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4675人 公立学校教員精神性疾患病気休職

うつ病などの精神性疾患で2006年度中に病気休職した公立学校教員が、4675人と過去最多を更新したことが28日、文部科学省の調査で分かった。前年度より497人増え、10年前の約3.4倍に達した。保護者や子どもとの関係で悩みが高じたケースなどが多いとみられる。
 精神性疾患による休職者数の増加は14年連続。特に過去4年間はいずれも、対前年度で1割以上の伸びを示し、病気休職者全体(7655人)に占める割合も初めて6割を超えた。
 各教育委員会に原因を聞いたところ、保護者や児童生徒との人間関係の悩み、多忙によるストレスなどが原因との回答が多数を占めた。各教委はメンタルヘルスの研修を充実させたり、復職支援のためのプログラム策定などに取り組んでいるという。

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無理もないと思います。


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Pichotのうつ病分類



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精神病性うつ病と神経症性うつ病



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Softbipolar disorder

臨床精神医学35(10):1407-1411,2006
Softbipolar disorder(軽微双極性障害)概念について
阿部隆明

1.はじめに
1950年代にLeonhardによって提唱された躁うつ病における単極性障害と双極性障害の2分類は,その後の臨床研究や生物学的な研究,経過研究によって支持され,現代の操作的診断基準であるICD-10やDSM-IVにも反映されている。ところが,同じ単極性障害の中でも,後に双極性障害へ移行したり,抗うつ薬によって躁転やラピッドサイクラー化を呈したりする症例が散見されるようになった。そのため,こうしたケースの位置づけをめぐって,単極一双極分類の見直しが迫られる中で,Akiskalによって,双極性障害の枠が拡大された。すなわち,従来の典型的な躁うつ病である躁病相のはっきりした双極I型障害とは別に,軽微ながらも躁的な要素を持ち,双極性障害として治療し経過を観察した方が有益な一群がSoftbipolar disorderと命名されたのである。双極性障害全体を指すBipolar Spectrum(双極スペクトラム)ということばの方は,本邦でも何度か紹介され,精神医学の用語として定着してきたが,Soft bipolarの方はまだ正式な訳語もなく原語のままで用いられている。ここでは,Soft bipolarに対し軽微双極型,Soft bipolar disorderに対し軽微双極性障害という訳語を当て,その内容を紹介する。

2.軽微双極性障害とは
軽微双極性障害とは,気質面の軽うつから大うつ病エピソードにまで至る「うつ」と,同一エピソード中にないし独立して,「軽微な躁」が存在する気分障害である。軽微な躁といっても明らかな軽躁病エピソード,準症候群性(軽躁病エピソードを満たさないレペル)の軽躁,気質面の軽躁成分と濃淡の差がある。また,軽微双極性障害は,大うつ病エピソードとの合併の有無により,双極○型と表記される挿話性障害と,持続的な状態である感情病気質(affective temperament)(表)とに大きく分けられる。
DSM-IVの診断基準による軽躁病エピソードは,症状の項目そのものは躁病エピソードと原則的に変わりないが,持続が4日以上で社会的機能を損なわず入院が必要でないものとされる。しかし,Akiskalは,実際には1~3日の持続で終わるケースが比較的多いことを示して,

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表 感情病気質(Affective Temperament)
A)発揚気質(Hyperthymic Temperamgnt)
・特定できないが早期の発症(21歳未満)
・軽躁病エピソードの基準を満たさない間歇性の軽躁病の特徴があり,正常な気分が介在することは稀
・習慣的に睡眠時間が短い(1日6時間未満,週末を含めて)
・否認を過度に用いる(exeessive use of denial)
・シュナイダーの発揚者の特徴
1.過敏性,陽気,過度に楽観的,元気一杯
2.天真爛漫,過度の自信,自己確信,自慢げな,大げさな,誇大的な
3.精力的,計画に富む,先を考えない,猪突猛進
4.非常に多弁
5.温かい,対人接触を好む,あるいは外向的
6.過干渉,お節介
7.抑制を欠いた,刺激を求める,気まぐれ

B)抑うつ気質(Depressive Temperament)(当初は準感情病性気分変調気質(Subaffedve Dysthymic Tempenment)。
気分変調気質(Dysthymic Temperament)とも記述される)
・早期発症(21歳未満)
・間歇的な軽度の抑うつで,非感情病性疾患から二次的に生じたものではない
・習慣的な過眠傾向(1日9時間以上)
・考え込む傾向,無快楽,精神運動不活発(すべて午前中が悪い)
・シュナイダーの抑うつ者の特徴:
1.陰うつ,悲観的,ユーモアに欠ける,喜べない
2.物静か,受動的,優柔不断
3.懐疑的,過度に批判的,不満が多い
4.考え込む,くよくよしやすい
5.良心的ないし自制的
6.自己批判,自己非難,自己卑下
7.不適切だったこと,失敗,否定的な出来事にとらわれ,自らの失敗を病的に楽しむまでに至る

C)刺激性気質(lrritable Temperament)
・特定できないが早期の発症(21歳未満)
・習慣的に不機嫌一過敏で怒りっぽい一正常な気分はまれ
・考え込む傾向
・過度に批判的,不満が多い
・不機嫌に冗談をいう
・でしゃばり
・不快気分を伴ういらいら
・衝動的
・反社会畦人格,残遺性の注意欠陥障害,けいれん性障害の基準を満たさない

D)気分循環性気質(Cyclothymie Temperament)
・特定できないが早期の発症(21歳未満)
・間歇的な短い周期,正常な気分は稀
・2相性の状態で,一相から他相へと突然転換する特徴があり,主観的にも行動からもわかる
・主観的症状
1.無気力と,正常な気力が交代する
2.悲観や考え過ぎと,楽観や心配のない態度が交代する
3.精神的な混乱と,活発で生産的な思考が交代する
4.自信喪失と誇大的な自信過剰が交代して,自己評価が動揺する
・行動面の症状(診断的により重要)
1.過眠と睡眠欲求の減少が交代する
2.内向的な自己陶酔と,抑制を欠いた対人接触が交代する
3.言語表出の減少と,多弁が交代する
4.理由が説明できない悲しさと,過度の冗談やおどけが交代する
労働時間が一定ではないため,生産性の量や質において,明らかにむらがある。
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DSM-IVの厳密な診断基準では非常に多くの潜在的な双極型が取り逃がされてしまう可能性があると警告し,軽躁病エピソードまで至らない軽躁を積極的に評価する必要性を強調している。他方,感情病気質における気質面の軽躁成分については,むしろ患者の普段の人格や生き方と一体化しており,本人もこの点で違和感を抱くことは少ない。ただ,この軽躁成分は,気分の不安定性の一因となり,ひいては後の躁病相やうつ病相発現の基礎となるということで,軽微双極性障害に組み入れられる。ちなみに,一見軽躁的な成分が見いだせない抑うつ気質(気分変調気質)も軽微双極型に含まれている理由については後述する。

3.軽微な躁を伴う挿話性障害

1.双極Ⅱ型(depression with hypomania:軽躁病を伴ううつ病)
経過上,中等度から重度の大うつ病と少なくとも4日間持続し機能障害を認めない軽躁病の時期を持つ類型。軽躁状態においては,高揚した気分,自信,楽観主義に彩られた行動が示されるものの,躁病に比較して判断は相対的に保たれている。しかしながら循環的な経過のため,顕著な機能不全を示すことや,深刻な自殺企図さえ引き起こすこともあり得る。他方,循環的な気分の変化によって,正常から過剰に正常ともいえる時期も出現し,多くの患者は,困難な時期から反転して,新たな婚姻関係や職業上の地位を得ることが可能である。この場合は,しばしば「明るい(sunny)」双極II型とみなされる。

2.双極Ⅱ1/2(cyclothymicdepressions:気分循環気質のうつ病)
Akiskalのcyclothymiaは,むしろDSMIVのcyclothymic disorderに近く,KretschmerのZyklothymie(循環気質)とは異なる。軽うつと軽躁の躁り返しに加えて,身体レベルでの生理学的な変動を基礎にした気質である。したがってここでは,気分循環気質と訳しておく。この気質を背景に大うつ病エピソードが生じた場合を双極ⅡI/2型という。こうしたケースでは,双極性障害が見落とされて,気分循環気質の生活史上の不安定性から,境界性人格障害などⅡ軸の人格障害と診断される可能性がある。家系にも双極性障害に属する人が多い。軽躁の持続は3日以内で,気質の範囲内での気分の不安定性を認めるが,全体的にはうつの方向にあり,プロトタイプである明るい双極Ⅱ型の「より暗い(darker)」表現型として特徴づけられる。

3.双極Ⅲ型(Antidepressant,associated hypomania:抗うつ治療に関連した軽躁)
抗うつ薬の投与や身体治療によってのみ躁転するうつ病の類型をいう。こうした症例は,抑うつ気質ないし,DSM-IVに従えば,早期発症の気分変調症をベースに持っており,しかも家族歴に双極性障害を認めることが多い。双極Ⅱ型の遺伝子型の比較的弱い浸透性を持つタイプと考えられている。ちなみに,自生的な軽躁病や躁病を既往に持つケースでも抗うつ薬で躁転することがあるが,この過程は気分循環気質によって媒介されており,軽躁の発現は不思議ではない。この場合は,双極I型ないしⅡ型に組み入れられる。

4.双極Ⅲ1/2型(Bipolarity masked-and unmasked-by stimulant abuse:物質乱用によって隠蔽されーまた顕在化するー双極性障害)
物質乱用やアルコール使用によって躁転するうつ病。このタイプは,操作的診断基準では物質誘発性ないし物質離脱性気分障害と診断されるが,気分安定薬の恩恵を受ける可能性があるために,双極性障害に組み入れられている。

5.双極Ⅳ型(Hyperthymic depression:発揚気質のうつ病)
発揚気質者が人生の後半期(典型的には50代)になって臨床的なうつ病を呈する類型。発揚性格の諸特徴は挿話的に現れるものではな<,長期にわたって機能しているものである。患者は生涯にわたり野心的でエネルギッシュ,自信家で外向的な対人関係能力があるために出世し実業界や政界で成功を収める。発揚気質者がうつ病に陥ったときは,最初のエピソードはたいてい過眠一制止型である。抗うつ薬の使用は基底にある発揚気質に作用し病像を不安定化させることもある。場合によって,この気質の諸要素がうつ病の中で,性的欲求の増大や競い合う思考となって現れるために,混合状態が生じ遷延することがある。


いずれの経過型においても,軽微な躁をいかに把握するかが重要であるが,往々にして,この状態は本人にとって,違和感がないどころか理想的な状態と思われている節もある。したがって,過去の軽躁の評価は非常に困難な面もある。しかしながら,軽微な躁の既往や双極性障害の家族歴が確認されれば,双極性障害が積極的に疑われるので,その正しい診断のためには,綿密な問診や家族からの詳しい病歴聴取が必須となる。

4.感情病性気質
感情病気質については,半構造化面接の項目や自己記入式質問紙が作成され,日本語版も発表されているが,最初に提唱された時点の基準がわかりやすいので,これを掲げておいた。なお,当初,準感情病性気分変調気質(subaffective dysthymic temperament)として記載された類型は,現在では単に抑うつ気質(depressive temperament)ないし気分変調気質と表現されることが多いので,こちらの表記を優先した。ここにあげた発揚気質
(hyperthymic temperament),抑うつ気質,刺激性気質(irritable temperament),気分循環気質は,それぞれ,躁病,うつ病,混合状態,躁うつ転換を習慣的な気質のレペルまで薄めたものといってよいが,Kraepelinの躁うつ病(manisch-depressives lrresein)の下位項目である基本状態(Grtmdzustiinde)に含まれる躁性素質(manischeVeranlagung),抑うつ性素質(depressiveVeranlagung),刺激性素質(reizbareVeranlagung),気分循環性素質(zyklothymischeWranlagung)に対応している。AkiskalはKraepelinの構想を受け継いで,これらの類型を,より重い障害の前段階であると同時に,人格素質の領域へと切れ目なく移行するものとみなしたのである。ちなみに,発揚気質と抑うつ気質では,それぞれ,Schneiderの発揚者,抑うつ者の特徴が記載されているが,Schneider自身はKfaepelinと異なり,こうした性格の躁うつ病(彼の用語では循環病(Zyklothymie))への移行は認めていなかったことに注意してほしい。
他方,Akiskalは,特に発揚気質や抑うつ気質において,性格的な側面のみならず,躁病やうつ病と共通する睡眠時間の特徴といった生理学的な側面にも着目している。興味深いことに,抑うつ気質は,習慣的な過眠傾向が指摘されており,この点ではいわゆるメランコリー型の臨床像よりは一部の双極性障害のうつ病相と共通する。この類型は一見,躁病との接点を見いだし難いが,抗うつ薬によって躁転する可能性を内包しており,実際に軽躁病エピソードを呈した場合は,上述のように双極Ⅲ型に組み入れられる。いずれにしても,最も躁転しにくい気質であることには間違いない。ただその一方で,双極性障害の後期経過であたかもエネルギーポテンシャルが低下したような気分変調気質と同様の状態が持続する経過もあることを考えると,ある意味で双極性障害の最も基底にある状態像といえるのかもしれない。

