概日リズム睡眠障害 CRSDs の管理に関するガイドライン
概日リズム睡眠障害 CRSDs の管理に関するガイドライン
概日リズム睡眠障害には外因性と内因性があり、
実際には、内因性因子と外因性因子との組み合わせが各障害を発現させている。
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「外因性」CRSDs
交代勤務睡眠障害
時差症候群 -
「内因性」CRSDs
睡眠相前進症候群
睡眠相後退症候群
不規則睡眠覚醒リズム
非24時間睡眠覚醒症候群 [非同調型] または自由継続型
CRSDが疑われる患者の評価には、睡眠記録または睡眠日記が使用される。
利用できる治療法には、計画的睡眠スケジュール(planned sleep schedules)、定時の光照射、定時のメラトニン投与、睡眠剤がある。
* 計画的または処方された睡眠スケジュールは、時差症候群、交代勤務睡眠障害、睡眠相後退症候群、睡眠相前進症候群、不規則睡眠覚醒リズム、自由継続型睡眠障害に使用される。
* 特別に指示された定時の光照射は概日障害のそれぞれに使用されるが、奏効度は各診断によって様々である。
* 定時のメラトニン投与は、交代勤務睡眠障害、睡眠相前進障害、自由継続型睡眠障害に用いられる。
* 夜間勤務者における日中の睡眠を促進または改善するためには、睡眠剤を用いることができる。
* 時差による不眠の治療には、睡眠薬を用いることもできる。
混合診療解禁問題-2
2004年11月、経済財政諮問会議、規制改革推進会議で混合診療解禁を決定。
しかし、保険医の団体である日本医師会が反対したため、頓挫。
2005年12月7日、米国政府は日本政府に対する要望書で
「加算ルール」つまり「混合診療全面解禁」を強く指示。
2006年6月、政府は強行採決により、医療法改正案を通し、混合診療の幅を広げた。
流れは、混合診療解禁のようで、そうなれば、お医者さんの技術料の部分も、経験・技術に応じて設定するようになるのかもしれない。
実際、全国どこでも同じ診察料、技術料というのは、おかしいとは思う。
都会の家賃は高いわけだし、人件費もかかる。田舎でおじいちゃんおばあちゃんを診察していた方が、
経済的には報われるかもしれない。
単純な話、看護士さんや事務員さんをたくさん雇用しているなら、
クリニックに施設基準加算はないけれど、
その分上乗せしてもいいくらいなのだ。
自由診療的な裁量部分が増えれば、
自分の技術に値段を付けることができるように思えるが、
多分、保険会社が介入して、技術料を決定すると思う。
自分は診療報酬分以上に働いていると感じているお医者さん達は、
むしろ、その分を混合診療分として請求できるので、いいのかもしれない。
書類代とか、いろいろ、診療報酬で評価されない雑務は実は多い。
多分、都会のサラリーマンは、天引きされている健康保険料を払わずに、
自費診療クリニックに行った方が、安くあがる。
年をとって、いろいろと不安な年頃になったら、保険を利用すればいいことになる。
一方、保険会社は医療費のかからない人から保険料を取りたいわけだから、工夫をする。
その工夫にまんまと乗っているのがアメリカ人だし、その商売ノウハウについては、自信満々なのだろう。
洪水のような、保険のテレビコマーシャル。
郵政民営化、弁護士大量生産、混合診療、民間保険の導入と、
米国の年次改革要望書の通りである。
中医協に米国製薬会社の人間を加えることも、要求しているのだそうだ。
もうその路線で国民洗脳が始まったということなのだろう。
国民にふさわしい政治があり、
国民にふさわしい医療がある、
そのような、当たり前のことが起こるだけである。
混合診療禁止の法的根拠
「混合診療について、保険が受け取れないと解釈できる法律上の根拠はない」
と裁判官が判決で述べたそうだ。
混合診療禁止が憲法違反だとか、そんな話ではないから、
特段話題にもならないだろうと思っていたが、
いろいろと話題になっているようだ。
結論としていえば、混合診療は禁止するとの法律を作ればいいだけだと思う。
