⅱ型障害)
大うつ病エピソードに加えて,爽快気分,多弁,睡眠欲求の減少,活動の増加などが見られる軽繰病エピソードが見られるものが双極Ⅱ型障害である.うつ状態で初診した場合,過去の軽躁病エピソードに関する本人の記憶が明確でなかったり,自ら陳述することがきわめてまれであったり,問診が十分になされないことなどにより,しばしば双極性障害が見落とされていることが指摘されている. 双極性うつ病に対する不用意な抗うつ薬の使用により,病態が複雑化(操転,噪うつ混合状態,自殺企図することがあるので,双極性障害が疑われる場合は,精神科医に紹介することを原則としたい.

そのとおりなのだが、そんなことが分かるようなら、すでにかなりの専門家なのだ。現実には、これらを疑うことさえ難しいと思う。困ったものだ。

Ⅱ. 軽症うつ病の治療

1.治療の原則
軽症うつ病の治療に特有なものがあるわけではない.通常のうつ病の治療に準じるのが原則であるが,以下留意すべき点をあげておく.
①軽症うつ病では,軽症なためかえってうつ病の病識が生じにくいことがある.「怠け」とは違う「医学的治療で治る病気」であること,休養の勧め,薬物療法の効果と副作用,性格の問題点を深く考え自責的にならないこと,などを治療開始時に十分に説明することがなによりも重要である.
②軽症うつ病では,仕事を続けながら外来治療をすることが多いので,副作用の発現の少ない抗うつ薬の選択を心がける.
③寛解に至らない場合は,安易に性格の問題や環境的問題にその理由を求めず,抗うつ薬の増量,変更を考慮するのが原則であるが,早めに専門医に紹介すべきである.

こんなタイプの人もいるけれど、これだけですまない人は増えている。一応型どおりやってみて、すんなりいかないようなら、紹介した方がいい。   

2.精神療法(心理教育)
軽症うつ病に対して,精神分析療法など本格的な精神療法は必要なく,治療開始にあたって,適切な心理教育を十分に行うことが最も重要である.笠原の「うつ病の小精神療法」こは,うつ病の心理教育のポイントが過不足なく含まれている.この小精神療法はあまりにも有名で随所で解説されているので,ここではそのままの形で紹介するのを避け,それを改変して「うつ病治療の禁忌事項」として若干の解説を加えたい.

①気の持ちよう,過労,自律神経失調症,更年期障害,神経症,心因反応,適応障害と診断し,うつ病の適切な治療を開始しないこと.

②休養を妨げること.
うつ病患者にとっては日常の社会生活は重い負担となり,回復の妨げとなることが多い.休養を可能な限りとらせ,患者の負担を軽減させることが重要である.軽症うつ病がいっまでも軽症であり続けるとは限らないので,重症化の兆しがあれば,ためらわず休養を強く勧める.

③怠けと決め付け病気扱いしないこと.
家族は患者の意欲がわかない状態を病気ではなく患者の怠けだとみなし,むしろ厳しく接してしまうことがある.患者も自分の努力が不十分なためにこうなったと考え,自分を責めて苦しんでいることが多い.うつ病という病気であることを患者にも家族にもよく説明し,病気は患者の責任ではないことを理解させ,患者の精神的負担を軽減させることが大切である.

④性格について深く考えさせること.
うつ病の時には患者は自分の性格を,暗い,弱いと考えがちである.正しい判断力のない時に性格について考えさせ,うつ状態は性格のせいと思わせるような方向に追いつめてはいけない.

⑤環境因について深く考えさせること.
うつ状態はうつ病という病気であり,環境のせいではないことをよく説明しなければいけない.病気だからこそ治れば同じ環境に戻っても元気に活躍できるはずなので,病気の最中に環境因をさぐり,さらに環境を変えるような努力をさせてはいけない.

⑥激励すること.
「しっかりしなさい」「元気をだしなさい」と励まされても元気がでるものではない.かえって患者の自責感や絶望感を強めるだけである.

⑦重要な決断をさせること.
うつ病の時には正しい判断力がなく決断力も鈍っている.このような時に例えば,会社を辞める,学校を辞める,離婚するなどの人生上の大きな問題について決断すると,病気が治った時に後悔することが少なくない.重要な問題の決定は病気が治るまで延期させたほうがよい.

⑧早期に仕事に復帰させること.
抗うつ薬により見かけ上症状が改善するため,会社などに復帰させると,それが早すぎてうつ病が再燃し破綻してしまうことがある.