5.おわりに
Akiskalは,さらに双極V型VI型と双極スペクトラムの拡大を模索しているようである。明らかな軽躁は伴わないものの,周期性ないし突然の発症・寛解を示す非定型うつ病や季節性うつ病,挿話的な強迫症状,周期性の刺激状態,明白な感情病症状を欠いた発作的自殺企図,挿話的な神経衰弱的愁訴,挿話的な不眠の愁訴,重度の短期再発性うつ病などが候補にあがっている。いずれも周期性や突然の発症と終結といった自生的なリズム性が重視されている。気分障害の長期経過におけるうつ病から躁病への極性シフトや,双極性障害に移行した場合の高い再発性を念頭に置くと,躁への傾性を持ったうつ病を早めに発見し双極性障害として,早期治療することは患者の予後に大きな影響を与えることになるため,軽微双極型の概念は積極的な治療的意義を持つ。ただ,その一方で,遺伝・気質論,症状論に傾くあまり,発病状況と個人の人格構造との内的な関連についての踏み込みが足りないように思える。これを検討することによって,薬物療法のみならず,精神療法や環境調整への視点も含みこむことが今後の課題であろう。



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うつ状態の臨床的分類の流れ


臨床精神医学34(5):573-580,2005
「うつ状態」とその分類
うつ状態の臨床的分類の流れ一伝統的分類と国際分類-
古野毅彦・演田秀伯

1.はじめに
疾患分類学nosologieは症候学semiologieと並んで臨床精神医学の柱である。病気を分類するには何かしらの基準がいる。分類とは病気に対する考えであり,精神障害をどう理解するか,その人なりの立場を示すものである。大きく分けると,症状をもとに類型を抽出するカテゴリー分類と,複数の異なる次元軸を組み合わせるディメンジョン分類があり,それぞれに特色を持っている。本稿では過去から近年に至る,うつ状態における分類の流れを振り返り,その臨床に占める意味を探ることにする。

2.躁うつ病概念の成立
ものごとの概念が明確になってから,それをもとに分類が作られる。Esquirolはメランコリー(部分精神病)を高揚性のモノマニーと抑うつ性のリベマニーに分けたが,後者がうつ病の原型である。Falretはマニー(踊的興奮状態),メランコリー(うつ状態),平穏期の3つの病期を規則的に躁り返す循環精神病を記載し,女性に多く遺伝が濃厚であると述べた。同年Baillargerも,1つの発作中に興奮,抑うつの異なる2つの病相を含む二相精神病を報告した。これらがやがて躁うつ病の概念に発展する。
躁うつ病の概念を確立したのはKraeperinである。教科書4版(1893)までは,パラノイアや周期性精神病と並んで,メランコリーが独立した項になっている。5版(1896)は疾患単位への分類転換を遂げた著作として知られる。すなわち全体が先天性と後天性に二分され,周期性精神病とパラノイアは体質性精神病として前者に,メランコリーは退行期精神病として後者に分類された。躁うつ病は6版(1899)に初めて登場する。ここで躁うつ病とメランコリーが別立てになったことから,退行期うつ病をめぐる議論がはじまる。躁うつ病概念は1910年頃フランスに伝えられ,以後急速に浸透した。
第8版(1909~1915)の噪うつ病は心因性疾患,パラノイア,精神病質人格などとともに体質性の群に入り,「一方にいわゆる周期性,循環性の病気のすべてと,他方には単発性躁病,メランコリーといわれる病像の大部分と少なからぬ数のアメンチアを含む。さらに周期的あるいは持続的な軽い気分の変化を含むが,その一部はより重篤な障害の前駆と見なされるものであり,その他は体質と明確な境界なしに移行していくものである」と記されている。この頃の躁うつ病とは,広い範囲にわたる狂疾folie,精神病lrreseinであった。

表1 精神病性うつ病と神経症性うつ病
図1 Kielholzによるうつ病の分類-ICD-10との対応-

Kraeperinは躁うつ病の病因として遺伝を重くみて,人格や抑圧された欲動などの関与は認めていたものの,心因については消極的な姿勢をとり続けた。しかし最後の分類を見ると,外因・体因性から,原因不明の内因性,遺伝要素の大きな体質性まで,切れ目なく連続している。すなわち躁うつ病も,一方では心因性,他方では内因性の早発痴呆や外因性の器質性・症候性精神障害とも接点を持つことになり,ここにカテゴリーからディメンジョンヘと移行する分類思想の萌芽を読みとることも可能である。

3.病因別の分類
精神医学に神経症が登場するのは1880年頃である。それまで精神医学の対象は,社会からの隔離を必要とする重症の器質性,内因性精神病であり,ヒステリーなどの神経症は一般内科医が診療していた。うつ病の精神病性と神経症性の差異が論じられるのは,これ以降である。神経症性とは力動精神医学に基づく幼少時の葛藤,心因性は具体的な心理要因,反応性は発病の時間的推移におのおの重点を置いた概念であるが,しばしばほぼ同義として用いられる。
Depressionの語は解剖学では低下,陥没(頭蓋

表2 単極性うつ病と双極性うつ病の比較
 
骨陥没など),生理学では抑制(呼吸抑制など)の意味に用いられてきた。メランコリーに代わり,うつ状態あるいはうつ病の意味で精神医学に登場するのは19世紀半ばである。Lange(1928)は一方の極に内因性うつ病を,もう一方の極に心因性うつ病を置いて,これを発病様式,臨床像によって対比させた。精神病性うつ病と神経症性うつ病をめぐる議論はイギリスで長く続いたが,両者の違いを表1に示す。体因性,心因性,内因性の病因別の区分は今日でも考え方の基本になっている。SchneiderはSchelerの考えをもとに感情を層区分して,特定の感覚に結びつかず全身にみなぎる生気感情をとりあげ,その障害である生気性悲哀.vitale Traurigkeitを内因性うつ病の中心に置いた。朝方に強い抑うつ感,生物学的徴候(体重減少,食欲低下),環境に左右されない恒常性,早朝覚醒などである。
Kielholzは図1に示すように,体因を縦軸,心因を横軸にとった空間に,うつ病を体因性,心因

図2 Winokurの感情障害の分類

性,内因性の群に大別し,さらに9つに分けた類型を配置した。この図から,うつ病はどれも心因と体因がさまざまな割合で関与していること,各類型は互いに移行し合うことがわかる。理解しやすいディメンジョン分類である。

4.単極型と双極型
Leonhard(1957)は,内因性うつ病に単極性躁病,単極性うつ病,両者が並存する双極性の3型を区別した。1966年にスウェーデンのAngstとスイスのPerrisがそれぞれ,単極型と双極型は症候学的,遺伝的に異なることを示した。その後,2つの型では発病年齢,生化学,薬物反応性に違いがあり,単極性躁病は双極性に近いことなどの報告がなされた。単極型と双極型のカテゴリー区分(表2)は広く受け入れられ今日に至っている。
Dunnerらは,軽噪とうつの病相を持つものを双極Ⅱ型と呼んだ。Akiskalはこの考えをさらに推し進め,Bipolar Spectrumとして双極Ⅲ型,双極IV型を提唱している。
Winokurは,図2のように器質性,双極性,単極性,分裂感情障害の4つに区分し,単極性をさらに,反応性うつ病,内因・心因性うつ病,神経症性うつ病に分けている。反応性うつ病は近親者の死あるいは自らが身体疾患に罹患した後に続発するもの,神経症性うつ病はアルコール症,反社会性人格の家族歴を持ち,臨床的には「波乱万丈の人生」を送り,人格上の問題・対人関係の不良等で特徴づけられるものである。Depression spectrum disease(DSD)は,アルコール症または反社会性人格の家族歴を持つ患者に生じるうつ病を指しており,反応性うつ病。神経症性うつ病をまず同定し,それらに該当しない単極性うつ病を内因性うつ病とみている。内因・心因性うつ病はfamilial pure depressive disease(FPDD)とsporadic depressive disease(SDD)に分けられる。FPDDは家族歴がうつ病のみで,躁病,アルコール症,反社会性人格などはなく,SDDはこれらのいずれもが家族歴にみられないものを指している。Akiskalらとともに,遺伝的な要素をもとに類型を純化させようとする試みである。

5.包括・多元的な分類
力動精神医学は患者の生活史を重視し,内因性精神病に了解の範囲を拡大した。これを受けて1950年代のドイツにうつ病の発病状況論が起こり,荷おろしうつ病,根こぎうつ病などが


図3Pichotによるうつ状態の分類(文献21による)


提唱された。わが国でも平沢による軽症うつ病,広瀬による逃避型抑うつなどの記載がある。こうした誘発うつ病の概念は,内因性と心因性の境を不鮮明にし,より包括的な分類を構想させることになった。
Tellenbachは,メランコリー親和型性格を提唱し,病前性格と発病状況を包括的にとらえようとした。笠原一木村の分類は,「病前性格一発病状況一病像一治療への反応一経過」を1つのセットにし,心的水準の低下の度合に応じて生じるいくつかの段階を設定した立体的構成となっている。多元的な要素を組み合わせて類型を描き出すとともに,病像の成り立ちの理解や治療方法の選択,予後の推定など臨床的に有用な分類である。
Robinsonらは,脳梗塞後に生じるうつ状態を卒中後うつ病として報告した。卒中後うつ病は,MRIなど画像診断の進歩にあわせて,無症候性脳梗塞と老年うつ病の関連,血管性うつ病の概念などに発展した。体因性うつ病と内因性うつ病の区分を不明瞭にし,ディメンション的な見方をすすめるものである。

6.客観的な分類
うつ病に実証的な研究が現れたのは1950年代後半である。コンピュータの導入が評価尺度を用いた多数例の処理を可能にしたからである。Pichotの分類は図3に示すように,正常悲哀と不安神経症を除いたうつ状態を一次性か二次性で
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表3 DSM-IVによる気分障害の分類
(うつ病性障害)
296.2x大うつ病性障害,単一エピソード
296.3x大うつ病性障害,反復性
300.4気分変調性障害
3U特定不能のうつ病性障害
月経前不快気分障害,小うつ病性障害,統合失調症の梢神病後う
つ病性障害など
(双極性障害)
296.0x双極I型障害,単一顧病エピソード
296.40双極I型障害,最も新しいエピソードが軽顧病
296.4x双極I型障害,最も新しいエピソードが噪病
296.6x双極I型障害,最も新しいエピソードが混合性
296.5x双極1型障害,最も新しいエピソードがうつ病
296.7双極I型障害,最も新しいエピソードが特定不能
296.89双極U型障害(軽噪病エピソードを伴う反復性大うつ病エピソード)
301.13気分循環性障害
296.80特定不能の双極性障害
(他の気分障害)
298.83一般身体疾患による気分障害
物質誘発性気分障害
296.90特定不能の気分障害
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二分し,さらに下位群を細分化する段階的なものである一次性,二次性の二分法はKleinの分類でも用いられているが,一次性とは感情障害以外の精神疾患の既往がないもの,二次性とは感情障害以外の精神疾患あるいは身体疾患に引き続いて起こるものを指している。一次性うつ病は症候学によって生気的な特徴を持つ内因病像endomorphe型と,これを持たない外因病像exomorphe型に分けられている。内因病像型は躁病を伴うものと,伴わない単極型に分けられ,後者はさらに退行期うつ病を考慮し早発型と晩発型に分けられている。外因病像型の下位群は病因(Kielholzをもとに反応性,神経症性,疲憊性)と症候学(自己憐憫,敵意,不安)の双方によっている。
この分類では,うつ病から精神病のニュアンスがぬぐい去られ,単に気分障害あるいは感情病と表現されている。客観性を重視してDSM-Ⅲ(1980)を意識しつつ,伝統的立場にも配慮したバランスのとれた分類になっている。