*****
混合診療禁止が、国民の生存権か何かを侵害していて、
従って、混合診療は全面的に解禁されるべきで、
混合診療を導入し、民間医療保険が自費分をまかなう、
そのような方向が考えられているらしい。
ここでも、いわゆるグローバルに、アメリカみたいにという流れ。
予想では、民間医療保険は10兆円を越える規模の市場とのことで、
しかも、アメリカでノウハウは充分にあり、
いつでもスタンバイオーケーなわけだ。
財務省は混合診療が解禁され、民間保険市場が出来上がったなら、
「必要最低限の医療ライン」を徐々に切り下げ、
医療費削減するだろう。
なにしろ、アメリカからの対日年次要求らしいから。
予定では、平成22年に混合診療解禁のプログラムがあり、
財務省は混合診療導入を希望しているといわれ、
政府のお抱え審議会でも混合診療解禁の方向である。
規制改革会議メンバー
議長 草刈 隆郎 日本郵船株式会社代表取締役会長
議長代理 八田 達夫 政策研究大学院大学学長
委員 有富 慶二 ヤマトホールディングス株式会社取締役会長
安念 潤司 成蹊大学法科大学院教授
翁 百合 株式会社日本総合研究所理事
小田原 榮 東京都八王子市教育委員長
川上 康男 株式会社長府製作所取締役社長
木場 弘子 キャスター・千葉大学特命教授
白石 真澄 関西大学政策創造学部教授
中条 潮 慶応義塾大学商学部教授
福井 秀夫 政策研究大学院大学教授
本田 桂子 マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン プリンシパル
松井 道夫 松井証券株式会社代表取締役社長
松本 洋 アドベントインターナショナル日本代表兼マネジングパートナー
米田 雅子 慶應義塾大学理工学部教授 NPO法人建築技術支援協会常務理事
そんな時代になったら、またお医者さんの仕事が増える。
公的保険では保険対象の治療が何か、
その患者さんが加入している民間医療保険はどんな治療をどの期間許容しているか、
調査して、さらに、自費分はどれだけ発生すると計算の上で告げることになるだろう。
そうなると、アメリカの場合のように、加入している医療保険のレベルが、
実質的にその人が受けることができる医療レベルになってしまう。
自動車保険がどの範囲の修理を対象にしているか、みたいな発想。
大切な車ならいい保険をかけるし、
そうでないならそれなりに。
アメリカの短期(brief)精神療法は、保険会社の決まりに合わせて開発されたものだ。
薬剤も、保険会社の決めた範囲で。
メディケアが医療と命を支配しているのだ。
保険会社は基本的に健康で病気になりそうもない人を集めて、保証する。
公的保険は、民間保険会社に加入できないような、
医療費のかさむ人を引き受けるといった事態になるかもしれない。
すると結局、税金の持ち出しである。
以上は制度の問題。
医療にお金をかけたくない人は、
命以上に大事なものがあるのか、
あるいは、他人の命ならそれなりでいいのか。
しかしもう一つ、その手前の問題があって、
現在保険診療の対象になっていないが、本当は必要な治療がどれだけあるのかという問題。
活性化自己リンパ球移入療法とか書いてあったが、
裁判の申し立て方として、
活性化自己リンパ球移入療法を保険診療にして欲しいと申し立て、
その医学的な有効性を立証する方法があったはずで、
その方がずっと意味のある裁判だったかもしれない。
論点が混合診療の是非になっているのは納得できない点がある。
さて、他方、
世の中はいろいろで、銀座の酸素バーのそばを通りかかるが、利用者は一定数いるようだ。
点滴バーではビタミン点滴を自費で受けているのだろう。
獣医学の分野では保険がきかないので、かなりの高額を支払っている。
民間療法の健康被害、金銭被害はともにあとを絶たない。
自費分を認めるとして、その効果や副作用の検討や、そんなことはどうするのだろう。
自己責任というのだろうか。
コラーゲンだ、何だと、支払いをしている人たちをも、自己責任だというように?