 過労,自律神経失調症,更年期障害,神経症,心因反応,適応障害と診断し、実際には抗うつ剤を出すこともある。

文章の技術として、禁忌事項を肯定の形で書くのは、頭が混乱するだろう。

こうしてみると、笠原先生の「うつ病の小精神療法」は不思議なほど完璧なのだが、ということは、後続の我々が、すっかり信じきっているということなのかもしれない。 

笠原先生の言う軽症うつ病を正確に診断できれば、そのあとは、上のアドバイスどおりで間違いない。

軽症うつ病の人に対しての心理療法的働きかけは、精神療法というよりも、ここに書かれているように、「心理教育」と言う方がふさわしいような面がある。具体的な生活アドバイスみたいなものだ。

3.薬物療法
1)うつ病の薬物療法の原則 うつ病の治療に抗うつ薬は必要不可欠なものであることは言うまでもなく,うつ病との診断が下された場合には,「抗うつ薬を少量より開始し,副作用に留意しつつ十分量まで使用すること」がどの治療マニュアルやガイドラインにも抗うつ療法の最も基本的な事項として記載されている.
(中略)
 十分量の抗うつ薬の投与が必要であるものの,初めから高用量の抗うつ薬を投与することによって,かえって不安,焦燥,不眠が増悪することもあり,治療脱落につながりかねないことにも留意すべきである.重要なことは,治療開始時に,うつ病における薬物療法の意義を十分に説明するとともに,抗うつ薬を少量から開始し,副作用に留意しながら漸増し,さらに十分量まで増量する旨を明確にしておくことである.最初にこうした説明なく増量が行われると,患者は,「受診のたびに薬が増やされる」ことに不安,さらには不満,不信感をいだきかねない.こうした抵抗にあって増量が不十分に終わる例があることも想像に難くない.
(中略)
十分量の抗うつ薬を処方したことで安心してもいけない.医師の処方どおりに服薬する患者は50%に満たないとする指摘もあることを忘れてはならない.さまざまな服薬阻害因子を考慮し,その緩和に努め,そして服薬遵守の重要性の認識を医師患者間でいかに共有できるようにするかが,うつ病治療の最大のポイントの一つであろう.

さらに重要なポイントは,寛解状態となっても原則として早期に抗うつ薬を中止しないことである.抗うつ薬の早期中止により,うつ病が再燃することが少なくない.抗うつ薬は改善した後も6ヵ月間くらいかけて漸減,中止にもっていくことが望ましい.ただし軽症うつ病の中でもより重症度が低い場合には,寛解後,再燃・再発の徴候(不眠,倦怠感,食欲不振など)について十分に教示しておいたうえで,抗うつ薬を中止して,万一それらが出現した場合には速やかに再診するように伝えておくのも一法であろう.

 これも簡単ではない。原則は上記のとおりであるが、すべての患者さんは例外であると考えても、間違いではない。どの人も例外要素を含んでいる。  

おわりに

うつ病の診断は,精神医学の基礎中の基礎であり,一見容易なもののようにも思われるが,精神科臨床経験を重ねれば重ねるほど,うつ病診断の難しさを実感するものである.と同時に,うつ病診断のunderdiganosisとoverdiagnosisの葛藤に常に直面することにもなる.「本当のうつ病患者」は,なかなか受診せず,受診しても見逃されるか誤診されることが少なくない.つまりうつ病のunderdiagnosisである.一方,誰にでもあるような軽い抑うつ気分や意欲低下を初めとする抑うつ症状が「うつ病」として自己申告されることもまれではない.インターネットのいわゆる「うつサイト」に集う人々のうちどれだけが「本当のうつ病」であろうか?それだけではない.昨今は,患者が一言,「憂うつである」といえば,ほとんどそれだけで「うつ病」と診断してしまう医師すらいる可能性も否定できないのである.つまりうつ病のoverdiagnosisである.本稿が「本当のうつ病」の適切な診断と治療につながれば幸いである.

 しばらくは難しい状況が続きそうである。  

1)伊川太郎,大坪天平,幸田るみ子ほか:一般人口におけるうつ病の有病率調査電話調査.精神神経学雑誌105:1327,2003),web-site.
2)山田浩樹,大坪天平,幸田るみ子ほか:Web-siteによるうつ病の有病率調査.精神神経学雑誌105:1327-1328,2003.
3)中根允文:うつ桐の診断と治療.真興交易医学出版部,169-178,1999.
4)PosseM,HallstromT:Depressivedisordersaalongsomatizingpatientsinprimaryhealthcare.ActaPsychiatrScand98:187-92,1998.
5)AmericanPsychiatricAssocjation(APA):DiagnosticandStatisticalManualofMentaIDisorders,4thed.Text Revision.APA,Washington,D.C。20GO(高橋三郎,大野裕,染矢俊幸訳:DSM-Ⅳ-TR精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院.東京.2002).
6)World Health organization:ThelCD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders(融道男,中根允文,小見山実監訳:ICD-10精神および行動の障害.臨床記述と診断ガイドライン.医学書院.東京.1993).
7)宮坂菜穂子,熊野宏昭:軽症うつ病の診断基準内科92:639-643,2003.
8)坂元薫,鈴木克明:軽症うつ病の診断的位置付け,臨床精神薬理6:155-163,2003.
9)坂元薫,岩原于絵,原田豪人:双極性障害は意外に多い,精神科臨床ニューアプローチ2:気分障害上島国利監修,154-158,Medical view,東京,2005.
10)笠原嘉:軽症うつ病.講談社現代新書.東京.1996.
11)塩江邦彦,平野雅己,神庭重信:大うつ病性障害の治療アルゴリズム.精神科薬物療法研究会編 :気分障害の薬物治療アルゴリズム.pp19-46,東京,じほう,2003.

  笠原嘉:軽症うつ病.講談社現代新書というのが、いろんな意味で、重要です。 



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