7.今日の国際分類
DSM-IV-TRによる分類(表3)は,病因論を排除し症候学に基づく操作的,客観的な姿勢を目指したDSM-Ⅲを踏襲している。統合失調症が狭くなり,気分障害の範囲は拡大した。単極型と双極型の区分は引き継がれ,うつ病性障害と双極性障害は別のカテゴリーとして分けられている。うつ病性障害は従来の内因性うつ病に相当する大うつ病,気分変調性障害,特定不能からなっている。生気的な要素はメランコリー型として挙がっている。過眠,体重または食欲の増加,気分の反応性などの病像は非定型うつ病とされている。精神病性の特徴は気分に一致するものと,一致しないものに分けられる。前者には罪責妄想,心気妄想,虚無的な妄想,報いとしての処罰など抑うつ性の主題に合致したものが挙がっている。気分に一致しないものとして,抑うつ主題とは直接関係しない被害妄想,思考吹入,考想伝播,被影響妄想などがあり,緊張病症状とともに,これら
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表41CD-10による気分(感情)障害の分類
F3気分(感情)障害
F30噪病エピソード
F31双極性感情障害〔噪うつ病〕
F32うつ病エピソード
F33反復性うつ病性障害
F34持続性気分(感情)障害
気分循環症,気分変調症を含む
F38他の気分(感情)障害
F39特定不能の気分(感情)障害
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を気分障害に含めるべきかについて議論がある。気分変調性障害は従来の抑うつ神経症や神経症性うつ病に相当する。これにはAkiskalによる抑うつ神経症の予後研究から気分障害の項に入れられた経緯がある。また,気分変調症そのものが異質な障害の集合体であるとみなされ,早発性(21歳未満),遅発性(21歳以上)に亜型分類されたが,これもDSMⅣで採用されている。特定不能のうつ病性障害の項には月経前不快気分や統合失調症後の抑うつなどが含まれている。双極性障害には双極I型障害,双極Ⅱ型障害,気分循環型障害が含まれている。気分循環性障害はDSM-Ⅱでは気分循環性人格とされていたものが,DSM-Ⅲ以降は気分障害の項に入れられた。またエピソードの反復を記述する特定用語として季節型,急速交代型などの特定用語が設けられている。
ICD-10による分類(表4)は,アメリカでのDSM-Ⅲ,DSM-Ⅲ-Rが刺激になって生まれた。単極型と双極型に二分しているが,それぞれ初回エピソードと反復したものを分けている。DSM-IV(1994)はICD-10に近づける作業がなされたが,いくつか相違も残されている。体因性うつ病は,気分障害の項ではなく器質性気分障害(F06)に,統合失調感情精神病は統合失調感情障害(F25)にそれぞれ対応する。退行期うつ病は,ICD-8(1964)およびその影響を受けて作成されたDSM-Ⅱ(1968)において退行期メランコリーとして独立していたが,その後の分類では青年期のうつ病の年齢修飾と考えられるようになりDSM-IVでもICD-10でも独立した位置づけはされていない。筆者らは人生後半期のうつ状態を,内因性うつ病の遅発型と妄想性障害としてのメランコリーの2つに分げると理解しやすいと考えている。

8.まとめ
躁うつ病の概念の成立から,最近の国際分類に至る流れを振り返った。分類は人為的なものであるから,どれにも多少とも不備がある。カテゴリー分類は類型のイメージを描きやすいが境界の設定が難しく,それを解消できるディメンション分類には次元軸の適切性が問題となる。分類は新しいほどよいとは限らない。現在用いられる国際分類は,国や文化を越えて誰もが操作的にあてはめることはできるが,類型同士の関連がつかめないので議論が深まらない。伝統的な分類を見直し,DSMに至った流れを知り(汎用されているMINI-DのみでなくDSMマニュアルの序文が役に立つ),それぞれの利点と欠点を把握することは,臨床の場で多様なうつ状態と向き合い,患者を理解する基盤を与えてくれると思う。



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気分変調症

気分変調症
辻 敬一郎
田島 治

1.概念・定義
気分変調症(気分変調性障害)の概念は,ほとんど1日中,大うつ病の診断基準を満たさない軽症の慢性的抑うつ気分が続き,少なくとも2年間(小児の場合は1年間)症状のある日の方がない日よりも多く,その期間中に症状のない期間が2ヵ月以内であり,また発症から2年間(小児の場合は1年間)に大うつ病エピソードがないことと定義されている.

2.疫学
今日の気分変調症の概念は比較的新しいということもあり,疫学的な調査自体が十分に行われていないのが現状である.一般に生涯有病率は6%,時点有病率は3%といわれている.性差別では女性に多いことが一致して報告されており,具体的には男女比は1:2ないし1:3と女性に多いという報告があるが,小児に関しては性差がないといわれている.

3.病因
3-a.遺伝
気分変調症患者は家族歴として大うつ病性障害をもつ割合が多いといわれており,ある調査結果では84%に大うつ病の家族歴がみられ,その内訳は78%が非双極性うつ病,19%が双極I型障害であったという報告がある.また気分変調症の若年発症型と高年発症型の比較では,前者の方が有意に大うつ病性障害の家族歴が多いと報告されている.

3-b.病態
気分変調症の生物学的基盤は解明されていないが,局所脳血流量の測定による研究結果では,内因性うつ病でみられる前頭葉での血流量の低下が気分変調症では認められないことや,dexamethasone抑制試験による気分変調症のdexamethasone非抑制は一般的ではなく,これは正常対照群との間に有意差はなく大うつ病との間に有意差を認めていることなどから,大うつ病とは病態が異なっていることが示唆されている.しかし生化学的にはノルアドレナリンないしドパミン系において非メランコリー性の大うつ病と有意差はなく,セロトニン系においても大うつ病との間に差を認めないという報告もある.また脳波を用いて大うつ病との比較を行った神経生理学的な研究報告が幾つかあり,気分変調症患者の25一50%が大うつ病性障害の一部の患者にみられる睡眠ポリグラフ検査所見を呈すという報告もあるが,これらには一貫した結果が見いだせていない.

4.臨床的特徴

臨床上の特徴は,基本的に大うつ病エピソードの特徴に類似しているが,自律神経症状を呈する頻度は大うつ病に比較すると少ないようである.小児の場合は抑うつ的であると同時に易怒性や気難しさがみられる.また気分変調症はその症状経過からも推測されるように社会機能障害が問題となっており,実際に多くの調査で大うつ病に比べて社会機能が有意に悪いことが報告されている.
Akiskalは慢性うつ病の亜型分類の理念的モデルを提唱しており,気分変調症も原発性か続発性か,若年発症か高年発症かで分類したが,現在は早発性と晩発性の2群に分類されている.DSM-IVやICD-10でも発症が21歳未満か21歳以上かを特定することを明記している.
次に経過,予後についてであるが,気分変調症の定義からも推測されるとおり,その経過,予後は決して良好とはいいがたい.しばしば早期かつ潜行性に発症,大うつ病を併発して初めて受診に至るケースが多い.気分変調症患者の経過を追跡調査した幾つかの報告をみても,大うつ病と比較すると有意に抑うつ症状も社会機能も回復率が悪いという結果が得られている.また大うつ病単独の患者群とdouble depressionを呈した気分変調症の患者群を比較した追跡調査でも,気分変調症患者の方が有意に回復率が悪いという報告もある.これは,double depressionの大うつ病の急性期からは回復したものの,気分変調症としての慢性軽症うつ病が遷延していることが示唆される.

5.診断と診断基準
5-a.診断
気分変調症は軽症うつ病と見なされやすく,逆に治療抵抗性のうつ病が気分変調症と診断されるケースも多々見受けられる.また大うつ病と気分変調症が共存するいわゆるdouble depressionの病像も気分変調症の存在が見落とされがちであり,その診断には詳細な病歴聴取が必要とされる.診断基準は持続性気分(感情)障害の稿で示した表1のとおりである.
5-b.鑑別診断
気分変調症と鑑別診断を要する個々の疾患と,その鑑別上の注意点を説明する.
1)大うつ病
気分変調症と大うつ病は類似した症状を呈すことから,それらの鑑別はしばしば困難を伴う.基本的にはその重症度と慢性度に基づいて鑑別される.DSM-III-R以降の気分変調症の診断基準は,発症後2年の間に大うつ病エピソードがないことが前提となっている.発症後2年以降に大うつ病エピソードが出現した場合は,気分変調症に大うつ病が併発したいわゆるdouble depressionと診断される.
2)人格障害
若年発症の気分変調症と人格障害,とりわけ抑うつ性人格障害との鑑別が問題視されている.気分変調症患者において様々な人格障害の診断基準を満たすケースが多々見受けられ,人格障害の分類カテゴリー間の境界の曖昧さが指摘されている.
3)精神病性障害
統合失調症(精神分裂病)や妄想性障害などのいわゆる精神病性障害における慢性期の経過中に慢性の抑うつ状態を呈することがまれならず認められる.残遺欠陥状態をはじめ精神病性抑うつやpostpsychotic depressionなどが遷延しているケースなどとの鑑別が必要である.
4)不安障害
抑うつ状態はしばしば不安症状を伴うことが多い.気分変調症はその診断基準からも軽症のうつ状態を呈すものであり,強い不安が前景となっている場合は不安障害と診断されがちであるため注意が必要である.
5)身体疾患による気分障害
高齢発症の気分変調症では何らかの身体疾患を伴っていることが多く,一般身体疾患による気分障害との鑑別は困難である.これらの鑑別には抑うつ症状の発現と身体疾患の発症との時間的な関連や因果関係,身体疾患の改善に伴う抑うつ症状の変化などが重要なポイントとなる.

5-c.コモービディティー(comorbidhy:共存ないし併存)
気分変調症は前述の鑑別診断としてあげた多くの疾患とのcomorbidityが多くみられる.ある疫学調査では,気分変調症患者の46%が不安障害を,39%が大うつ病を,30%が薬物乱用を合併していたと報告している.大うつ病の合併,いわゆるdouble depressionに関しては,59%が初診時に大うつ病を合併しており,97%が経過中に大うつ病を併発したという調査報告がある.II軸診断のcomorbidityに関しては,気分変調症患者の34%に人格障害を合併しているという報告がある.人格障害のcomorbidityについて気分変調症患者と大うつ病患者の比較を行った2つの調査では,気分変調症の方が有意に人格障害のcomorbidity が多いという報告もある.気分変調症の治療について経験論的にいわれることは,薬物療法および精神療法ともに反応性が悪い,ということである.しかし治療が奏効し速やかな改善が認められれば,気分変調症の診断基準を満たさないわけである。

6.治療
6-a.薬物治療
薬物反応性が不良といわれてきた原因の一つに症状が比較的軽度なため有効投与量以下の抗うつ薬が投与されていたということがあげられており,最近では大うつ病に準じた薬物療法や精神療法を行うことでその治療効果が期待できるという報告が増えてきている.一方,薬物療法の注意点としては,気分変調症は抑うつ症状が軽症ゆえにベンゾジアゼピン系などの抗不安薬の漫然投与が行われているケースが多々見受けられるが,気分変調症に対する治療的有効性も証明されておらず,また依存性の問題もあるため注意を要する.近年,二重盲検比較試験で気分変調症に有効とされる薬剤の報告が幾つかみられ,基本的にはうつ病治療に準じた抗うつ薬の投与により,その種類を問わず同等の効果が得られるといわれている.ここでは各種薬剤の種類別にその特徴も含めて紹介する.
1)三環系抗うつ薬
気分変調症に対する三環系抗うつ薬の効果は,大うつ病に対する効果ほど明らかではないものの,幾つかの二重盲検比較試験で有効性が示されている.しかし副作用の発現頻度は他の抗うつ薬に比較すると多いと報告されている.
2)選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
幾つかの二重盲検比較試験の結果によると,SSRIは効果発現は遅いものの標準的な投与量を用いれば気分変調症に有効であることが示されている.またSSRI投与により短期で効果が認められないケースであっても,増量しつつ少なくとも6ヵ月は投与を継続するべきであるという見解もある.
3)セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
SNRIに関する二重盲検比較試験の報告はないが,少数例の予備的なオープン試験ではあるがその有効性を示した報告もある.
4)その他
現在国内では使用できない薬剤であるが,MAO阻害薬の気分変調症に対する効果が三環系抗うつ薬であるimipramineに比して有意に有効であるという報告がある.また,選択的可逆的モノアミン酸化酵素タイプA阻害薬(RIMA)であるmodobemideや,ドパミンD2,D3受容体阻害作用をもつamisulpirideなどの気分変調症に対する有効性も報告されている.amisulpirideと類似した作用機序を有するsulpirideは現在国内での精神科治療に広く用いられており,最近気分変調症に対する有効性が報告された.

6-b.精神療法
次に気分変調症に対する精神療法に関しては,薬物療法以上にその研究は乏しく,現在の見解では標準的な治療とはいいがたい.World Psychiatric Associationのワーキンググループも,気分変調症の精神療法は単独ではなく薬物療法と併用されなくてはならないとしている.しかし気分変調症は治療が長期にわたることがほとんどであり,治療関係を良好に保っという精神療法的配慮は不可欠とも考えられる.気分変調症は多くの異種の病型から成り立っているため,特定の理論に基づく技法が特異的に有効とは考えられず,個々のケースに合わせてより良い精神療法的技法を選択する必要がある.