命に関しては、そんなわけにはいかないだろう。
細かなところで問題はあるとしても、混合診療禁止は全体としては、良心的に機能してきたと思う。
一般国民にとっての利益は、混合診療解禁ではなく、
個別の特殊療法について、不可欠ならば保険に組み入れることだろう。
それが今回のような話の流れになるところが、どうも怪しい。
精神科・心療内科では、たとえば、ある種の注射やサプリメント、アメリカで使われている抗うつ剤を使う、保険適用のない漢方薬を使うなど、いろいろな分野がある。アメリカには東洋人も住んでいるし、薬も飲んでいるわけだし、また、アジア諸国で認可されている薬もあるのだから、アメリカの薬を自費で使っても、特に問題はないと感じている。
臨床心理士によるカウンセリングは保険適用がないので、自費の扱いになる。この場合は、クリニックとは別組織にして会計も別立てにしないといけない。これは臨床心理士の専門性を確立する上でも必要な要素だと思う。
バイアグラを与えて養殖した牡蠣
牡蠣は精力がつくものだけれど、
その牡蠣を、バイアグラを与えて養殖したのだそうだ。
牡蠣の育ちはよかったらしいが、
その牡蠣を食べた結果についてはまだ報告がない。
牡蠣がその内部でどれだけバイアグラ成分を代謝するかということだが。
あるいは、中間代謝産物も有効かもしれないし。
食べてみないと分からない。
という、真面目でない話。
乗馬クラブとうつ
町田に乗馬クラブがあって、
前から会員だった人が、
うつ病で療養していたときに、何度かいってみて、
なんとなく慰めになったと語っていた。
その人は乗馬はベテランらしく、
馬との付き合いも長いようだった。
アニマルセラピーとか動物介在療法 Animal Assisted Therapy=AAT とよばれるものの、
一種と考えてよいと思う。
馬とかイルカとかは、誰でもというわけにはいかないが、
考えてみてもよいと思う。
ひとつには、乗馬クラブの雰囲気がなかなか宜しく、
気分転換になったらしい。
患者が望む悪い知らせの伝えられ方
国立がんセンター東病院の藤森麻衣子氏らの研究で、
がんなどの、悪い知らせを、どのように伝えたらよいかという報告。
日本人患者は、悪い知らせを受けるときに、
1)家族を含めた情緒的サポート、
2)医学的情報、
3)明確な説明、
4)質問の奨励、
5)場の設定
の5つの項目を考慮して欲しいと思っている。
米国人患者を対象とした同様の調査では、考慮して欲しい主な項目は、
1)情緒的サポート、
2)内容と伝え方、
3)場の設定
の3項目であった。
藤森氏は、
「日本人患者は、治療法の選択肢のみでなく、医師が推奨する治療法まで示して欲しいと考えている。
また、治療法の選択は患者のみでなく、医師や自分の家族と共同で行いたいと考えている」と分析している。
医師に望むこととして
「患者の質問に答える」、
「わかりやすく伝える」、
「今後の治療方針も伝える」、
「主治医として責任を持つことを伝える」
意見が分かれる項目の主なものは、
「余命について知らせる」
「悪い知らせを淡々と知らせる」
「悪い知らせを少しずつ段階的に知らせる」
「伝える内容が不確実な段階でも知らせる」
「断定的な口調で伝える」など。
ーーーーー
たしかに一般的にはこのようなことになるでしょう。
しかし実際には、まず、患者さんの状態とパーソナリティーの把握が第一です。
一般論は大切ですが、それを守っていればうまく行くものでもありません。
精神科医のリエゾン業務で大切な領域ですが、実際には難しいものです。
症状をジャクソニスム的に解釈する
ドネペジルはアルツハイマー病患者の興奮を改善しないとの記事があった。
当然だと思うが、解説する。
精神症状を解釈するとき、有力な手段として、ジャクソニスム的解釈がある。
1.
脳の構造は、層的であり、上位階層に位置する回路は、下位階層回路を、コンピュータプログラムでいうサブルーチンのように使いながら支配している場合がある。また、上位階層回路は、下位階層回路を、抑制的に制御している場合がある。
2.
上位と下位がメインルーチンとサブルーチンの関係にある場合、メインルーチンが機能停止すると、「まとまりのない」状態になる。統合が失調するとは、まさにこれを指す。
3.
抑制的に制御している上位階層回路が機能停止(A)した場合、抑制されていた下位階層回路機能が突出(B)する。さらに生体は、こうした異常事態に対して反応する(C)。
結局、目の前に症状として現れているものは、A+B+Cの複合であるということができる。
4.