文献 略



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気分変調症

気分変調症
保坂隆

はじめに●
気分変調症(dysthymia)は比較的若年で発症し,軽症ではあるものの慢性に経過する一群の抑うつ状態に対して提唱されたようであり,わが国で従来より使われていた“神経症性うつ病”や“抑うつ神経症”に相当する概念である.有病率が人口の3%といわれているので,内科臨床の中でも遭遇することはまれではないと思われる.米国では,診断基準DSM-IIまでぱ抑うつ神経症”として神経症圏に含められていたものである.しかし,この抑うつ神経症と診断されていた患者を経過観察したところ,その40%は単極性または双極性障害に移行し,20数%だけが抑うつ神経症のままであったという研究結果から,疾患均一性が問題にされていた.その結果,診断基準DSMⅢ(1980年)からは,抑うつ神経症のかわりに“気分変調症”という用語が使われるようになった(抑うつ神経症はカッコ内に付記されていた)のである.つまり気分変調症とは比較的,新しい疾患概念なのである.
その後は,DSM-ⅢRまでカッコ付きで付記されていた“抑うつ神経症”はDSM-IVでは完全に
姿を消し,呼応するかのように,ICD-9(1978年)の抑うつ神経症も,ICD-10(1992年)では気分変調症にかわった.

気分変調症の診断●
一番新しい診断基準DSM-IVによれば,「気分変調症とは,軽度の抑うつ気分,広範な興味の消失や何事も楽しめないという感じが,長い期間(2年以上)続く状態」をいう.

気分変調症の治療●
気分変調症の治療としては,薬物療法と精神療法がある.
1.薬物療法
気分変調症の薬物療法としては,通常の抗うつ薬,すなわち三環系抗うつ薬やSSRI,SNRIなどでその有効性が確かめられている.しかし,臨床的には薬物療法への反応がわるいケースがあることも事実である.そこでAkiskaHは,気分変調症をその発症年齢と誘因によって,①遅発性の慢性原発性単極性うつ病,②慢性続発性うつ病,③早発性の性格因性うつ病,の3群に分けた.そして,この早発性の性格因性うつ病を薬物への反応によって,準感情病性気分変調性障害と性格スペクトラム障害とに分類した.前者の準感情病性気分変調性障害では,三環系抗うつ薬やlithiumcarbonateなどの気分安定薬に対して反応し,症状としては大うつ病の症状に近く,家族歴にも単極性・双極性障害などがみられた.それに対して,後者の性格スペクトラム障害では薬物療法への反応もわるく,症状も大うつ病障害のそれとは異なり,薬物・アルコール依存などが多くみられる.さらに家族内でもアルコール依存などがみられ,小児期に親を亡くしていることが多く,演技性・反社会性・未熟性・依存性の人格傾向を呈するという.つまり,臨床的に抗うつ薬の効果がある場合と,ない場合が存在するのは,このような臨床的な亜型分類で説明できそうである.言いかえれば,気分変調症は,大うつ病に近い群と,性格的な因子が強い群とに大別できそうである.

2.精神療法
抗うつ薬で治療する場合でも,安定した患者-医師関係の構築と維持のためにも,精神療法が必要であることはいうまでもない.それは,精神疾患すべてにいえることである.さらに,気分変調症の抗うつ薬で反応しないケースでは,特別な精神療法の適応になってくる.気分変調症では,約3ヵ月間の抗うつ薬の服用で寛解する患者は,全体の50%前後にすぎないことが知られ,かなりの患者は抗うつ薬では治らないことがわかっているからである.
さて,気分変調症の精神療法でもっとも効果が期待できるのは,認知(行動)療法である.これまでの報告によれば,認知(行動)療法による寛解率は30~60%であり,これは薬物療法による寛解率に匹敵する.そして,対人関係療法の効果も報告されている.これは,抑うつが対人関係の脈絡で生じることが多いことに注目され,開発された精神療法であり,人格レベルを問題にしないで,あくまでも対人関係に焦点を絞った援助と助言が行われる.

気分変調症の意義●
抑うつ状態の患者の場合,気分変調症と診断する際には,大うつ病と,抑うつ気分を伴う適応障害,薬剤性のものなどが鑑別診断となる.大うつ病とは症状の強さ,適応障害とは明確な誘因の有無と症状の持続期間などから鑑別できる.気分変調症は比較的若年で発症することが多
く,慢性的に抑うつ状態が続くのが特徴的である.このような慢性の抑うつ状態が持続すると,どうしても問題処理能力の低下などがあり,それによる心理的葛藤も出現してくるので,神経症,すなわち抑うつ神経症と診断し,これまでは神経症圏内の疾患を思うことが多かった.その意味で,“気分変調症”の概念は依然として曖昧な部分は残されてはいるものの,神経症圏から気分障害圏に移行したという点は重要である.移行した理由は前述したように,抑うつ神経症と診断されていた患者を経過観察したところ,その40%は単極性または双極性障害に移行し,20数%だけが抑うつ神経症のままであったという研究結果による.そのため,この疾患を疑ったら,しっかりとした抗うつ薬の投与をする必要がある.
さらに,この気分変調症の罹患率は3%と高いため,もう一度,この概念を整理し理解して,日常臨床で抑うつ状態あるいは軽症うつ病の患者を診察する際には,まずは頭に浮かべる必要がある.

文献●
1)李圭博ほか:気分変調の研究史.臨精医27:621,1998
2)田島治:気分変調症の薬物療法.臨精医27:645,1998
3)AkiskalHS:Dysthymic disorder:psychopathology of proposed chronic depressive subtypes.AmJ Psychiatry140:ll,1983
4)大野裕:気分変調性障害とパーソナリティー.臨精医27:637,1998
5)佐藤哲哉ほか:気分変調症の精神療法.臨精医27:



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気分変調性障害と大うつ病のcomorbidity

特集抑うつとAXisI/AXlsⅡ
気分変調性障害と大うつ病のcomorbidity-いわゆるdouble depression-
染矢俊幸 塩入俊樹 遠藤太郎

抄録:気分変調性障害の診断および薬物療法についての文献的検討を行うと共に,大うつ病性障害を併発している重複うつ病,いわゆるdoubledepressionにおけるそれらの留意点についても考察した。気分変調性障害の診断に際しては,①大うつ病性障害に比し発症が早いこと,②大うつ病を合併しやすいこと,③大うつ病発症時に初めて医療機関を受診することが多いこと,④経過中に双極性障害やパーソナリティー障害に類似した臨床症状を呈する場合があること,等に留意する必要がある。薬物療法に関しては,①重複うつ病の急性期では,大うつ病性障害に準じて大うつ病エピソードの治療を行う,②薬物の有効性および忍容性の面から,大うつ病性障害を併発していない気分変調性障害の治療では,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を第一選択薬に考え,効果不十分の場合は三環系抗うつ薬(TCA)が第二選択と考える,③セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)については,SSRI同様有効性が高いと思われるが,現状ではエビデンスが不十分である,等が挙げられる。これら薬剤を選択し,十分な期間の維持療法を行うことが,気分変調性障害および重複うつ病の治療として重要である。しかしながら,この障害の実証的研究はまだ十分とは言えず,重複うつ病の急性期治療においても,今後解明されるべき課題は多い。さらなるRandomized Controlled Trialの蓄積が待たれるところである。

はじめに

気分変調性障害は,1980年に米国精神医学会の公式診断基準であるDSM-Ⅲに初めて用いられた疾患単位で,従来,「神経症性うつ病」,あるいは「抑うつ神経症」と呼ばれた病態にほぼ相当する。その最も特徴的な臨床症状は,比較的軽症ではあるが慢性の経過をたどる抑うつ症状とされる。気分変調性障害患者は発症から受診までに相当の期間を要し,大うつ病性障害と比し治療を受ける機会が乏しいが,早期発症者では大うつ病エピソードを併発することが多く(重複うつ病double depression),これが治療を求める契機となる場合が多いとされている。重複うつ病は,気分変調性障害患者の79%に認められるとする報告からも,その経過中に高頻度に認められる病態であり,うつ状態の診断・治療に大きな影響を及ぼすと考えられる。
本稿では,気分変調性障害の診断および薬物療法について,大うつ病性障害との関連も含めて述べる。

Ⅰ 気分変調性障害の診断の留意点

気分変調性障害の発症時期は明確でないことが多いので,診断の際にはその持続期間の問題が生じる。また,気分変調性障害の抑うつ気分は他の精神疾患の併存では説明できないことが前提であり,気分変調性障害の最初の2年間の気分症状が大うつ病性障害の「慢性」または「部分寛解」であってはならないし,また統合失調症のような慢性の精神病性障害の経過中に上記の気分変調が生じても,気分変調性障害とは診断されない。

気分変調性障害の75%以上で併存精神疾患(特に大うつ病性障害,すなわち重複うつ病が多い)があるとの報告もあり,大うつ病性障害が「慢性」あるいは「部分寛解」となり遷延化した場合,気分変調性障害との鑑別を一層困難にする。以上のように気分変調性障害と大うつ病性障害の鑑別は決して容易ではないが,前述したように,①大うつ病性障害を併発しやすいことと,②大うつ病エピソードの発症時に初めて治療的関わり合いを持つことが多いことには留意しておかなければならない。さらに,気分変調性障害には大うつ病性障害とは異なる以下の面があるとされ,診断上有用である。つまり,③気分変調性障害は大うつ病性障害に比し,思春期後期あるいは成人早期から何らかの臨床症状が現れていることが多い(発症年齢の違い)。④気分変調性障害では,経過中に軽躁状態あるいは反抗的な態度を示すような人格面での偏りの存在が示唆されるようなエピソードが存在する事がある(双極性障害あるいはパーソナリティー障害との鑑別)。ちなみに,21歳以前の発症の「早発性」では,特に大うつ病エピソードを生じ易いと言われている。また,気分変調性障害の経過としては,大うつ病エピソードから回復したとしても,もとの慢性うつ状態に戻ることが多く,単なる大うつ病性障害とは縦断的な経過が異なる。本人や周囲の人達に対する心理教育等の心理・社会的なアプローチが重要である。

Ⅱ 気分変調性障害の薬物療法的アプローチ

1.重複うつ病の薬物療法

我々が知る限り,Duarteらの研究が,重複うつ病のみを対象にした唯一のRandomized Controlled Trial(RCT)である。ここでは,可逆的MAO-A阻害薬(RIMA)であるmoclobemide(300mg,/日)と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のfluoxetine(20mgy/日)を比較し,偽薬群は設定されていない。結果は,6週間後に17項目のHamiltonうつ病評価尺度(HAM-D)の総得点が50%以上軽減した患者は,moclobemideで71%に達したのに対し,fluoxetineでは38%であった(p<0,05)。しかし,HAM-Dの平均最終得点やClinical Global lmpression scale(CGI)での改善率には有意差は認められず,副作用や忍容性にも両群で違いはなかった。但し,このエビデンスは重複うつ病に対してmoclobemideとfluoxetineが同様の効果を持つことを証明したに過ぎず,重複うつ病に抗うつ薬を用いることが妥当であるかどうかを示しているわけではない。このDuarteらの研究以外は,対象に重複うつ病以外に大うつ病性障害の「慢性」や「部分寛解」を含んだ研究である。1996年以前ではオープン試験しかないものの,三環系抗うつ薬(TCA)やSSRIにより大うつ病相は比較的迅速に回復する可能性が示唆されている。 その後現在までに6つのRCTが行われているが,そのうちの3つの研究は同一グループからのものであり,一連の研究として位置づけるのが妥当であろう。結果としては,sertraline(50~200mg/日)とimipramine(50~300mg/日)が同等に有効で,両薬剤が気分変調性障害の心理・社会的機能障害を軽減し得ることなどが示された。また,最近Thaseらは,sertralineとjmipramineによる12週問の治療に反応しない患者の約半分が,sertralineからimipramine(平均221mg/日)あるいはimipramineからsertraline(同163mg/日)への変更が有効であったと報告している。Smeraldiは,ドーパミンD2およびD3受容体の選択的アンタゴニストであるamisulpride(50mg /日)とfluoxetine(20mg/日)の効果を比較し,両薬剤とも有効で,その改善率や脱落率,有害作用には有意差を認めなかったという。さらにAmoreらの研究では,amisulpride(50mg/日))とsertraline(50~100mg/日)との比較が行われた。4週問後HAM-Dの総得点が50%以上軽減した患者の割合は,amisulprideが63%,sertralineで50%(p<0.02),8週間後でamisulpride82%,sertraline69%(pく0.009)となり,amisulprideが優れていたが,12週間後には両者で有意差なく,忍容性も等しく良好であった。以上から,TCAやSSRI,ドーパミン受容体拮抗薬が重複うつ病に有効である可能性は高いが,前述したように,これらの研究は大うつ病性障害「慢性」や「部分寛解」という,DSM-Ⅲ-R以降,気分変調性障害と区別して扱われてきた病態が含まれているので,エビデンスとしては不完全である。 ところで,上記の研究結果を見ると,重複うつ病の薬剤による改善率が想像以上に高く,KellerらやKocsisらの指摘するように,急性期治療性は重複性うつ病や大うつ病性障害「慢性」などの慢性うつ病のサブタイプによる違いがないとすると,重複うつ病の場合,TCAやSSRI,amisulprideなどの効果は大うつ病性障害とほぽ同程度であると考えることができる。したがって,大うつ病性障害に準じて大うつ病エピソードの治療を行うのが妥当であろう。もちろん,例えば1998年のKellerらの報告17では,確かに重複うつ病は大うつ病性障害「慢性」と同様にHAM-D総点が減少しているが,これは12週目の結果であって,endpointでも双方ともHAM-D総点は13点前後あり,軽うつ状態が持続していることがわかる。重複うつ病では気分変調性障害の治療を考えると,急性期治療以降の薬剤反応性が特に重要であるが,前述した報告ではほとんどが急性期治療に関するもので,急性期治療と同様の治療を続ければ気分変調性障害も改善されるか否かは定かでない。その意味からも,大うつ病性障害のみならず気分変調性障害の症状も有意に改善したとするKocsisらの報告は貴重であるが,さらなるエビデンスが必要である。 2.大うつ病の併発のない気分変調性障害の薬物療法 まず,Limaらのメタ解析刊こついて述べる。彼らは,気分変調性障害患者の薬物対偽薬の使用に注目したすべてのRCTを検索し、抽出された16の試験をメタ解析した。彼らの求めた治療効果の相対危険度(RR),95%信頼区間(CI)および治療効果発現必要症例数(NNT)について表1に示した。その結果,気分変調性障害の治療では,異なったクラスの薬剤の間でも,各クラスの薬剤間でも,有意差なく薬剤は偽薬に比し有効であった。また,治療脱落と有害事象のRRおよび95%CIについても表Ⅰに示した。その結果,TCAは偽薬より多くの治療脱落を起こし,TCA,SSRI,MAOIは偽薬より多くの有害事象を起こしたが,TCAのみ有意に多かった(但し,薬剤問の直接の比較はされていない)。したがって,忍容性という点ではTCAはやや不利と言える。 以上,Limaのメタ解析で用いられた16のRCTからは,気分変調性障害に対する有効性は,TCA(desipramine,imipramine),SSRI(fluoxetine,sertraline),MAOI(phenelzine,moclobeminde),amisulpride,ritanserinで同様であるが,忍容性の面でややTCAが劣るという結果であった。しかしながら,上記の抗うつ薬の中で,現在わが国で使用可能なものはTCAのimipramineのみである。そこで以下に我々が現在|臨床的に使用可能である抗うつ薬であるparoxetineとfluvoxamineを中心に,これまでの報告を提示する。しかしながら,両者ともRCTではないため十分なエピデンスとは言えない。 Paroxetineの気分変調性障害に対する有効性については,Nobneらが,小児および思春期の気分変調性障害患者7名に対してparoxetineを投与,その有効性を示した。さらに,Barrettらは,小うつ病および気分変調性障害の患者241名(内127名が気分変調性障害)を,認知行動療法群,paroxetine群,偽薬群の3群に分け,それぞれ治療を行い,paroxetine群の11週間後の寛解率(80%)は他の2群(認知行動療法群:57%,偽薬群:44%)に比し高いと報告している。また最近,BogettoらはSSRIの退薬症状の発現に関する興味深い結果を示している。彼らは,fluoxetine,あるいはparoxetineによる8週間の治療に反応した気分変調性障害患者97名に対して,その後の退薬症状を比較検討し,全体の26.8%に症状が認められ,内84.6%がparoxetineであったとした。彼らの結果からは,paroxetineの退薬症状の発現率は他のSSRIよりも高いことになり,薬物中止時には十分な注意が必要となろう。 FluvoxamineについてはRabe-Jablonskaが,気分変調性障害を呈する青年に対象を限定し,その効果を見た報告がある。それによると,fluvoxamineの投与4週目に48%が,8週目に56%,さらに26週目には44%の患者で改善が示されたという。その他fluoxetineについては,de Jongheらの報告がある。彼らは,気分変調性障害26名を含む中等度うつ病外来患者48名を対象に,maprotiline,あるいはfluoxetineのいずれかを投与し,投与後6週目には両群共に改善したが,その改善率は29%と控えめであったと報告した。 最後に,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)について述べる。気分変調性障害に対するSNRIの効果についての研究はvenlafaxineのみで,本邦で使用可能なmilnacipranのものは残念ながら存在しない。Joffeらは880名の大うつ病性障害と気分変調性障害(全体の3.3%に当たる30名)を対象として,venlafaxineを8週間投与し,臨床的な有効性や忍容性は良好であることを証明した。また,Hellersteinらはvenlafaxineを投与した気分変調性障害17名中13名(76.5%)にHAM-D総得点やCGIの改善が見られたとし,気分変調性障害に対するSNRIの有効性を示唆している。Ballusらは,24週間にわたりvenlafhxineとparoxetineとのRCTを行い,有効性や忍容性の点でvenlafaxineはparoxetineよりも優れていると結論した。しかしながら,これらの研究ではすべて対象群に問題があり,さらなる検討の必要がある。SNRIについては,これまでの研究は極めて不十分であるし,なおかつ使用可能なminacipranのエビデンスは未だ存在しない。しかしながら,SNRIの抗うつ薬効果と副作用の少なさという特性から,気分変調性障害の治療薬としての可能性は高いと思われる。 以上をまとめると,大うつ病性障害を併発していない気分変調性障害の治療には,その有効性や忍容性に関するこれまでのエビデンスを総合して,SSRIが第一選択薬,効果不十分の場合TCAが第二選択となろう。SNRIについては,SSRI同様有効性が高いと思われるが,現状ではエビデンスが不十分である。 3.気分変調性障害の維持療法 気分変調性障害に対象を限定した,継続・維持療法に関するメタ解析は存在しない。そこで,内的妥当性が比較的高いと思われるRCTを紹介する。いずれも,抗うつ薬を中止後の6ヵ月間に,再発が頻発することが警告されている。Kocsisらは,気分変調性障害患者(但し,56%は重複うつ病)に対してdesipramineを用い,10週間の急性期治療を行い(平均最終投与量:230mg/日,その中から急性期治療後16週間再発がない寛解患者をdesipramine群と偽薬群の2群に分け,経過を観察した。その結果,desipramine維持群では偽薬群に比し有意に再発が少なかった。また,再発のほとんどは最初の6ヵ月に起こっていたという。しかし,対象に重複うつ病が含まれており,純粋な気分変調性障害に対する有効性については明言できない。Kocsisらの最近の研究では,先の研究19で10週間のdesipramine急性期治療に反応し,しかも4ヵ月の継続療法中にも改善を保持した27名の気分変両性障害患者を対象とし(重複うつ病は除外),2年問の維持療法中の再発をdesipramine維持群14名と偽薬群13名で比較している。結果は,サンプルサイズは少ないものの,偽薬群の6名に対しdesipramine維持群では再発はなかった。また,偽薬群で再発した6名のうち5名が最初の6ヵ月で再発していた。したがって,Kocsisらのグループの2つのRCTからは,重複うつ病の併発に関わらず,desipramineは気分変調性障害患者の継続・維持療法として有効であることが証明された。継続・維持療法の期間に関しては,再発を考慮すると少なくとも6ヵ月問,できれば2年間ほどの長期のフォローが必要となるものと考える。 4.抗うつ薬の増強療法 我々の調べた限り,大うつ病性障害の治療でしばしば推奨されるLithiumや甲状腺ホルモン等による増強療法を,気分変調性障害に試みたRCTは存在しない。ちなみに,Kaplanの教科書では,気分変調性障害の薬物療法の項目に,実証性はないとしながらも,治療的試みが失敗した場合の選択肢として,Lithiumや甲状腺ホルモンによる抗うつ効果増強が推奨されている。Lithiumについては,Akiskalらのオープン試験が参考となるであろう。彼らは,慢性軽症うつ病を,desipramine,nortriptyrine,lithiumへの反応性の違いから,これらの薬剤への反応性が良好な準感情性気分障害と,反応性に乏しい性格スベクトラム障害に分類することを試みた。さらに翌年には,2年以上症状が持続している軽症慢性のうつ病を4型に分け,治療(抗うつ薬・気分安定薬と現実的な精神療法)への反応性の違いを調べた。すると,患者部の45%が治療に反応し,その反応群の一つが1型,すなわち,①単極性あるいは双極性の気分障害の家族歴を持ち,②25歳未満の発症の,③間歌的あるいは慢性のうつ病であった。これは,後に気分変調性障害とDSMで定義される病態に極めて近く,気分変調性障害にほぼ近い一群の中でlithiumが奏効する者が存在することを示している。 一方,甲状腺ホルモンについては,最近Rudasらが,治療抵抗性うつ病に対する高用量thyroxine(T4)の増強効果を8週間のオープン試験で調べている。結果は,9名のうち重複うつ病の4名と気分変調性障害1名は,いずれもT4によって部分寛解あるいは反応良好と評価された。しかしながら,対象が余りにも少なく,参考の域を出ない。 おわりに この障害の実証的研究は途についたばかりであり,急性期治療においては,薬剤の選択順位・投与量・投与期問・無効な場合の変更方法・増強療法の有効性の有無,維持療法においては,大うつ病性障害より長期に維持すべきか否かなど,今後解明されるべき課題は多い。さらなるRCTの蓄積が待たれるところである。 文献 1)Akiskal,H.S.,RoseJlt]la1,T.L.,Haykal,R.F.etal.:Characterological depressions.Clinical and sleep EEG findingss separating‘subaffective dysthymias’from‘character spectrum disorders Arch.Gen.Psychiatry,37:777-783,1980 2)Akiskal,H.S.,King,D.,Rosentha1,T.L.et al.:Chronic depressions.Part1.Clinical and familial characteristics in 137 probands.J.Affect.Disord.,3:297-315,1981. 3)Amore,M.,Jori,M.C.:Faster response on amisulpride 50mg versus sertraline 50-100mg in patients with dysthymia or double depression:a randomized,double-blind,parallel groupstudy.lnt.Clin.Psychopharmaco1.,16:317-324,2001. 4)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistica1 Manual of Mental Disorders, Third Edition,American Psychiatric Association,IWashington,D.C.,1980. 5)American Psychiatric Association:Diagnostic and StatisticalManual of Mental Djsorders,FourthEdition,textrevision.AmericanPsychiatricAssociation,Washington,D.C.,2000. 6)Ballus,C.,Quiros,G.,DeFlores,T.etal.:The efficacy and tolerability of venlafaxin and paroxetine in outpatients with depressive disorder or dysthymia.lnt.Clin.Psychopharmacol.,15:43-48,2000. 7)Barrett,J.E.,Williams,J.W.Jr.,0xnlan,T.E.etal.:Treatmen to dysthymia and minor depresslon in primarycare:a randomized trial in ptients aged 18 to 59 years.J.Fam.Pract.,50:405-412,2001, 8)Bogetto,F.,Bemno,S.,Revello,R.B.etal.:Discontinuation syndrome in dysthymic patients treated with selective serotonin reuptake inhibitors:a clinical investigation.CNSDrugs,16:273-283,2002. 9)deJonghe,F.,Ravem,D.P.,Tuynman-Qua,H.:A randomized,double-blind study of fluoxetine and maprotiline in treatment of major depression.Pharmacopsychiatry,24:62-67,1991. 10)Duarte,A.,Mikkelsen,H.,Delini-Stula,A.:Moclobemide versus fluoxetine for double depression:a ralldomized double-blind study.J.Psy-chiatr.Res.,30:453-458,1996. 11)Hellerstein,D.JoYanowitch,P.,Rosenthal,J.etal.:Long-termtreatmenent of double depression:a preliminary study with serotonergic antidepressants. 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抗うつ薬なのに眠いだるい こたつのたとえ

抗うつ剤を飲むと、すこし眠くてだるくて、
すこしだけ休めるようになります。

眠くてだるくなるのは、正確な自己認知ができるということなのです。

本来、そのような薬なのですが、
中には極めてまれに、
抗うつ剤なのだから、もっともっと元気になって眠気も吹っ飛ぶほどだろうと
思い込んでいる人もいるようです。
そうではないということをたとえ話で。

*****
コタツに入っていると、自動温度調整器がついていて、ついたり消えたりして、
多分、40℃くらいに保っているのだと思います。

1.
自動温度調整器が70℃にセットされていたらどうなるでしょうか。
多分、すごく暖かい高性能のコタツだといって人気が出るでしょう。
しかし、ヒーターが焼き切れて、修理をしなければならなくなるでしょう。

70℃にセットされている自動温度調整器とは、つまり、壊れているのと同じです。
ヒーターを保護することが出来ません。

2.
自動温度調整器が25℃にセットされていたらどうなるでしょうか。
多分、全然温まらない、だめなコタツと言われて、苦しく思い、しかし、
自分では最高の努力をしているのだ、なぜそれを分かってくれないのだろうと、
思うでしょう。