Bの例としてあげられるのは、膝蓋腱反射である。
Aとしての、上位抑制が、脳血管障害などのために機能停止する。
ここで、Bだけを症状とするのではなく、一体のものではあるが、Aを症状として意識し、記載することが、症状の分析となる。
5.
統合失調症において、陽性症状、陰性症状と呼ばれているものは、用語の定義によるのであるが、理論的には、上記、BとAに相当するとしてよい。私見では、統合失調症において、その他に、Cの要素を見るべきである。
6.
たとえば、妄想に支配されている人の場合。
A……現実と内的想念の比較照合訂正機能の脱失。
B……内的想念の、無訂正の突出。
C……辻褄を合わせるための、妄想体系の構築。
上記三要素の併存として、症状は成り立っている。
7.
たとえば、うつ病の場合。
A……抑うつを訂正する上位回路の機能停止。
B……抑うつ回路の突出。
C……反応性に出現する不安焦燥。
うつ病の中に、上記三要素の併存を見る。
8.
たとえば、アルツハイマー病の場合。
A……上位機能の停止、たとえば、記憶障害。
B……下位機能の突出、たとえば、興奮。
C……辻褄を合わせて状況を解釈するために妄想の構築。
こう考えることを基本とすれば、ドネペジルは、Aのプロセスを遅らせるものであるから、興奮を改善しないのは当然である。興奮を改善するには、上位からの抑制的な制御を補助するような薬剤か精神療法的な働きかけが有効なはずである。
9.
上記は、理念型であって、実際に三要素を「機械的に」切り出して記述解釈することは現状では難しい。
しかし、脳の構造に由来する当然の機能解釈であり、根本的に有効であると考える。
10.
機能には、それを可能にする構造がある。脳の場合、上位構造は下位構造を抑制的・統合的に修飾している。この二つの原則から、以上のすべてを演繹することができるのである。ジャクソニスムは偉大である。
11.
もちろん、脳の構造の原則にはこれ以外にも多くの要素がある。しかし、これが、根本原則のひとつだという議論である。
「発作」反復でシナプス減少
脳障害のメカニズム解明 てんかんでシナプス減少
記事:共同通信社 提供:共同通信社
【2007年11月8日】
慢性脳疾患のてんかんの中でも、薬を服用しても発作が治まらない「難治性てんかん」の患者が記憶や学習に障害をきたす場合の脳のメカニズムを、東京都神経科学総合研究所(東京都府中市)や大阪大などのチームがラットなどで解明し7日、米科学誌ニューロン電子版に発表した。
重度の患者に脳機能障害が起こるのを予防する薬剤の開発につながる可能性があるという。
チームによると、てんかんの強いけいれん発作が繰り返し起きると、脳で情報がやりとりされる、神経細胞の接合部「シナプス」の数が減り、記憶障害などを引き起こす場合がある。
チームは、発作が起きたときに、神経細胞内でタンパク質「アルカドリン」が大量に作られていることを発見。詳しく解析したところ、アルカドリンが、シナプス間を接着している神経細胞の表面のタンパク質を減らす働きをすることを突き止めた。
難治性てんかんでは、アルカドリンが過剰になった結果、シナプス間の接着が切れてシナプスが消失、数が減るらしい。
チームの山形要人(やまがた・かなと)・同研究所副参事研究員(神経薬理学)は「アルカドリンの働きにかかわる酵素を抑える物質が薬の候補になり得る」と話している。
*****
従来から、てんかん発作をくり返すタイプの場合、一部は、脳神経細胞そのものが失われ、剖検すると脳体積の減少が知られ、また、CT、MRIなどの所見で、萎縮に相当する所見があると知られている。一部の違法薬物後遺症でも、同様の萎縮所見が見られることが知られている。
CTを撮影したら、まるでアルツハイマーのように、脳が萎縮しているので、驚いたものだった。
今回の研究は、そのような肉眼的萎縮所見ではなく、シナプスの数が減ること、そしてその原因は、アルカドリンというたんぱく質がつくられ、これが多くなると、「アルカドリンが、シナプス間を接着している神経細胞の表面のタンパク質を減らす」「シナプス間の接着が切れてシナプスが消失する」と書いてある。
細かいところはとにかくとして、てんかん発作をくり返しているうちに、神経細胞同士の結合が切れて、孤立した細胞になるようだ。孤立すると、細胞は死に易くなる。結果として、萎縮の所見になるのだろう。アルドカリンを増やさなければいいというなら、何とかできるのだろうか。
うつ病で使う電気ショックのときも似たようなことが起こるのだから、アルドカリンが増えないような処置をしておけばいいわけだ。まあ、そんなに何度も行なうものでもないけれど。
先日、アンジオテンシンIIを除去する抗体を誘導する高血圧ワクチンという話題を読んだが、同じような手法は使えるのかもしれない。
そういえば、アンジオテンシンIIを除去する抗体は大変有用だと思うのだが、多すぎても少なすぎてもいけないわけで、そのあたりの調整はどうするのだろう?