*****
1.は、すごく頑張りやさんで几帳面で、対人配慮に溢れた人が、
限界まで頑張ってしまって、ダウンする場合です。

この場合、治療は、もう一度70℃にすることではありません。
自動温度調整器の設定を、40℃にすることです。
抗うつ剤はここに効いています。

すると、患者さんは思うわけです。
だんだん温度が上がってくることは確かだけれど、たった40℃で頭打ちだ。
自分は昔は70℃まで頑張れたのだ。
だめな自分になった。
40℃でだるいとか眠いとか思うなんて。

しかし考えてみると、これでいいのです。
40度になったら、それ以上は温度を上げない、
それが正しい温度調整器なのです。

40度になったら眠くてだるい、それを普通だと思って生きて下さい。
そうでなければ、また、焼き切れてしまいます。

40℃になったら、からだとこころにストップをかける、そのようになって欲しいのです。

抗うつ剤を飲めば、まるで高性能のドリンク剤のように、
頑張りがきくと思ったら少し違うと思います。
冷静になって、自分のことが見えてくるのです。
こんなに無理をしていたらだめだなと見えてくるのです。

*****
2.
こちらは、学生時代を通じて、25℃までしか体験せず、それでいいと思って育ってきた人です。
とても幸せでした。
世の中の平均体温はもっと高いものだと知ったなら、
36℃に調整するもよし、
25℃のままで生き続けるもよし、でしょう。

上司の要求をあなたが苦しいと思うとき、
上司の温度調整器が壊れているのか、(たとえば70℃)
あなたの温度調整器が壊れているのか、(たとえば25℃)
考えてみましょう。



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気分変調症

気分変調症
阿部隆明
dysthymia,depression,dysthymic disorder,personality disorder,affective disorder

1.はじめに

ICD-10によれば,気分変調症とは,個々のエピソードの重症度あるいは持続期間において,軽症あるいは中等症の反復性うつ病性障害の診断基準を満たさない程度の慢性的抑うつ気分であり,従来診断の抑うつ神経症,抑うつ人格障害,神経症性うつ病,持続性不安うつ病が含まれるとされる。とはいえ,長期経過からみれば,そこには一生にわたってうつ病の深さまで達しない軽うつ状態だけではなく,うつ病性障害に先行ないし後発する軽うつ状態も含まれる。

具体的な症状について,ICD10では細かい規定がないので,ここではDSM-IVの気分変調性障害の診断基準を掲げておく(表1)。いずれにしても,症状数と持続期間による軽症うつ病との区別は非常に人為的であり,操作的診断の(大)うつ病にも従来の神経症性うつ病が含まれることを考えると,気分変調症と持続性の軽症うつ病を厳密に区別することはあまり意味がない。そこで,以下で論じる気分変調症は重症化しない持続性の軽症うつ病を含んでいることをあらかじめお断りしておきたい。

かつてAkiskalは気分変調症の本態について,①大うつ病性障害の薄められた表現型,②大うつ病性障害後の残遺症状,③他の慢性疾患に重畳した慢性不機嫌症,④性格因性うつ病に分類した。したがって,気分変調症も病因を考えれば,身体性症候群を伴ううつ病(ICD-10)ないしメランコリー型の大うつ病(DSM-IV)と生物学的基盤を共有し薬物療法の有効な群およびそれに準ずる慢性ストレス群と,それらと一線を画し主に性格に起因する群に大きく分けられるが,それぞれの症候上ないし経過上の部分的重なりは否定しがたいことも事実である。以下では,便宜的に前者を感情病性気分変調症,後者を性格因性気分変調症と命名して,その病態と治療について論じる。

2.感情病性気分変調症

同じくうつ病と密接な関連を有し共通の生物学的基盤が背景をなしていると想定されるが,早期発症と後期発症ではその内実が異なる。早発群では,感情調整の脆弱性を内包した気質をベースに気分変調症が発展し,遅発群では老化に伴う身体的変化や置かれた状況との関連が発症の契機となる。

表1
気分変調性障害(DSMIV)
A.抑うつ気分がほとんど1日中存在し,それのない日よりもある日の方が多く,患者自身の言明または他者の観察によって示され,少なくとも2年間続いている。
B.抑うつのあいだ,以下のうち2つ,またはそれ以上が存在すること。
1.食欲減退,または過食
2.不眠,または過眠
3.気力の低下,または疲労
4.自尊心の低下
5.集中力の低下,または決断困難
6.絶望感
C.この障害の2年の期間中(小児や青年については1年間),一度に2ヵ月を超える期間,基準AおよぴBの症状がなかったことはない。

2-1.早発群

若年発症群では,Akiskalの抑うつ気質(depressive temperament)ないし気分変調性気質(dysthymic temperament)が認められることが多い。この類型はSchneiderの抑うつ人格の臨床特徴に加えて,過眠傾向,軽い日内変動といった生体リズムの特徴を伴う(表2)。また,臨床的な特徴は躁と無関係にみえるが,双極性障害にみられる過眠型のうつ病の症状とも重なり,抗うつ薬によって軽躁状態を呈する可能性があるため,双極スペクトラムに組み入れられる。これは気質という持続的な特性であるが,気分変調症の症状とも共通する臨床特徴を併せ持ち,後者に移行しやすい。

治療に関しては,(大)うつ病に準じ,抗うつ薬を中心とした薬物療法が有効である。ただし,抗うつ薬によって躁転し,いわゆる双極Ⅱ型の経過をとる例などは,ときに境界性人格障害と誤診されることも稀ではない。こうしたケースでは気分安定薬の投与が奏効する可能性がある。

2-2.遅発群

うつ病エピソードが先行することなしに成年期以降に発症する気分変調症である。最近は特に高齢者の気分変調性障害がプライマリーケアの現場で注目されている。Beekmanらが行った高齢者の気分変調性障害に関する疫学的調査によれば,その危険因子は,最近生じたストレスではなく,環境と個人要因の混合ストレスであるという。環境要因としては,交友範囲の小ささsmall networksizeや情動的サポートの欠如,戦時中に受けた破滅的な出来事の長期作用があげられ,個人的な脆弱性としては,女性,家族歴,外的統制(external locus of control)が指摘されている。

したがって,遅発群では,個人的な要因が存在するものの,むしろ置かれた状況の問題のほうが大きく,早期発症の気分変調症に比較して,有効な治療戦略に関する研究はほとんどない。上記のような事情を考慮すると,個人的な治療にとどまらず,患者のQOLを高めるようなソーシャルサポートの充実が望まれる。

他方,後期発症の気分変調性障害の患者は,早期発症の患者に比べて,循環器疾患の罹患率が高いとされ,心血管系の変化が高齢者の気分変調症の発症に何らかの役割を演じている可能性が指摘されている。とはいえ,循環器疾患に罹患したという心理的重みが慢性うつ状態を引き起こすことも否定できない。また,家族歴や不安障害の合併率をみると,後期発症の気分変調性障害は,早期発症のそれとは大きく異なり,むしろ同年代発症のうつ病に近いとされる。したがって,後期発症の気分変調症とうつ病は別の単位というよりも,1つの連続体の一状態であると想定される。

表2
抑うつ気質〔Depressive Temperament〕(気分変調気質(Dysthymic temperament)とも記述される)の臨床特徴
・早期発症(21歳未満)
・間歇的な軽度の抑うつで,非感情病性疾患から二次的に生じたものではない。
・習慣的な過眠傾向(1日9時間以上)
・考え込む傾向,無快楽,精神運動不活発(すべて午前中が悪い)
・シュナイダーの抑うつ者の特徴:
1.陰うつ,悲観的,ユーモアに欠ける,喜べない
2.物静か,受動的,優柔不断
3.懐疑的,過度に批判的,不満が多い
4.考え込む,くよくよしやすい
5.良心的ないし自制的
6.自己批判,自己非難,自已卑下
7.不適切だったこと,失敗,否定的な出来事にとらわれ,自らの失敗を病的に楽しむまでに至る。 

遅発群も,うつ病との関連が想定される症例に対しては,これと同様の薬物療法の適応となる。つまり,SSRIやSNRIを中心とした治療が第一選択である。また,過去に寛解したうつ病エピソードがあって,現在の軽うつ状態に明らかな誘因やストレス状況がない場合も同様の治療となろう。

2-3,慢性ストレス群

すでに半世紀前に,Wiitbrechtが内因反応型気分変調症(Endoreaktive  Dysthymie)という先駆的な概念を提示している。これは,無力的かつ易疲労的で対人関係に敏感な病前性格を持つ人が深刻な精神的負荷状況に長期間曝されることで生じる軽度の持続的な抑うつ状態である。病像としては,自律神経症状を主体とした心気的色彩の強い軽うつ状態にとどまり,本格的なうつ病の深さまでは達しない。その負荷の例として,重度の身体疲労や栄養失調状態,回復の遅い感染症,消耗疾患,手術,出産などの身体的要因や故郷の喪失,拠り所の喪失,職業的社会的地位の変化。愛するものとの離別などがあげられている。

この概念は現在でも有効であると考えられるが,上記の遅発群とも一部重なり,もとより内因の発動が想定されている。その意味では,抗うつ薬もある程度有効であるが,身体疾患の場合には支持的な対応が,深刻な喪失体験が背景にある場合は周囲の物心両面にわたる継続的なサポートが不可欠である。

3.性格因性気分変調症

上記の類型と一部共通した臨床特徴を持ちながらも,生体リズムの変動やレム潜時の短縮など生物学的マーカーを伴わないタイプである。この場合は,薬物療法の効果はあまり期待できない。これを知らずに薬物療法のみに固執すると,いきおい多剤併用になり,ひいてはBenzodiazepine系薬剤の依存を作り出してしまう。患者本人は薬物療法に期待しているところがあって,新薬が出現するたびに,担当医に投与を求める。それどころか,若年者においては,自ら抱えている対人面や仕事面での葛藤を棚上げして,薬剤の副作用を強調したり,治らないのは治療が悪いからだと担当医を攻撃的することもある。こうした症例では,薬物は投与しないか,副作用の少ないSSRIなどの少量投与にとどめたい。むしろ,薬物療法だけでは抑うつ症状の改善は難しいことを自覚してもらうところから治療は始まる。欧米では,否定的な認知様式が抑うつ状態の形成に寄与していると考えられる場合は認知行動療法が,他者との関係のあり方が問題となっている場合には対人関係療法が推奨されている。

ところで,性格因性という場合,自己愛性,回避性,依存性などさまざまな類型がありうるが,抑うつに陥りやすい諸人格には共通した特徴もある。Mundtがこれを抑うつ構造としてまとめ,その一般的な対応についても触れているので,ここで簡単に紹介しておきたい。

抑うつに傾く人たちは,いつも気分がふさいだ状態で,喜びを嫌悪し,悲観的な生活態度をとり,「人生で楽しかったことはない」と考えている。外見上,ある程度うまく適応しているように見えるが,ときに嫌味な態度をとる。彼らは不満足な状態に甘んじることができず,攻撃性を隠蔽し,受動一攻撃的に振る舞う。精神力動的には,特に口愛性,保護のテーマ,しがみつきの欲求がみられる。

彼らは無力性,回避性の人格特徴も併せ持ち,他人に対して共生や依存の傾向がある。また半ば意識的に,欲求不満を体験しているのは周囲のせいだという暗黙のメッセージで家族らに罪責感を生じさせることによって,彼らを操作することがある。こうした無力的な傾向の人が,疲弊することで生じるうつ状態に対しては,急性期では支持療法が基本であるが,急性期後には患者の回避傾向に焦点が当てられるべきである。不必要な退行や甘やかし,治療環境に依存することを避ける必要がある。

また,自分で問題を解決しようとせずに,治療を医療スタッフからの単なる援助とみなしている印象を受ける患者たちもいる。彼らに対しては,自己に対する信頼や建設的な自己主張を促進するような対応が必要である。往々にして,彼らの子供時代には,こうした態度はむしろ否定的に扱われ,両親も何のモデルも提供していなかった可能性があるため,対人関係のあり方,自己像について検討すると同時に,夫婦面接や家族療法も考慮すべきである。

その他,本人の社会適応に問題があって,慢性の抑うつ状態を呈するケースもある。例えば,統合失調性人格障害(schizoid personality disorder)や,アスベルガー症候群などの高機能広汎性発達障害に属する人々は,もともと対人関係の困難さを抱えており,社会への参入後に抑うつ状態を呈することがある。特に後者では,通常の自明な人間関係が理解できないことに加え,あまりに融通が利かず要領が悪いために,職場で不適応を起こし抑うつ的になることも稀ではない。周囲が本人の特性を理解し特別の配慮をしなければ,こうした状態が長引くことになる。この場合は,対人スキルの向上を目的とした社会技能訓練や,仕事の手順を単純化,規則化させ,本人にとって具体的でわかりやすい職場環境を提供する必要がある。

4.おわりに

これまで述べたように,気分変調症の原因はさまざまであり,画一化された治療法はない。うつ病や双極性障害と関連するものは薬物療法が優先されるが,こうしたケースも含め,それぞれの人格や特性,生活史をふまえて,環境にも目配りしたうえで,その都度治療を工夫していく必要がある。

文献
1)Akiskal HS:Dysthymic disorder:psychopathology of proposed chronic depressive subtypes.Am J Psychiatry 140:11-20,1983
2)Akiskal HS,Mullya G:Criteria for the“soft bipolar spectrum:reatmentimprications.
Psychopharmacology Bulletin 23:68-73,1987
3)American Psychiatlic Association:Quick reference to the diagnostic criteria from DSM-Ⅳ.Wilshington DC,1994(高橋三郎,大野裕,染矢利幸訳:DSM-IV精神疾患の分類と診断の手引き.医学書院,束京,1995)
4)Beekman ATF;Deeg DJH,Smjt JH et al: Dysthymia in later life:a study in the community J Affective Disorders 81:191-199,2004
5)Devanand DP Adorno E,Cheng J et al:Late onset dysthymic disorder and major depression differ from early onset dysthymic disorder and major depression in elderly outpatients 78:259-267,2004
6)Mundt Ch:Die Psychotherapie depressiver Erkrankungen:Zumtheoretischen Hintergrund ,und seiner Praxis relevanz.Nervenarzt67:183-197,1996
7)Weitbrecht HJ:Zur Typologie depresiver Psychosen.Fortschr Neurol Psychiat 20:pp247-269,1952
8)WHO:TheICD-10 Classsication of mental and behavioral disorders,1992(融道男,中根允文,小宮山実監訳:ICD-10精神および行動の障害:臨床記述と診断ガイドライン.医学書院,東京,1993)



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闘病記ライブラリー

患者さんが執筆した闘病記を700冊集めたライブラリーだそうです。
http://toubyoki.info/index.html



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薬剤適応拡大と全般性精神病障害(general psychosis syndrome)

DSMⅤに関係した議論になると、最近は面白い話題がある。
統合失調症、双極性障害、分裂感情障害、短期精神病障害、精神病性うつ病などを包括する「全般性精神病障害」(general psychosis syndrome)の概念が提唱されている。この考え方はネオ・クレペリニズムの終焉、それに代わるネオ・グリージンガリズムの浮上を示唆する。
先日、双極性障害の集まりでもスライドに映し出されていた。

*****
こうした考えの背景にあるのは、各種薬剤の適応拡大である。躁うつ病、統合失調症、てんかんの、各薬剤の相互乗り入れといってもいい。

*****
1.てんかん薬→躁うつ病薬、統合失調症薬
バルプロ酸は本来はてんかんの薬であるが、厚労省の認可も受けて、双極性障害に正式に使われるようになっている。
カルバマゼピンは、てんかんの他に、躁病、躁うつ病、統合失調症、ついでに三叉神経痛まで適応がある。

神経細胞の過剰な興奮を抑制するという観点からみれば、躁状態には効くだろうし、統合失調症の陽性症状急性期にも有効だろうとの推定は出来る。

しかし、急性期のみならず、てんかん薬が、病状の安定に役立つようである。

2.統合失調症薬→躁うつ病薬
この分野はアメリカが先行している。
セロクエル、ジプレキサはかなり前からよく使われているようだし、次のような情報もある。

2-1 アリピプラゾール
最近の躁状態または混合エピソードの後に連続6週間安定していた双極性Ⅰ型患者161名を対象に、再発予防に関して非定型抗精神病薬アリピプラゾールの単剤療法とプラセボを比較した。アリピプラゾールは双極性Ⅰ型障害に対する維持療法として有効であった。

2-2 アリピプラゾール
米国規制当局は、現行の治療と併用して抑うつ状態の主要なエピソードを治療するためにBristol-Myers Squibb Coの抗精神病薬エビリファイ(アリピプラゾール)の使用範囲拡大を承認した、と同製薬会社が火曜日に発表した。米国FDAは、症状の一層の緩和を必要とする重篤な抑うつ状態にある成人を対象としてエビリファイの抗うつ療法との併用を許可した。Bristol社は同薬を日本のOtsuka Parmaceutical Co Ltdと共同販売している。
今回の承認は743名の患者が参加した2つの6週間の研究を基にしたものである、と同社は説明した。

2-3 リスペリドン
治療抵抗性を持つ大うつ病性障害患者において、リスペリドンによる増強療法は症状を抑制し、抗うつ薬治療の奏効を高めることがAnnals of Internal Medicine誌11月6日号で報告された。
主研究者のDr. Gahan J. Padinaは、リスペリドンは抑うつ状態の治療用としては承認されていないと述べている。「この研究は、この治療領域の知識をさらに深め、またリスペリドンによる標準的な抗うつ剤治療の効果増強という潜在的ベネフィットに関して理解しやすくするために実施した」とJohnson & Johnson Pharmaceutical Research & Development, LLC(ニュージャージー州 タイタスヴィル)のDr. Padinaはロイターヘルスに語った。

アリピプラゾールが双極性Ⅰ型の維持療法に有効。重篤な抑うつ状態にある成人にエビリファイの抗うつ療法との併用が有効。治療抵抗性を持つ大うつ病性障害患者において、リスペリドンによる増強療法は症状を抑制し、抗うつ薬治療の奏効を高める。

このように並べられると、いろいろと考えざるを得ない。
原因に対して効いているのか、途中を遮断しているのか、最後の部分に効いているのか、間接的に次の階層に効いているのか。

3.統合失調症薬→てんかん薬
これは適応拡大ではないけれども、たとえばセレネースは、てんかん発作を起こしやすくしてしまう。ネガティブだけれど、統合失調症の薬が、てんかん発作に関係しているということで、統合失調症とてんかんはある種の関係があるということになる。昔から、セレネースを入れて危ないときには、カルバマゼピンを入れておくのがお作法だった。現在はもちろん単剤処方である。

4.SSRIの適応拡大
アメリカでは、SSRIやSNRIはますます適応拡大の方向にある。日本ではデパスの適応がとても広いことが有名だけれど、同じくらい広げつつあるようだ。似た現象には、似た背景があるだろう。後発新薬の追い上げもあり、どの薬剤も適応拡大を模索しており、結果として、セロトニン調整薬やノルアドレナリン調整薬が、いろいろな場面で効くのだということが提示されている。

5.遺伝研究
これは先日の集まりで、栗原先生が発言なさっていたことだけれど、薬剤の適応拡大と相互乗り入れ、さらに全般性精神病障害(general psychosis syndrome)の話は、新しい話ではなくて、むしろ古い話なのだという。
家系研究とか双子研究が昔からあって、栗原先生らが、統合失調症とてんかんの遺伝として研究した、同じ症例について、満田先生たちは、非定型精神病として提示した。満田の非定型精神病はいわば全般性精神病障害(general psychosis syndrome)と言えないこともないものである。以来、伝統として、関西では非定型精神病と呼ぶが、関東では統合失調症と呼ぶような傾向もあるらしい。
遺伝研究でも、各疾患の相互乗り入れはあるらしい。

6.新薬の傾向
SDAとかMARTAとか言うように、ひとつの薬剤で、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなど、多方面を調整したいという方向がひとつある。これは、原因がはっきりひとつだと分かったなら、それをターゲットにすればいいはずで、そうできないというのは、実は、どの薬剤も、原因に対して効いているのではないと言えるかもしれない。セロトニンとドーパミンを同時に調整する薬なら、当然、適応範囲は拡大するだろう。そうした中で観察を続けてゆくと、最初は異なった病像を呈していたものが、次第に類似の病像に収束することがあるだろう。そのあたりから、グリージンガーが復活する。

7.昔から分かっていたこと
たとえば、レボトミンなどは、少量で、うつ病に効き、大量で統合失調症に効く。自律神経の調整にもよい。またたとえばスルピリドは、少量で胃薬、中等量でうつ病、大量で統合失調症などという工夫がある。メジャーを少量でうつ病に対応するというのは、いろいろな意見があって、アカシジアだとか、脱抑制だとかの見解もある。ひとつの薬剤がいろいろな病気に有効であることは分かったいた。しかしメカニズムが分かっていなかったし、いまだに分かっていない。セロクエルなどの新しい薬も、古い薬と同じように、いろいろと効くことが分かってきているということになる。

*****
グリージンガーは「精神病は脳病である」"Geisteskrankheiten sind Gehirnkrankheiten."ということばで有名である。彼は後に単一精神病(Einheitspsychose)と名づけられるようになった考えかたに傾き、精神病の種々な状態像はただ一つの疾患過程がたどる諸段階にすぎず、この疾患過程は脳疾患に由来するものだが、その解明は脳病理学の進歩にまつほかはない、脳病理学によってこれが明らかにされるまではただ症状の共通性や特徴によって疾患群を区別するにとどめるべきである、とした。

わたしが考えるに、「ただ一つの疾患過程がたどる諸段階にすぎず」というのは言い過ぎであって、臓器としての脳には、いろいろな壊れ方があるだろうと当然思うのである。脳のパーツがひとつだけであったなら、それについて、機能亢進と機能低下と、二つの方向で考えれば足りるだろう。しかしそれが階層的に構成されたときには、複雑になる。そしてパーツはもちろんひとつではない。
グリージンガーの功績は、当時の暗黒の情勢の中で、「精神病は脳病である」と言ってくれたことだろう。その他のことは、大目にみてあげたいと思うのだ。

現代的に言えば、「精神病の種々な状態像は、ドーパミン、セロトニン、GABA、アドレナリン、ノルアドレナリン、プロラクチン、その他の各種物質系が多層的に関係し合って形成される疾患過程がたどる、諸段階にすぎない」となるだろう。「すぎない」どころではない複雑さになるけれど。
最近の薬剤の適応指定の拡大状況を見ると、そう感じる。



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目次2007-12-12

うつ症状の重なり方
COPDとうつ状態
リチウムとサーカディアンリズム
ヘルペスウイルスは,細菌を防ぐ
MADRS
ソニーがパナソニックに勝つために
うつによる経済損失
病欠の理由は、うつ
睡眠時間5時間になったら
メンタルで休んでいる人
うつで1ヶ月以上休んでいる人がいる会社の数
うつになりやすい職場
どんな人がうつになる?
残業とうつ
managed care formularies
非定型うつ病の症例研究
-「うつ状態」の症例定式化(フォーミュレーション)..
現代社会が生む“ディスチミア親和型” 樽味伸
うつ病の社会文化的試論-特に「ディスチミア親和型う..
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『意識の探求』の参考文献60-79
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『意識の探求』の参考文献20-39
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「意識の探求」第一章-2
「意識の探求」第一章-1
意識の探求―神経科学からのアプローチ インタヴュー
うつ病の症状改善プロセス
『意識の探求』の参考文献80-92
強迫スペクトラム障害(OCSD)
ナルシス・ナル君
人生に必要なもの
うつ病と人格障害 阿部徳一郎 尾崎紀夫
うつ状態の臨床分類と生物学的基盤 大森哲郎
シュガー社員
新型商売
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SSRIの副作用について
わたし、うつなんです 言葉の問題
臨床心理士採用模擬試験 うつとパーソナリティ 津田..
うつ病自殺の労災認定
メンタル健康診断の必要性
ドラールとマイスリーのジェネリック薬
精神症状と身体症状
悩みの正体
とりあえずタフになる一点集中
自分の疲れに無自覚または否認
内耳模型
部下・同僚の不調に気付くポイント
アロマオイルについて
あたらしいページ
コラーゲンと類感呪術
マゴワヤサシイ 食事の基本
概日リズム睡眠障害 CRSDs の管理に関するガイ..
混合診療解禁問題-2
混合診療禁止の法的根拠
バイアグラを与えて養殖した牡蠣
乗馬クラブとうつ
患者が望む悪い知らせの伝えられ方
症状をジャクソニスム的に解釈する
「発作」反復でシナプス減少
病識と病感と無感覚と失認と離人症その周辺
高血圧ワクチン
The Right Brain vs Left B..
文献検索 Treating DSM-IV depr..
精神病とは何か
「ALWAYS 三丁目の夕陽」でテレビを分解した小..
乳児の先天性心疾患と妊娠中の母体の尿路感染症という..
ネガティブ・リスト
精神分析と精神総合
ネットにおける中傷による精神的被害への具体的対策
ダイエットしたい人のために
津田均「気分変調症」
現代社会における2人の寝室と性生活に関する調査結果
うつの重症化と慢性化
うつのときゆっくり休むために 都心のホテルを
仮面高血圧
受動喫煙と副流煙
最近のメンタル研修の一例
EAP Q&A 2007-11-3
メンタルヘルス新事業の推進
職場結合性うつ病 加藤敏インタビューから
職業とうつと自殺
身体疾患とうつ病
職域のうつ発見に二質問法
エニアグラム
うつ病の今日的病型と病態解明の意義 松浪先生
Tellenbach 型うつ病からBeard 型う..
全般性不安障害チェックリスト
日本版社会恐怖尺度(SPS-J) 日本版社会的相互..
双極性障害ミトコンドリア機能障害仮説
リチウムが効かない人
境界性人格障害の心理教育
タモキシフェンと躁うつ病
Sonalion 目次2007-11-01
側坐核の脳深部刺激療法(DBS)
虫歯方式と骨折方式 自然治癒力
出生時に低体重→ストレスに弱い成人?
仕事のストレス(Job strain)と急性冠動脈..
企業のメンタルケアをいかにサポートするか EAPと..
母親の喫煙は子供のADHD発症に影響する?
タフな人のセルフアサーション
メンタルタフネス
召使いに英雄なし
頻尿の薬
整形外科と心療内科
睡眠薬服用時の睡眠時異常行動
パキシルの妊娠初期服用
うつ病はどれだけ健康レベルを低下させるか
人工妊娠中絶
QIDS-SR 自己評価するうつ尺度の例
新橋心療内科ご案内と「うつ?」と思ったときのお話+..
名刺を作った
総目次をつくってみた+改修
ストレス・マネージメント・レコーディング
not マインド(の)マップ but マインド・カ..
携帯QRコード
禁煙治療を始めよう!
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How to Be Positive
うつ病概念の拡張 子供のうつ病
ストレス耐性度チェック
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局所多汗症 朝日新聞15日
アトモキセチン
ストレスと不眠
テンプスタッフ、医師の開業支援・オリックスと組む
国家公務員、「激務」や「いじめ」
うつ病で治療する場合の、復職までの実際の流れ 6-..
うつ病で治療する場合の、復職までの実際の流れ 5-..
うつ病で治療する場合の、復職までの実際の流れ 3-..
うつ病で治療する場合の、復職までの実際の流れ 2-..
パワハラで自殺「労災」 上司発言でうつ病
レコーディング 睡眠日誌の実例
うつ病患者復職準備度尺度
ディスチミア(Dysthymia, 気分変調症)親..
EAP 従業員支援プログラム 概論
慢性疲労症候群 新診断指針
三寒四温
うつにつながりやすい考え方のクセ
感覚の能動性と離人症 超音波を発射できなくなったイルカ
サイトの脱構築
躁とうつについての再検討 
前駆期・極期・回復期
寛解と回復の図-2
寛解と回復の図
ダイビング講習でパニック
リンク
コーチング