結核菌を攻撃する抗体ならば、どんなにたくさんあってもいいようなものだが。
血圧コントロール系はアンジオテンシンIIが関係する系だけではないということで、アンジオテンシンIIが全部除去されてしまっても問題ないと言うのだろうか?そうなれば、ネガティブフィードバックで、ややこしいことになるはずだ。
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話を元に戻すと、「発作」によって、細胞が失われる、または、細胞の機能が失われる、または、細胞間の接合が失われる、または、レセプターが破壊される、そのような、一般化して言って、細胞に不可逆のダメージを与えるケースとして、てんかん発作と、違法薬物摂取があげられるのだが、大勢に支持されているわけではない説として、統合失調症の陽性症状が急性に発現している時期には、同じようなことが起こっているのではないかとの推定があり、また、躁状態の場合にも起こっているだろうとの推定があり、さらに、うつ状態の一部の場合にも、同じ事態が起こっているのではないかとの説がある。
これは、CTやMRIで確認している所見ではないので、細胞脱失については不確か、むしろネガティブなのだが、統合失調症でも、躁病、うつ病でも、くり返しているうちに、次第に精神機能として、ディフェクト状態となることは古くから知られているところだ。
この観察は、final common pathway という言葉でよく示されているのだが、精神病というものは、始まりはよく似た状態があり、統合失調症、そううつ病、うつ病、性格障害、その他、よく似ていて、たとえば不眠とか、不安とか、そんな症状から始まり、(わたしは initial common pathway と呼んでいるのだが)、次第に、各病気の特殊な病像をとり、しかし、時間が経った後に、最後にはfinal common pathway に至り、一言で言えば、defect 状態になるとする説がある。というか、あったというか、私はいまだにそんなことも考えているというか、そんなところだ。
単一精神病観(Einheit)の脆弱な一種といえるだろう。強力な単一精神病観は柴田先生などのもので、これは本物の少数有力説である。
何故単一かといえば、理由は様々であっても、細胞が機能停止するという点では同一であるということだ。電気系統の故障は様々であっても、われわれが知るのは、要するに、「テレビが映らない」ということだというのに似ている。
現在の精神薬理学を単純化すれば、(単純化しすぎていてほとんど嘘なのだが)、統合失調症はおもにドーパミン系のシナプス部分で障害が起こり、うつ病はセロトニン系で、不安はGABA系で、それぞれおもに障害が起こるといわれている。そうだととすれば、最初はそれぞれの系で小規模に障害が起こり、小規模であるゆえに、それを補償する回路も作働して、結局、不眠などの似たような症状が起こり、その後、極期に至れば、それぞれの系に特有の症状を呈し、最後には、細胞機能停止による、共通症状を呈するのだろうと推定できる。
従って、アルドカリン増加を抑制できれば、てんかんのみでなく、統合失調症急性期、そううつ病急性期にも、脳神経細胞を保護する薬剤として有用ではないかと予想する。もしそうであれば、統合失調症における、陰性症状に対する抑止対策になり得るだろう。ジャクソニスムの観点から、それは同時に、陽性症状の抑止につながるものと推定できるのである。そして、よく言われるように、陽性症状に先んじて、陰性症状が起こるものならば、アルドカリン増加抑制でもよいし、何か他のものでもよいから、細胞のダメージを予防することで、統合失調症の進行プロセスを抑制することができるだろうと考える。
私見では、統合失調症急性期に、低体温療法によって、脳神経細胞が蒙るダメージを抑制できるのではないかと予想している。しかし、低体温療法そのものにリスクがあり、もっと洗練された手法になってから、応用すべきである。