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うつ症状の重なり方

たとえば、プロ野球選手が骨折して、
シーズンを棒に振ることになったら、
がっかりして、抑うつ的になります。

同じように、サラリーマンのあなたが、
うつ病になって、しばらく会社を休むことになったとしたら、
がっかりして、抑うつ的になります。

しかしこの場合は、もともとがうつ病ですから、
後半部分の「がっかりして、抑うつ的になった」ところが、
前半部分の「うつ病」と一緒になってしまいます。

「骨折した」+「うつ状態」と
「うつ病」+「うつ状態」とが、対応しているはずです。

イライラしているのも、落ち込んでいるのも、
全部病気のせいと言われるのも、
少し違う気がします。



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COPDとうつ状態

COPDでは重症度が増すほど不安や抑うつといった精神症状が悪化すると指摘されている。
特に重症患者のみならず軽症のCOPD患者でも、うつの傾向はある。
統計ではかなり何度も言われていることであるが、
因果関係については不明である。

慢性疾患というものはうつ状態の原因になりやすいと思う。
ストレス反応性といっていいと思う。
しかし一方で、他の慢性疾患よりも関係が指摘されることは多い印象があり、
病態そのものが、うつと関係していないか、
また、薬剤がうつと関係していないか、研究が待たれる。

とりあえず、抗うつ剤が効くので、対処は出来る。

考えてみれば、慢性疾患はみんなうつと関係がある。
心血管系、たとえば高血圧とうつの関係はしばしば言われる。
血圧の調整系と自律神経の調整系のリンクは以前から指摘されている。

糖尿病も、慢性関節リュウマチも、膠原病一般も、
甲状腺機能異常症も、気分変動と関係がある。

透析をしている腎臓病患者さんもうつになりやすい。
脳梗塞のあとではうつになりやすい。

これらは、単に、
病気を抱えながら生きることのストレスによるものではなくて、
体の物質的メカニズムとして関係が明確に言われている。

呼吸器官系についても、
いろいろな物質系が関与しているので、
多分、うつとリンクする回路があるのだろう。



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リチウムとサーカディアンリズム

躁うつ病の治療に用いるリチウムのターゲットが明らかになった
Science

24時間周期のサーカディアンリズムはすべての生物にそなわり,哺乳類では多くの行動や身体的機能に関する制御因子である。
この異常はがんや精神病など多くの病気を引きおこし,とくに双極性障害(躁うつ病)とは深くかかわっている。
双極性障害の治療に一般的に用いられているリチウムは,グリコーゲン合成酵素リン酸化酵素(GSK3)の阻害剤で,
GSK3はいくつかの生物種でサーカディアンリズムを制御している。
中心時計は視床下部の視交叉上核に存在し,さまざまな時計遺伝子の互いに関連した転写フィードバックによってサーカディアンリズムがつくられ,維持される。

アメリカ,ペンシルバニア大学のイン博士らは培養細胞を用いた実験で,概日時計の負のフィードバックに必要な核内レセプター「Rev-erbα」が,GSK3βによってリン酸化されることで安定化することを発見した。細胞にリチウムを投与すると,Rev-erbαは急速にプロテアソーム分解されてその量とはたらきが失われ,Bmal1とよばれる時計遺伝子が活性化された。
リチウムに反応しないタイプのRev-erbαは,概日遺伝子の発現を抑制した。
すなわち,Rev-erbαタンパクの安定性をコントロールすることが体内時計にとって重要であり,リチウム療法のターゲットであることが明らかになったと博士らはのべている。

*****
これはナイス!よい知らせ。



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ヘルペスウイルスは,細菌を防ぐ

体内にいるヘルペスウイルスは,細菌を防ぐ役目を果たしているようだ
nature

ヒトは大体,子供のときにヘルペスウイルスに感染する。
その後,このウイルスは「潜伏」とよばれる“冬眠”状態に入る。潜伏はヒトの一生涯つづく。
つまり,ヒトはいつふたたびはたらきだすかわからないウイルスを,つねに体の中にもっているということになる。
このため,ウイルスの潜伏については,これまで不利な点ばかりが取り上げられてきた。
アメリカ,ワシントン医科大学のバートン博士らは,ヒトのヘルペスウイルスと遺伝的に近いウイルスにマウスを潜伏感染させることによって,ヘルペスウイルスの潜伏が利益をもたらすことを明らかにした。
潜伏感染したマウスでは,病気をもたらす細菌であるリステリア菌とペスト菌に感染しなかったという。
潜伏感染していたことで,細菌を防ぐ免疫系の物質や細胞が,すでに体内ではたらいていたらしいのである。
今回の研究で,ヘルペスウイルスの潜伏が,ヒトにとって不利なばかりでなく,利益をもたらすことが明らかになった,と博士らはのべている。

*****
「なぜ病気はあるか」という翻訳書があり、
原書は手元にもあるのだが、
面倒なので翻訳を一読したところ、あまりにもつまらなく、翻訳も悪く、なにも得るところがなかった。

ネタとしては、上記のようなことが並んでいる。

*****
さて、上の記事の内容であるが、これを利益といえるだろうか?
まともな免疫系があればそれでいいことなのではないか?
ある種の細菌に関してあらかじめ防御するというのは、
どうもやりすぎのように思われる。

ペスト菌という致命的な菌から命を守るという点で利益なのか、やはり。



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MADRS



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ソニーがパナソニックに勝つために

冬のボーナス商戦で、
ソニーは、ブルーレイレコーダー、ブラビアでパナソニックと勝負。
意外と売れるかも。
ついでに、コンテンツも売れればいい。

PS3もさかんにコマーシャルしている。
「やりたかったぞー」で39900円。任天堂と勝負。

一眼レフはαシリーズ。キャノンとニコンの激戦に、
将来的に、割り込みたい。
ミノルタ・コニカ・ソニーなんだから、
将来的にはいい勝負になるはずだ。

ウォークマンはアップルと勝負。

というわけで、各方面のライバルと戦うためのラインはそろったと見える。

ソニーの社員さんには、ますます元気に働いてほしいものだが、
パナソニックにも、任天堂にも、キャノンにも、アップルにも、負けないためには何が必要か。

給料を高くすればいいのか。
成果給を多くすればいいのか。
休暇を多くすればいいのか。
保養所を確保すればいいのか。
産休育休を取らせればいいのか。
上司との対話を増やすのか。
服装を自由にしてラウンジでコーヒーを飲み放題にするのか。
実業団野球部を持つのか。
販売店網を構築してみるのか。
コマーシャルを増やすのか。
ブランドイメージを確立するのか。

各社、みんな、やってしまって、現在に至る。

現時点での答えは、メンタルケアの充実である。

研究によれば、職員がうつにならないように対策をとれば、
遅刻、休業が減る。
生産性は向上し、
アイディアが出る。
営業に行っても気迫で勝利する。

そしてそのためのコストを計算した研究がある。

米国各地のプライマリケア12施設を受診したうつ病勤労者198名について、構造化された電話インタビューにより、勤労者の勤務状況、生産性、収入等を定期的に調査した。強化されたうつ病治療にかかる企業の追加コストを、1,000人の社員のうち5%がうつ病で受診すると仮定し算出し、費用対効果を検証したところ、勤労者のうつ病の改善に伴う欠勤の減少、生産性の向上による企業の利益は、うつ病治療強化に必要なコストを上回り、2年間での投資収益率は302%であった。

これには社長さんもびっくり。302%ですよ。リストラ強行よりもずっといい。

というわけで、わたしはソニーの職人さんたちを、
メンタル方面でサポートしていきたい。

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うつによる経済損失



健康管理を効果的に実施しようと思ったら、
メンタル管理が大切ということになる。

気管支炎・肺気腫が大きく、さらに喘息も大きな要因で、
呼吸器の問題は小さくないことが分かる。

また、アルコールを独立した項目としてあげれば、大きな問題になるはず。

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病欠の理由は、うつ



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睡眠時間5時間になったら



睡眠時間5時間になったら、
ちょっと考え直しませんか?

体質として平気な人がいることは確かですが。
東芝社長の西田厚聡さんは、毎朝6時30分には東芝本社の38階社長室に到着、
8時まで一人で過ごす。
8時から、会議、来客、会合。
早起きできなくなったら、会社を辞めると語っているとのこと。



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メンタルで休んでいる人



厚生労働科学研究費補助金労働安全衛生総合研究事業平成15年度総括・分担研究報告書

過去1年間の精神障害による1ヵ月以上の疾病休業者率は事業所規模別(300人未満、300999人、1,000人以上)に、0.79%0.54%0.37%であった。平均休業月数は5.2ヵ月であった。

「平均休業月数は5.2ヵ月」というのは、統合失調症も算入されていて、長くなっているのだろう。
うつ病の治療も、薬剤を初期から充分量使っていないからだと思われる。
メランコリー型なら、多分、もう少し短くできる。

これだけの人数に、年収を掛け算して、
推定逸失利益を計算すると、なんと、約9,468億円。



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うつで1ヶ月以上休んでいる人がいる会社の数



産業人メンタル白書2006年版

御社ばかりではありませんでした。

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うつになりやすい職場



労働政策研究報告書 No22,2005

業種では、IT産業、SEなどを区分してもらったら、鮮やかにトップ独走でしょう。
ITで、部長が外国人の、外資系、なんていう区分を調査したら、どうだろう。

大企業と中小企業であまり差がないのは、どうしてだろう? 
本当に差がないのか、複数の要因がプラスとマイナスで打ち消しあっているのか。

SDSで調べているので、
「うつ」の中身も問題なのだ。
メランコリータイプなのか、性格障害タイプなのかといった、中身の差があるはず。

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どんな人がうつになる?



労働政策研究報告書 No22,2005 より

うつにならない人が部長になるのか、
部長になったからうつにならないのか。

しかし、その他役員等が17.4というのも、おもしろい。
接待ゴルフで気疲れするのかも。
お役人の奥さんのご機嫌をとる。

20代の、一般事務の、平社員が、うつになりやすいということになるが、
体力もあるし、我慢するのは当たり前だと思っているらしい。

30代になると我慢しきれないことがたまってきて、
将来もなんとなく見えてきて、家族もいて、ローンも抱えて、
クリニックに来るらしい。

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残業とうつ



労働政策研究報告書 No22,2005

残業時間が増えると、疲労感と抑うつ感が増える。
ぴったり比例しているように見えるのは、目盛りをいじっているせいもある。

100以上でひとまとめというのは、ひどい気がする。
100と150と200ではかなり違う。

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